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ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」

1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:47:54.79 ID:r2w8xa2z0
長編投下の際の注意


超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ!でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ?
前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ・・・あの、お茶どうですかぁ?
基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョン君の恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ
当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ・・・けど、今はほとんど皆無。別に気にしないで。
キョン君、過度な性的描写はやめようね〜、タンスにエロビデ隠してるの知ってるんだからね〜
ageるのもいいけど元気すぎるのと一文字作文は控えたほうがいいと思うのね
要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな。
自分で投下した長編はなるべく自分で編集すること、わかった!?
それじゃ、さっさと投下しなさいっ!いい?あたしを退屈させたら死刑だからねっ!


DAT保管庫   http://ime.nu/haruhiss.xxxxxxxx.jp/

新まとめサイト http://ime.nu/www11.atwiki.jp/xgvuw6/



2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:47:59.86 ID:/dLc+ju80
↓バーかおせぇんだよ糞コテ死ね

3AA厨 ◆/AA/Vsjs9k :2006/10/06(金) 17:48:47.93 ID:7K108iKz0 ?
↓  ↑            /. : : : : : : : : : \           お
↓  ↑           /.: : : : : : : : : : : : : : ヽ
↓  ↑          ,!::: : : :,-…-…-ミ: : : : :',         前
↓  ↑          {::: : : :i '⌒'  '⌒' i: : : : :}
└─┘             {:: : : : | ェェ  ェェ |: : : : :}         の
.          , 、      { : : : :|   ,.、   |:: : : :;!
   .     ヽ ヽ.  _ .ヾ: :: :i r‐-ニ-┐ | : : :ノ          事
          }  >'´.-!、 ゞイ! ヽ 二゙ノ イゞ‐′
          |    −!   \` ー一'´丿 \           だ
         ノ    ,二!\   \___/   /`丶、
        /\  /    \   /~ト、   /    l \


4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:51:11.38 ID:IvIeVm71O
>>1乙!

5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:51:52.37 ID:CEBAnMuTO
>>1乙!!

粗品
つテト┣゙ン

6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:52:27.13 ID:vjdP8+I4O
>>1乙!!

7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:53:44.92 ID:caJJDnhc0
>>1otu

8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 17:53:54.57 ID:4V9vhDDQ0
これでバイト中に落ちる心配が無くなった\(^o^)/

9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:00:01.51 ID:Xbs1wLpn0
>>1

10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:04:35.63 ID:IvIeVm71O
保守

11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:13:33.39 ID:Xbs1wLpn0
保守

12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:13:46.59 ID:vjdP8+I4O
保守

13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:16:24.89 ID:Jh6WFNm+0
みんな、投下しまくって>>8がバイト終わる前に1000行かせて落とそうぜ

14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:17:13.56 ID:Xbs1wLpn0
今ひどい鬼畜を見た

15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:17:56.46 ID:4V9vhDDQ0
/(^o^)\なんてこったい
もうSS作るのやめた\(^o^)/

16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:18:17.70 ID:Jh6WFNm+0
>>14
誰の事だ?

17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:19:01.56 ID:r2w8xa2z0
さぁ>>14、ごめんなさいだ。

18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:19:32.62 ID:r2w8xa2z0
>>13だたorz

19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:19:41.91 ID:4V9vhDDQ0
>>16
お前だよ!と言いたいところだが投下が多いのいい事だな。

2014 :2006/10/06(金) 18:20:12.66 ID:Jh6WFNm+0
       ________∩_∩
     /   ノ ヽ (  ノ⊂ ̄))) ̄⊃
     /|ヽ  (_ノ  ._ ̄  0'ヽ 0'
    / |ノ  .)    (_)  ヽ  i (   むしゃむしゃしていた。
 ∋ノ |  /――、__  ./(∩∩)  草なら何でもよかった。
     / /| ヽ__ノ   | / ./      今は反芻している。
    | ( | ( ’’’    | ( /
    |__ヽ.L_ヽ        Lヽ_ヽ
''" ""''"" "'''''" ""''"" ''" ""''"" ''" ""''"" ''" ""''"" "'''.
        反省しろよ


2113 :2006/10/06(金) 18:21:08.77 ID:Jh6WFNm+0
>>18

そして自分でも間違ってた罠

22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:23:54.06 ID:upcHJCDLO
>>1

23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:31:11.85 ID:h6rGskW90
みくる「ほ、ほ、ほほ、保守ですぅ〜。」

24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:33:34.89 ID:WUyg7Cjy0
>>13>>21
ワロタ
いい流れですた

25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:41:59.44 ID:xyuiamS70
>>1

保守

26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:41:58.35 ID:7zT2osHnO
保守!
前スレ>>662 『それから』のヒト!亀だがGJ!
ほろにがスウィートな感じで良かったよ。

ところで(涙が)ホロリ系ってあんまり無いっぽい?
あまり、悲劇(鬱)=感動ってのが嫌いでさ。

27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:43:43.84 ID:AbHS+ur30
日本語おかしくね?

あ、>>1

28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:47:45.84 ID:xyuiamS70
>>25>>26どっちかが時間移動しちゃってるな。1秒程。

29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 18:59:55.45 ID:vjdP8+I4O
保守

30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:04:35.16 ID:VK9Hp3b70
>>26
単純に難しいからでね?
鬱モノはわりと手軽っぽい

31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:05:29.17 ID:7zT2osHnO
>>27
すまん。おかしいわw
あまり好きじゃない、が正しい日本語だな
おっと>>1

32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:11:31.84 ID:Jh6WFNm+0
前スレDAT
http://ime.nu/wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper12991.dat

33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:14:45.26 ID:3fSqACec0
鬱モノってかヤンデレみたいなの書けたんだが
投下していいですか、よければこれからまとめるんだけど

34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:16:24.21 ID:vjdP8+I4O
>>33
おk

35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:17:18.31 ID:mD2dkFXR0
>>33
wktk

36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:19:28.30 ID:3fSqACec0
>>34
ありがとうこれからまとめます
ちょいと長いので時間かかるかも

37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:27:14.06 ID:vjdP8+I4O
wktk

38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:27:43.27 ID:Jh6WFNm+0
    +
     ∧_∧  +
 +   _(u゚・∀・) ギトギトヌルヌル
  ⊂ (0゚∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u_)__)゚  ̄⊃ +
  ⊂_。+   ゚+_⊃
    ⊂__⊃.


39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:27:54.96 ID:mD2dkFXR0
wktk

40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:34:06.07 ID:VK9Hp3b70
>>38
どこから何を出してんだw

41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:38:27.04 ID:Jh6WFNm+0
穴という穴からいろいろと
耳穴から黄金色の液体出したりしてますよ

42 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:39:35.80 ID:Ip/vV4iQ0
今投下大丈夫でしょうか?
ガール・ミーツ・ガール
一応終わりまでかけたのですが・・・。97まで行きました。

43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:40:44.37 ID:Z3H3ZWAD0
バイト中だが眠い…これはもうダメかもわからんね

44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:41:53.58 ID:vjdP8+I4O
投下wktk

45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:44:31.30 ID:cZOIFx/10
>>42
wktk

46 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:45:47.86 ID:Ip/vV4iQ0
ガール・ミーツ・ガール、投下します
今回は77−97まで
一応完結、あとで後日談的な物を投下しに来る予定では有ります。

※キョンが女の子だったら、という設定のお話です
※キャラの性格はある程度原作を踏襲しているつもりですが
 原作どおりの人間関係を期待する人は見ない方が良いです。

47ガール・ミーツ・ガール77 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:46:24.87 ID:Ip/vV4iQ0
 ……さて、当たり前だが俺達は朝倉が作り出したらしい謎の空間から脱出できていない。
 本当なら和んでいる場合ではないのだが、ついつい気が緩んでしまっていたらしい。
 ああ、俺と古泉だけじゃないぞ、長門もだ。
 何で表情が読めない奴の気が緩んでいたのかが分かるって、そりゃな、
「……重要な事項を忘れていた」
「何ですか?」

「涼宮ハルヒと朝比奈みくるがこの空間のどこかにいる」

 こんな超重要事項を言いそびれていたんだからな。


 聞いた瞬間、俺と古泉は揃って絶句していた。
 そりゃそうだろう。
 知らぬは本人ばかりなりのその張本人が、未知との邂逅以外の何でもないこのおかしな
世界に引きずり込まれてしまったってことなんだからな。
 おまけに、朝比奈さんもか。
「……場所はわかりますか?」
 俺より早く復活した古泉が、まだちょっと顔を引きつらせたまま長門に訊ねた。
「詳しい場所は不明、ただし、二人は一緒にいると思われる。そうでないと朝比奈みくる
が巻き込まれるとは考えられない」
「どういうことですか?」
「閉鎖空間は発生場所は違えども、発生源そのものは涼宮ハルヒ。詳細は不明だが、朝倉
涼子は何らかの手段でその発生する瞬間の涼宮ハルヒの精神そのものに接触した可能性が
高い。朝比奈みくるが巻き込まれたのは物理的に近くにいたからと考えられる」
「なるほど……、では、涼宮さんが巻き込まれたのは偶然ですか?」
「意図したものである可能性が高い」
「それは、二重の罠ということですか」
 古泉が深い溜息を吐いた。

48ガール・ミーツ・ガール78 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:46:55.81 ID:Ip/vV4iQ0
「……どういうことだ?」
「朝倉涼子はあなたの殺害を目的としていた、それ自体に間違いは有りません。ですが、
それが成功してもしなくても、閉鎖空間発生時の涼宮さんの精神に触れ、そのまま涼宮さ
んの肉体ごとこの空間に閉じ込める事ができれば、第一の目的は達成したようなものなん
です」
「……そういうことか」
 長門は観察者で、朝倉はその同類ってことだからな。
 傍観に飽きて独断で、ってことなんだよな。
「そういうことです。……とにかく、涼宮さんと朝比奈さんと探さないと話になりません
ね」
「二手に分かれるのか?」
「いえ、一緒に行動しましょう。僕と長門さんにも互いの位置を把握する手段は有りませ
んからね、バラバラになるのはまずいでしょう。長門さんも宜しいですね?」
「了解した」
 ……かくして、美少女二人を探す空飛ぶ探索紀行が始まった。


 探索紀行と言っても、実はそんなに長く続いたわけじゃない。
 上の方はそれこそ天井知らずの謎の世界だったが、一番下の方には見慣れた街並みが広
がっていたからな。
 まあ、妙な色をした世界では有ったが。
 現実世界の色違いって辺りは、閉鎖空間と似たような感じだろうか。
「通学路の周辺を辿るのが良いでしょう」
 やっと地上に降りて俺を下ろした古泉は、そう言って道を歩き始めた。
 長門と俺がその後ろを着いていく。

49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:47:43.13 ID:Jh6WFNm+0
支援

50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:47:47.57 ID:vjdP8+I4O
支援

51ガール・ミーツ・ガール79 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:47:50.95 ID:Ip/vV4iQ0
 ちなみに携帯電話は通じていない。
 かけようとした途端不通になるなんてどういうギャグだと思ったが、古泉が言うには
「涼宮さんが『こういう場所では携帯なんて通じるわけがない』と思っている可能性が有
りますから、不思議な事ではないでしょう」とのことだった。

「もうすぐ」
 長門が、唐突に呟いた。
 おいおい、分かるのかよ。
「近距離の生体反応が感じ取れるだけ」
 それだけでも充分凄いんですが。
「では、ここからはあなたに先頭になってもらいましょう。朝比奈さんはともかく、涼宮
さんを安心させるためにあなたが一番でしょうからね」
 何でそうなる?
 別に構わないが……。俺に出来ることなんて、この程度みたいだしな。

 長門が指し示したのは、すぐ近くの公園だった。
 ここって……。
 公園のベンチに、女の子が二人。
 俯いているハルヒと、そんなハルヒを見たまま沈痛な表情をしている朝比奈さん。
「ハルヒ!」
 俺は、ハルヒの名前を呼んだ。

52ガール・ミーツ・ガール80 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:48:35.62 ID:Ip/vV4iQ0
「キョンっ……」
 はっと顔を上げて俺の名前を呼んだハルヒが、そのまま固まってしまう。
 一体どうしたんだ?
 俺は事情が分からず、助けを求めようと後ろを見た。
 古泉が、しまった、というような顔をしていた。……こんな表情、始めて見た。
 前に向き直ると、ハルヒの視線も俺ではなく古泉の方を見ていた。
「ねえ、古泉くん。……さっきの、何?」
 ハルヒが、夢遊病者のような声の調子で古泉に話し掛ける。
「さっき、空から降って来たよね……。有希と一緒に。手から赤い光を出して、何だか良
く分からないことになって……。何かと思ったら、今度はキョンを抱えて飛び上がって…
…」
 仕組みは良く分からないが、どうやら、一部始終を全部見られていたようだ。
 ……最悪のパターンだ。
「ねえ、あれなに……。何なの、一体? それにここはどこ? 何であたし達こんな場所
にいるの? ねえ、誰の仕業? これも古泉くんがやったの? ねえ――」
「ハルヒっ!」
 俺はふらふらと歩き出したハルヒと何も言えず立ったままの古泉の間に割って入った。
 どっちも見ていて放っておけなかった、痛々しすぎる。

 なあ、ハルヒ、お前は何も知らないかもしれないが、古泉はお前のヒーローなんだぞ?

「止めないでよ、キョンっ」
「古泉は何も悪くない、こいつは……、長門と一緒に俺を助けに来てくれたんだよ」
「何それ……、助けるって何? 何から、誰から? あんた一体どうしたの? おかしい
わよ。あんた、古泉くんに騙されているんじゃないの?」
 まずい、完全に逆効果だ。
「違う、古泉は何も悪くないんだ!」
「じゃあ、何なのこれは、誰のせいなの!」
 ハルヒの叫びが、空の無い公園に響き渡る。

53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:48:56.78 ID:Jh6WFNm+0
支援

54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:49:03.86 ID:vjdP8+I4O
支援

55ガール・ミーツ・ガール81 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:49:15.50 ID:Ip/vV4iQ0
「何で言えないの、言えないのはあんたが何か隠しているからでしょう?」
「違うっ」
「違わないわよ。あんたは、あんたは……馬鹿だけど、嘘は吐かない奴だと思っていたの
に……」
 馬鹿は余計だ。
「俺は嘘なんて吐いてない!」
「今吐いているじゃない!」
「あっ……」
 そうだ、今の俺は……。
 ……ハルヒを誤魔化そうと必死になっているんだ。
「あんたおかしいわよ、あんたやっぱり古泉くんに騙されているのよっ」
「何で古泉のせいにするんだよっ」
 だからどうしてそうなるんだ。
「だって、あんたが……、あんたが……」
 ハルヒが、俺の肩を掴む。
 何回目だ、この展開。
「あのな、ハルヒ……」
「……キョンの、キョンの馬鹿ー!!!」
 瞬間、脳が強く揺さぶられたような気がした。


56ガール・ミーツ・ガール82 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:49:54.56 ID:Ip/vV4iQ0
 耳鳴りがした気はするが、物理的な衝撃は無かったんだと思う。
 幾らハルヒの叫び声がでかかったとはいえ、人間の声だものな。
 脳が、というのは比喩みたいなものだ。
 俺は酒を飲んだ事は無いが、二日酔いの時はこんな風になるんじゃないかなんてことを
ぼんやり考えていたりもした。
 俺は、一体どうなったんだ。

 ぱちりと、俺は唐突に覚醒した。
 ここはどこだ。
 身を起こすと、そこは見覚えの有る場所だった。
 部室だ。
 俺はどうやら部室の床に寝っ転がっていたらしい。
 部室を内を見渡してみると、ハルヒも居た。
 何故か床でも団長席でもなく、俺の定位置になっている椅子に座って眠りこけている。
 俺はハルヒを起こそうかどうか迷ったが、やめておいた。
 無理に起こすと何が起こるか分からないからな。
 俺はハルヒを起こさないように気をつけつつ、セーラー服とスカートについた埃を払っ
た。
 出来れば髪も結びたかったんだが、髪を結べそうなゴム紐やリボンの持ち合わせも無か
ったので、仕方なくそのままにしておいた。
 そんなに汚れては居ないみたいだな。
 しかし、俺は何でこんな所にいるんだ。
 ハルヒが大声で叫んだ所までは覚えているんだが……、これは、ハルヒの仕業なんだろ
うか。
「ああ、ご気分は如何ですか?」
 そのとき、窓の方から気遣うような声が聞こえた。

57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:49:59.36 ID:vjdP8+I4O
支援

58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:50:02.38 ID:Jh6WFNm+0
支援

59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:50:30.30 ID:cZOIFx/10
私えん

60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:50:37.03 ID:Jh6WFNm+0
支援

61ガール・ミーツ・ガール83 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:51:02.51 ID:Ip/vV4iQ0
 聞き覚えの有る声に気がついて振り返ると、見覚えの有る姿がそこに有った。
 立っていたのではなく、有ったのだ。
 何時ぞやの閉鎖空間で見た、赤い球体。
 それが、窓の外の暗闇の中に有った。
「古泉っ」
「ああ、無事そうですね。涼宮さんがあなたを傷つけるなどとは思っていませんでしたが、
無事でよかったです」
「古泉、これは……」
「余り時間が無いので手短に説明しますが、亜空間内の階層の再構成と、それに伴っての
転移が起こったようです」
「再構成って……」
「この亜空間を作り出したのは朝倉涼子ですが、大元は涼宮さんの精神にあります。涼宮
さん自身がこの亜空間に干渉出来たとしてもおかしくはないでしょう。……無自覚でしょ
うが」
 ……理屈は分からなくも無い、と思う。
 けど、それってどういうことだ?
「涼宮さんはあなたと自分の隣に引き寄せ、僕等を別の階層に飛ばした上で階層ごとの境
界を強化しました。……僕がここに現れることが出来たのも、一時的なものです。先ほど
も言いましたが、時間はあまり無いんです」
「そんな……、でも、再構成って……、ここは、どこなんだ?」
「現実空間との距離という物を前提に考えると、現在あなたがたがいる場所が最下層、現
実から一番遠い場所に当たります」
「……どうやったら戻れるんだ?」
「……分かりません」
 人間らしい形状を留めていないはずの赤い球体が、首を振る動作をした気がした。
 赤い球体の光が、少しずつ弱っていた。


62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:51:09.33 ID:vjdP8+I4O
支援

63ガール・ミーツ・ガール84 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:51:50.96 ID:Ip/vV4iQ0
「分からないって……」
「すみません、僕には分からないんです。現在の涼宮さんは大分混乱した状態にいるよう
ですから、その状態から脱する事ができれば……、とは思うのですが」
「古泉……」
「すみません、何の力にもなれなくて」
「良い、気にしないで良い。けど……、この状態だと、お前達もこの空間から抜けられな
いってことか?」
「ええ、そうです。一応長門さんや朝比奈さんも傍にいますが」
 話している間にも、赤い光はどんどん弱まっていく。
 心なしか、古泉の声も段々小さくなっていっている気がした。
「そうか……」
 一体どんな状態なのかは気になるところだが、三人一緒ならまだ安心だ。
「僕としては、5人一緒に現実に戻れることを祈っていますよ」
「……俺もだよ」
 当たり前だ、こんな所で一生過ごす気も無ければくたばる気もない。
 ハルヒが何を言い出すか知らないが、引きずってでも現実に戻ってやるさ。
「あまり、無理はなさらないでくださいね」
「別に無理なんてしてないさ」
「普段のあなたを見ていると、とてもそうは思えないのですが……、まあ、いいでしょう。
あなたの幸運を祈っていますよ」
 そう言って、赤い光は消えていった。

64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:52:01.84 ID:BBDMQ3jR0
食べてねーよ

65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:52:08.55 ID:vjdP8+I4O
支援

66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:52:16.76 ID:QShhmIIi0
今日のプリンスレはいい空気でつね

67ガール・ミーツ・ガール85 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:52:54.58 ID:Ip/vV4iQ0
「あ……」
伸ばした手が何もない空間をすり抜ける。
俺はそのまま、ぼんやりと赤い光が消えたその先を見つめていた。
地上も空も無い、なんの境界も見えないただの一面の闇。
部室の窓からじゃ絶対に見えない光景だ。
俺はどのくらいの間そうしていたんだろう。

「……キョン」

声を耳にゆっくりと振り返ると、眠っていたはずのハルヒが立ち上がり、俺の方を見て
いた。

「ハルヒ……」

「ねえ、キョン、何であたし部室にいるの?あたしはみくるちゃんと一緒に公園に居たは
ずなのに……。古泉くんは?有希は?、あの二人、空から……」
ぼんやりとしていた視線が、戸惑いの色に変わっていく。
「あんた、古泉くんと一緒に……」
「夢だ」
「夢って、そんな……」
「俺は今日は古泉にも長門にも会ってない、真っ直ぐ家に帰ったよ」
もちろん嘘だが、こうでも言わないとハルヒがまともに話を聞いてはくれないだろう。
古泉は言っていた。
ハルヒは根の部分では常識人なのだと。
……本当にその通りだな。
何せ目の前に現れた非日常との邂逅を全力で否定した挙げ句引きこもりやがった。
これが無自覚というのだから質が悪い。
だが、それを理由に俺がこいつを突き放しちゃいけない。
少なくとも、今は。

68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:52:55.50 ID:Jh6WFNm+0
支援

69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:53:31.20 ID:vjdP8+I4O
支援だ

70ガール・ミーツ・ガール86 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:53:38.06 ID:Ip/vV4iQ0
「でも……」
「信じてくれ、ハルヒ」
「……キョンが、どうしてもって言うなら、信用してあげても良いけど」
「頼む」
「分かったわ……。ねえ、ここはどこ?、部室に似ているけど、違うわよね」
「……俺にも分からない」
 嘘を吐くのは、ここまでで良い。
 ここから先は、立ち向かわなきゃいけない。
 方法なんて知らない、ハルヒの心の構造なんて俺には未だ持って謎なままだ。

 けど、ヒントは貰っている。
 普段はちょっと頼りなくてちょっとだけ怖くて、でも時々頼りになる上級生の大人バー
ジョンが、教えてくれたじゃないか。

「分からないって……」
「分からないけど、危険は無いと思う。ハルヒ、とりあえず適当な所に座れ、茶でも入れ
るからさ」
「えっ……」
「何だったらメイド服も着ようか?」
「馬鹿、そこまでしなくていいわよ」
 ハルヒが、ほんの少しだけ表情を崩した。

71ガール・ミーツ・ガール87 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:54:09.31 ID:Ip/vV4iQ0
 ポットには何故かお湯が入っていて、湯飲みも急須も普段の部室と同じように用意して
有った。
 俺は何度か繰り返したのと同じように、ゆっくりとお茶を注いでいく。
 メイド服はどうかと思うが、お茶を淹れる事自体はそんなに嫌いじゃない、と思う。
 長い髪が少し邪魔だったが、それはこの際仕方が無い。
「どうぞ」
 二つの湯飲みに茶を注いで、その内一つをハルヒの前に差し出す。
「ありがと」
 ハルヒが礼を言うなんて珍しい。
「……味は相変わらずね」
 ハルヒが5秒足らずでお茶を飲み干す。
「悪かったな」
「まあ良いわ。……お代わり」
「まだ飲むのかよ」
「喉乾いているんだもん。ほら、団長命令なんだから早くやりなさいよ」
「……はいはい」
 すっかり何時もの調子を取り戻しつつあるハルヒにほっとしつつ、俺は二杯目のお茶を
注いだ。

 不機嫌でもなければ妙なことを思いついているわけでも無いハルヒと二人きりというの
は、何だか変な感じがする。
 そういや、学校の中では何度も会話したが、本当に二人きりになったことなんて殆ど無
かった気がするな。
 女同士二人きり、か。
 別に何があるってわけじゃないが、これがハルヒ相手だとなるとちょっと微妙かもしれ
ない。

 そもそも、何を話せばいいのかさっぱり分からない。

72ガール・ミーツ・ガール88 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:54:39.96 ID:Ip/vV4iQ0
 ハルヒが二杯目の茶を飲み干す。
 猫舌って単語はどうやらこいつとは無縁らしい。
「……キョン、ちょっとこっち向いてくれる?」
 適当に茶を啜っていた(まだ一杯目だ)俺は、ハルヒの一言で顔を上げた。
 何だろう、何か言いたいことが有るんだろうか。
「どうした?」

「キョン、あんた、古泉くんのことが好きなのよね?」

 ……。
 ……直球で来やがった。
 
ハルヒは笑ってない、真剣な表情というわけでもない。
 何か純粋に疑問に思ったことを口にする子供、そんな感じだった。

 俺は未来から来た朝比奈さんの言葉を思い出す。
 素直に、か。
 それも、ハルヒに対してじゃなくて俺自身にと来ている。
 ハルヒの言葉も直球なら、朝比奈さんのヒントも直球だ。

「……そうだよ」
 
 俺はハルヒから目を離さず、答えてやった。

73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:55:15.95 ID:vjdP8+I4O
支援

74ガール・ミーツ・ガール89 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:55:23.94 ID:Ip/vV4iQ0
 本人が目の前に居ないからこそ、というやつだろう。
 古泉一樹が目の前に居たら俺は多分何も言えずに逃げている。
 認めよう。
 あいつはハルヒ第一の超能力者でちょっと変人で胡散臭くて実は結構腹黒そうだが……、
それでも俺は、あいつが好きだ。

 だが、悪いが俺に愛の告白なんてものをする勇気は無い。
 結果が見えている勝負を挑まない半端者の負けず嫌いで何が悪い。

「やっぱりね」

 ハルヒが微笑む。
 小馬鹿にしたような雰囲気は無い、茶化すつもりも無いらしい。
 子供っぽくて俺より背も低いハルヒが、今度は何故か少しだけ大人っぽく見えた。
「やっぱりって……」
「だってあんた、バレバレなんだもの」
「……」
「あれで隠しているつもり? 有希ちゃんもみくるちゃんも、クラスの連中も絶対気付い
ているわよ。……まあ、隠す気は無かったのかも知れないけど」
 ハルヒが溜息を吐く。
「……言わなかった理由は、何?」
 真剣な面持ち。
「……」
「もしかして、脈がないとか思っていたの?」
 脈以前の問題な気がする。
 ……が、この辺りの事情をハルヒに話すことは出来ない。
「全く……、勝負を仕掛ける前に逃げるなんて、愚か者のすることよ」
 悪かったな。

75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:56:01.09 ID:OYcUpw9g0
支援

76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:56:33.38 ID:jsY9B6Hj0
今追いついた
支援

77ガール・ミーツ・ガール90 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:56:45.28 ID:Ip/vV4iQ0
「……こんな事になる前に、ちゃんと言えば良かったのよ」
「……」
「こんな状態じゃ、帰って告白ってわけにも――」
 涼宮ハルヒは、根っこの所はどこまでも常識人らしい。
 話の風向きが何時もと違うのも、そのせいなんだろうか。

「帰れるさ」

「何を根拠に……、帰れるわけ無いじゃない、ここ、扉も開かないし、外は真っ暗闇なの
よ。こんな変な場所からどうやって帰るの? まさかこれも夢だとか言い出すつもり?」
「そうじゃない。でも、帰れる」
「やけに自信たっぷりね。……あんたの王子様が助けに来てくれるとか?」
 王子様って表現は……、似合わないようなことも無いような気がするな。
 実際一度助けに来てもらっているし。
「違うよ。俺があいつ等を助けに行く。助けてやる」
 今、俺に出来ること。
 『専門分野が違う』っていう古泉の言葉は、俺にも通用するのかもな。
「えっ……」

「なあ、ハルヒ、知っているか、恋する乙女は無敵なんだぞ?」

 全世界が停止したかと思われた。
 少なくとも、この部室らしき空間の空気は完全に凍り付いていた。
 勢いで言ってしまったもののそれ以上何も言えなくなった俺と、ただぽかんと口を開け
ているハルヒ。
 羞恥を通り越して、何だか空気が痛かった。
 ……こんな台詞、普段から羞恥心をかなぐり捨てて生きているとしか思えないハルヒの
前だからこそ、言えたんだろうな。


78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:56:47.32 ID:vjdP8+I4O
支援

79ガール・ミーツ・ガール91 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:57:17.34 ID:Ip/vV4iQ0
「何それ……、あんた馬鹿?」

 漸く復活したハルヒが、怒りと哀れみ混じりのような視線で俺のことを見てきた。
 馬鹿は余計だが、常識に縛られて帰れないと思い込むよりは、たとえ馬鹿でも良いから
帰れると思わせておいて欲しい。
 こんな所に女二人一生一緒になんてのはお断りだ。
「一応本気だよ」
「何よ一応って……、全く、これだから恋なんて気の迷いだとしか思えないのよ。人を好
きになったからってだけでどうにかなるなんて考え方、馬鹿げているわよ」
 ん、話の風向きが変わったか?
 なあ、ハルヒ、お前もしかして……。

「お前、誰か好きな奴が居るのか?」

「なっ、い、居るわけないでしょっ」

 恐ろしいほどパターンどおりの反応が帰ってきた。
 意外だ。
 あの涼宮ハルヒが、こんな場面でこんな真っ当な反応を示すなんて……。
「その反応、居るって言っているとの同じだって」
「むぅ……」
「言えよ」
「な、何であんたなんかに……」
「俺は言ったんだ、お前も言ってそれでお相子だろう?」
 俺は勝ち誇ったようにそう言ってやった。
 しかし、相手が全く想像できないな。

80ガール・ミーツ・ガール92 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:57:51.58 ID:Ip/vV4iQ0
「……」
「ほら、言えよ。誰にも言わないからさ。あ、俺の方のも誰にも言うなよ、例えバレバレ
だとしてもさ」
「絶対に、言わない?」
「ああ、言わないよ。第一言っても信用されないだろうしな」
 あの涼宮ハルヒに好きな相手が居る。
 北高特大スクープも良い所だが、意外すぎて誰にも信じてもらえないだろう。
「すぐ忘れなさいよ」
 どうやら、本気で言う気になったらしい。
「……記憶を抹消する努力はさせてもらう」
 ハルヒが忘れて欲しいって言うなら、その努力くらいはしてやるさ。
 こんなことを聞けるってだけでも意味が有るからな。

 ハルヒが、徐に立ち上がり、つかつかと大股で歩いて俺のそばまでやって来た。
 何だ、一体。
「良い、耳かっぽじって良く聞きなさいよ」
 そんなことしなくても、この超至近距離なら絶対に聞き逃さない。
 ていうか、鼻息が耳にかかるんだが。

「あたしが好きなのは――!!」

 世界が、暗転した。

81ガール・ミーツ・ガール93 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:58:24.41 ID:Ip/vV4iQ0
 回ったのが自分なのか世界かなんてことは、この際どうでも良い。
 目を空けたら

「ああ、気がついたようですね」

 何時もの爽やかスマイルが目の前に居た。

「……ここは?」
 見知らぬ部屋、誰かの家のリビングか何かのようだが、少なくとも閉鎖空間や亜空間で
はないようだ。
「長門さんの部屋です。5人バラバラな地点に回帰しそうだったのを、長門さんの力で全
員ここに集めてもらいました」
 さすがだな宇宙人、そんなことまで出来るのか。
 いや、そういう問題ではなくてだな……。
 というか古泉、お前は何故半端に視線を逸らす?
「ふぇ〜ん、キョンさん〜」
 ひしっと、俺に抱き着いて来る朝比奈さん。
「無事だったんですね」
「はい〜、ごめんなさい〜、あたし、涼宮さんの機嫌を損ねちゃって……、キョンさんの
次の衣装、ナースかチャイナ服かで喧嘩になっちゃって……」
 そんな理由で閉鎖空間を発生させたのか、ハルヒは。
 というか二人してそんな相談するなよな……。
「あ、あたしはチャイナ服派だったんですけど、今回は涼宮さんに譲りますね!」
 ……あ、頭が痛い。

82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:58:48.25 ID:vjdP8+I4O
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83ガール・ミーツ・ガール94 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 19:59:08.15 ID:Ip/vV4iQ0
 俺が朝比奈さんに纏わり疲れている間、長門はまだ眠っているハルヒをじーっと見てい
たままで、古泉は何だかちょっと居辛そうな様子でどちらも見ていないという状態だった。
「えっと、長門、ハルヒは……」
 朝比奈さんを引き剥がしつつ、長門に訊ねる。
「生命活動、精神状態とも正常の範囲」
「そっか、良かった……」
「亜空間での出来事は、全て夢と認識されるはず」
「少し可哀想な気もしますが、涼宮さんに現実を知られるわけには行きませんからね」
 そうだな……、ハルヒにとっては待望の不可思議体験のはずなんだが、今のハルヒには
それを受け入れる土壌が無さそうだからな。
 ああしかし、ハルヒは最後になんて言ったんだろうな。
 聞き逃したのが心残りと言えば心残りだ。

「恋する乙女は無敵」

 長門が、極々平坦な口調で言った。
 世界が……、停止しない代わりに、別の何かが停止した気がした。
「興味深い言葉」
 あ、あの……、長門さん?
 長門は俺の方を見上げたまま、古泉は完全にそっぽを向いていて、朝比奈さんは何とも
言えない微妙な表情だった。

「あの亜空間は……、最上位階層からだと、下の階層で起こったことが全て分かるという
仕組みだったようですね」

 目を逸らしたまま、古泉が答えた。

 ……。
 ……。
 ……ちょっと、待て。

84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:59:14.57 ID:Jh6WFNm+0
支援

85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 19:59:45.36 ID:Jh6WFNm+0
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86ガール・ミーツ・ガール95 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 20:00:01.13 ID:Ip/vV4iQ0
「涼宮さんが最初僕等の行動を全て知っていたのもそのせいで……、って、大丈夫ですか?

 適当に座ったままふらついていた俺の身体を、古泉が受け止める。
 ということは何か? あの恥ずかしいやり取りの数々を、ここの三人に聞かれていたと
いうことか?
 よりにもよって、一番聞かれたくない、聞かれちゃいけない相手に……。
「……忘れておく事にしますよ。本当は、長門さんに記憶操作してもらうという方法も有
ったんですけど、そうすると記憶の整合性が取れなくなりそうだと言われたんで、自力で
忘れられるよう努力してみる事にします」
「忘れるって……」
 ここで文句をつけるのは間違っている、と思う。
 でも……。
「別に現実での出来事を忘れるわけじゃないですよ? あなたと僕はSOS団の仲間でしょ
う。……そうですね、暫く待っていましょうか」
 ……。
「あなただって、不本意な告白に回答が欲しいわけではないでしょう?」
「……」
 俺は目を逸らした。
 古泉の言うことは、間違っていない。
 間違っていない、だから……。
「……忘れておいてくれ、今は。……後のことは、また後だ」
「了解しました」
 ゆっくりと視線を動かしつつ見あげてみたら、古泉はとても良い笑顔をしていた。

87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:00:18.76 ID:Jh6WFNm+0
支援

88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:00:50.32 ID:Jh6WFNm+0
支援

89ガール・ミーツ・ガール96 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 20:00:58.98 ID:Ip/vV4iQ0
 俺は古泉のことをとりあえず心の脇に置き、ハルヒが目覚めるのを待った。
 言い訳は考え済み、一応打ち合わせもしてある。
「ん……、あれ、あんた、何でここに……」
「ここは長門の家だ」
「有希ちゃんの?、どうしてあたしとあんたが有希ちゃんの家に居るの?」
 ハルヒがぱっと起き上がり、周囲を見渡す。
「あれ、古泉くんも居るの? みくるちゃんが居るのは分かるけど……」
「お前が倒れたのを見た朝比奈さんが、SOS団の全員に連絡を取ったんだよ。で、一番近
い長門の家に運んだんだ。皆に礼を言っとけ」
「そ、そうだったの……。あ……、ごめんね、ありがとう」
 ハルヒが、素直に頭を下げた。
 古泉や長門や朝比奈さんの労力に見合っているかどうかは分からないが、まともに頭を
下げてくれただけでとりあえずは良しとしよう。
「あたし、貧血だったのかしら……」
「多分な。ああ、歩けるか?」
「ええ、大丈夫よ」
「じゃあ送っていくよ」
「べ、別に良いわよ」
「さっきまで倒れていた人間がそんなところで遠慮するなよな。一人で帰してもう一度倒
れられたりしたら笑えないだろうが」
 俺自身もさっきまで気を失っていたんだが、それはこの際棚上げだ。
「……送ってもらうなら、あんた以外の人が良いわ」
 どうやら、ハルヒは俺には送ってもらいたくないらしい。

90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:01:41.82 ID:Jh6WFNm+0
支援

91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:02:06.23 ID:vjdP8+I4O
支援

92ガール・ミーツ・ガール97 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 20:02:20.28 ID:Ip/vV4iQ0
 すったもんだのやり取りの末、ハルヒは朝比奈さんが送っていく事になった。
 俺と古泉はバラバラに帰宅、長門はここが自宅なので動く必要は無い。
 帰り際、古泉と長門が消えた朝倉をどうするかと伝えてくれた。
 そう言えば、あいつにはもう会えないんだよな。
 俺の命を狙ってきたような奴だが……、会えないとなると、少し寂しいかも知れない。

 翌日、突然転校した朝倉が怪しいとか言い出したハルヒを、長門の遠縁だとか何だとか
言って古泉が丸め込んだのを傍目に見つつ、俺はこれから一体ハルヒにどれだけ嘘を吐か
ないといけないんだろうな、なんてことを考えてしまった。
 朝倉涼子みたいな奴が、また現れないとも限らないわけだし。
 そうしたら……、まあ、王子様と戦乙女とやらが何とかしてくれるんだろう、きっと。
 悪いが俺には朝倉みたいな連中に対処する方法は持っていない。
 だから、俺は別の方法で戦わせて頂く。


 ハルヒと言う名のトンデモ娘との、非日常的な日常、それが俺の戦場――。


 ……馬鹿馬鹿しいが、そういうことなんだろう。




93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:03:05.34 ID:Jh6WFNm+0
支援

94 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 20:03:42.38 ID:Ip/vV4iQ0
えーっと、後半色々端折っている気がしますが、本編はこれで一応終わります。
深夜か明日頃に、後日談めいたものを投下しに来る予定です。
長い話におつきあいありがとうございましたっ。

95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:04:37.84 ID:Xbs1wLpn0
乙彼デシター!!

GJ!!

96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:09:26.31 ID:HIdN6gL40 ?
考えてみると、ハルヒの好きな人って誰なのか分かりやすいような気がするのは俺だけか?

97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:10:46.73 ID:E/xiQ3reO
いい仕事
good job

神の仕事
god job

どちらを使うか、決めるのはお前等だ

98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:10:57.99 ID:Jh6WFNm+0
>>96
それがいいんじゃね?

99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:12:35.50 ID:HIdN6gL40 ?
>>98
そうだな

100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:15:20.61 ID:cRecrKlq0
乙!!

101コーヒーふたつW@作者 ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:18:28.47 ID:y3uXOx7DO
遅くなってすいません!

投下、良いですか?

102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:18:59.22 ID:mD2dkFXR0
>>101
おkですよ

103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:19:25.90 ID:vjdP8+I4O
コーヒーwktk

104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:20:03.32 ID:cWL/e/RN0
ハルヒの好きな人はシャミセン

105コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:20:21.89 ID:y3uXOx7DO
今、俺は全速力で自転車を走らせている。

学校を出たのが午後五時、ハルヒを送り終えたのが午後七時・・・
学校からハルヒの家まで二時間もかからないだろって?
まさか『朝比奈さんと約束があるから早く帰りたい』なんて言えないだろう。
だから、いつも通りに『あの販売機』に寄って、少し話をしてからハルヒを送り別れた。
そして、時計を見たら七時と言うわけだ。

学校からハルヒの家まで寄り道無しで40分・・・ハルヒの家から見て公園は学校の向こうだから・・・駄目だ、頭が回らないっ!


106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:20:23.08 ID:8TqE5qFi0
「それから」作者の人の作品がすげえ好き。非モテ童貞ですが
貴方の作品読むと本当に恋愛したような気分になります、ありがとう。

107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:20:33.24 ID:Jh6WFNm+0
さて
コーヒー:クリープ:砂糖=1:2:2
のコーヒーでも入れてこようかね…


108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:20:56.97 ID:LO9PcBjp0
wktk

109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:21:28.99 ID:cWL/e/RN0
あえてコーヒー:砂糖=1:8で。

110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:22:31.79 ID:vjdP8+I4O
砂糖直食い。

支援

111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:23:26.04 ID:cWL/e/RN0
あ、そろそろお月見イベントしてこないと。
行ってきます支援

112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:24:15.52 ID:v8jfeD2C0
コーヒー入りガムシロktkr

113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:24:16.69 ID:LO9PcBjp0
中秋の名月かぁ。今年は満月じゃないけどいってらっしゃい。 支援

114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:25:07.64 ID:sk1+rqohO
http://music5.2ch.net/test/read.cgi/musicjg/1160032873/

115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:25:32.02 ID:8dO7iQsXO
明後日は10月8日だな。


自演じゃない支援

116コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:26:25.63 ID:y3uXOx7DO
間に合うか、俺!



並木通りを抜けると、公園の入り口が見えて来た。

7時57分。

間に合ったが・・・恐らく朝比奈さんは待っているんだろうな。

俺は、入り口にある販売機で暖かいコーヒーを二本買うと、公園の中で待っているであろう朝比奈さんの元へ向かった。





公園に入るとすぐ、俺を背中から呼びとめる声がした。

朝比奈さん?

「キョン君・・・」

ああ、朝比奈さん!すいません、待ちました・・・よね?

「いえ、それほど待ってませんから。」

彼女はハニカミながら答えた。



117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:27:01.51 ID:Xbs1wLpn0
本日九時より

鶴屋少女の孤独投下

                  今夜、完結

118コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:27:05.88 ID:y3uXOx7DO
私服の朝比奈さんは、全身をデニムでまとめているものの、短いスカートとブーツがどことなく彼女らしさを物語っていた。

「あの・・・」

はい?

「旅行の話、気付いているでしょうけど嘘です。」

でしょうね。

いや、俺こそ・・・すいません。
なんだか、昼間は気が利かなくて・・・

「うんん!いいんですっ!大丈夫ですっ!」

あ、そうだ!これ、どうぞ?

俺は、さっき買ったばかりのコーヒーを朝比奈さんに渡す。

「暖かい・・。」

朝比奈さんの表情が和らぐ。

ところで朝比奈さん・・・
話して貰えます・・ね?


119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:27:18.40 ID:vjdP8+I4O
wktk支援

120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:27:38.62 ID:Xbs1wLpn0
あ、すみません

今はコーヒーwktkさせていただきます

121コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:29:18.72 ID:y3uXOx7DO
話して貰えます・・ね?

「はい。」

そう言うと、朝比奈さんは静かに目を閉じ深く呼吸をした。
そして、何かを決意した様に目を見開き語り始めた。

「キョン君!私、帰らなくてはならなくなりました。」

・・・なんとなく、そんな気がしてました。
しかし・・・一週間ですよね?

「・・・いえ・・・ずっと・・です。」

旅行は・・・一週間だって・・・

「明後日・・・私は旅立ちます。そして到着後に事故で『死に』ます。もちろん・・・本当に死ぬ訳ではないんですよ?でも・・・そうして、この時間平面から・・・消えます。」



122コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:29:59.71 ID:y3uXOx7DO
そう言い終わると、朝比奈さんは目を開いたまま、涙を流した。

唇を少し震わせながら、ただ静かに。

俺は、愕然とした。

そしてあの日、ハルヒを抱いてから少しだけ抱いていた不安が現実になってしまった事に震えた。

(原因は俺とハルヒか・・・)

それ以外には、おそらく原因は無い。


原因は、俺とハルヒですね?

「・・・はい。禁則事項で・・・あまり詳しくは言えませんが・・・涼宮さんとキョン君が結ばれる事で、私達の時間平面・・・つまり、ここからの未来が固定化されたんです。・・・私の・・・役目は終りました。





123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:31:35.82 ID:vjdP8+I4O
なんと…!

支援

124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:31:38.24 ID:mD2dkFXR0
支援・・・

125コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:32:01.06 ID:y3uXOx7DO
待ってください!
古泉はこの世にハルヒが存在する以上、自分の役目は終らないと言っていた!
そしておそらく長門も、と!
なのに何故!
あなただけが!?

「違うんです。」

え?

「私が、ここに来た目的は涼宮さん自身ではなく、彼女の持つ力の存在によって脅かされる時・・・いえ、未来のため・・・」

・・・。

「そして、古泉君や長門さんは涼宮さんそのものと今現在の世界を、安定させる為に存在している・・・」

だからって、なんで「死ぬ」んですか!
もっと、こう・・・転校するとか!

「私が転校したと言って、この時間平面上から消えたとして、涼宮さんは私を探し、会えることを望むでしょう?そして、私には永遠に会えない。わかります・・・よね?」

しかし・・・



126コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 20:33:02.14 ID:y3uXOx7DO
「完全な消滅こそ、最善の方法です・・・」

ハルヒは・・・みんなの気持ちは・・・どうするんですか。

「ごめんなさい。」

最後にそう呟くと、朝比奈さんは両手で顔を覆い静かに泣いた・・・。

つづく

127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:33:39.82 ID:vjdP8+I4O
支援

128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:34:28.80 ID:Xbs1wLpn0
続きwktk

朝比奈さん(´;ω;`)

129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:35:17.24 ID:vjdP8+I4O
乙!

続きwktk


苦くなったりしないよね…?

130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:37:08.07 ID:Jh6WFNm+0
ちょっと砂糖を

 d 単 位 で 買 っ て く る

131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:37:30.15 ID:mD2dkFXR0
胸が苦しい・・・支援

132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:44:04.06 ID:800F3ldwO
『知るか』からみくるの事が好きになってきてるんだ…!泣くぞおらぁ!!

133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:44:27.38 ID:v8jfeD2C0
タンクローリーでガムシロ買いに行って来る

134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:48:16.24 ID:Xbs1wLpn0
鶴屋少女の孤独、もうそろそろ投下準備に入りますね

135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:49:40.93 ID:CEBAnMuTO
甘派な皆さんには
つMAXコーヒー

作者さんには

つBOSS無糖ブラック

136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:51:19.63 ID:kuEX7QGb0
VIPで馴れ合いしてんじゃねえよ。きめーw

137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 20:59:23.14 ID:Xbs1wLpn0
鶴屋少女の孤独 投下開始します

138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:00:03.02 ID:Xbs1wLpn0
………
……


暗い空
雲に覆われた夜空

雨の音が、俺の呼吸音を消し去る
どれぐらい走ったのだろう

右足が痛い
松葉杖も持たずに、病院を飛び出た俺は、ただひたすら走り続けた
どこにも、鶴屋さんの姿は見えない

雨に濡れびしょ濡れになった服
身体が重くてたまらない

だけど、立ち止まるわけには、いかなかった

このどしゃ降りの中、今鶴屋さんは独りなはずだ
靴も履かず
病院の患者服のみで姿を消した鶴屋さん
暗がりで独り泣く姿が、脳裏に浮かぶ

139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:00:34.11 ID:Xbs1wLpn0
耐えられなかった
これ以上、鶴屋さんを泣かせたくない

悔しかった
どうして俺はずっとそばにいてやれなかったのだろう
学校なんて、休んでずっと傍に居てあげられれば……

いや、よそう
過ぎ去ったことにいちいちくよくよしてても、意味が無いんだ
今は、鶴屋さんを探さないと

身体の熱がどんどん奪われる
もうすぐ夏だと言うのに、手がかじかんで来る

ただでさえ、病み上がりな身体だ、体力が持つはずがない
だけど、鶴屋さんは、もっと

───どこに、行ったんですか、鶴屋さん


140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:01:26.79 ID:Xbs1wLpn0

「ぐぁっ」

右足に走った激痛で思わず転んでしまう
くそっ、何やってんだ、俺は

長門や朝比奈さん、古泉やハルヒの制止を今度こそ押し切って飛び出た
そんな自分に、嫌気が差す
そうだ、長門だったら今どこに鶴屋さんがいるかなんて、すぐにわかったはずだ
それなのに、それなのに俺は何も聞かずに……

「もう、諦めるの?」

え?
「あなたにとって彼女との約束はその程度の人なの?」
なんで
「ちょっとがっかりかなぁ……」
なんで、お前がここにいる?
「立ちなさいよ」
目の前の人物が俺を見下ろす

───朝倉、涼子


141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:02:00.80 ID:Xbs1wLpn0
「なんで、お前がここにいるんだ」
「別に、大して意味はないわ」
「じゃあ、なんで」
「私の元々の任務は長門さんのバックアップ」
長門の?
「長門さんは涼宮さんのところにいるの、急にあなたのところに現れたら変でしょう?」
「……確かに」
「だから代わりに私が再構成して派遣されたわけ」
「だけど、お前は」
「安心して、今の私にはプロテクトがかかってるから、あなたを傷つけることはできない」
「そう、か」

俺の意識が朦朧としてきた

「過剰疲労ねぇ」
朝倉が呟くのが聞こえる
「私が運んでいってあげようか?」
「……いや、いい」
俺は朝倉の言葉に拒否の返事をする
その言葉に裏はないだろう
だけど、俺は俺自身の足で鶴屋さんの元に行かなきゃならないんだ
だから

「じゃあ、立ちなさいよ」

142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:02:48.17 ID:Xbs1wLpn0
朝倉は表情を変える
「あなたが守ってあげるんでしょ」
「ああ」
「こんなところでくじけちゃダメ」
「ああ」
「ああ、か……」
朝倉は目を瞑って苦笑する
「朝倉?」
「彼女の居場所だけ、教えてあげるわ、それならいいでしょう?」
「……ありがとう」
「いいの、前のお詫びだから」
「そうか」
「そうよ」

「彼女は、今────

143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:03:10.13 ID:awyFM3I90
支援

144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:03:27.45 ID:Xbs1wLpn0

───暗い廊下を、痛む足を引きずりながら進む

静寂に包まれた中に、俺の足音だけがこだまする
廊下に俺の服に染み込んだ水が雫になって落ちる

誰もいないの夜の校舎
廊下をびしょ濡れにしながら俺は歩いていた

廊下がびしょ濡れなのは俺のせいだけじゃなかった
鶴屋さんはここにいる、確実に
薄暗くてよく見えない
だけど、廊下の床にはまるで道標のように誰かが通った痕が残っていた

雨で濡れた証の水たまり
何度も転んだのだろう、泥のかたまり

そして、ケガをしたのだろう、血の痕が残っていた

その痕を足を引きずるようにして歩く
今度こそ、あの約束を守るために

145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:04:11.27 ID:y3uXOx7DO
支援

146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:04:30.90 ID:Xbs1wLpn0

─────ガラガラ

2階の教室に入る
ここは、そう

あの日、あの時、二人で夕日を見た、あの教室
鶴屋さんの弱さを知ったあの日の、あの教室

窓からは、朝が近づきわずかに明るくなる空が見える
いつの間にか、雨は止んでいた

そして

「鶴屋さん!」

いた

教室の真ん中に
びしょ濡れの患者服一枚羽織っただけの、鶴屋さんが

147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:05:33.74 ID:vjdP8+I4O
支援

148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:06:08.73 ID:Xbs1wLpn0

裸足のままここに来たのだろう
血が出ている
細く、女の子らしい小さな足
それは血と、雨の雫と、泥で汚れていた

俺は鶴屋さんに近づいた

「───ョンくん」
「つる、やさん?」
「ごめんよ、キョンくん!」
「鶴屋さん、記憶が?」
「ごめんよぅ!ずっと、ずっと謝りたかったさ!」
鶴屋さんは俺に抱きついて大粒の涙を流した

149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:06:14.43 ID:ZZDRq7Uo0
wktk支援

150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:07:10.10 ID:uwEOBmz8O
wktk

151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:07:22.77 ID:Xbs1wLpn0
「私、キョンくんにずっと優しくされたのに、私のせいで、キョンくんが事故にあって」
「……」
「それなのに、私が記憶をなくしてる間も、ずっと励ましてくれて」
「……」
「私、私ずっと謝りたかった!」
「……」
「でも、怖かったんさ!キョンくんの優しさが!見捨てられるのが!ごめん、ごめんよ!」
「鶴屋さん」
「嫌いに、嫌いにならないで欲しいさ!私を独りに、しないで!」

「鶴屋さん!」

気がついたら俺は、大声を出して叫んでいた
鶴屋さんは驚いて口を閉じる
「……」
「俺は、そんなに薄情な、人間じゃないですよ」
「キョン、くん」
「俺にとって、鶴屋さんは、大切な仲間の一人なんです」
「……」
「こんなことで、嫌いになんて、なりませんよ」
「でも、私、私はキョンくんに、何もしてあげられたことがなくて」
「そんなことはないです」
「あ」
鶴屋さんを抱き寄せる

152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:07:36.74 ID:y3uXOx7DO
泣きながら支援


最近涙もろい


駄目だ俺

153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:07:38.04 ID:vjdP8+I4O
支援

154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:08:14.61 ID:4V9vhDDQ0
支援

155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:08:40.33 ID:Xbs1wLpn0

そうだ、そんなわけがない
鶴屋さんのおかげで、皆笑ってられたこともある
鶴屋さんのおかげで、何度も助かったことがある
それに、何より──


───その笑顔は皆に元気をくれた


「だから、だから鶴屋さんは笑っていてください」
「キョンくん」
「どうしても、辛いとき、悲しいときがあったら、俺も、一緒に泣かせてください」
「……」
「どうしても寂しいときは、俺を一緒にいさせてください」
「……」
「だから、だから、一人で全部抱え込まないでください」
鶴屋さんは、泣き止んで、俺の顔をじっと見つめていた

156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:09:31.65 ID:y3uXOx7DO
支援

157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:09:44.15 ID:vjdP8+I4O
支援

158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:10:43.49 ID:4V9vhDDQ0
wktk支援

159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:11:47.21 ID:Xbs1wLpn0

「俺に、もっとたくさん、鶴屋さんの弱いところを教えてください」

「ほんとに、いいかい?」
「もちろんですよ」
「ごめん、ごめんよ」
「謝らなきゃいけないのは俺のほうです」
「え?」
「ずっと一緒にいるって、約束を守れませんでした」
「……」
「だから、ごめんなさい」
「ううん」

俺は鶴屋さんの両肩に手を置いて、鶴屋さんに向き直った

160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:12:28.06 ID:vjdP8+I4O
支援だ

161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:13:16.30 ID:Xbs1wLpn0

「それでも、一緒にいさせてもらえますか?」
「一緒に、いてくれるかい?」
二人が同時に想いを語る

急に視界が明るくなる
街の向こうから、太陽が顔を覗かせる
その眩しさに、俺は思わず瞳を閉じた
そして───



     ───鶴屋さんが俺の唇を奪った



「へ?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまう

「ずっとわがままを聞いてくれたお礼、さ」
眼を開けると、鶴屋さんはそう言って笑った

それにつられて、俺も、笑った

162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:13:57.61 ID:Xbs1wLpn0







       「やっぱり、笑顔の方が似合いますよ」








163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:14:13.21 ID:vjdP8+I4O
甘く…

支援

164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:14:32.42 ID:Xbs1wLpn0
夕焼けから始まった物語
二人を紡ぐ物語

二人は泣いた
二人は笑った

互いに、互いが必要だった
そして想いは重なった

そして今また
朝焼けが新たな物語の幕開けを語った







‐ 鶴屋少女の孤独 SIDE.D. fin -

165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:16:04.03 ID:800F3ldwO
泣きながらしぇん

166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:16:15.51 ID:vjdP8+I4O
GJ!!

感動した…
。・゚・(ノД`)・゚・。

167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:17:06.31 ID:Xbs1wLpn0
以上、Side.D.「明日」の終わりとともに、鶴屋少女の孤独は終わりです
最後、ちょっと展開が早かったですね

でも、かなり満足したできになりました
ここまで読んでいただき、ほんとにありがとう

外伝的な後日談も、もしかしたら書くかもしれません


では、またお目にかかりましょう

168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:20:14.81 ID:ZZDRq7Uo0
GJ!!!!
途中で朝倉がでてきたのに驚いた。鶴屋さんも好きだがもっと朝倉スキーな自分にはたまりませんwww

外伝にもwktk

169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:23:26.77 ID:y3uXOx7DO
>>167
極上の感動をありがとうございました!!

170コーヒー@作者 ◆2xLpx6qEVE :2006/10/06(金) 21:31:44.03 ID:y3uXOx7DO
すいません、鶴谷少女の支援に回ってしまい御挨拶が遅れました。

本日も、たくさんの支援ありがとうございました。

少しだけ苦目になって来たかとは思うんですが、必ずハッピーエンドにします!
甘党の諸氏には今暫く御容赦の程を、、、

それと、みくるファンの皆様!申し訳ありません!今だけ!今だけ勘弁してください!

続きは明朝、できれば今夜この後書きます。

171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:34:13.64 ID:Xbs1wLpn0
>>170
wktkしてます

172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:35:13.67 ID:vjdP8+I4O
>>170
甘いやつ期待しています!

173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:44:27.78 ID:KP17OvifO
保守

174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:54:30.27 ID:IvIeVm71O
鶴屋さん、コーヒーさん、乙です!!

コーヒーさん、さらに甘く頼むっすww
鶴屋さん、感動しました!!

GJ!!!!

175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 21:54:42.90 ID:cRecrKlq0
保守

176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:04:45.88 ID:KP17OvifO
人いない&まとめ重い保守

177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:09:59.45 ID:Ip/vV4iQ0
保守

178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:16:40.01 ID:0+ur4+PJ0
hosyu

179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:24:30.72 ID:Q7/2oZRH0
鬱モノみたいなヤンデレっぽいのを書いたといった

7時くらいの者ですが、どうしようもなく打ち込むのが

遅いことに気づき今日中にまとめられそうにありませんので

かけたところまで投下します

180彼岸花 :2006/10/06(金) 22:25:10.32 ID:Q7/2oZRH0
秋の放課後、私は一人部室から窓の外を眺めていた。

角度のせいで、グラウンドはまったく見えずガラスの囲いに区切られた空
だけがゆっくりと流れている。

『みんな薄情よね、せっかく団長が戸締りするって言ったんだから、待っ
ててくれてもいいのに』

などとついさっきの行動と矛盾した思いを抱きながら私は、パイプ椅子より
はましといった安っぽい回転椅子にアグラをかいていた。

ぼうっと茜色の空を見ているとふとさっきの事が思い出される。

何故言ったかは解らない唯そういう気分だったとしか言いようの無い位に、
些細なことを私は言ったつもりだった。


181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:25:23.51 ID:vjdP8+I4O
wktk

182彼岸花 :2006/10/06(金) 22:26:07.33 ID:Q7/2oZRH0
「今日は、私が戸締りして帰るわ」

皆の動きが一瞬だけ止まり、こっちを向く
一人は無表情に、もう一人は何時もの微笑に少々の困惑を交え、
もう一人も狐につままれたような顔をして
そして、あと一人は興味なさそうに面倒くさげな顔をしていた。

「どうしたんですか涼宮さん、私今日は別に用事なんてないですよ」

と言う、みくるちゃんの戸惑いに満ちた声が私には無性に腹立たしい。
別に変なことを言ったわけじゃない、ただちょっとした親切心で言った
事に何故疑念を持たれなければならないのか、そりゃあ私はいつも
傍若無人な振る舞いをしているかもしれないわよ、でも親切で言った事
を疑われる程の悪人じゃあない。


183彼岸花 :2006/10/06(金) 22:26:57.40 ID:Q7/2oZRH0

「何、私がそんな事言ったら変なのかしら、そりゃあ――」

「おいハルヒ、朝比奈さんはそんな意味で言ったんじゃない、そう
ケンカ腰に言うこともないだろ」

若干のあきれと怒気とを含んだ声が遮る。
またか、なんで私がみくるちゃんに突っ掛かるときだけこんなに
反応が速いのよ、いっつもぼけっとしてるくせに。

「解ってるわよ、とにかく今日は私が戸締りするからさっさと
帰りなさい。」

そのまま私は憤然として椅子に座り外を向く。
キョンの半ばあきれたかの様なため息が聞こえ悲しかった


184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:27:06.86 ID:vjdP8+I4O
支援

185彼岸花 :2006/10/06(金) 22:27:33.72 ID:Q7/2oZRH0
そしてそれから私はずっと空を眺めてる。

青と白のコントラストが気が付いたときにはもうすでに黄昏時に
変わり、小春日和の温かさも消え失せ少し肌寒い。

何故――
私はキョンを愛してる。
この世界中で誰よりも。
なのに何故キョンは私に優しくさえしてくれないの、ううん違う
キョンは優しい、でもそれは社交儀礼的な優しさ。
私はそれ以上が欲しい、誰にでも与えられる優しさじゃない、
慈しんで、愛して、抱きしめて欲しい。

186彼岸花 :2006/10/06(金) 22:28:06.84 ID:Q7/2oZRH0
でも違う
『私じゃない』

私は椅子を回し誰も居なくなった部室を眺めた。

そうすると地味な色彩の部室の中で一際異彩を放つ場違いな服の
数々が嫌でも目に入る。

あの女、あの女だけがキョンのトクベツな優しさを受けている。
今日の事を思い出すと、そう思えてしまう
でも、そんなことある筈がないキョンがあんな売女に惹かれるなんて、
ただちょっと欲望持て余してあのいやらしい身体が気になるだけ、
キョンも男の子だしね、でも結構傷付いちゃうよ私スタイルには
自信あるのに。

187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:28:07.56 ID:vjdP8+I4O
早い

支援

188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:29:25.57 ID:Ip/vV4iQ0
支援

189彼岸花 :2006/10/06(金) 22:29:59.81 ID:Q7/2oZRH0
あの夢、ううん夢じゃない、だって今でもはっきりと覚えてるもの
キョンに握られた手の暖かさ。
抱き寄せられた肩の感触。
そして――
奪われた私の唇
目が覚めたときは戸惑ったけど、私には解るあれは夢なんかじゃない。
何故と言われると返せないでも解るあれは、現実。

私は一人納得し、カバンをとって部室を出た。

190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:30:32.01 ID:vjdP8+I4O
wktk支援

191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:30:51.86 ID:OYcUpw9g0
支援

192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:30:53.04 ID:mD2dkFXR0
支援

193wktk!さるってまだあったけ? :2006/10/06(金) 22:31:11.67 ID:iTVEWZmH0
キョン 「―――鶴翼、欠落不」
     「――――心技、泰山至」
     「―――心技、黄河渡」
      ―――唯名、別天納
      ―――両雄、共命別・・・・!!」

ハルヒ「何時から魔術師になったのよ、キョン」

194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:32:10.58 ID:vjdP8+I4O
さるがあるから支援してるw


支援

195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:32:56.24 ID:r2w8xa2z0
支援

196彼岸花 :2006/10/06(金) 22:33:01.72 ID:Q7/2oZRH0
茜色の光に照らされながら、私は一人坂道を下る。

もし…もし横にキョンが居てくれて手をつないで一緒に帰れたら等と
妄想する、ただそれだけで胸が熱くなる。

『ああだめだ、一人だからって』

私は妄想を振り払い景色を見ながら歩みを進める。

ふと、土手に彼岸花が群れて咲いているのが目に留まった。
嗚呼そういえばもうそんな季節なのかとちょっとした感慨に浸りながら
花々に近づく群れて咲いている彼岸花の中には、まだつぼみであったり
頃合を過ぎ紫がかって白んでいる物もあった。

197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:33:03.43 ID:LCaVSh35O
しえん

198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:33:50.46 ID:vjdP8+I4O
支援!

199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:33:56.09 ID:Ip/vV4iQ0
しえんしえん

200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:34:03.81 ID:Jh6WFNm+0
支援

201彼岸花 :2006/10/06(金) 22:35:45.52 ID:Q7/2oZRH0
私は無意識の内にその中で一番綺麗に咲き誇っている者を捜し、それに
目をやった。
細く華奢な花弁が魅せる儚さ、紅と豊かな弧が描き出す妖艶さに、私は
しばし見惚れた。

妖艶な肢体、庇護欲をそそる華奢さどちらも私が持ち得ようのない魅力。

しかしそれを両方持っている女の姿が脳裏に浮かぶ、朝比奈みくる、
あの女の姿が――
あの売女どうせあのいやらしい身体でキョンを誑かそうとしてるんでしょうけど、
キョンはあんたみたいな卑しい女なんて相手にしないのよ、今かまってもらえて
るのはキョンがどうしようもなく優しいから、無視したらあんたがあんまりに哀れ
で可哀相だからよ。

202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:36:41.17 ID:vjdP8+I4O
恐いな…

支援

203彼岸花 :2006/10/06(金) 22:37:42.27 ID:Q7/2oZRH0
そして彼岸花とあの女のイメージが重なる、すると何故だろうつい先程まで美しく
見えていたものが急に吐き気を催す程、醜悪で邪悪な物に見えてくる。

私はその一番に咲き誇っている彼岸花の茎に手をかける。
たいした力をいれずとも茎はポキンと心地よい音を響かせ折れた。
そして茎からは毒が一滴零れ落ちる。
まるであの女そのもの、私には解るどんなに上っ面だけ取り繕っても
あの女は異質。
汚らわしい。何よりそんな女がキョンに媚を売っているのが気に入らない、
おまえなんか場末の浮浪者がお似合いだ。

手に持っていた花をぱっと離す、それは空気の抵抗を受けゆっくりと
アスファルトの上に落ちる。
私はそれを下卑た眼差しで見つめながら、革靴の上からでも潰れる感触
が解る位にゆっくりと嬲る様に踏み潰す。
水気のある気持ち悪い感触が足下にひろがる、侮蔑がさらに大きくなり
私はそれを足で磨り潰す。
何度も何度も何度もあの女の顔を其処にうつしこんで。

204彼岸花 :2006/10/06(金) 22:38:23.53 ID:Q7/2oZRH0

そうして気がついた時には、それはもはや原形を留めておらず、紅と緑とが混じった
良く解らないモノとなっていた。

その無様で醜い姿をあの女に結びつける、すると自然と笑みがこぼれて来る。

あんまりしつこいならあの女もこうしないとね、でないとキョンが可哀想だもん。

清々しい気分で私は薄暗くなった坂道を下り家に帰った。



205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:38:44.74 ID:vjdP8+I4O
支援…

206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:39:16.04 ID:O1XNXjza0
支援だっぜ

207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:40:00.81 ID:KP17OvifO
キチ(ry


支援

208彼岸花 :2006/10/06(金) 22:40:12.23 ID:Q7/2oZRH0
以上です。

209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:41:00.76 ID:vjdP8+I4O
乙!

さて、みくるがどうなってしまうやら…

210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:41:16.35 ID:Ip/vV4iQ0
乙です。
たまにはこういうのもありかと。

211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:42:37.83 ID:IvIeVm71O
むぅ……なかなか興味深い作品だ。
GJ!

212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:42:56.45 ID:smnXYq8q0
乙です


213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:44:26.38 ID:r2w8xa2z0
この後の展開を想像して楽しむのも悪しからずや。
GJ!!

214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:50:15.48 ID:skUUasKq0
腹の下のほうにじわじわ来る。 しばらくなかった味。 乙です。

215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:52:00.25 ID:9MxxWhGhO
カカオ99%の予感

216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:53:33.69 ID:VK9Hp3b70
これは・・・
続きが気になる

217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:54:27.21 ID:Jh6WFNm+0
>>215
あれはプリンの対極だろ

218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:55:59.32 ID:jZszEw1v0
いや、なんかいいね、これ。
ダーク要素のみじゃ無い感じっていうか、
描写に深みがあるっていうか。

219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 22:59:48.18 ID:VK9Hp3b70
花を使ってるのが良いのかな
これによって、ハルヒの心情描写に深みが出てる希ガス

220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:07:39.61 ID:KP17OvifO
保守

221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:17:20.12 ID:vjdP8+I4O
保守

222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:18:37.59 ID:jZszEw1v0
そうかもしれないな。
そのおかげで抑制の利いた文章になってるように思える。

223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:22:56.10 ID:xDxF7PPS0
タレント人気投票です 平野綾に清き一票をお願いします

http://ime.nu/www.kitro.com/~kitro/cgi-bin/choice715/index.html

PCでの投票のみとなります、ご了承ください
また、新たな刺客を送り込むこともできます
(2時間置きに再投票可能となっております)

224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:26:34.92 ID:d/CvNbRAO
彼岸花の人GJ!スバラシイ
みくるサイドもみたい、みくるも黒いみたいな

225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:34:01.33 ID:szCbqvyT0
いいなぁ
こういう、女の暗い部分がでているのっていいよ

226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:44:19.35 ID:vjdP8+I4O
保守

227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:45:39.76 ID:XBHOpTOP0
ハルヒの力で、朝比奈さんがぐちゃぐちゃにされていた、とか......そんな電波を受信した。鬱。

228 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:52:16.98 ID:Ip/vV4iQ0
みくるもの投下します。
7レスです。

229上級生下級生1 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:53:13.57 ID:Ip/vV4iQ0
「ねえみくる、たまには上級生らしい事をしてみたいと思わないかい?」
 帰りがけに、鶴屋さんがそんなことを言い出しました。
 今日は鶴屋さんと二人きりで帰宅です。
 何時もSOS団の皆さんと一緒なんですけど、今日はわたし達の学年だけ補習が有ったん
で、皆さんとは別行動なんです。
「上級生らしい事、ですか?」
「そうそう、上級生らしい事さ。みくるってさ、SOS団の中じゃ唯一の上級生だろう? 
それなのに、上級生らしい事ってしてないみたいだし。そういうあたしも、あんまりして
ないわけだけど」
 鶴屋さんが説明してくれます。
 そういえば、あたしは皆さんより上級生でした。
 SOS団は涼宮さんが団長で、古泉くんが副団長、キョンくんも割としっかりしている方
だし、長門さんは長門さんで頼りになるんでついつい忘れかけちゃいますけど、学年でみ
たらわたしだけが一つ上なんですよね。
 鶴屋さんは、SOS団の団員じゃないけど名誉顧問で、わたしと同じ学年です。
 でも……、二人とも、上級生らしい事は何もしていない気がします。
「何か無いかなっ、上級生らしい事」
「ううん……」
「週末に何か出来ればいいんだけど……」
 鶴屋さんが考えます。
 今週末はSOS団の皆と鶴屋さんという6人で、遊園地に行くことになっています。
 涼宮さん曰く、これも市内探索の一環らしいです。
 遊園地は市内じゃないんですけど、そんな細かい事は気にしない……、というあたりが、
涼宮さんらしいですよね。

230上級生下級生2 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:54:11.96 ID:Ip/vV4iQ0
「遊園地では、上級生も下級生も無いと思うんですけど」
「そっかなあ……、んじゃあ、お弁当を作っていくとか?」
「それって上級生と関係無いと思います、元々作っていく事になってますけど」
「ありゃ、そうなのか……。ああでも、みくるの弁当は楽しみだな。ハルにゃんや長門っ
ちに取られないようにしないとね!」
 鶴屋さんが手を振り上げます。
 わたし、お弁当にはそんなに自信ないんですけど……、でも、期待してくれるのはちょ
っと嬉しいかも知れません。
 長門さんと涼宮さんと鶴屋さんが居るから、たくさん作らないといけませんね。
 キョンくんと古泉くんという食べ盛りのはずの男子高校生二人が居るのに、それを差し
置いて女子高生三人の胃袋の心配をするなんて何だか変な感じもしますけど。
「しかし、遊園地が駄目なら普段出来ることかな?」
「そうですね。……ううん、でもなんでしょう」
「勉強を教えてあげるとか?」
「えっと……。それは、ちょっと無理だと思います」
 涼宮さんはすっごく頭が良いですし、長門さんはそもそも規格が違いすぎます。
 古泉くんは理系なので、彼が習っている事は一学年上の私にも分からないことだらけな
んです……。
 キョンくんは……、涼宮さんに止められそうですし、こっそり教えることは出来ますけ
ど、ばれた後が怖いです。
 わたし、隠し事ってあんまり得意じゃないんですよ? 
「ふうん、そっかあ……。けど、それ以外だと何だろうね」
「何かを教えるっていうのは、難しいと思うんですけど……」
「何か有るかなあ……」
 それかた、わたし達ふたりは色々言い合いながら坂を下っていきました。
 上級生と下級生。
 普段あんまり考えた事無かったんですけど、改めて考えてみると難しいですね。

231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:54:33.06 ID:Jh6WFNm+0
支援

232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:54:34.04 ID:skUUasKq0
保守

233上級生下級生3 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:54:58.73 ID:Ip/vV4iQ0
 翌日、部室に行ったらキョンくんと古泉くんだけが居ました。
 二人が向かい合って勝負をしています。
 今日はオセロかな? 初心に戻るという感じでしょうか。
 そうそう、涼宮さんと長門さんは買出しに行ってしまったそうです。
 何を買いに行ったんでしょうか?
 気になりますけど、二人にも分からないそうです。
 わたしは二人にお茶を注ぎました、それからのんびりと盤面を見ていました。
 特に何かすることが無い時は、こうやって二人の勝負を目で追っているんです。
 わたしにはルールが分からないものの時も有るんですけど、結構楽しいんですよ?
 結果は大体決まっているんですけど。
 オセロが終わり(予想通りキョンくんが勝ちました)、キョンくんがオセロを片付け、
古泉くんがダイアモンドゲームを取り出しました。
「朝比奈さんもどうですか?」
 古泉くんが誘ってくれたので、わたしも参加する事にしました。
 たまには、こういうのもいいですよね。

 駒を動かしつつ、わたしは二人の顔を見ます。
 古泉くんは真剣、キョンくんも今は割と真剣です。
 わたしは……、わたしも、二人と似たような表情なんでしょうか?

234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:55:04.85 ID:Jh6WFNm+0
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235上級生下級生4 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:55:34.96 ID:Ip/vV4iQ0
 ダイアモンドゲームは、劣勢の古泉くんとわたしが何時の間にか連合状態になっていま
したけど、結果としてはキョンくんが一番でした。
 古泉くんほど弱くは無いんですけど、わたしもあんまりボードゲームは得意じゃないん
です。

 ゲームをしまって、わたしがお茶を入れます。
 日はそろそろ傾いています。
「涼宮さん、遅いですね」
「今日はもう戻らないかも知れませんね」
「あれ、そうなんですか?」
「ええ、6時になっても帰ってこなかったら帰っていいそうです」
 そう言って、古泉くんは胸ポケットに入れていたらしい鍵を取り出して見せてくれまし
た。
 部室の鍵です。
 涼宮さんから預かっていたみたいですね。

 時刻は、5時45分。
 もう一勝負をするには、ちょっと足りないかも知れません。
 キョンくんがどこから取り出したのか文庫本を開きかけ、古泉くんがノートパソコンを
開きます。

「あ、あの……、二人にお話が有るんですけど、良いですか?」

 邪魔をしたら悪いような気もしたんですけど、わたしは、気になっていたことを切り出
すことにしました。
 昨日、鶴屋さんに言われたことです。

236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:55:35.97 ID:Jh6WFNm+0
支援

237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:56:10.29 ID:Jh6WFNm+0
支援

238上級生下級生5 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:56:10.79 ID:Ip/vV4iQ0
 涼宮さんや長門さんにはちょっと話し辛いですけど、キョンくんや古泉くんなら何か答
えてくれるかも知れません。
 本人に聞くのは反則かも知れませんけど。
「何ですか?」
「朝比奈さんの話なら、なんでも聞きますよ」

「え、えっとですね……。あの、わたし、たまには上級生らしい事がしたいと思ったんで
すけど。……、どうやったら、上級生らしいことが出来るでしょうか?」

 わたしは、思い切って問い掛けました。
 キョンくんと古泉くんが目を丸くして、それから、顔を見合わせます。
 あれ、あれあれ。
 わたし、変なこと聞いちゃったんでしょうか?

「……朝比奈さんは、普段から上級生らしいと思いますが」
「同感ですね、僕もそう思います」
 え、え、そうなんですか?
「お前と同感ってのは何か癪だな」
「そう言わないでくださいよ。まあ、とにかく……、特に気にしなくても、あなたはちゃ
んと上級生らしく振舞っていると思いますよ?」
 古泉くんが、そう言って片目を瞑りました。
 隣でキョンくんがちょっと嫌そうな表情をしています。

239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:56:41.33 ID:Jh6WFNm+0
支援

240上級生下級生6 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:56:49.93 ID:Ip/vV4iQ0
「そうでしょうか……」
「そうですって、俺が言うんだから間違い有りません」
「どんな根拠ですか、それ」
「五月蝿い古泉、混ぜっ返すな」
「もうちょっと筋道立てて説明する努力をしたらどうですか? まあ口で説明するのは少
し難しいことだというのには同意しますが」
「五月蝿いな、こういうのは雰囲気の問題で――」
「朝比奈さんは真剣な様子なのに、あなたはそれを雰囲気で誤魔化す気ですか?」
「だから――」

「ああん、喧嘩は駄目ですっ」

 言い合いになりかけた二人に対して、わたしは思わず大きな声で言ってしまいました。

「……すみません、朝比奈さん」
「……」
 キョンくんは謝罪してくれましたが、古泉くんは何故か無言でわたしの方を見ています。
 別に謝罪して欲しいわけではないんですけど、その訳知り顔の理由がちょっと気になり
ます。一体どうしたんでしょうか。
「……古泉くん?」
「そういうところは、上級生らしいと思いますよ」
「えっ、あ……。そう、ですか?」
「ええ、とても」
 古泉くんは、そう言って笑いました。
 隣のキョンくんが、やっぱり嫌そうな顔をしています。

241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:57:13.91 ID:Jh6WFNm+0
支援

242上級生下級生7 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:57:33.95 ID:Ip/vV4iQ0
 それから、その日は3人で坂を下りました。
 結局涼宮さんと長門さんは来なかったんですよね。
 買出しって何なんでしょう、気になるんですけど……、まあ、そのうち分かりますよね。
「あ、今日のゲーム、とっても楽しかったですよ」
 別れがけに、わたしは二人に向ってそう言いました。
「いえいえ、俺も楽しかったです」
「こちらこそ、また3人以上でやれるゲームが有ればお相手願いたいですね」
「はい、わたしからもお願いしますね」
 二人っきりで顔を突き合わせているキョンくんと古泉くんを見ているのも悪くないです
けど、自分が加わるのも悪くないですよね。
 あ、今度は涼宮さんや長門さんも一緒に出来ると良いな。
 毎日は駄目でも、たまになら誘いに乗ってくれますよね?

 それからわたしは、ちょっとだけいい気分で帰宅しました。
 古泉くんもキョンくんも、わたしのことをちゃんと上級生だって思ってくれているみた
いですし。どういうところがそうなのかも、ちゃんと言ってもらえました。
 本当は、喧嘩になりかけるような事態そのものが無い方が良いと思うんですけど……、
それはちょっと難しいんでしょうか?
 それとも、そこまで上手く立ち回ってこその上級生なんでしょうか?
 ううん、やっぱり難しいですね。

 やっぱり、上級生らしく振舞うためにはもっと頑張らないといけないかも知れませんね。

 キョンくん、古泉くん、涼宮さん、長門さん。

 みんな、大事な大事なSOS団の仲間で、大事な大事な下級生なんです。

 
 ―――おわり

243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:57:44.27 ID:Jh6WFNm+0
支援

244 ◆Gzo5DAjIoE :2006/10/06(金) 23:58:35.25 ID:Ip/vV4iQ0
以上です。
みくるがみくるらしく書けたかどうか不安なのですが・・・、
少しでもお楽しみいただければ幸いです。

245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:58:42.84 ID:Jh6WFNm+0
乙!!

246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/06(金) 23:58:45.48 ID:skUUasKq0
新鮮な生卵を白飯にかけて味の素をまぶしてかっこむぐらい美味しかった。 乙です。

247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:01:47.18 ID:ZKpdiZf60
いつ寝よう?
保守

248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:02:36.39 ID:lOj24U2/0
ほのぼのしてますね。乙!
命令口調でキョンを責めるみくるを想像した俺って・・・

249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:11:24.64 ID:/ltGfEjc0
投下まだかな〜

250コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:15:03.35 ID:x2XV5iMuO
Wの最後、投下行きますか?

251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:15:20.12 ID:ZKpdiZf60
ミ・д・ミ<ホッシュ

252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:16:38.74 ID:Zlaz9i1a0
>>244
正直お前の才能に嫉妬

253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:16:46.79 ID:prVJ4xLWO
wktk

254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:18:16.92 ID:lOj24U2/0
保守

255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:20:53.56 ID:Ul41dQCy0
wktkしつつ保守

256コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:22:09.45 ID:x2XV5iMuO
朝。

「ふっふっふっ・・・お土産は何を買って来てもらおうかしら?ねえ、キョン?」

自転車をこぐ俺の背中越しに、荷台に座ったハルヒが楽しげに語りかける。
まったく、自分が旅行に行くわけでも無いのに、妙に浮かれて・・・

そうだな、木彫のパンダなんかどうだ?

「あははっ、アンタ馬鹿ね?それ、なんて北海道土産よ?」

俺は、沈みきった気持ちをハルヒに悟られない様に笑った。


そう、今日は朝比奈さんが旅立つ日なのだ・・・


学校に着くと、ハルヒは何やら机に向かい始めた。


257コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:23:23.14 ID:x2XV5iMuO

何をやっているんだ?
「ふふん、みくるちゃんに渡す『お土産リスト』よ!今日はみくるちゃん、学校に来れないみたいだから後でメールするの!伝達事項は確実に!私の様な優れたリーダーシップを持つ人間ならではの当然の準備ね!」

そうか・・・。

ところでハルヒ・・・
「何?」

弁当忘れた。

「はあ?」

取りに戻るが、いいか?

「もう、しょうがないわね!アンタが抜けた分の授業のノートは後で写させてあげるから、早く行って来なさいよ?」

すまんな。

(本当にすまんな、ハルヒ・・・)


258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:24:16.29 ID:Ul41dQCy0
wktk

259コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:25:56.66 ID:x2XV5iMuO
俺は学校を抜け出すと、公園に向かい自転車を飛ばした。
一昨日の朝比奈さんの言葉が胸をよぎる。

『この事は私達二人だけの秘密にしてくださいね?本当に、お願いします。あと・・・もう一度だけ、この公園で会えませんか』


朝比奈さんは、「旅行の準備の都合で明日は」と昨日みんなに話していた。

俺に・・・何の用だ?
公園に着くと、俺は自転車を停め辺りを見回した。

まだ、来てない・・・か?

「キョン君っ!」

うおっ!

いきなり後ろから声をかけられて驚く!振り返ると、朝比奈さんが微笑んでいた。

そして・・・何よりも驚いたのは・・・

朝比奈さん!その・・・髪型!


260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:25:57.24 ID:2jeTq9OQ0
支援

261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:26:51.04 ID:qLwbdebf0
究極のキモスレを見つけたぞ
http://yy11.kakiko.com/test/read.cgi/news4vip/1159803007/

住人同士が喧嘩wしてスレが2分割
そのショックでスレ主(ぼかお)が出てこないwww
住人のみんなをVIPクオリティで慰めてあげて

以下、住人達のレス抜粋
---------------------------------------------
865 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 06/10/06 18:21:43 ID:ZRdKI9QT
ぼかお…今日こそちゃんと会いたい

866 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 06/10/06 19:07:01 ID:q5m188IS
ぼかおは愛されている
それだけで十分だ

870 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 06/10/06 21:09:47 ID:ht1wLTA+
今日はちゃんと来てくれるかな…

873 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 06/10/06 22:44:10 ID:ZRdKI9QT
ぼかおが来るのが当たり前だと思ってた。
ぼかおスレができて、毎日が楽しかった。
ぼかおが来ないのがこんなに切なくもどかしいなんて…

ぼかお…頼むから戻ってきてくれ…
最後の言葉がごめんなんて切なすぎるぜ…

262コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:27:24.55 ID:x2XV5iMuO

「へへへ、似合いますか?」

ハルヒと同じ髪型!

「少しだけ、歩きません?」

あ、はい。

俺は困惑しつつも、すっかり朝比奈さんに見とれていた。

しばらく歩くと、俺達は公園の中心にある噴水にたどり着いた。
噴水の畔に二人で座る。

「ねえ!」

はい?

「私たち、恋人同士に見えるかしら?」

突然の朝比奈さんの言葉に、心臓がとまりそうになる。

「ふふっ、冗談ですよ。」

悪戯っぽく笑うと、朝比奈さんは立ち上がり、噴水の周りのモニュメントに軽く飛び乗った。

少しおどけて見せながら続ける。



263コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:28:24.35 ID:x2XV5iMuO
「ねえ、キョン君?」
なんです?

「いつだか、私とはあまり仲良くしないで・・・って言った事あったでしょ?」

ああ、はい!

「あれは・・・ううん、もう解っていると思うけど・・・涼宮さんを刺激して、あの空間を産み出すのを防ぐ為だけでは無かったんですよ?」

・・・ですか?

「はい!私、あなたが好きでした!」

えっ?

「でも、結ばれない事も知ってました!」

あ・・・。

「キョン君!」



「今日は来てくれてありがとう!」

瞬間、彼女がフワッと宙を舞い・・・俺の目の前に舞い降りた。

えっ?


264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:30:05.06 ID:EnVUg20w0
支援

265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:30:35.66 ID:Ul41dQCy0
支援支援

266コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:31:07.14 ID:x2XV5iMuO
彼女の唇が、俺の唇に触れ・・・そして唇を離す寸前に 囁く

「 さ よ う な ら 」

っ!朝比奈さん!みくるさん!待っ・・・て!

行ってしまう・・・そう自覚した瞬間、彼女は






消えた。



267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:32:38.01 ID:EnVUg20w0
支援

268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:33:24.92 ID:lOj24U2/0
待ってくれ!!!

269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:34:07.94 ID:qK7NqeRr0
俺だけの朝比奈さんが・・・

270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:35:09.22 ID:LADWzsE20
最近みくるが実体化してきた支援

271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:35:33.37 ID:J0wV90rQ0
支援

272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:35:55.02 ID:rzvSDz3hO
うわぁぁぁぁぁぁ!


支援…

273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:37:50.19 ID:prVJ4xLWO
最近好感度上がってきたな

274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:37:50.20 ID:oROAvqNfO
支援。

275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:38:25.35 ID:bxbAEMquO
せめて最後に一発や(ry

276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:39:28.36 ID:1lWkEqibO
不謹慎

277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:39:37.06 ID:EnVUg20w0
最近みくるに人気が来てるな。ちょっと前のプリンスレでは考えられんw

278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:40:44.38 ID:qK7NqeRr0
そしてコーヒー2つさんも






消えた。

279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:41:52.37 ID:rzvSDz3hO
重いんじゃないか?

280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:42:07.97 ID:/ltGfEjc0
みくるに人気のチャンス到来www



長門は俺の嫁

281コーヒーふたつW ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 00:45:59.21 ID:x2XV5iMuO
♪何処で壊れたの
♪他人よりも 遠く見えて
♪指を つないだら
♪時がとまる 気がした

いつしか彼女が口づさんでいたメロディが

頭の中でグルグル回る
帰り道、俺は恥ずかしげも無く泣いた

泣きながら
ありったけの力で自転車をこいだ

おそらく 赤く腫れあがった目をしながら

教室へ向かう

そんな俺を見て
ハルヒが首をかしげる
埃が目にはいったのさ
「バカねぇ」 とハルヒがノートを差し出しながら笑う

そして何事も なかったかのように 一日を過ごすんだ

彼女との約束と明日来る悲しみの為に

W fin

282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:47:23.20 ID:bxbAEMquO
丁重に断る
空気読めなくてスマンが、鶴屋さんの孤独の人次回作はみくるの欝物ってのは本当?

283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:47:55.56 ID:rzvSDz3hO
乙…!


みくるぅぅぅぅ!!

284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:51:01.49 ID:Ul41dQCy0
乙です。
みくるちゃん・・・。

285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:52:25.28 ID:o/IXhiZe0
乙!!さあ、どうなる・・・wktk

286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:53:03.33 ID:ioqKAoHI0 ?
みくる人気すごいな。数ヶ月前までは空気だったのに、たいした出世だな。

287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:53:36.93 ID:x5KEImkQO
いくつか質問したいんです

今長編書いてるんだけど、エロパロにも同じ内容で重複投稿して大丈夫?
いや、エロはないんだけどあっちのSSに触発されたからうpしたくて、でもVIPPERだからこっちのが優先で…
とりあえずこっちに先にうpしようとは思ってるんだけどね

あと、都合上新キャラ作りたいんだけど大丈夫だよね
勝手なことして反感買うのいやだから

初心者房に助言を一つお願いしたい

288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:57:27.22 ID:q7JhaVUI0
みくるううううぅぅぅ(´;ω;`)ウッ…

289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 00:57:47.58 ID:cMl1081x0
>>287
荒れるだから重複投稿はやめたほうがいいと思う。

290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:00:43.57 ID:x5KEImkQO
はうあっ、投下直後でしたぁ…!
空気嫁なくてサーセンww

291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:00:55.80 ID:zWnp9BWD0
同意。多重投稿でいい結果が出たのを見た事ないからどちらかにしたほうがいい。
作品がどんなによくたって多分嫌な結果になると思う。

292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:01:53.46 ID:Zlaz9i1a0
>>287
重複投稿はマズい

新キャラは使いようによってウザがられたりそうでなかったり

293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:04:16.49 ID:hZQSEMBk0
>>287
>>289の言うとおり荒れるからやめたほうが無難。
エロパロのに触発されたのなら、あっちで投下したほうがいいだろう

後半については投下する時にオリキャラが出るって前書きしとけばいいが、
うざがれることが多い

294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:05:25.84 ID:fqMr0dSs0
ミクルゥ
と言い続けてる俺ガイル

295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:08:19.94 ID:x5KEImkQO
>289>291>292
了解、ありがとうです
やっぱびぱーとしてはこっち優先したいと思う
新キャラはうまくやってみます
やっぱ初心なもんで批評に耐えられるかが怖いwww

にしてもエロパロもまとめ見てるだけだから全然分かんないんだが、基本的にあんま仲良くないわけ?
それとも俺が無知なだけでなんか問題あるんかなぁ

296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:11:22.03 ID:x5KEImkQO
>293
これから世話になると思うし、こっちにしまっさ
基本的にそこまで新キャラは前に出す気もないんで大丈夫だと思うんだが…
書いてる間から不安だよ…ww

297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:17:37.81 ID:cMl1081x0
>>296
あんま深いことを考えずに
何事もなかったかのように投下しておくれ

298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:19:43.49 ID:zWnp9BWD0
個人的にはあっちは過疎ってるからエロパロに投稿してほしいけどな。元々、あっちの出だし。
新キャラ物で完結したのがほとんどないからやるなら最後まで責任持ってやって欲しい。それだけ

299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:27:50.15 ID:x5KEImkQO
もちろん一通り書き上げてから投下するつもりなんで完結はさせますよ
うん、とにかくがんばって日本語に書き上げなきゃ
本当にありがとうございました。
保守さんにあとを任せて寝る

300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:34:10.15 ID:sjjYSbZb0
こんにちは。
今長編書いてるんですが、投下はここでよいですか?
エロ系ではないです。
一通りは書いてあって、今推敲&校正中なんですが。
ページ数にすると暴走一冊分くらいです。

301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:37:16.87 ID:/uJYnCq60
>>300
いいんじゃない


302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:37:23.47 ID:8RuRx57K0
>>300
よいです。完成をwktkして待ってます!

303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:37:34.27 ID:rzvSDz3hO
>>300
例の500レスの人ですか?

304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:38:46.51 ID:zWnp9BWD0
>>303
俺も思った。でも、小説1冊じゃいっても150〜200レスだからな。

305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:40:26.68 ID:EqeW0vSKO
500スレ支援
眠りに落ちるまで支援してやるぜ!

306300 :2006/10/07(土) 01:41:24.50 ID:sjjYSbZb0
>>303 すいません、ここ来るの初めてなんで500レスの人ではないです。
1レスでどれくらいの文字数書けるんだろう・・・

307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:42:31.50 ID:rzvSDz3hO
まぁ軽く200レスはあると見積もっても、携帯から見たら気が遠くなるw

308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:43:04.04 ID:qg9gbqUw0
つきの > VIPなんて引き籠りのオタクの集まりでしょ? (23:05♂WinXP)
つきの > お前ら生きてる価値無いだろ (23:25♂WinXP)

ここの住人がVIPに敵対意識を燃やしてるお(# ^ω^)
vipperの力を思い知らせてやるお(# ^ω^)

309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:44:15.30 ID:zWnp9BWD0
>>306
1レスで30行・全角2048文字まで

310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:45:25.25 ID:qzdrT6tK0
>>300 今日投下予定ですか?

311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:46:42.39 ID:rzvSDz3hO
こりゃさる支援が大変だw

しかも500レスの人で無いだと?!

2作品で1スレ消化ぐらいか…

312300 :2006/10/07(土) 01:47:09.26 ID:sjjYSbZb0
>>309
了解です。ありがとうございます。

313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:48:46.15 ID:zWnp9BWD0
500レスの人は釣りじゃね?前に現れたの先週の土曜だし

314300 :2006/10/07(土) 01:49:28.81 ID:sjjYSbZb0
>>310
校正するだけでも泣きそうになっているので、もうちょっとかかります。
文字数カウントしたら、165332文字ありました。よくこんなに書けたもんだ・・・

315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:51:15.34 ID:rzvSDz3hO
>>313
マジで?

まぁ確かに今週投下無かったしな…

316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:56:57.25 ID:VpOngJlZO
もしかして一気に投下する?

317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:57:27.32 ID:zWnp9BWD0
>>314
すげえ……10月8日やパズル並みか……。

318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 01:59:14.57 ID:rzvSDz3hO
一気に投下されたら、読む暇がねぇw

もし1日20レスでも、結構かかるか…

319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:00:19.04 ID:Zlaz9i1a0
>>314
ちょwwwwww
こりゃ期待だな

320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:02:11.08 ID:EqeW0vSKO
>>314
うほっ
とりあえずwktk

321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:02:37.05 ID:ZDwJCOri0
>>314
16万てwwww何kぐらいなの?

322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:08:57.90 ID:hZQSEMBk0
>>314
1レスに入るのは行が30、文字が全角で2048文字。
それだけ長いなら出来るだけ1レスに詰め込んだ方がいいよ。
楽しみにしてる

323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:14:18.59 ID:eObExrT00
週末はすげぇなぁ……
いったい、いつになったら寝かせてくれるんだい?
wktkで俺、疲労困憊。未熟者……です。

324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:14:22.46 ID:dxK2chK+0
ところで


中身は何系なんだろ

325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:21:07.57 ID:qzdrT6tK0
300の人がもうしばらくと言うことのようですので6レスほど使わせていただきます。 
PDAの端末の試験も兼ねておりまして、少々お見苦しい可能性が
あるんですがご了承いただければと思います。

326ステビア(ステビオシド)1/6 :2006/10/07(土) 02:23:29.02 ID:qzdrT6tK0

昼過ぎに授業が終わったある日、
ごくごく自然な足取りであの空間に足を運ばせていた。

掃除の業者が入ったらしく、ごく僅かに薬品の臭いが残る部室にハルヒはもう到着していた。
俺は団長から少し遠い場所に腰掛ける。

換気をする為に開け放たれた窓からもたらされる風。
風にさらされ、なびくその髪を気にもせず団長はモニターの前で
行き場に困ったような動作で指をカチカチとしている。

「よ〜」っと挨拶から始まるいつもの会話。
そいつの嫌味と皮肉とわがままを体の中全てにいきわたらせる。
俺の皮肉と嫌味と説教じみた台詞をそいつにぶつける。
あいつはアヒル顔、俺はおなじみの4文字で確認する。

────かわらない。全然。

あえて言うならほんの少しだけ臭いが気になるな。
もう少し換気を。 俺はいつもの扉を開け放って固定する。


しばらくすると薬品の臭いもすっかり失せた。相変わらず他の連中はこない。
開け放たれた扉だけがいつもと少し違う空気を運んできた。
それはひどく心地の良いものだった────

眠いけど、眠くない。あー寝たい。寝たくないけど。

327ステビア(ステビオシド)2/6 :2006/10/07(土) 02:24:09.50 ID:qzdrT6tK0
「なぁ〜ハルヒ〜」
机に両腕をはわせ、頭を団長机に向けて言葉を紡ぐ。

「何よ!しゃきっとしなさいよしゃきっと!」

なぁ〜、ちょっと寝てもいいか〜
「何よ!夢の世界に遊びに行くの?こっちに持ってこれるなら許可するわよ!」
じゃ〜やめるわぁ〜
「・・・ふざけんなっ!」

飛んでくる三角錐のあれ。避ける気力も無く・・・命中。
「・・・いてぇ〜」
「ほら!どうしたのよ?あれ?あんた調子でも悪いの?」
額から何か流れるものを感じる。ふーむ、暖かいね。

「ちょ・・・血が・・・ごめ・・・ふん!そんなものすぐにでも治まるわよ・・・」
お〜気にしてないぞハルヒ〜・・・
「なんっか、あんたほんとに大丈夫?色々と・・・」
お〜う、今は何だか気分がいいんだ〜
「そうなの?」
お前もここで寝そべってみるといいぞ

「暇ねぇ〜あんたが・・・そういうならやってみるわ」

椅子から立ち上がり我が団における奉仕係専用の椅子を持ち近づいてきた。
そしてもぞもぞと体と椅子の位置を滑らせる。快適な場所を探す猫のように。
「猫みたいだなぁ〜」
「そうかもねぇ〜これは大発見ねぇ、・・・ぁあ」
目の前であくびをするハルヒ。そういや初めて見たな。あー俺も、ぁあ・・・

328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:26:22.66 ID:qzdrT6tK0
「んんっ〜」
伸びと弛緩を繰り返すハルヒ。俺はぼんやりとそれを見つめている。

「ねぇ〜」 なんだぁ〜 「ん〜これさぁ〜」 お〜 「ここがベストかしらぁ」 
自分で探せ〜 「ふぁあ〜・・・」

溶けていく言葉。溶けていく。
何故か自然と笑顔が生まれてきた。俺にもこいつにも。

「贅沢よねぇ・・・」 そうかもなぁ・・・「本当に贅沢よ」 そうだなぁ

のんびりと俺の額に手が伸びてくる。
「ごめんねぇ〜」 悪いと思ってないだろ 「ん〜・・・そうかも」・・・
「ね〜場所〜そっちがいい〜団長命令よ〜」 命令かよ
風の香りに心地よいものが混ざりはじめた。
なぁ〜・・・ 「んぅなによ〜」 近いぞ〜 「そ〜?」

お互い、自分の片手を枕にして向き合う。
「そこの場所のほうが良さそうに見えるのよ、変わりなさいよ〜」
お前が俺を動かしてくれ〜「あんたが動きなさいよ〜」

中途半端に浮かんだアヒルの一番潤った部分に指で触れてみた。

「ね〜」 なんだ? なんかど〜でもよくなってきたわぁ〜 そうだなぁ〜

ハルヒ〜  なぁに〜


好きだぞ
ダメね」

329ステビア(ステビオシド)4/6 :2006/10/07(土) 02:27:39.56 ID:qzdrT6tK0
<上のは3/6でした>


「・・・つまらないわ〜そんなのダメよ全然」
 そうだなぁ〜、俺もそう思うんだよ〜
「そうだったんだぁ〜・・・普通すぎよねぇ、キスでもしてみる〜?」
 それも普通だなぁ〜 「そうねぇ〜どうすればいいのかしらねぇ〜」

「ないなら作ればいいだろよ」
・・・そうねぇ〜発見王〜、一つになりたいとか、どうかなぁ〜
それもありきたりじゃね〜かぁ〜・・・

   ゆらゆらと延びる手が腰に回り始める。同時に俺は引き寄せる。
ゆっくりと近づき額と額を合わせてきた。枕にしていた手をぴたりと付ける。
 椅子の上にある体は唇以外の空間を埋めた。その状態で目を合わせる。



           あれ?  ・・・おいおい

330ステビア(ステビオシド)5/6 :2006/10/07(土) 02:28:17.28 ID:qzdrT6tK0
   ねぇ〜、なんでドキドキしてないの〜 おまえもじゃないかぁ〜

 ・・・これは不思議ねぇ〜、私の知識には無い状況だわ  不思議だなぁ・・・

お互いに鼓動を探し当てる。 どちらとも無く同じリズムに合わせる。


         消失していく。 自分のそれが。
         ハルヒしか聞こえなくなった。


      ねぇ〜私今いるの?  なぁ〜俺いるかぁ?

      俺はこれがいいなぁ  私はこれがいいわねぇ

  一つになったら出来ないねぇ  一つだったら分からないわぁ

               ・・・

          ぷっと同時に吹きだした。

331ステビア(ステビオシド)6/6 :2006/10/07(土) 02:29:17.46 ID:qzdrT6tK0
少し顔を離す。所在を確かめたくて。
「あんた、ほんと捻くれてるわねぇ」
「おまえもだ・・・素直じゃねーなぁ〜」
お互い、体も心も捻くれちまってるのかよ。

でも何故か笑顔はとまらない。

「なぁ、今何故かSOS団の事について考えてるんだけど・・・」
「奇遇ね、私もなのよ。困ったわね、どうでも良くないの」

「今のままでいいんじゃないか?これなら」
「・・・甘いわねあんた。鈍いのよ・・・」
「違うって、機関誌にだしたお前の論文・・・か?あれまだあるんだろう。」
「・・・あんた、あれ理解できるの?もうすぐ書ききる所だけど。」
「俺はSOS団が無くなることも壊れることも望んじゃい無いし
 信じてない。絶対にそうさせない・・信じられるか?」
「・・・・・・」

「ねぇ・・・いいわよ、便利な言葉つかっても、今ならいいわ」何だそりゃ?
「便利な行動とってもいいわよ・・・お願いだから」

     閉めるか?扉・・・  やらしいわねぇ・・・

─────────

────────

──────
バタン

332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:30:36.95 ID:qzdrT6tK0
以上です。お邪魔しました。 

333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:37:06.60 ID:hZQSEMBk0
いいね。俺は好きだよ。読んでて心地いい

334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:42:42.92 ID:eObExrT00
>332
G(ぐんにゃり)J!
なんというか、いい意味での「倦怠期」を迎えた夫婦という感じがしました。
お互いを良く分かってて、わざわざすべてを表現しなくても
予測変換で高精度に理解できるというか。
うまく言語化できないのが残念。

335以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:45:20.79 ID:zWnp9BWD0
よりによってこの時間帯にアナルが落ちたよ……

336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:46:50.24 ID:eObExrT00
>334
がんばって似たような感じを考えるに、
よく使い込んだ、手になじんだ日本語変換システム?
かゆいところに手が届く、あるいは「そうそう、それそれ!!」

やっぱり、うまく言語化できないなぁ。
よくこんな貧相な語彙でSSの真似事してるなと、自分で凹む。
とにかく。
こんな感じのも、また読みたい。和む。

337以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:47:02.08 ID:xEoMTEULO
今、保守しようと思ったのに…

338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:47:17.49 ID:ZDwJCOri0
>>332
俺は好きかなこういうの。やっぱり短文になっちゃうのは仕方がないのか?

339300 :2006/10/07(土) 02:51:05.65 ID:sjjYSbZb0
多分明日以降になると思いますので、期待せずにお待ちくださいm(_ _)m
中身は勝手に最終回系になります。いいのかなこれ?w

340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:52:23.73 ID:ZDwJCOri0
>>339
ちょwww同じもの書いてるじゃんwwww
内容が被ってないことを祈る

341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:52:38.71 ID:mrgkXDo00
アナル落ちてるな・・・・


342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 02:57:04.21 ID:9QMEwROs0
また落ちた

343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:02:58.36 ID:9QMEwROs0
そして此処も落ちる

344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:04:44.56 ID:Ul41dQCy0
保守保守
一ハルって需要あるんだろうかと書きつつ考える

345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:17:05.53 ID:SIpDeJqgO
バイトの休憩中に保守
眠いららららら

346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:17:16.25 ID:LBl7VPbW0
>>344
少なくとも俺には需要があるぜ、保守

ttp://www.uploda.org/uporg539679.jpg
これ見てロックバンド読み返したくなったぜ。演奏者は違うけど



347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:29:14.81 ID:zWnp9BWD0
まだ、起きてるから立てた。

http://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1160159212/

348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:45:12.34 ID:Ul94rReW0
保守

349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 03:55:08.62 ID:SIpDeJqgO
とりあえず保守

350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 04:01:37.39 ID:5j5Nl/k80
ホやシュみ

351ステビア(ステビオシド)out side 保守代わり :2006/10/07(土) 04:03:02.04 ID:qzdrT6tK0
はぁ〜、鶴屋さんお話止まらなかったなぁ。少し早足で部室に向かいました。すると、
廊下の途中でしゃがみ込んでいる長門さんがいました。なんでドアを開けて入らないんだろ?
少し不思議に思って近づいた瞬間に振り返って彼女は口元に指を当ててってそれ、私の真似ですかぁ・・・。

「・・・静かに」 あっ、今頃私の顔は真っ赤になってるんだろうなぁ。 小声で挨拶を続けました。
「こんにちわぁ〜、あの、長門さん、何をしていたんですか?」
お祭りで見た記憶のある団扇をもって、焼き肉屋さんに設置されている装置の上の粉?の前に屈んでいる。
「・・・・・・・香を焚いていた」いいのかな?学校なのに。でも長門さんがお香かぁ。ちょっと以外。

「長門さん・・・正直僕には瀟洒な光景にほど遠い空気を感じるのですが、その粉末はいったい何でしょうか」
不意に囁き声が聞こえて振り返ると古泉君がこちらを覗き込んでいた。笑顔の会釈に挨拶をしました。

「長門さん・・・先程部室の方が異空間化していたようなのですが、何かご存じではないでしょうか。」
少し困ったように肩をすくめる仕草にちょっと無粋な感じを受ける。む〜、お香の話したいのに。

「それが正常。いくつもの力場が重なり合って「僕の受け売りですし、あれを覆い尽くすような強力なものだったのですが」」
古泉君、人の話はちゃんと聞かなきゃだめですよ。って焦ってるのかしら。
「・・・すみません。信じられない位涼宮さんの精神が安定したので・・・そうですね、なんの香りだったんですか?」
やれやれとキョンくんの真似をする古泉君。あ〜長門さん、何かやってたのかな?

「・・・喜緑江美里から譲り受けた。本来彼女の任務であったが私が引き受けた」
「穏健派ですか。正直申し上げてある意味急進派の行動にも見えるのですが」
「古泉君は中で何が起こってるのか分かるんですか?あっ!」うそ・・・まさか・・・

「長門さん、睡眠薬はありませんかね」
「・・・処方する。ナノマシンでかまわなければ。・・・それと今日はこの七輪を使い魚を焼きシーフードカレー」
長門さん・・・焼き魚はシーフードカレーには使わないんじゃ。

「いきましょう」 少し疲れた古泉君。 無言でうなずく長門さん・・・に袖をつままれる。 ふぇ〜・・・・。

352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 04:17:36.35 ID:qzdrT6tK0
上の続き投下しようと思ったら寝てました。 明晩にでも投下できればと思います。おやしみなさい。

353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 04:32:07.77 ID:o/IXhiZe0
ほっしゅーれ & お休みなさいませ

354以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 04:32:57.18 ID:VpOngJlZO
おやすみの保守

355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 05:05:49.24 ID:DMR51BaOO


356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 05:22:07.82 ID:hm6lxn4qO


357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 05:50:18.85 ID:1lWkEqibO
谷口「国木田うめえwww」

358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 06:00:24.32 ID:oeAfjfSJO
保守

359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 06:12:01.57 ID:QrvSKAuJ0
プリンまっずーぅ
http://ime.nu/sakuratan.ddo.jp/imgboard/img-box/img20061007022450.jpg



360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 06:23:59.37 ID:LszC/RsK0
最近みくるんが可愛すぎて仕方がない保守

361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 06:34:15.80 ID:x2XV5iMuO
モーニングコーヒーは如何ですか?

362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 06:47:05.53 ID:/uJYnCq60
>>361
お願いする。砂糖たっぷりで

363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 06:59:55.36 ID:x2XV5iMuO
>>362
いや、ちょっと苦いかも

お好みで入れてね

つ【上白糖】







では、過疎感否めぬまま毎朝恒例の投下行きます!

前回は>>101辺りから

364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:00:58.86 ID:U2E4kpxhO
保守

365コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:02:04.02 ID:x2XV5iMuO
三時間目は物理・・・か。

テキストを机の上に揃えながら、俺は溜め息をつく。
別に、授業が憂鬱な訳じゃない。

今日、間違いなく何らかの形で告げられる一つの最悪なニュース。
それが、溜め息の理由の全てだ。

登校してから今まで、それは告げられずにいた。

しかし、確実にその時が迫るのが判る・・・

始業のベルが鳴る。

担当の教師が神妙な面持ちで教室へ入ってくる。

嫌な予感がした。

(今・・・来るのか・・・?)



366コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:03:47.17 ID:x2XV5iMuO
「・・・皆さんに、残念なお知らせがあります。二年の朝比奈未来さんが、旅行中の事故で亡くなりました。」

ザワつく教室。

俺も動揺したフリをする。
仕方ないとはいえ、今の俺自身を俺は許せない。

そうだ、ハルヒは・・・?

息を飲みながら振り返る・・・

ハルヒは目を見開いたまま、呆然としていた。

「残念ながら・・・国内の事故では無い上に御家族全員が亡くなられたとの事で・・・今後の・・」

壇上でうつ向きながら教師が語り続ける。

教室の中のザワつきが激しさを増して行く。


367コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:04:52.86 ID:x2XV5iMuO
俺は振り返ったまま、ただハルヒだけを見つめていた。













どれくらいの時が流れたのだろう。

気が付けば、教室には俺とハルヒ以外だれも居なくなっていた。

窓の外、グラウンドから野球部のかけ声が遠く聴こえてくる。

「アタシ、部室にいかなきゃ・・・」

突然、ハルヒはそう呟くと席を立って歩き始めた。

慌てて後を追う。

俺は、ハルヒを追いながら心の中で叫び続ける。

(なあ、朝比奈さん・・・いや、朝比奈さんを動かす未来の偉い人!こんなやり方、 正しい訳が無いだろ!なんとかしろ!なんとか・・・してくれっ!)


368コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:06:19.54 ID:x2XV5iMuO
部室には、朝比奈さんの来ていた数々の衣装がハンガーに吊され、在りし日のままになっていた。

それらを目にした瞬間、ハルヒは床に崩れ堕ちて・・・


泣いた。


俺は、ただ肩を抱いてやる事しか出来ない。

「っぐっ・・・ううう・・・信じないわよ・・・信じないんだから・・・」


気が付くと、俺の頬にも涙が流れていた。

もう、朝比奈さんに会えない事には・・・変わり無いんだよな。








あれから、何時間経ったのだろうか。

酷くだるい。

369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:09:58.58 ID:Cy+Y3NRRO
追い付いたとたん支援

370コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:10:19.80 ID:x2XV5iMuO
俺は床に座り、足を投げ出して壁によりかかり・・・そんな俺の胸にもたれかかる様にして、ハルヒは眠っていた。


ふと、人の気配を感じ部室の入り口に目をやる。

そこには、古泉が立っていた。
そして、いつの間に現れたのか、窓際には長門も居る。

よう。

おまえ達は・・・全て知っていたのか?
いや、知っていたんだろうな。

ただ、俺は・・・今回の事は言うべき時が来るまで、本気で言わないでいようと思ってたんだ。
何か、こう・・・朝比奈さんの立場がまずくなるような気がして・・・・




371コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:11:14.65 ID:x2XV5iMuO
古泉が珍しく神妙な面持ちで答える。


「結果的な部分で把握していました。
キョン君の判断は賢明だったと思います。
しかし、こんな野蛮な方法を彼等が用いるとは・・・」

「彼等」というのは、朝比奈さんをこの世界に送りこんだ張本人達を指すのだろう。

唇を噛み締める古泉をじっと見据えたまま、長門が続ける。

「彼等の認識には欠落した部分が有る。そしてそれは、この後起こりうる事態を悪化させる危険性を持つ。また、朝比奈みくるの召喚手段も適切では無かった。」



372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:11:18.35 ID:/uJYnCq60
支援

373コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:12:00.32 ID:x2XV5iMuO
つまり、ハルヒにとって朝比奈さんがどれほど大切な存在だったかを把握せずに、「役目が終わったから帰れ」「後が面倒だから死んだ事にしろ」って感じか?

「そう。」

どうなるんだ、この先一体・・・

「とりあえず、涼宮さんは、このままでは目覚めません。」


「そして既に、この世界は書き換えられつつあります。」

そういえば!
外からは、あれほど野球部や陸上部の掛け声が聴こえて来たのに、校庭には誰も居なかった・・・

ハルヒの仕業か?



374コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:13:01.00 ID:x2XV5iMuO
「例の閉鎖空間を生み出す瞬間と次元のズレ方が酷似しています。しかし、全くの・・・別物で、こんなのは初めてです。」

長門が窓際から離れ、廊下の方を指さす。

「この近く。急速に情報の連結と解除が繰り返されている空間がある。」

「そこが異世界への入り口ですね!」

長門が黙って頷く。

とにかく行くしかないな!

俺はハルヒを机の上に寝かせると、少し待ってろな・・・と呟いた。

つづく

375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:15:42.04 ID:/uJYnCq60
>>374
朝からお疲れ様

376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:17:53.95 ID:Gnz98/wYO
乙!
期待!

377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:18:25.88 ID:U2E4kpxhO
乙!
お前はどんだけいき殺しをすりゃ気が済むんだ?

378以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:18:44.90 ID:Cy+Y3NRRO
朝からGJ
シリアスってやつか?ワ…wktkしちゃう!!!!ビクビク……

379コーヒー@作者 ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 07:42:15.66 ID:x2XV5iMuO
おはようございます!
早朝からの支援、ありがとうございました。

当方、本日も勤務がありますので、いつも通りに昼過ぎくらいに再びお目にかかれるかと存じます。

ちなみに、第一部はTU V、第二部はWXのつもりで書かせて頂いています。

では、また後程

380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 07:48:57.57 ID:0JNRPxvt0
朝早くから乙

381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:01:30.66 ID:560kumgk0
Z

382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:04:03.64 ID:WYgGzDNi0
乙です

383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:11:11.12 ID:WYgGzDNi0
- 鶴屋少女の孤独外伝 SIDE.E. -

ある夏の夜
皆で時を刻む

海辺で皆で花火大会

俺は、ハルヒと結ばれて
鶴屋さんとは、ずっと親友

「ちょっと、夜風を浴びてくるさ」
そうやって一人席を立つ鶴屋さん

俺は黙ってその姿を見る
「何やってんのよ」
「へ?」
「行ってあげなさいよ」
ハルヒがそう言って俺をにらむ

「ああ、そうだな」

384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:11:55.77 ID:WYgGzDNi0
「どうしたキョンくん?」
「いえ、ちょっと俺も疲れただけです」
「……そっか」
「鶴屋さん?」
「キョンくんの嘘つき、ずっと一緒にいてくれるって言ったのにさ」
「ごめんなさい」
「……なんてね」

鶴屋さんはそう言って
夜の闇の中、俺を振り向く

「あっかんべ」

その笑顔はいつまでも変わらない



- END of END -

385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:13:59.82 ID:tfX2jztuO
ktkr!!!!!11
GodJob!

386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:19:54.36 ID:Gnz98/wYO
おぉおおおい!!
いまから学校行こうとしたのに遅刻確定!!

387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:20:48.48 ID:Gnz98/wYO
ってか終わったあああ!!
GJ!
そして学校イテクルノシ

388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:25:54.52 ID:q6JvjderO
乙!!!!
God Job

389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:28:21.69 ID:tfX2jztuO
SIDE.Dまで読み直したが鶴屋さんとは親友かあ…
原作的にもそうなるんだろうけど、この関係が一番しっくりくるね。うん。

390以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:42:26.79 ID:QwJBzq/F0
なんなんだ?この起き抜けからの
GJラッシュは・・・

も、今日仕事いかねw

391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:47:04.58 ID:xNKSx29x0
バイト終わった。スレ残っててよかった。
保守組み39。じゃなくて99!

392以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 08:58:14.68 ID:x2XV5iMuO
>>384
GJ

外伝ktkr!和みました〜

393LOST ◆jHhtPIEfFY :2006/10/07(土) 09:10:23.42 ID:cEJtgBFu0
4話

「あなたは涼宮ハルヒと交際をしている」
 ? なんだいきなりだな。

「だがそれは推奨できない行為。」
 なんでだ?まさか未来が変わっちまうとか言うんじゃないだろうな?
「その可能性は少なくない。しかし、危惧するべきところはそこではない」
「あなたが涼宮ハルヒと交際することにより、涼宮ハルヒが持つ能力が消え去る恐れがある」
「統合思念体は唯一の進化の鍵を握る能力を失いたくない」

 つまり別れろってことか?
「そう。交際をやめることを推奨する。」
 それなら統合ナントカ体に言っておいてくれ。自分たちの事ぐらい導かれなくても自分たちで決めるってな。

「わかった。しかし、統合思念体が考えを変更し監視を続ける可能性は極めて少ない。」
「万が一、が起こる可能性も少なくない。これは警告」

なんだと?万が一って事はまたあの時みたいに誰かにナイフでぐさーっとやられそうになるってことか?!

「そう。かもしれない。いずれにせよ統合思念体はあなたと涼宮ハルヒの決別を望んでいる。」
「どのような手段を用いても実行する確立は少なくない」

「これも、警告。具体的な手段は……現在は未定」

394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:10:29.69 ID:bxbAEMquO
みなさん朝早くから乙!!

395LOST ◆jHhtPIEfFY :2006/10/07(土) 09:11:48.16 ID:cEJtgBFu0

そういうと、長門は音もなく自分の教室へと帰っていった。リノリウム張りの床に日差しが差し込み始め
朝錬を終えた運動部の連中がぞろぞろと校庭に入ってくるのを目の端で捕らえていた。

「ごめーん。先生とまたもめちゃってさ…キョン?起きてる?」
ん?あぁスマンまだ目が覚めてないみたいだ。俺朝弱いからな
「しっっかたないわねぇ…」

     キス

「これで目を覚ましなさい。ホントは誰もいない教室でぎゅっってして欲しかったんだけどさ時間ないみたいだし」
 ありがとな。ハルヒ。

「なによ。改まってお礼なんていいわよ。昼休み一緒にご飯食べるぐらいで許してあげるわ!」
「このアタシの彼氏なんですもん。ソレぐらいのお願い聞いてくれて当然よね?!」

 そりゃ、昼飯ぐらいいつでも一緒に食ってやるさ。
「んじゃ、決まりね。今日はチョット寒いから…そうね部室で食べましょ。あそこなら人も少ないしちょうど良いわね」

 わかった。んじゃ昼休みは部室だな。


396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:13:47.86 ID:bxbAEMquO
支援

397LOST ◆jHhtPIEfFY :2006/10/07(土) 09:14:10.63 ID:cEJtgBFu0
たわいも無い会話だったが俺は先ほどの長門の台詞が気になっていた。と言うか今まで何度もピンチを救ってくれた
長門with統合なんちゃら体が下手したら敵に回るって事を言ってたんだよな。
俺だけならともかくハルヒを巻き込むワケにもいかないし…消されるのは俺だけか!?
放課後にでも長門にもう一度話をつけにいこう。全ては穏便に済ませれる筈だ。今までもそうしてきたんだきっと何とかなる。

こういうのを淡い期待というのだろうか。何の力も超能力も持たない壱男子高校生がへたすらりゃ宇宙を作ったような
わけのわからん物体と話をつけようとしてるんだから、よく考えればこっちが一蹴されるのは目に見えてるし
長門もなんだか友好的な雰囲気では無かったよな。
よくよく考えてみればあいつの目的は「ハルヒを観察する」事だもんな。
ハルヒの「思いを無意識にかなえる」能力がなくなって壱女子高生になってしまえば長門も統合なんとか体の
存在意義が失われてしまうって事になるんだな。

やれやれ、こりゃ一筋縄ではいかない話になりそうだな。

398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:14:49.90 ID:crXzOuOsO
>>344
古泉は恋愛系より友情系な話の方が似合ってる気がする。
支援

399LOST ◆jHhtPIEfFY :2006/10/07(土) 09:16:23.82 ID:cEJtgBFu0
第四話 終了でございます。
あと2〜3話で終了予定ですがラストの一話前にアンケートでもとって
分岐を変える予定です。世界の改変は皆さんの双肩に・・・・ お疲れ様でした。

400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:21:41.52 ID:o8MglHpxO
ほしゅ

401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:26:18.70 ID:bxbAEMquO
乙&保守

402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:27:29.78 ID:0JNRPxvt0
鶴屋さんの孤独の人
乙彼!GJ!最後まで鶴屋さんが鶴屋さんらしくて良かった!


LOSTの人続きwktk

是非、全滅エンドでお(ry

403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:31:47.87 ID:VpOngJlZO
>>344
たしかに友情ものが似合うかも。
でもこの二人の組み合わせあんまないから見てみたい気もする

404教師キョン :2006/10/07(土) 09:35:24.88 ID:kwGK/1RaO
今日明日は投下多そうなのでやめときますね。

405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:41:47.14 ID:hm7iCkAi0
>>403
「余ったピース・足りない欠片」が良かったな
友情物とは違う感じだけど

406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:44:56.92 ID:U2E4kpxhO
ちょwww
どこ行ってたんだよ!
すぐ帰ってくると思ってご飯食べないで待ってたのに!

407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 09:49:01.41 ID:xNKSx29x0
>>404
やめるのやめて。

408教師キョン :2006/10/07(土) 09:55:15.57 ID:kwGK/1RaO
今日明日帰り深夜なんで帰ってきたら多分凄い量書いた人が投下してそうなので
月曜有給とったんでその時に

409344 :2006/10/07(土) 09:57:12.26 ID:Ul41dQCy0
レスくれた人d
がんばって書いてみます。
誰かの失恋ものではない・・・はずです。
キョン有希前提のつもりなので。

410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 10:14:29.34 ID:tfX2jztuO
捕手もとい保守

411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 10:27:12.51 ID:0JNRPxvt0
ほしゅ

412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 10:46:24.09 ID:Xemp8Mge0
たべてねーっつの

413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 10:53:45.10 ID:rzvSDz3hO
寝起き保守。

皆さん乙です。

地獄の投下ラッシュが少し恐いw

414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:02:47.88 ID:9QMEwROs0
俺はとても楽しみ

415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:05:51.97 ID:x2XV5iMuO
コーヒー如何ですか?

416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:09:13.11 ID:q6JvjderO
いただきます

417コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:10:45.49 ID:x2XV5iMuO
昔、何かの余興でバットを地面に垂直に立てて、こちらに向いているバットの先端部分に額をつけたまま、ソコを中心にクルクルと回り合図とともに駆け出す・・・というのをやった事がある。

当然、足はふらつき真っ直ぐに走る事は不可能なのだが、なんとかゴールを目指し必死に走る・・・

今の俺は、正にそれだ。

部室を出てから間もなく歪み出した廊下を俺達は必死に駆け抜ける。

「こっち」

先導する長門も、いつものスタンスは崩さないものの、相当走り辛そうだ。

そして古泉と俺が長門を追う。

そして、長門はある場所で立ち止まった。

ここは!あの茶室じゃないか!

「ここ。でも、私には無理。」

そう言って長門は古泉を見つめる。



418コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:11:38.37 ID:x2XV5iMuO
「はい、承知してますよ。」

古泉は以前、閉鎖空間に初めて俺を連れて行った時の様に、手をゆっくりとかざし茶室の入り口に触れた。

「むっ?ぐう。」

どうした?

「どうやら並の代物では無い様です。長門さん?ここは、ひとつ力を合わせるという事で構いませんね?」

「いい」

何だってんだ?説明しろ!

「ここは、僕レベルの能力者が単体で辛うじて侵入できる程の空間です。」

それほどか!

「ええ!ですからキョン君、アナタは当然此処には入れない!」

ああ、そうだな。

「そこで僕が此処の中に入り、中で得た情報を長門さんに全て送る様にします。」

なんだって?



419コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:12:47.14 ID:x2XV5iMuO
「長門さんには、この情報により此処の中と同じ疑似空間を構築して頂く!これで、どうでしょう!」

なんとなく、わかった!任せる!

長門も、俺の横で頷く。そして手を差し出し、古泉に「はなさないで。」と言った。

やがて古泉は、長門の手を握った右腕だけを残し、体の半分以上を異空間であろう「茶室」に沈めて行った。





















「来る」

420コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:13:46.41 ID:x2XV5iMuO





ん?長門・・・?

な に が

く る ん だ




あ あ

周りが し ろ い




し ろ い

し ろ






421コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:15:01.21 ID:x2XV5iMuO
俺は、夕闇の中を自転車で走る。

今日はいつもより忙しく疲れたものの、得意先に貰った手土産のおかげで、ペダルがすこぶる軽い。

長い橋を渡り、少し坂を登った所にある我が家は、狭いながらも最近出来たショッピングモールに近く、小さいけれど隣に公園もあって、わりと気に入っていた。

家に辿り着いた俺は、慌ただしく自転車に鍵をかけ、同じキーホルダーに付いている鍵で玄関を開ける。


ただいまーっ

「おかえり・・・あ、なにそれ?」

ハルヒは俺の手にぶらさがった包みを目ざとく見付け、瞳を輝かせる。

ああ、海老だ。
今日、取引先でさ?貰った。

そっけなく言ってみたものの、おそらく俺は得意げな顔をしてる・・・と思う。


422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:15:38.14 ID:rzvSDz3hO
支援

423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:16:11.48 ID:d8x83yQlO
支援

424コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:16:18.36 ID:x2XV5iMuO

「けっこう沢山入ってるじゃない?ウフフ・・・そうねぇ・・・」

ハルヒはニヤニヤしながら、この海老の運命の行く末を思案中らしい。

「よおし!喜びなさい?この海老は今夜天ぷらになる事が決定されたわっ!衣のサクサク感に悶絶するのよっ!」

そう言うと、ハルヒはキッチンへと勇み足で向かって行った。

ん?

おい、ハルヒ?

「なーにー?」

みくるの泣く声がしないか?

「わかんなーい、みてあげてー?」

全くこの、お気楽極楽主婦は我が家に0歳児が居ることを自覚してるんだろうか。


425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:17:12.76 ID:0JNRPxvt0
支援

426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:17:12.75 ID:rzvSDz3hO
支援

427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:18:03.45 ID:d8x83yQlO
支援

428コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:18:21.38 ID:x2XV5iMuO
普段の生活が懸念されるぜ。

俺は、みくるのベットのある部屋へと急ぐ。

「ふえ〜ふえ〜」

やはりだ。

我が家の愛娘、みくるは器量こそ良いものの泣き声に説得力がイマイチ足りない。
とりあえず、オムツは・・・大丈夫だな。

おーい、ハルヒー?

ミルクは何時にあげたんだー?

「ん〜三時ー」

おいおい、もう六時だろ!
待ってろな、今持って来てやるから。

バタバタとミルクの用意をしてると、ハルヒがキッチンから顔を覗かせてニヤニヤしてるのが見えた。

何だよ?

「な、なんでもないわよ・・・」



429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:19:23.90 ID:rzvSDz3hO
支援

430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:21:11.63 ID:0JNRPxvt0
さるった?支援

431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:21:28.63 ID:rzvSDz3hO
さるか?

支援

432コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:22:43.60 ID:x2XV5iMuO
ふん。

「ただ・・・」



「キョンで・・・良かったなあって・・・」

・・・バカ







ンくん


ョンくん


キョンくん


「キョン君!起きてくださいっ!」

ん・・・あがっ!?


433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:22:50.57 ID:0JNRPxvt0
もいっちょ支援

434コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 11:23:24.94 ID:x2XV5iMuO
い、今のは何だっ?


気が付くと、俺は床に倒れていた。そして俺の横には、呆然自失して座りこむ長門を支える血まみれの古泉の姿があった。

つづく

435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:25:22.56 ID:0JNRPxvt0
0歳児みくる萌えwktk

436以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:26:11.29 ID:rzvSDz3hO
なにー!!

乙。
続きwktk

437以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:26:34.68 ID:KNBiQVL20
転生ktkr

438以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:42:07.35 ID:rzvSDz3hO
保守

439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:54:05.36 ID:oROAvqNfO
保守

440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 11:59:49.49 ID:o/IXhiZe0
今起きた産業!!
朝からGJなんだぜい

441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:09:07.52 ID:J0wV90rQ0
保守、そしてGJ

442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:11:27.81 ID:SY74lboa0
ちょっと待て
一体何が
あったんだ

443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:14:01.84 ID:SY74lboa0
今気付く
タイトル台詞
五七五

444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:27:33.69 ID:rzvSDz3hO
「ロックバンド」の作者さんが書いた、続き物の作品ってまだwikiに無い…?


無性に読みたくなったんだが…

445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:30:31.33 ID:qzdrT6tK0
コーヒーの人の作品、もう既にGJ

446以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:43:32.75 ID:EqeW0vSKO
うーむ、続きwktk

447コーヒー@作者 ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 12:51:30.44 ID:x2XV5iMuO
支援ありがとうございました。

Xは今日中に完結させる予定です。
今は職場の仲間とマターリ中なので、帰宅後の編集作業になりそうです。

巧くまとめられるか心配ですが、皆さんに楽しんで頂ける様に尽力いたしますので、宜しくお願い致します。

448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 12:54:22.29 ID:rzvSDz3hO
コーヒーwktk

449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:05:30.35 ID:bxbAEMquO
GJ!保守

450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:11:23.19 ID:Gnz98/wYO
まったくみんなGJだ!
保守

451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:14:37.15 ID:jJK45xbL0
敬語の意味がわからない

452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:22:34.23 ID:Gnz98/wYO
保守

453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:30:46.93 ID:oROAvqNfO
>>451
辞書で調べればおk

454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:36:56.51 ID:jJK45xbL0
>>453
3つのタイプがあるんだな、尊敬語、謙譲語、敬語


これは小学校でならった。

ではハルヒキャラではどうだろう

尊敬語→みくるが周囲に掛ける言葉?
謙譲語→古泉が周囲に掛ける言葉?
敬語→喜緑さんが周囲に掛ける言葉?

キョンも敬語だと思う。

455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:48:23.54 ID:RoCBT/Bu0
敬語じゃなくて丁寧語じゃね?

456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:50:11.65 ID:oROAvqNfO
成る程。勉強になるな。
確か敬語は、謙譲語・尊敬語・丁寧語等の総称では?

457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:50:13.18 ID:jJK45xbL0
>>455

ちょっと辞書見てくる

458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:50:58.74 ID:2jeTq9OQ0
m9(^Д^)プギャー

459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 13:58:35.63 ID:jJK45xbL0
丁寧語だな、まさに喜緑さんっぽい

460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:05:53.11 ID:Q3XDimnn0
保守&ひまつぶしに、


TFEIってなんの略だと思う?

確かまだ正式に明かされてなかったよね?

461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:07:41.55 ID:2jeTq9OQ0
原作嫁
たしかどっかに書いてあった 2巻かな?

462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:07:45.35 ID:qLTfzZLF0
テクニカル ファンシー エロティカル インターフェース

463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:11:08.62 ID:eObExrT00
TPDDしか明かされてなかったはず。

464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:11:34.31 ID:bKFBHVWg0
>>460
2巻で古泉が言って、正式名称までは言わなかったね。
TPDDもそうだけど

465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:11:56.91 ID:jJK45xbL0
大喜利だよな?



T 谷口…実は僕…
F ふたなりなんだ…
E えっと、うまれたときから男女半々なんだ
I イエーイ

466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:12:19.79 ID:hm7iCkAi0
つまり 普通に エロい インターフェイス

467以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:13:51.56 ID:oROAvqNfO
トイレでフェラはエロくてイイよ

TPDDはどっかで朝比奈(大)が言ってた。

468以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:14:44.42 ID:0JNRPxvt0
TPDD=タイム・プレーン・デストロイド・デバイスだお

469以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:15:56.72 ID:bKFBHVWg0
>>468
あれ、出てたか。7巻あたりか?

470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:16:23.40 ID:jJK45xbL0
ええい!ここは本当にVIPか?

471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:16:44.77 ID:0JNRPxvt0
ちなみにすでに製品化されている

ttp://www.gunze.co.jp/denzai/jpn/products/driver/tpdd.html

472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:19:10.24 ID:hm7iCkAi0
>>469
つ消失

473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:21:47.55 ID:0JNRPxvt0
>>469
4巻消失の176ページだな

474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:31:17.89 ID:jGXYJU7o0
ナイスタイミング
消失古泉の話だ。
短編、拙い話だが暇つぶしにでも。

475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:31:34.80 ID:rzvSDz3hO
保守

476自分の居場所 :2006/10/07(土) 14:33:29.54 ID:jGXYJU7o0
「──僕は涼宮さんが好きなんですよ」
「……正気か?」
ここは光陽園学院の近くにある喫茶店。学校帰りだろう、黒ブレザー姿の女子が何人か目に映る。
といっても、のんびりお茶をしているわけではない。あとは勘定を済ますのみになっている。
相手の男──ジョンが驚いているような……そんな顔をしている。
自分はいつだってほどほどに正気のつもりだ、と古泉は思う。
むしろ彼、ジョンの話すコトにこそ、正気かと小一時間問い詰めたい。
「魅力的な人だと思いますが」
SOS団、宇宙人に未来人……そして自分が超能力者だと?
古泉にはまるで信じられない。自分はただの人間だ。謎の転校生ではあったけど。

──ズキリ、と頭がシビれる感じがする。

こいつもまた、涼宮さんに言い寄るために適当な事を言ってるんだろう。古泉はそう思っていた。
彼が言うには、涼宮さんが神様であり、世界が3日前に始まったかも知れないという。人間原理まで引き合いに出してきた。
……何故だろう?前にも同じことがあったような気がする。不思議な既視感を振り払う。バカな話だ。
古泉は3人分の飲料費を精算して店の外へと急いだ。
すこし頭が痛んだ気がした。

涼宮ハルヒの止めたタクシーに乗り込みジョンの高校、北高へと向う。
途中で提案された北高侵入作戦には、勘弁してほしいと正直に思う。
確かにこの学院の制服のままではよその高校に入るなど難しいと思いますが……。
しかし涼宮ハルヒを止めることなど古泉には出来ない。タクシーの代金を払い……と、また軽く頭痛を覚える。
さて、今の違和感はなんでしょうか。自然に僕が代金を払いましたが……?
別にこれが始めてというわけでもない。涼宮ハルヒと古泉が市内を歩くとき、財布係なのが自分の役割だ。
そうだ。いつものことだ。
古泉は自分に言い聞かせるように頭をすこし横にふりながら思った。


477自分の居場所 :2006/10/07(土) 14:34:30.81 ID:jGXYJU7o0
しばらくしてジョンが学校から自分の体操着を持って帰ってきた。
涼宮ハルヒはなんの躊躇なくジョンのジャージを手に取り路地裏で着替えを開始した。
ジョンに流し目をしながらニカリと笑っている。
彼の言うことを素直に聞きポニーテールにまでしている。うれしそうだ。

そういえば僕は一度も涼宮さんの笑顔を見ていない。
僕は涼宮さんが好き……な筈だ。でもこんな顔をする彼女のことを知らない。
知らない、はずだ。
そもそもなぜ彼女を好きになったのか。
何時?どこで?彼女のどこに惹かれた?……この僕の想いは、本物か?

思い出せない……いや記憶が無いわけではない。
光陽園学院に転校してきて、涼宮さんに声を掛けられて、それで……?
おかしい。まるで昨日読んだ本の内容を思い出しているかのような、不確かな記憶。
古泉は既に、自分の記憶なのに、自分が体験した事とは思えなくなってきていた。

──脳が揺れた気がした。歪まされた歯車が必死に動いている。

涼宮ハルヒに遅れて古泉もジョンの体操服に着替えた。
季節は冬だ。半袖短パンでは寒い。震えながらも考える。
どうして自分は光陽園学院に転校してきたのだ?


478自分の居場所 :2006/10/07(土) 14:35:23.03 ID:jGXYJU7o0
マラソンのフリをしながら校舎の玄関にたどり着く。
すこしは体が温まったが、逆に汗のせいで風が痛いと感じる。
涼宮さんは彼に案内されながらも校舎を我が物顔で進む。それを見ながら、なぜか安心する自分に気づいた。
朝比奈さんという小柄で可愛らしい、庇護欲を掻き立てられるような上級生を捕まえた涼宮さん。
その姿にまた既視感を覚える。
彼女が未来人、か。やはり見覚えはない。でもいつか、どこかで……?
次は部室、宇宙人とやらですか。そして僕らの本拠地でもある、と。

何事もなく文芸部の部室に到着し、古泉はまたも不思議な感覚に見舞われた。
何もない、静かな文芸部の部室に心休まるような気がした。
ひどく、懐かしい……。

──脳が軋む。歪んでいた歯車が元に戻る感じがした。

彼と笑顔で話す涼宮さんを見ると安心する。
彼女の精神が安定してきている。僕といるときの不機嫌さなぞもう見当たらない。
もう古泉は涼宮ハルヒのことが好きだとは思えなくなっていた。
ジョンがまじめな顔で突如電源の入ったパソコンを見つめている。
なにか操作しているようだ。

古泉は唐突に気がついた。
そうか……この場所こそが、僕のかけがえの無い居場所なんだ──
ジョンの指がエンターキーを押した。
そして古泉の意識は闇の深くに沈んでいく。


479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:36:34.55 ID:hm7iCkAi0
wktk!

480自分の居場所 :2006/10/07(土) 14:37:09.12 ID:jGXYJU7o0
古泉は気がつくと床に転がっていた。
頭がうまく働かない。なにか夢を見ていたような気がする。
ここは……そう、機関に関わりのある私立の総合病院だ。
彼、キョンの眠る個室の床に、古泉は転がっていた。そばにはさっきまで座っていたであろうパイプ椅子がある。
──どうやら彼の寝顔を見ながら眠ってしまったようですね。
キョンが意識不明の状態になってからもう3日目の朝である。隣には寝袋にくるまっている涼宮ハルヒが居る。
学校にも行かず、ずっと彼のそばで目覚めるのを待っている。
「……古泉くん?」少々寝ぼけた声が聞こえる。
「すいません。起こしてしまいましたか」古泉は素直に謝る。「彼はまだ……」
「そう」
さすがに疲労の色が見える。ほとんど寝ていないはずだ、無理も無い。
「僕はこれから学校に行きますが」
「あたしはここにいるわ」声にも覇気がない「今日も部活はやすみね」
「……また放課後に来ます」
古泉は病室を後にして考える。
涼宮さんは人影を見た、と感じたと言う。しかしそんな生徒は存在しなかった。
彼女が言うことには意味がある。犯人は必ず居るはずだ。
機関に敵対する組織か、新手の宇宙人か、それとも未来人か……。
彼をこんな目に遭わせた奴だ。必ず見つけ出すと古泉は心を固める。
彼も涼宮さんも、少なくともここにいる限り安全だ。

──早く目覚めてください。世界の安定のためにも。
放課後の退屈で平和な時間。彼とするたわいのない会話、アナクロなゲーム。
まだ3日しか経っていない。けれどそれが随分と昔のような気がする。
それを思うとき、古泉は気づかない。その顔がすこし和らいでいるのを。



481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:38:29.81 ID:jJK45xbL0
古泉の一人称とがごっちゃになってわかりにくい

482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:40:52.34 ID:2jeTq9OQ0
ごめん、何がどうなったのか全然わからなかった

483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:41:23.77 ID:hm7iCkAi0
乙!

ただ、所々で客観描写と古泉主観描写が混じってるのが
ちょっと気に掛かった。細かい事言って悪いんだが

484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:41:28.35 ID:fqMr0dSs0
ヤキソバパンマダー?

485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:42:11.23 ID:VpOngJlZO
GJ!!
超レアな消失古泉だな。この雰囲気結構好きだ

486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:44:46.53 ID:xX4M3OR+0
最初の方が分かり辛かった
でも新しいな

487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:45:07.14 ID:jJK45xbL0
>>484
それはアナル

488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:49:41.26 ID:jGXYJU7o0
すまん>>481>>482>>483>>486
意見ありがとう。
もうちょい精進するよ。
しばらくは古泉モノでいくつもり

489以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:50:26.81 ID:jJK45xbL0
応援してる、いやする

490以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:51:10.26 ID:eObExrT00
>488
嫌だといってもwktkをやめてあげない。

491以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 14:52:23.76 ID:2jeTq9OQ0
>>488
ガムバレ

492以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:00:29.67 ID:qLTfzZLF0
最近ネタがうかばない…スランプ期?

493以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:03:26.92 ID:prVJ4xLWO


494以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:08:05.28 ID:M3PHrIHP0
sageて保守はねーよwww

495以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:09:47.20 ID:VpOngJlZO
>>488
頑張れ。待ってる

496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:23:56.14 ID:Lr2arPjn0
何度言ったかはわからんがsageでも保守の意味はある。

ただスレが上がらないから携帯の人やらご新規さんが見つけにくい。

497以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:27:22.20 ID:lOj24U2/0
>>488
確かに前半は分かりづらかったが、なかなかよかった!

498以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:30:21.05 ID:tfX2jztuO
>>496
新規は確かにageなきゃわかんないよな…
てなわけでage

499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:30:29.47 ID:Gnz98/wYO
最後の方は素晴らしい出来だとオモ
GJ!

500以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:42:07.87 ID:QwJBzq/F0
結局ageたほうがいいの?
sageたほうがいいの?

という保守

501自分の居場所のひと :2006/10/07(土) 15:44:11.85 ID:jGXYJU7o0
すまん。いま編集してるんだがリンクの仕方がよくわからない。
教えてくれ。どうすりゃいい?

502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 15:56:31.41 ID:jGXYJU7o0
たびたびすまん!
解決した!
保守

503以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:09:18.26 ID:IO/wtl68O
保守

504300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:13:09.79 ID:sjjYSbZb0
書きあがりましたので投下したいと思います。
文字数カウント間違えてました。134,367文字、5,051行ですので、
1レス平均25行として200レスくらいで収まると思います。

505涼宮ハルヒの微笑 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:14:03.38 ID:sjjYSbZb0

プ ロ ロ ー グ



 俺たちの高校生活最後の冬。俺とハルヒの意地の張り合いがもたらした、二度目の世界崩壊
の危機。
 そうだ。俺が弾を装填し、ハルヒが引き金を引いた、全宇宙を一方的に巻き込んだあの大事
件。
 あれから既に長い歳月が過ぎているというのに、今思い起こしても平常心ではいられなくな
る。関係各位には、誠に申し訳ないことをしたという気持ちでいっぱいだ。
 全宇宙規模で発生した閉鎖空間。その内部では、ハルヒを知る存在たちが一堂に会し、好意
的に見ればそれは、ハルヒ杯争奪全宇宙オールスター対抗大運動会(強制参加型)とも言うべ
き様相を呈していた。
 閉鎖空間内では、現状維持派と急進革新派とのあいだで様々な思惑が入り乱れ、熾烈な戦い
が繰り広げられた。
 情報制御すらままならず物理的攻撃が不可能な敵対的広域帯宇宙存在たちは、以前の雪山の
ような方法でSOS団への精神的攻撃を試み、未来を予測可能である敵対未来人組織たちは、
俺たちを内部分裂させるべくハルヒと俺に対してあらゆる工作活動をおこない、閉鎖空間内で
その力を存分に振るえる敵対的超能力者たちは、赤い光となって俺たちに攻撃を仕掛けてきた。
 長門は制限を余儀なくされた能力をなんとか駆使して抗戦し、朝比奈さん(大)が未来人の
知識をもって俺たちに助言を与え、朝比奈さん(小)はおろおろしつつも時間移動を応用した
空間移動と長門によって解禁されたフォトンレーザーやら超振動性分子カッターやらの超科学
的兵器で俺たちを何度も危機から救い、そして古泉はその能力を遺憾なく発揮して敵対勢力の
物理的攻撃に対抗した。
 当然の反応として、この超常的展開に一人狂喜するハルヒは、以前俺が見たものよりも質、
量ともはるかにパワーアップされた神人軍団を無意識的に生み出し、敵対勢力を次々となぎ倒
しはじめた。
 だが神人の活躍もむなしく、一人また一人と倒れてゆくSOS団員。
 そうしてハルヒはついに、これが自分の望む世界の在り様ではないことを受け入れた。

506以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:15:40.99 ID:Xdc+QmMB0
>>505wktk!
支援はいるかい?

507涼宮ハルヒの微笑002 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:15:55.86 ID:sjjYSbZb0
 閉鎖空間の終焉は、やはりというべきか、俺とハルヒのキスによるものだった。
 以前のような、成り行きまかせのものでも一方的なものでもない。俺たちはこの騒動のおか
げで、お互いに対する気持ちを確かめ合うことが出来た。
 俺の場合は、なによりも俺自身の想いをはっきりと認識し、覚悟することになったわけだが。
 一度目と同じ、あのグラウンドで、俺たちは永遠とも思えるほどの長い時間を共有していた。
 唇を重ね合わせ、お互いをしっかりと抱き寄せて。絶対にこの手を離したくないと思った。
ハルヒだってそう思っていたはずだ。
 俺は、本当に心から時間が止まって欲しいと感じていた。世界が変わったとさえ思える瞬間
だった。

 いつしか閉鎖空間は消滅し、俺はまた自室で目覚めた。今回はベッドから転げ落ちることも
なかった。
 フロイト先生もきっと祝福してくれていたに違いない。
 その後、立て続けに携帯が鳴った。
 最初の電話は長門からだった。
「六年前の涼宮ハルヒによる情報爆発、それを超える二度目の情報爆発が観測された。それと
同時に、情報統合思念体は自律進化の糸口を得た。情報統合思念体主流派は、あなたと涼宮ハ
ルヒに感謝している」
 と、いつもの淡々とした口調でそれだけを述べ、電話は切れた。
 なんてことだ。それはあのキスが原因なのか? まさかそんな大それたことが起こっていた
とは。
 ところで長門、お前自身は感謝してくれないのか?
 長門の電話が切れるなり、続けざまに古泉から連絡があった。
「機関の方がかなり混乱していまして、手短にお話しします。僕の能力が消滅しました。です
が、これはむしろ喜ばしい状況と言えます。我々の能力の消滅と同時に、涼宮さんが二度と閉
鎖空間を生み出さず、世界も改変しないという確証を得ました。なぜ解るのかと言うと、残念
ながら説明出来ません。解ってしまうのだからしょうがない、としか。僕のアルバイトがなく
なってしまうのは少々寂しいですが、これで世界が永遠に救われたと思えば、それもまたよし
です」
 その口調の端々に本心からの喜びがうかがえた。

508以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:16:11.07 ID:Gnz98/wYO
まとめて投下するのか?

509涼宮ハルヒの微笑003 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:16:39.60 ID:sjjYSbZb0
 どうやら、キスの瞬間に感じたことは事実だったようだ。本当に世界は大きくその様相を変
化させてしまったのだ。本来あるべき姿に。
 それから数分後、最後は予想どおり朝比奈さんからの電話が鳴った。
「キョ、キョ、キョン君っ!」
 明らかに混乱していた。当然ながら、俺には朝比奈さんが次に何を言うのか想像出来る。
「すすす涼宮さんからの、じじ時空振動が、けけ検出されなくなりましたっ!」
「解りましたから朝比奈さん、とにかく落ち着いてください」
 電話口からゆっくりとした深呼吸が数回聞こえた。落ち着きを取り戻した朝比奈さんは、
「涼宮さんに関係する時空の不確定要素が消滅しました。つまり未来が確定されました」
 そして、少なからず寂しそうな声で、
「私の役目もこれで終わっちゃいました。名残惜しいですが、もうすぐお別れのときがくると
思います」
 そうか。ついに朝比奈さんともお別れなのか。あなたのお茶が飲めなくなるかと思うと、俺
も本当に寂しいですよ。

 このようにして、唐突に始まった涼宮ハルヒを取り巻くありとあらゆる不思議な現象は、唐
突に終わりを告げたのだった。

 そう思っていた。これが実は終わりなどではなく、本当の意味で全ての始まりになることな
ど、当時の俺には全く想像出来ないことだった。

510以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:16:40.11 ID:MPkHIBpu0
おはようございます

511300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:18:13.24 ID:sjjYSbZb0
レスいっぺんに流すのもアレなんで、章ごとで区切って様子みてみます。
ここ初めてなもので・・・支援ってなんでしょう?

512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:19:53.44 ID:Gnz98/wYO
気にするな、バイさる対策だ。

じゃあ章ごとwktk!

513300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:20:35.88 ID:sjjYSbZb0
では第一章いきますm(_ _)m

514以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:20:56.77 ID:IIXbfjiA0
>>511
あんまり連投すると規制に引っかかるんだ。
まあ気にせず投下しなさい

515以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:21:09.58 ID:hm7iCkAi0
イイ感じの文章と展開にwktk!

516涼宮ハルヒの微笑004 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:23:18.24 ID:sjjYSbZb0


第 一 章


 あれから四年。
 俺は無事に大学を卒業し、既に就職していた。いわゆる社会人というやつだ。
 ハルヒによる補習授業のおかげで、俺はなんとか大学に進学する学力を身につけ、苦労の末
に無事卒業することが出来た。
 ハルヒは俺とは別の大学に入学し、首席に近い成績で卒業。さらに世界を盛り上げるための
活動をするとやらで、大学院に進んでいる。
 世界を盛り上げるなんていう発言は以前と変わらないハルヒらしさだ。ハルヒは自分が不幸
を感じているときは周りの人間を否応なく道連れにし、自分が幸福を感じているときはそれを
無条件で周囲に拡散させていく、そういう奴だ。
 そして、俺はそういうハルヒにますます惹かれていたのだった。

 長門と朝比奈さんとは、高校卒業以来会っていない。
 卒業式の後、部室で盛大かつ壮絶たるSOS団解散式兼お別れパーティーが開かれ、朝比奈
さん、鶴屋さんを含む六人でバカ騒ぎをした。
 その後いつものルートで最後となる集団下校をし、長門とは駅前で別れた。
 肌寒さの残る、うす曇りの夕暮れ。
「あなたがいてよかった」
 別れ際、長門が俺にだけ聞こえる声で言った。
 無表情には違いなかったが、長門が感情を押し殺している風に感じられた。
 長門もSOS団との別れを惜しんでいるのだろう。
 長門、情報統合思念体に戻っても幸せに暮らしてくれよ。お前は情報統合思念対の中でも先
駆者だ。なにしろお前はハルヒに散々振り回されたおかげで、元々の機能にはない感情っても
のを獲得したんだからな。仲間に自慢出来るぞきっと。
「さようなら」
「さよなら、長門。元気でな」

517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:23:38.48 ID:Xdc+QmMB0
>>513
おkkkwktk!
支援もするよ

518涼宮ハルヒの微笑005 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:24:04.95 ID:sjjYSbZb0
 別れは辛いが、これは仕方がない。結局のところ長門を含む情報統合思念体は切望していた
自律進化のきっかけを手に入れ、朝比奈さんたち未来人は約束された未来を手に入れ、、古泉
の機関は神人に悩まされることのない安息な日々を手にいれたのだ。
 そして長門は情報統合思念体に戻り、朝比奈さんは未来に戻り、古泉は本来の生活に戻る。
つまりは全てハッピーエンドだ。これで別れを惜しんでいてはバチが当たる。
 長門の後姿を見送りながら俺はそんなことを考えていた。

 卒業式からしばらく経った後、朝比奈さんから手紙が来た。
『会ってお別れするのは辛いので、お手紙を書くことにしました。
 キョン君には本当にお世話になりました。ありがとうございました。
 もっと色々書きたいことがありましたが、書くともっと辛くなりそうなので。
 これからもお元気で。涼宮さんとお幸せに。
 朝比奈みくる』
 いつものファンシーなものではなく、やけに体裁の整った封筒と便箋が、本当の別れを実感
させた。
 お世話になりましたなんてとんでもない。俺こそ朝比奈さんには本当にお世話になりました。
 高校生活の日々、朝比奈さんは俺にどれだけ心の安らぎを与えてくださったことか。
 でもいずれまた再会する日が来ますよ。未来の朝比奈さんはこの後何度か過去の俺に会うこ
とになるんです。既定事項ですから。
 俺がこれから先、朝比奈さんに会うことが出来るのかどうかは解らないが。
 以前から覚悟していたものの、かぐや姫の物語がいざ現実になると、やはり寂しいものだっ
た。
 朝比奈さんに直接お別れの言葉が言えなかったのを口惜しく思う。
 朝比奈さん、どうか未来の世界でお幸せに。未来人組織での立場向上だけでなく、この世界
では出来なかった恋愛もがんばってください。
 あなたなら自らがんばらずとも、男共が黙っていないでしょうけどね。未来でもきっと。

519以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:24:26.57 ID:MPkHIBpu0
中傷したがる一部の2ちゃんねるのみなさんへ
ttp://groovemachine.ddo.jp/p.html

520涼宮ハルヒの微笑006 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:25:23.47 ID:sjjYSbZb0
 ちなみに、古泉とは高校卒業後も友人づきあいがある。
 俺たち二人は、常人のそれをはるかに上回る過酷な高校生活を共に乗り切った、いわば戦友
のようなものだ。
 以前古泉が言った、対等な友人同士として昔話を笑って話せる日は今ここに実現している。
 古泉の言動がそれまでと変わったことについて、ハルヒも俺も最初は驚いたが、正直なとこ
ろすぐに慣れた。
 二人とも、何の含みもなく屈託なく笑う古泉に以前よりはるかに好感を抱いていた。
 機関は古泉の卒業と同時に解散されていた。もはや機関がすべきことは何も残されていなか
ったからな。


 俺が就職して三ヶ月と少しが経った頃、七夕の日に俺とハルヒは結婚した。
「どうせこのままずっと一緒にいるんだから、もう結婚しちゃっていいじゃない。こういうこ
とは早いほうがいいのよ」
 ハルヒがそう提案し、俺もそれに同意したからだ。プロポーズくらい俺にやらせて欲しかっ
たな。まあ似たようなセリフはあの閉鎖空間の中で既に言ってあったんだが。
 就職して間もなかった俺は、そのため貯金などほとんどなく、ハルヒも学費を出してもらっ
ている身分で大層な披露宴など気が引けるという理由で――そういう控え目な考え方をするハ
ルヒは高校生の頃からは到底考えられないのだが――、披露宴はお互いの親戚だけを集めた食
事会ということにした。
 無論、古泉と鶴屋さんを交えた四人のパーティーは盛大にやったけどな。
 長門と朝比奈さんには当然ながらこちらから連絡をつけることは出来なかった。二人とも俺
たちが結婚することを知らなかったのか、あるいは知っていたとしても参加出来ない事情があ
ったのだろう。
 この頃にもなると、ハルヒはすっかり一般的な性格と生活を獲得していた。
 エキセントリックな振る舞いは多少残っていたが、それはあくまで一般的という範疇に収ま
るものだった。

521涼宮ハルヒの微笑007 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:26:00.54 ID:sjjYSbZb0
 古泉が言ったとおり、ハルヒは二度目の情報爆発の際に、以前の能力を完全に失ったようだ
った。情報爆発以降も時々不機嫌になることはあったが、古泉が断言したとおり閉鎖空間を生
み出すことはなくなったようだ。古泉の能力が消えても世界が破滅していないのがなによりの
証拠だ。
 こうして平凡でありながらも、幸せな日々は続いた。
 俺の社会人生活は、慣れない仕事に苦戦しながらも、まずまずの滑り出しだったと言える。
ハルヒの学生生活は言うまでもなく極めて順調だった。
 このまま平穏無事に暮らせたなら、俺はどれだけ心安らかだっただろう。
 だが、何者かがそれを許してはくれなかった。

 ハルヒは結婚の二ヶ月後、突然学校で倒れた。
 仕事場に連絡を貰った俺はすぐさま病院に直行した。入院先は、例の機関御用達の総合病院。
古泉が昔のよしみで手配してくれた。
「昼ご飯食べてるときになんだか急に意識が遠のいちゃって。全くみっともない話だわ」
 ハルヒがそう言うのを聞いて、俺は安心した。
「全くだ。お前らしくもないな。元気だけが取り柄、ってわけでもないが、お前が病気で倒れるなんて見たことねーからな」
 ベッドの上のハルヒは、見るからにいつものハルヒそのままだった。軽い貧血か何かで倒れたんだろう、という程度にしか思えなかった。
 症状は大したことはないが検査のため今日は様子を見て入院させる、と言う医師の言葉にも、不自然さは感じるにせよ俺はちっとも心配などしていなかった。
 だからハルヒが翌日再び病室で意識を失ったと聞いたとき、ようやく俺はこれがただ事ではないということに気づかされた。
「昨日から今朝にかけて一通りの検査をしてみましたが、結論から申し上げますと全く原因が解りません。あらゆる検査の結果は全て、奥様は完全な健康体であることを示しています」
 何しろ元機関お抱えの病院だ。最高の医師たちが揃っているに違いない。そして彼らが原因不明と言うならば、それは誰が見ても間違いなく原因不明なのだ。
 身体上の数字は至って正常であり、ハルヒは普段と何一つ変わらない様子だった。一旦意識を失うとしばらく目を覚まさなくなる、ということを除けば。

522以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:26:57.90 ID:Xdc+QmMB0
wktk支援

523以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:28:14.92 ID:Gnz98/wYO
支援

524以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:28:19.60 ID:qLTfzZLF0
電池切れじゃね?支援

525以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:30:09.20 ID:0JNRPxvt0
支援がおいつかねー支援

526以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:30:48.10 ID:XcRYb0LDO
wktk

527以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:31:16.48 ID:95ZjP+hVO
支援

528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:32:22.89 ID:XcRYb0LDO
マダー?

529涼宮ハルヒの微笑008 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:33:08.84 ID:sjjYSbZb0
 俺は会社に事情を説明し、長期休暇の許可を得てずっとハルヒに付き添った。
 以前俺が階段から転げ落ち、意識を失ったときと同じ個室。あのときハルヒは今の俺と同じ
ような気持ちで俺のそばにいてくれたんだろうな。

 医師達がサジを投げるまでにはそう長い時間は必要とされなかった。
 ハルヒは意識を回復させては、眠りにつくということを数日間繰り返した。
 そして起きている時間と寝ている時間の割合は次第に逆転し、ついにはほとんどの時間ハル
ヒは意識を失い続け、起きている間ですら意識が朦朧とした状態になった。
 焦燥しきった俺は藁にもすがる思いで、ハルヒの意識があるわずかな時間に、自分がジョン
・スミスであることを告白した。
 こうすればハルヒの中で何かが起こり、突然元気になってくれやしないか、と思ったのだ。
 俺はジョン・スミスのことをあの閉鎖空間の中でもそれ以降も、一度も口にしたことはなか
った。
 もちろん、ハルヒにSOS団メンバーの正体を明かすことを避けたかったからであるが、理
由はそれだけではない。
 俺を愛してくれるハルヒには、ジョン・スミスの存在は必要ないと思っていた。それが俺と
ハルヒの関係に何らかの好ましくない変化を与えるかもしれないとも考えていた。
 だが俺は意を決し、その事実をハルヒに打ち明けた。
 そしてその決意もむなしく、結論から言えばそれは何の効果もなかった。
「そう……あんたがあのジョンだったなんてね。高校一年のとき、あなたと以前どこかで会っ
たことがあると感じたのは間違いじゃなかったのね。……だとしたら、あのとき背負ってたの
はみくるちゃん?」
 あいかわらず勘がいいな、お前は。
「そう思えばあたしの人生って結構不思議なものだったのね……」
 お前は知らないだろうけど、お前の人生は普通とは比べ物にならないくらい不思議なことで
満ち溢れていたんだぞ。
「色々あったわね……幸せだったわ。あんたのおかげよ」
 お願いだから、そんな今生の別れのようなことを言ってくれるな、ハルヒ。
 ハルヒはそう言ってしばらく後、また眠りについた。俺も数日前からの徹夜の付き添いの疲
れからか、いつの間にか眠っていた。

530涼宮ハルヒの微笑009 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:34:05.58 ID:sjjYSbZb0

 ハルヒはその一時間後、そのまま目を覚ますこともなく、俺に気づかれることもなく、唐突
に、ひっそりとこの世を去った。

 自分自身がわけの解らん奴なら、死ぬときもわけの解らん死に方をするのか、ハルヒよ。
 俺はハルヒが死んだという事実にわき目もふらずに泣いていた。
 お前は高校一年のときの七夕を忘れちまったのか?
 あのときお前は世界が自分を中心に回るように、地球が逆回転するようにって短冊に書いた
だろうが。ベガとアルタイユに願いが届くまであと何年かかると思ってんだ。
 俺はこの先、お前を取り巻く状況がどう変わるのかを楽しみにしてたんだぞ。お前がどれだ
け世界を盛り上げ、そしてそれに俺がどう巻き込まれるかを。
 そしてお前はこう言うんだ。
「ほらねキョン、あたしの言ったとおりでしょ!」
 俺がいつも見ていた、そしてこれから先もずっと見られると思っていた、あの赤道直下の笑
顔で。
 ――一体、どこからこんなに涙が溢れてくるんだ。
 あの閉鎖空間でのキスのときとは違った意味で、世界は変わってしまった。いや世界は終わ
ってしまったのだ。
 それから俺は数日間を泣き通した。

531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:34:31.18 ID:0JNRPxvt0
wkwk支援

532涼宮ハルヒの微笑010 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:34:46.65 ID:sjjYSbZb0
 ハルヒの葬儀には、俺とハルヒの親族、俺の仕事の同僚たち、ハルヒの学校の関係者、学生
時代の友人、そして古泉と鶴屋さんが参列してくれた。長門と朝比奈さんは、やはり姿を見せ
なかった。
 参列してくれた皆が、心底俺に同情してくれた。
 だが、俺はこの頃には既に涙も枯れ果てていて、ただ呆然とまるで他人事のような心境で葬
儀を進めていた。これが現実だとは、俺には到底信じられなかった。
 ほんの数日前まで、そこに確かにあった俺とハルヒの日常。
 やけに目覚めのいいハルヒがいつも先に起き、朝食を作ってくれた。
 あいかわらず目覚めの悪い俺を楽しそうに叩き起こしてくれた。
 朝食を食べながら一日の予定を確認しあった。
 一緒に住まいを出て、駅で別れ、駅で待ち合わせた。
 一緒に食材を買い、一緒に夕食を作った。
 それらを囲みつつ一日の出来事と昔話とこれからの話をした。
 そこにはいつも、ハルヒの笑顔があった。
 そしてそれは突然俺の前から消え失せてしまった。
 そんなことを一体誰が信じられるものか。
 ハルヒの葬儀からしばらくの間、結婚とともに越してきた住まいで、俺は抜け殻のような状
態で日々を過ごした。
 何もする気が起こらなかった。食事すらほとんどせず、ただ起きて、ただ寝るだけのような
生活。一体何日間そうしていただろうか。

533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:34:50.90 ID:o8MglHpxO
すでに号泣だぜ 支援

534涼宮ハルヒの微笑011 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:35:30.80 ID:sjjYSbZb0

 そしてある日、俺は突然それを認識した。
 ハルヒが死んだ瞬間に感じた、世界が変わってしまったという感覚が、またしても俺の感情
の変化によるものだけではなかったことに。
 ハルヒが死んでからというもの、俺の頭の中に奇妙な違和感が存在していることには気づい
ていた。
 そして、それはハルヒの突然の死による悲しみがそうさせているのだろうと、俺は当然のよ
うに思っていた。
 それは違っていた。それだけではなかった。

 俺の頭の中に、突如としてSTC理論とTPDDが備わっていたのだ。

 STC理論。朝比奈さん(大)が以前俺にその存在を教えてくれた時間平面移動の理論。
 TPDD。時間移動をするための、頭の中に無形で存在する装置。
 理屈じゃない。それが俺の頭の中にあることを、俺は実際に感じることが出来た。
 なぜ俺に突然そんなことが起こったのか。理由はすぐに解った。

 ハルヒがそれを望んだからだ。

 ハルヒは、わずかに残こされた最後の力で、俺にこれらの能力を与えてくれていたのだ。
 長門によって世界が改変されたとき、朝比奈さんは言った。STC理論を指して「あなたに
もそのうち解ります」と。
 朝比奈さん……つまりはこういうことだったんですか?
 ハルヒが俺に託してくれたこの能力。すぐに使い道は決まった。
 だってそうだろ? 他の選択肢なんてあるもんか。
 今まで散々俺を振り回しておいて、それで満足したらさようならか? それを他の誰が許し
たとしても、俺は絶対に許さない。
 俺は確信を持って言える。お前のような、あまりにも規格外な人間を愛してしまった俺にと
って、お前を忘れることなんて絶対に無理だ。出来るはずがない。

535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:36:04.44 ID:0JNRPxvt0
えええ!いきなり!支援

536涼宮ハルヒの微笑012 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:36:28.96 ID:sjjYSbZb0
 お前だって、俺がそう考えると思ったから、俺にこの能力を託したんじゃないのか、ハルヒ?
 俺は静かに、そして強く誓った。

 ハルヒが死ぬという事実を何としてでも変えてやる。この俺の手で。

 俺はすぐに計画を練りはじめた。
 これから俺はTPDDを利用し過去に時間遡行して、ハルヒの死の原因を究明し、それを防
ぐために歴史を改変することになる。
 時間は一刻も無駄にはしたくない。俺は早速試しにとばかりに、時間を一分ほど遡行しよう
と考えた。そのときそれは起こった。
 目の前に突然もう一人の俺が現れたのだ。
 つまり一分後の時間平面から時間を一分間逆行した俺だ。実際に試すまでもなく、TPDD
の機能は実証されたのだ。
 一分後の俺は、俺に軽く挨拶し、一分後の世界に戻ると言って目の前から消えた。
 そして俺は一分前の世界への逆行を試みた。体全体がグラっと揺れる感覚の後、それは実に
あっけなく成功した。俺は一分前の俺に軽く手を上げ、元の時間平面に戻った。
 以前感じためまいや吐き気は全くなかった。これは時間移動距離の差によるものなのか。あ
るいはあのときの不快感は、時間移動の方法を隠すために俺に施された処置によるもので、つ
まり目隠しのような状態で車に乗せられれば誰だって酔いやすい、ということなのだろうか。
単純に、車を運転する人より助手席に座る人のほうが酔いやすい、ということなのかもしれな
い。
 今この時間平面上で、STC理論を知りTPDDを得た人類は間違いなく俺だけだ。俺の知
る限りでは、今の時代にはSTC理論の基礎すら出来ていない。それを作るであろうあの眼鏡
の少年はまだ高校生くらいだろうからな。
 つまり、おそらくは人類史上で最初となる時間遡行が今まさにおこなわれたのである。

 やれやれ、まさか俺が輝ける人類初のタイムトラベラーになるとはな。

537涼宮ハルヒの微笑013 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:37:22.87 ID:sjjYSbZb0
 同時に、既定事項を満たすことの重要性に思い至った。朝比奈さんが必要以上に既定事項に
こだわっていた理由を、身を持って理解した。俺がたかだか一分間の時間遡行を怠ってしまう
だけで、その瞬間に歴史は変わってしまうのだ。
 俺は家を出て人気のない路地に移動し、今度は過去一年間の時間遡行を試みた。
 実に簡単だ。そう念じるだけでそれはおそらく可能だろう。
 体が揺れる感覚がきた。移動は完了した。腕時計を見る。そしてそれが何の意味もないこと
に気づいた。時間移動をしたからといって時計の針が正しい時間に合わせて勝手に動いてくれ
るはずもない。それ以前の問題として、俺の腕時計は三本の針のみで構成されたシンプルなア
ナログ時計であり年月は表示されない。
 俺は近くのコンビニエンスストアに足を運び、新聞の日付を見ることにした。過去の七夕で
も使った手だ。
 そして、俺は意外な結果を知ることになった。新聞の上部に記されていた日付は俺の予想と
は違っていた。およそ一ヶ月までしか時間を遡ることが出来ていなかったのだ。
 コンビニエンスストア近くの路地に入り何度か試してみた。過去一年間を三回、半年間を二
回、三ヶ月間を一回、未来については少し気が引けたが、一回だけ一年間の移動を試みた。
 結果は全て同じだった。過去であろうが未来であろうが、俺が移動可能なのは前後一ヶ月間
だけだった。
 ならば、一ヶ月前の過去からさらに一ヶ月前に遡ればどうだ? それなら二ヶ月前に行ける
はずだ。
 だが結果は同じだった。やはり元の時間から一ヶ月以上移動することは出来なかった。
 これはどういうことだ?
 俺は住まいに戻り、その理由を考えてみた。
 朝比奈さんは、少なくとも一ヶ月先から来た未来人ではなかった。実際に俺と朝比奈さんは、
三年間の時間遡行をしたことがある。
 では俺が一ヶ月以上の時間移動が出来ないのはなぜだ? それが俺の能力の限界なのか?
 たかが一ヶ月間の時間遡行で、ハルヒを助けることが出来るのか?
 あるいはそれは可能かもしれないが、その確証は一体どこにあるというのだ。
 いくら考えても、有効な解答が導き出されるはずもなかった。

538涼宮ハルヒの微笑014 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:37:57.80 ID:sjjYSbZb0
 そうやってしばらく頭を抱えていた俺の眼前に、突如として信じられない光景が映し出され
た。
 何の予兆もなく、光や音を発することもなく、その人物は突然俺の目の前に姿を現した。

 朝比奈さん(大)だった。

「随分お久しぶりになりますね、キョン君」
 俺は呆然として、しばらくそのアンバランスにしてかつ完璧なプロポーションを眺めていた。
 我に返った俺はとりあえずの疑問を投げかけた。
「っていうか、いきなり俺の目の前に現れたりなんかして、大丈夫なんですか?」
 朝比奈さんは静かに微笑み、
「問題ありません。もうあなたの頭の中にはSTC理論もTPDDもあるんだもの」
 なるほど、まさしくその通りだった。いずれ朝比奈さんにそれらのテクニカルタームについ
て解説して欲しいと思っていたが、まさかそれが突然俺の頭の中にひょっこり現れるなんて思
ってもみなかったからな。
 最初に俺が聞かなければならないのは、次の一点だった。
「朝比奈さんにこんなことを訊く失礼は承知の上ですが。朝比奈さん、あなたは俺の敵ですか? 味方ですか?」
 俺がこれからやろうとしていることは、明らかに歴史の改変だ。それがもし既定事項でない
のだとすれば、未来人にとって俺は、きっと好ましくない存在になるだろう。
 だが、そんなことは構いやしない。今の俺にはTPDDがある。未来を知らないということ
以外は、未来人とは対等の条件だ。
 だが、朝比奈さんは俺に、変わらない笑顔でこう言った。
「私はキョン君を助けるためにやってきました」
 もともと俺は朝比奈さん(大)に対しては少しばかり懐疑的な立場だ。だが今の言葉に嘘は
全く感じられなかった。そもそも何かを隠すことはあっても平気で嘘を言えるような人ではな
いんだ、この人は。
「解りました。朝比奈さん、俺はあなたを信じます」

539涼宮ハルヒの微笑015 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:38:29.01 ID:sjjYSbZb0
 となれば、次の質問はこれだ。
「教えてください。ハルヒが死ぬことは既定事項なんですか?」
「説明が難しいんですが」
 と前置きをして朝比奈さんは続けた。
「涼宮さんが死ぬことは既定事項ではありません。ですが今こうやって私たちが話しているこ
ともまた既定事項であると言えます」
 正直なところ、何を言っているのか全然解りません、朝比奈さん。
「少し込み入った話になるんですが。未来からの通常の方法による観測では、涼宮さんが死ぬ
という歴史は存在しません。私たちの知る既定事項は、あなたと涼宮さんは生涯を共に暮らし、
二人とも天寿をまっとうします」
 その話は、今の俺にとって何よりも心強いです。でも未来のことを話すのは禁則事項ではな
いのですか?
「あなたはその気になればいつでも自分で未来を見に行くことが出来ます。あなたにはもはや
禁則事項と呼べるものはほとんど残されていません。既定事項を満たすためにお話出来ないこ
とはありますが」
 なるほど、確かにそうだ。
「ですが、今のあなたはその未来に辿り着くことは出来ません。時間移動距離の問題ではなく
です。この時空から未来に行ったとしても、そこには涼宮さんがいない未来が存在するだけで
す。そして涼宮さんが死ぬという過去を観測出来ない未来人は、本来なら今のあなたに会うこ
とは絶対に不可能なことなんです」
「つまり、それは一体どういうことですか?」
「簡単に言えば、今この時空は未来から閉ざされています。例えば歴史が上書きされた場合、
未来からはその結果しか観測出来ません。そして涼宮さんが死ぬことは既定事項ではない。つ
まりこの時空は上書きされる予定であり、本来であれば私はこの時空には決してたどり着けな
いんです」


540以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:38:42.83 ID:QwJBzq/F0
支援

541涼宮ハルヒの微笑016 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:39:07.46 ID:sjjYSbZb0
 俺の頭上で回転するクエスチョンマークが朝比奈さんには見えたようで、
「思い出して、キョン君。長門さんが世界を改変したときのことを。あのとき、改変された世
界に私が赴いて三年前の七夕……いいえ、長門さんさえいればどこでもよかったのだけれど、
そこまであなたを連れて時間遡行すれば、あなたは苦労せずに歴史を再改変させることが出来
たはずです。長門さんの脱出プログラムを必要とせずに。でもそれはされなかった。されなか
ったのではなく出来なかったの。長門さんに改変された世界は、最終的には長門さんの再改変
によって上書きされました。つまり未来からでは、上書きされる以前の改変世界には辿り着く
ことが出来ないの」
「なんとなくですがそれは解りました。では朝比奈さんはどうやってここに来ることが出来た
んですか」
「今私がこうしてこの時空に存在しているのは、預言者、言葉を預かる者と書くほうね、その
人の力によるものなんです」
 預言者……ですか?
「彼は未来人組織の中でも謎中の謎とされる人なの。いつの時代のどこの人であるかというこ
とも解りません。彼は私たち一般的な未来人が知る、歴史の上書きされた結果だけではなく、
歴史が変わる過程をも知り得る、特異な能力を持つ存在だとされています」
 俺は終わらない夏休みと長門のことを思い出した。
「預言者の話をする前に、あなたについて話す必要があります。少し長い話になりますが。今
までのあなたの行動。これは全て既定事項だったんです。例えば、あなたが三年前の七夕に涼
宮さんを手伝ったこと、あるいはSOS団結成のきっかけを与えたこと」
 それはどちらかと言えば、俺が選んだ行動ではなく、朝比奈さんに与えられた行動だと思う
んですが。
「既定事項というものは、そう簡単に覆るものではありません。未来人が過去に介入すること
は実はそんなに稀なことではないんです。だとしたら、あなたは歴史や未来をすごくあやふや
なものだと感じるかもしれません。でも実際はそうではないんです。なぜなら未来人の介入も
含めて全てあらかじめ定められたこと、つまり既定事項なんです。例えば、幼かった頃の私と
キョン君が少年を交通事故から守ったときのことを思い出してください。あなたはあれをあた
かも他の未来人の干渉から歴史を守るために取った行動だと思ったかもしれません。でもそれ
は違うんです。他の未来人組織が彼を襲ったのも含めて既定事項なんです」

542涼宮ハルヒの微笑017 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:39:44.45 ID:sjjYSbZb0
 にわかには信じがたい話だが、それならいつぞやの敵対未来人組織が既定事項をなぞるだけ
の行動にクサっていたのには納得がいく。
「私たち未来人は、涼宮さんが作った時間断層を発見して以来、その時代周辺の歴史を丹念に
調査しました。そして驚くべき事実を発見したの。それは未来に対して重大な意味を持つ事件
がこの時代のこの地域に集中していたこと、それらの事件には私たちの時代の未来人が数多く
介入していたということ、そして……それらの事件の全ての中心には、キョン君、あなたがい
たということ」
「よく解らないんですが……、それは朝比奈さんたちがそう仕向けたんじゃないんですか?」
「いいえ。私たちは過去の事実に従って行動するだけです。私たちはなぜあなたが未来に関す
る全ての重要な分岐点に関わっていたのかを徹底的に調べました。その生い立ちから、生涯ま
でを。これは大変な作業だったわ。だって、あなたの生涯とその周辺を調べるためには、あな
たが生きたあらゆる時間平面に対して、常に誰かが監視する必要があったから。そのひとりが
まだ幼かった頃の私。当時の私は涼宮さんの監視係であったと同時に、あなたの調査係でもあ
ったの。これは後から知ったことだけどね」
 なるほど、それは大変そうだ。仮に俺の寿命が七十年だとすれば、それを詳細に知るには七
十年分とまではいかなくとも、相当の労力を費やさなくてはならないだろう。
「でも、結局はその調査は実を結ばなかった。未来人のあらゆる観測・調査によっても、あな
たがなぜそのような立場になったのかずっと原因不明のままだったんです。観測上では、あな
たは一方的に涼宮さんの起こす騒動に巻き込まれ、紆余曲折の末に涼宮さんと結婚し、そして
その生涯を平穏に送った、普通の人間です」
 じゃあ、今ハルヒが死んで、こうやって朝比奈さんと話している俺は何なんだ?
「私が今こうしてキョン君と話していることは、他の未来人の誰も知らないことです。私と預
言者だけが知る事実。私が預言者から直接、ここに来てキョン君に助言を与えるようにと指令
を受け、そしてこの時空間の座標を与えられたの。だから私は今ここに来ることが出来ている
んです」
 この朝比奈さんも、正体の解らない何者かの指示で操られているのか。俺は今まで朝比奈さ
ん(小)に対する朝比奈さん(大)の態度に釈然としないものを感じていたが、結局は朝比奈
さん(大)のほうも同じような立場だったんだな。今度から怒りの矛先はその預言者とやらに
向けることにしよう。

543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:39:57.29 ID:o8MglHpxO
神支援

544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:40:19.50 ID:0JNRPxvt0
お出かけ前支援

545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:40:32.72 ID:hm7iCkAi0
支援

546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:46:28.66 ID:o8MglHpxO
さらに支援

547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:48:10.39 ID:QwJBzq/F0
もっと支援

548以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:49:55.84 ID:Gnz98/wYO
どこまで1章なのか支援

549以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:51:16.14 ID:IIXbfjiA0
規制うざいよ規制

550涼宮ハルヒの微笑018 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:52:11.65 ID:sjjYSbZb0
「預言者の話は、私には信じられないことばかりでした。だってそうでしょう? キョン君が
涼宮さんの死と引き換えに、人類初のタイムトラベラーになるなんてこと」
 その意見には俺も全面的に同意します。
「そして、さらに預言者は驚くべきことを言っていました。あなたは誰の制約も受けずに歴史
を改変する権利を得た唯一の人物なの。言い換えればあなたは物語の主人公のようなもの。物
語の世界が主人公の望まないものになることはあまりないでしょう? 例えば、涼宮さんはあ
なたの知るとおり何度か世界を作り変えようとしました。でもあなたはそれを望まなかった。
だからこそ、世界は改変されることなく存続し続けていると言えます。つまり、あなたはあな
たが望む歴史を自ら切り拓くことが出来る存在なんです」
 俺はそんな大それた存在のつもりは全くないんですが。俺が何を望むかといえば、今までと
変わりない無難な生活くらいです。
 もっとも、多少の刺激は欲しいとは思っていたし、実際にそういうスパイスは高校生活中に
無闇やたらに散りばめられていたんだが。
「最後に、預言者からあなたに対する伝言です。私たち未来人は今まであなたに様々なヒント
を与えました。そのことをよく思い出して。これから涼宮さんを復活させるまでの過程におい
て、キョン君は長らく私たちの援助を受けられない状態が続くことになります。なぜそうなの
かは、私には詳しくは解りません。預言者が教えてくれなかったから」
 つくづく、その預言者とやらはもったいぶった奴なんだな。おそらくはそれを教えないこと
も含めて既定事項なんだろうが。
「だからキョン君、あなたはあなたが思うとおりに、あなたが信じる行動をとってください。
その結果、最終的には私たち未来人が知る歴史に至ると私は信じています。でももしかしたら
そうならないかもしれません。これは私たち未来人にはどうすることも出来ません。あなたが
望む未来を、あなた自身がこれから決めなければなりません」
 ひと通り話し終えた朝比奈さんが、身につけていた腕時計を取り外した。以前朝比奈さん
(小)が使っていたのを見たことがある、あの電波時計だった。
「これは私からのプレゼント。これからのあなたにはきっと役に立つと思うから」
 朝比奈さんは笑顔を取り戻し、それを俺に手渡した。

551涼宮ハルヒの微笑019 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:53:02.27 ID:sjjYSbZb0
「それでは私は戻ります。全てが終わったら、是非私のいる未来に遊びに来てください」
 それは俺にとっても興味のある提案です。楽しみにしてますよ朝比奈さん。それに全ての黒
幕である預言者とやらに、俺も少なからず言ってやりたいことがありますし。
 ああ、待てよ。
「朝比奈さん、最後に教えてください。俺は時間移動を一ヶ月間しか出来ないんですが、これ
はなぜですか?」
「ごめんなさい。禁則事項です」
 朝比奈さんは以前と変わらない、イタズラっぽい笑顔を見せた。
「でも答えはすぐに見つかると思います。それがあなたにとっての既定事項だから」
 ううむ、そういうものなのか。
「がんばってねキョン君。あなたが私たち人類初のタイムトラベラーなんだから!」
 ありがとうございます。がんばるしかないですからね俺は。人類初とかはさて置いておいて
も。
 そして朝比奈さんは俺の目の前から姿を消した。
 昔だったら俺は意識を失わされているところだろうな。

552以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:54:46.60 ID:/uJYnCq60
疎遠

553300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 16:55:58.15 ID:sjjYSbZb0
第一章終わりです。
連投規制めんどいですね(ノー`)

554以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:57:02.34 ID:XcRYb0LDO
ネ申スレ保守

555以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:57:50.13 ID:o8MglHpxO
>>553
に、二章はいつ投下ですか!?

556以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:58:02.12 ID:bVZdTA9eO
ネ申 降臨

557以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:59:14.96 ID:Gnz98/wYO
乙!GJ!続きwktk!

1日1章が嬉しいな。長く楽しめるし

558以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:59:41.25 ID:o8MglHpxO
夏の企画SSの作者さんか?いや、何となく

559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 16:59:50.14 ID:/uJYnCq60
>>553
今川棚

560300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:01:56.08 ID:sjjYSbZb0
どうしましょう?
エピローグまで書きあがってるんで個人的には一気に行っちゃいたい気分
なんですがw
SSは初挑戦です。

561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:03:26.89 ID:fqMr0dSs0
テキストかドキュメントファイルにしてうp

562以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:03:42.49 ID:A/cWxf5p0
>>560
作者の好きにしてくれ。でも、長いみたいなんで30分おきぐらいにしてくれると嬉しい

563以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:04:49.12 ID:QwJBzq/F0
>>560
まかせる!
どういう投下になっても
俺はwktkするだけだw

564以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:05:25.96 ID:o8MglHpxO
>>560
初でこのクオリティかよ…凄すぎ…orz

ここのwikiにそのまま投稿とかはどうだい?

565以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:06:40.23 ID:M3PHrIHP0
追いついた・・・
支援出来んかった。

休憩を・・・

566以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:06:57.20 ID:fqMr0dSs0
うp!うp!

567以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:07:49.00 ID:EqeW0vSKO
今追い付いた
投下の形はどうあれ支援いたす

568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:08:57.49 ID:o8MglHpxO
あるいは投下時刻を決めてくれたらそれに合わせて支援するけど

569300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:09:05.72 ID:sjjYSbZb0
1レスずつ書き込んだほうが、なんかライブ感があっていいかなぁとw
全部書き終わったらtxtとwordファイルでどっかにうpしてみます。
では、5分後くらいから第二章いってみたいと思いますm(_ _)m

570以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:09:42.62 ID:M3PHrIHP0
wktk

571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:10:42.45 ID:o8MglHpxO
●<バッチコーイ

572以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:11:44.54 ID:A/cWxf5p0
どーぞ↓

573以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:15:10.14 ID:qLTfzZLF0
初心者とは思えないwww
このクオリティは谷川流改じゃないのかwww
wktkが泊まらない!!

574以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:16:40.34 ID:M3PHrIHP0
そろそろかな・・・?

575涼宮ハルヒの微笑020 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:17:14.98 ID:sjjYSbZb0

第 二 章


 とにかく時間移動距離を伸ばす必要がある。たった一ヶ月間の時間移動でハルヒを救えると
は思えない。
 俺には協力者が必要だ。朝比奈さんは言った。今までのヒントをよく思い出して、と。
 俺はすぐに、命を救い亀を与えたあの少年のことに思い至った。この時代でタイムトラベル
に関する話を切り出せるのは、彼しか思い当たらない。彼に接触を試み、協力を仰がなければ
ならない。
 ハルヒは少年が近所に住んでおり、たまに勉強を教えていると言っていた。ならばハルヒの
母親に聞けばおそらく住所は解る。そしてそれはその通りだった。
 少年の家を訪ね、少年の部屋に通された俺は、ストレートに接触を試みることにした。
 俺の外見は高校生の頃に比べて多少は背が伸びていたものの、顔つきなどはあまり変わって
いない。だが念のために俺は、以前君を交通事故から救った者だと告げた。少年はすぐに思い
出したようで、
「あのときはありがとうございました。当時は僕もまだ子供で、ロクなお礼も言えませんでし
たから。あらためてお礼申し上げます」
 いかにも聡明そうな態度で深々と頭を下げた。
「礼は別にいいんだ。俺は今日、君にあるお願いをするためにやってきた」
「それはどういったことですか?」
「君にタイムトラベルに関する助言を得たい」
 俺の言葉に、少年は少なからず驚いた表情を見せた。今の少年は俺が初めて長門から電波話
を聞かされたときのような気分なんだろうな、と推測した。
 だが、少年の反応は予想とは異なっていた。
「あなたはなぜ僕が時間移動の研究をしていることをご存知なのですか?」
 既に研究に着手しているということか。ならば話は早い。

576涼宮ハルヒの微笑021 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:18:56.90 ID:sjjYSbZb0
「もしかして、あなたが亀を川に投げ込んだことや、あの記憶媒体もそれと関係があるのです
か?」
 記憶媒体の住所はこの家ではなかったはずだ。そう言う前に少年が解答をくれた。
「記憶媒体はご存知ないですか? 僕は友人からそれを譲り受けたのですが、もしやあなたが
手配してくれたのかと」
 なるほど、巡り巡って結局はこの少年の手に渡っていたわけか。確かに辻褄は合う。
 さらに言えば、朝比奈さん曰く時間平面理論の基礎中の基礎だという、ハルヒが書いたわけ
の解らん論文めいたものも大いに関係があるんだが。
「涼宮さんの論文は僕が時間移動の研究を始めるきっかけになりました。そして今も時間移動
に関するインスピレーションを与え続けてくれています。それに亀が投げ込まれたときの波紋
のイメージが合わさって、さらに論文の理解度が強化されています。時間の流れと水の流れと
いうものは、次元こそ違えど共通する部分は多いですからね」
 そんなものなのか?
「ええ。また、あの記憶媒体ですが、あれは現存するいかなる電子的記憶媒体のフォーマット
とも異なっていて、正しいデータの読み出しすら困難です。現在のところ、データのパターン
分析をおこなっているところで、それによればかなりの部分のデータが破損しています。しか
しながら、これは偶然に発見したのですが、破損していないデータの構成パターンが、実は涼
宮さんの論文のデータと一致するんです。おそらく今とは異なるデータの扱い方をすれば、パ
ターンではなく詳細な情報まで全て一致すると考えられます。ところであなたは涼宮さんのこ
ともご存知なんですか?」
 俺はそれには答えず、話を続けた。
「それで、俺の助けには応えられそうか?」
「タイムトラベルに関する助言とおっしゃいましたよね。正直なところそれは出来ません。し
たくないと言うことではなく、物理的に無理だという意味です。現状ではタイムトラベルは理
論上可能とされていますが、それをどうやって実現するのか、全く解っていない状態ですから」
 現時点では確かにそうだろうな。ならば俺は賭けに出るしかない。
「実は、その論文や記憶媒体よりももっと重要なデータ、それはタイムトラベルの理論の核心
と言ってもいい。それを俺は持ってるんだ。それを知りたいとは思わないか?」

577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:19:24.81 ID:M3PHrIHP0
支援

578涼宮ハルヒの微笑022 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:20:51.11 ID:sjjYSbZb0
 その重要なデータとは、言うまでもなく俺の頭の中に存在するSTC理論そのものだ。
 これは歴史改変にあたることなのかもしれない。もしかすれば、本来ならもっと後になるS
TC理論の発見を前倒しすることになるからだ。
 だが、俺は疑問に思っていることもある。
 STC理論について、以前朝比奈さんは言語では伝えられない概念だと言った。ではそれを
人類はどうやって獲得し普及させたのか。
 また朝比奈さんは、未来の人類は今で言うコンピュータネットワークのようなものは使用せ
ず、それは人間の脳内に無形で存在する、とも言った。つまり、未来の人類は言語を用いずに
人間の脳から脳に直接情報を伝達する術を得たということだ。朝比奈さんが時空を越えたテレ
パシーのようなもので未来と連絡を取り合っていたこととも符合する。
 つまり人類はSTC理論よりも先に言語ではないコミュニケーションの手段を完成させたと
いうことなのかもしれない。
 だが俺はひとつの仮説を立てた。それは人類の中の一人が偶発的にSTC理論とTPDDを
手に入れ、それが次第に波及したのが未来の姿ではないのだろうか、と。そして、その一人と
いうのが実は俺のことなんだと。
 もっとも、そんな仮説をあれこれもてあそんでいる暇はない。俺は古泉とは違う。俺は朝比
奈さんの言葉に素直に従うことにした。俺は俺の信じる道を進むしかない。
「あなたがそれほど重要なデータを持っているのであれば、僕の助言など必要ないように思え
ますが」
「その問いには正直うまく答えられないんだが……俺にはその理論をいまひとつ理解しきれな
いんだ。君がもしそれを得ればきっと俺以上に理解出来るように思う」
 これは全くの本心だ。俺はSTC理論を得た今でさえ、ハルヒの論文を読み返してもさっぱ
り理解出来なかったからな。
「なるほど。ではよろしければそれを僕に見せていただけますか?」
「それを伝えるのには条件がある」
 少年はやや躊躇したが、その条件を教えてくれと言った。

579以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:22:01.68 ID:A/cWxf5p0
4円

580涼宮ハルヒの微笑023 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:23:02.62 ID:sjjYSbZb0
「俺が持っているデータだが、もしかしたら君にうまく伝わらないかもしれない。その場合は
この話はなかったことにして、今日起こったことはすっかり忘れて欲しい。また、伝えるのに
成功した場合もそうだが、今日のことは誰にも話さないで欲しい。それを約束出来るか?」
 もしうまく伝えられなかった場合、今回の試みは明らかに失敗に終わる。少年には今日のこ
とは全て忘れて今までどおりの生活を送ってもらわなければならない。
「なるほど。それがそれだけ重要なデータなのだということは理解しました。ですが伝わらな
いかもしれないとはどういうことでしょうか。そのデータを紙でも電子媒体でもいいのですが、
何らかの方法でいただけさえすれば、僕はなんとかそれを読み取る努力をしますが」
 少年の疑問はもっともだった。だが、何しろそれを伝達出来るかどうかは、俺にだって解ら
ない。それは言葉で伝えられるものではない。
 言葉を用いない概念は、言葉以外のものでしか伝えられないのだ。
「今は残念ながらその疑問には答えられない。だがさっきの約束を守ると言ってくれれば、今
すぐにでもそのデータを伝える努力はする。君に伝わるかどうかは、さっき言ったように俺に
も保障は出来ないんだが」
 少年はしばらく迷う素振りを見せたが、
「解りました。先ほどの条件、お約束します」
 どうやら不安よりも学者的好奇心が勝ったようだった。俺は少年の目を見て、おそらく大丈
夫だろうと予想した。
「では、まず今の時刻を覚えてくれ。ああ、腕時計はダメだ。部屋の時計を見てくれ。そうだ。
忘れないでくれ」
 少年は意味が解らないという表情をしていたが、一応は素直に従ってくれた。
 俺は少年の手を取り部屋の隅の方に移動させ、朝比奈さんに連れられて初めて時間移動した
ときのことを思い出しながら言った。
「肩の力を抜いてリラックスして、そして目を閉じてくれ」
 五分後のこの部屋の同じ位置に時空間座標を設定し、時間移動を開始する。そして体がグラ
っとする感覚がきた。
 五分後の世界には五分後の俺と少年がいて、何やら話し込んでいた。
 少年は到着するなり、体全体の力が抜けたようにその場に座り込んだ。

581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:24:00.38 ID:kwGK/1RaO
なんだこの上手さは……

582涼宮ハルヒの微笑024 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:25:09.28 ID:sjjYSbZb0
 俺は少年が、いきなり別の俺たちが目の前に現れたことに対して驚きのあまり腰を抜かした
のだろうと思った。
 が、少年はすぐさま部屋の時計に目をやり、さらに驚愕の表情を顔に浮かべてこう言った。
「こ、こんなことって……これが時間移動……今までの僕の理解なんて、ほんの氷山の一角の、
そのさらに欠片のようなものだったなんて……」
 どうやら俺とは根本的に頭の出来が違っているらしい。少年は今まさに自分がタイムトラベ
ルをおこなったということをたちどころに理解したようだった。
 何はともあれ、目的は無事達成されたようだ。あとは少年次第だ。俺たちは元の時間平面に
戻った。

 少年は、興奮しつつも、ゆっくりとした口調で語りだした。
「涼宮さんの論文は、時間移動の基礎の理論と言えます。時間はアナログではなくデジタル情
報であり、それらのデジタル情報を平面に例えて、積み重なったその平面をY軸方向に移動す
ることで時間移動を可能にする、という理論です。今言ったのは言語化可能なレベルでのモデ
ルを用いた説明であり、時間移動の本質は人間の脳内に存在する時空間の知覚システムを追及
しないと解明出来ないと考えられます」
 脳内システムはともかくとして、前半の話は今まで俺が散々色んな人から聞かされてきた内
容と同じだ。
「今の時間移動をとおして、僕は時間移動の基礎理論を得たとともに、僕の脳内の知覚システ
ムが改変されたのだと思います。おそらくですが、これは言語で概念を説明出来るものではな
く、実際に体験を通してでしか得ることが出来ないものだと推測します」
 まさにその通りだ。どうやら少年は時間移動の刹那に、ハルヒの論文、つまり時間平面移動
理論の基礎を完全に理解したようだった。

583以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:25:53.40 ID:M3PHrIHP0
支援

584涼宮ハルヒの微笑025 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:26:54.86 ID:sjjYSbZb0
「早速で恐縮なんだが、ひとつ教えて欲しいことがある。仮説でもなんでも構わない。俺は時
間移動を最大で一ヶ月間しか出来ないんだ。例えば一ヶ月前からさらに一ヶ月遡ろうとしても
ダメだった。その理由が解るか?」
 俺は正直なところ明確な答えが返ってくることは期待していなかった。
 だがそれに対して少年は即答した。
「あなたの脳内における時空間の知覚システムがまだ開発されきっていないことが原因だと考
えられます」
 知覚システムの開発? それはどういうことだ?
「これは少し実際の概念とは異なるかもしれませんが、イメージで説明すれば、あなたはまだ
時間移動に慣れていないのだと思います」
 なるほど、そういうことか。では時間移動距離を伸ばすためにはどうすればいい?
「時間移動の回数を重ねることです。要するに訓練ですね。そうすればいずれ時間移動距離は
伸び、飛び石的な移動、つまり同一方向への連続的な時間移動も可能になると思います」
 時間移動に訓練が必要だとは。実は案外大変なことだったんだな。
 朝比奈さん(小)は正直に言って頼りない人だったが、実はそういった訓練を充分に積んだ
エキスパートだったってことだ。
 話しているうちに五分はゆうに過ぎていた。どうやら話し込むあまり、俺たちは五分前から
移動してきた俺たちの姿に気づかなかったようだ。
 さらに少年は話を続けた。
「この理論をベースに、今後人間の脳の機能、特に知覚機能をさらに発展させる研究が可能に
なると思います。例えば言語を用いずに意思をコミュニケート出来るような、そういったこと
が実現するかもしれません」
 なるほど。やはり全ては今このとき、この場所から始まったのかもしれない。
「研究には長い時間が掛かると思われます。脳医学の分野からのアプローチもさることながら、
おそらくあの記憶媒体のデータを解析することから始めるのが近道のように思われます。あの
データの出所は不明ですので不安はありますが、それでもデータの一部が涼宮さんの論文と一
致するという点を考えれば、試してみる価値は大いにあります」

585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:26:59.22 ID:qLTfzZLF0
ハカセ君カッコヨスwwww

586涼宮ハルヒの微笑026 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:28:31.91 ID:sjjYSbZb0
 少年はなおも続ける。
「破損していないデータは、涼宮さんの論文と共通する箇所を基に、情報の変換パターンを解
析すれば、比較的すぐに読み解けると思います。破損したデータを解析するのは、これは一朝
一夕では出来ません。少なくとも破損していないデータを全て読み解き、その内容を完全に理
解することによりそれらの中から本来のデータ部分と冗長データ部分を確実に切り分け、デー
タの解読方法を確定させることによって初めて破損部分のデータの伸張・復号が可能になりま
す。さらに、その中で冗長データでは補えない部分を、別の理論で補完する必要性もあります。
つまりは復元の糸口を得るためだけにもそれなりの時間がかかり、全てのデータを復元するの
にはさらに時間が必要だということです」
 後半の用語は全く理解出来なかったが、それは結局のところどれくらいの時間がかかるもの
なんだ?
「おそらくは、破損していない部分におよそ三十年、破損している部分におよそ二百年、とい
ったところだと思います」
 軽いめまいを覚えた。どうも学者様の時間感覚は、常人とは少し違うらしい。
「それは大勢で手分けすれば時間が短縮出来るものでもないのか?」
「今ざっと算出した所要時間は、脳内に時間移動の基礎理論が出来上がっている人間が解析す
ることを前提にしています。つまり僕のような、時間移動をおこなったことにより時間移動理
論を獲得した者が研究に従事したとして、それだけの時間がかかるということです。大量の人
間に時間移動を経験させ、それらの人たちが研究をすれば、あるいは研究に要する時間は短縮
可能でしょう。しかしながらそのような方法は極めてリスクが高いと考えます」
 それはなぜだ?
「時間移動によって一体何%の人が時間移動理論を得られるのか、僕にもそれは解りません。
理論を得られなかった人には、あなたがさっき僕に念押ししたように、時間移動の事実を隠し
てもらわなくてはならないでしょう。ですが情報というのは確実に漏洩し拡散するものです。
いたずらにそういった実験を繰り返して、時間移動を経験した人が増え続け、その情報がどん
どん広まっていくような世界は、僕にとっては非常に恐ろしいものに思えます」
 確かにその通りだ。さすがに頭がいい。
 つまりはそういった事情により、信頼のおける人間のみで構成され、機密を守りつつ、実験
や研究を続けているのが未来人組織ということになるんだろうな、と俺は想像した。それであ
れば、やたらに禁則事項が多いという組織の方針にもなんとなく納得がいく。

587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:29:29.76 ID:M3PHrIHP0
支援

588涼宮ハルヒの微笑027 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:30:03.55 ID:sjjYSbZb0
「この時間平面上の人類で時間移動の経験があるのは、おそらく俺たち二人だけだと思って間
違いない。君は今までどおり、時間移動に関する研究を続けてくれ。そうして何か有益な情報
が得られたら俺に教えて欲しい。時間移動距離に関することは可能であれば今すぐにでも情報
が欲しい」
「解りました」
 俺は自分の連絡先を伝え、少年の携帯番号と、念のために記憶媒体を入手した人物の住所を
手帳に記した。
「最後にひとつだけ教えてください。これは個人的な興味からなのですが。あなたは未来人に
会ったことがあるんですか?」
 ある、と俺は正直に答えた。
「そうすると、あのときあなたが僕を交通事故から守ってくれたのは、もしかしたら未来人が
関係しているのですね」
 重ねていうがさすがだ。甚だしく勘がいい。
 こうして少年は、将来的に未来人組織が発足するための基礎となる研究を始めた。なんとな
くではあるが、これはきっと既定事項なんだろう。そうなんですよね、朝比奈さん?

 やれやれ、まさか俺が未来人組織に一枚噛んでいたとはな。

589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:30:31.71 ID:Xdc+QmMB0
支援wkrk

590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:31:09.83 ID:A/cWxf5p0
二章終わりか?

591涼宮ハルヒの微笑028 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:31:16.12 ID:sjjYSbZb0
 俺は今後のハルヒ救出活動にあたってとりあえずの難題を抱えることになった。
 俺はすぐにでも仕事を辞めて、救出活動に専念するつもりだ。
 まず俺は、家族に何と言うべきかについて悩んだ。当然ながら、正直に理由を話すわけには
いかない。
 あれこれ悩んだが、結局俺はしばらく旅に出るとでも言っておくのがいいのだろうと考えた。
 きっと家族は俺のことを心配するだろうが、今の俺にとってはハルヒ救出が最優先事項だ。
 そしてもうひとつは極めて現実的な問題。具体的に言えば、どうしても金銭面で抜き差しな
らない状態になることが容易に想像出来る。
 何しろ俺は就職後間もなく貯金も少ない状態でハルヒと結婚しちまったんだからな。結婚っ
てのが披露宴なんかしなくても充分金のかかるものなんだと俺はそのとき初めて知った。
 そして、言うまでもなく貯金は既に使い果たしている。
 ただでさえこれから心配をかけるであろう家族に、事情も説明せずに金銭面の援助を申し出
るわけにもいかない。
 せっかく時間移動が出来るようになったんだからギャンブルで一気に稼いだらどうだ、とも
考えたが、その案は俺自身が即座に却下した。
 たった一分間の時間移動、それですら俺は既定事項の遵守ということに神経を尖らせるよう
になった。
 仮に俺が競馬で不当に儲けたとする。そうすることによって、俺が儲けた金額の分だけ確実
に他の誰かの取り分が減るのだ。それが一体どれだけ歴史に影響を及ぼすのか、俺には全く予
想不可能だった。
 たとえ朝比奈さんが言う閉ざされた歴史だとはいえ、そのことで知らない誰かを不幸にする
のはさすがに躊躇われる。

592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:31:27.03 ID:M3PHrIHP0
支援

593以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:31:40.26 ID:qLTfzZLF0
しししっしえん

594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:32:01.29 ID:A/cWxf5p0
早漏支援orz

595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:32:26.40 ID:q6JvjderO
上手過ぎね?支援

596涼宮ハルヒの微笑029 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:32:37.72 ID:sjjYSbZb0
 ならば古泉経由で元機関に金銭面の援助を得ることが出来ないか?
 やはり古泉であっても事情を説明するわけにはいかない。STC理論やTPDDの存在をむ
やみに拡散させるのが正しいことでないのは明らかだ。
 古泉は未来人の存在を知ってはいるが、具体的な時間移動の方法についての知識を持ってい
るわけではないだろう。
 そして、古泉の性格からすれば援助の理由を聞きたがるに違いなく、俺にはそれを黙りとお
す自信はなかった。
 おまけにハルヒの入院費用についても、古泉が立て替えてくれている。返済はいつでも構わ
ないと古泉は言ってくれた。そんな状態でさらに資金援助を依頼するのはさすがに虫のいい話
だった。
 そして、そういった理由以上に、俺はこれ以上古泉や元機関の人たちを巻き込むわけにはい
かないと考えていた。
 過去の戦友を俺の個人的な都合で再び戦場に赴かせるようなことは、俺には出来なかった。

 事情を説明しなくとも、快く助けになってくれそうな人。
 そうだ、俺には思い当たる人物がいるじゃないか。
 朝比奈さんの同級生で、朝比奈さんが未来に帰ってしまった後もハルヒや俺とつきあいのあ
る、元SOS団の名誉顧問のあの人が。
 俺はダメ元で鶴屋さんにアポイントメントを取り付けた。

 数年ぶりに鶴屋家の屋敷に足を運んだ。既に鶴屋さんは鶴屋家の新しい当主となっていた。
「ハルにゃんはほんとに悔やまれるね……」
 と言ってくれた鶴屋さんに、俺は深々と頭を下げた。
「話があって来たんでしょ。まあ上がんなよ」
 いつか、朝比奈さん(みちる)が寝泊りした離れに通された。
 俺はどう話を切り出そうかとしばし逡巡したが、思い切って単刀直入に要件を伝えることに
した。
「申し訳ないです。理由は詳しくは話せないんですが」と前置きしたうえで、
 とある事情のため仕事を辞めないといけなくなり、またしばらく仕事に就くことも出来ず、
とても厚かましいお願いですがしばらくの間金銭的な援助をお願い出来ないでしょうか、と。

597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:33:31.42 ID:M3PHrIHP0
支援


598涼宮ハルヒの微笑030 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:33:50.95 ID:sjjYSbZb0
 ひと通り聞き終えた鶴屋さんは、いつもの調子で、
「いいよっ」
 と、俺の身勝手な要望を驚くほど簡単に受け入れてくれた。
 それどころか、鶴屋さんはこんなことを言い始めた。
「そろそろ来る頃じゃないかと思ってたんだっ、キョン君。いや、ジョン・スミスと呼んだ方
がいいのかなっ」
 意表をつかれた。ジョン・スミスという名前を知り得るのは、俺とハルヒと未来人以外あり
えない。長門ですら知っているかどうか。
 その単語がどうして鶴屋さんから出てくるんだ?
「あれれ? この話はまだ言っちゃいけないことだったのかな?」
 鶴屋さんが実は未来人だったのか、あるいはTFEI端末だったのか、などと疑っている俺
に、鶴屋さんはその理由を語り始めた。
「古泉君が所属していた機関については知ってるよね?」
 肯く。
「あたしんちが、その機関のスポンサーになってたことも古泉君から聞いてるよね?」
「ええ、聞いてます」
 鶴屋さんは俺と古泉のヒソヒソ話の内容まで知っているのか?
 などと訝しげな表情を見せていたであろう俺に、鶴屋さんは驚愕の事実を告げた。

「古泉君の機関の創設者。それがキミ、ジョン・スミスさっ!」

 文字どおり、俺は腰を抜かした。
 それを見て控え目に笑う鶴屋さんの話を総合すると、こういうことだった。
 とある理由で鶴屋家に出入りするようになったジョン・スミスは、当時の当主であった鶴屋
さんの父親の助力を得て機関を作り上げたのだそうだ。鶴屋さんがまだ中学生だった頃だ。
「その頃のことはよく覚えてるよ」と鶴屋さんは言った。
「ジョンはしばらくこの部屋で寝泊りしてたしねっ」
 それから数年後、俺が高校一年だった頃の初夏、草野球大会で俺と鶴屋さんは出会った。そ
のとき鶴屋さんは俺にジョン・スミスの面影を見出し、俺とジョンが同一人物ではないかとい
うことに思い至ったのだという。

599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:34:11.72 ID:qLTfzZLF0
古泉なら別に大丈夫じゃないかとおもった支援

600涼宮ハルヒの微笑031 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:35:28.98 ID:sjjYSbZb0
「でも鶴屋さんは、俺のこと普通の人間だって言ってたじゃないですか」
「当時のキョン君はまだ普通の人間だったしさっ」
 確かに。今ではすっかり未来人という立場に片足くらいは突っ込んでる状態だけどな。
「まぁからかい半分で色々とキミに口滑らしちゃったりはしたけどさっ。でも、先に口滑らし
たのはジョンの方なのだっ!」
 今思い起こせば、俺に地球の未来がかかってるとか、未来人と宇宙人のどちらを取るか決め
とくようにとか、そんなことを言われたな。鶴屋さんによれば、これから過去に行くことにな
る未来の俺――ええい、ややこしい――は、どうやら過去の鶴屋さんに色々と情報を漏らして
いるようだ。
 そんな鶴屋さんの話に驚きつつも、俺はこの先に待っている、かなり真剣に取り組まなくて
はならない事態について考える羽目になった。
 俺があの構成メンバーの解らない、いや構成人数すらも解らない謎めいた、と言うよりほと
んど謎ばかりの超能力者機関なんてものを立ち上げなきゃならんのか?
 いずれ過去に行って、どこにいるのか、それどころか古泉以外は誰なのかも解らない超能力
者たちを探し出さなくちゃならんのか?
 これも既定事項なんですか、朝比奈さん?

 やれやれ、まさか俺が超能力者機関に一枚噛んでいた……どころか首謀者だったとはな。

 そういうわけで、俺は鶴屋さんから金銭的援助を受けることになった。恐縮しきりの俺に対
して鶴屋さんは、
「キミがこれから作る機関とやらに、鶴屋家は一体どれだけ投資したか知ってるかい? それ
に比べれば、当面キョン君を食べさせるくらい全然わけないさっ!」
 ほんとに、何から何までお世話になりっぱなしです。鶴屋さん。
「いやー、実はジョン・スミスには、私もかなり世話になってるのさっ!」
 今日一番の疑問だ。俺がこの鶴屋さんに対して出来る世話なんて、一体この世の中のどこに
あるというのだろうか?
「キョン君、がんばんなよっ。キミにハルにゃんと地球の運命がかかってるんだからねっ!」
 これから俺が何をしようとしているのかさえも、鶴屋さんはお見通しのようだった。

601涼宮ハルヒの微笑032 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:36:52.47 ID:sjjYSbZb0
 鶴屋家を訪問してからしばらくの間、俺は時間移動の訓練に明け暮れた。
 少年が言うように、時間移動の回数を重ねるたびに、少しずつではあるが、時間移動距離は
伸びていた。
 そして、それを三日くらい続けた後、俺はその事実に呆然とした。
 ほぼ休憩なしに訓練をおこなって、一日あたりに二十分程度伸びることが解った。計算して
みると、時間移動距離を一ヶ月から一年に伸ばすために24120日かかる計算だ。
 ……おい待てよ、これってどんどん過去が遠ざかってないか?
 しばし頭の中が真っ白になっていた俺に少年から連絡があった。渡りに船だ。
「お話ししたいことがあります。今から僕の家にご足労願えますか?」
 少年の家に着くなり彼はこう話を切り出した。
「良い報せが一つあります。もう一つは私からの質問です。よろしいですか?」
 頷いて、続きを促した。
「まず良い報せのほうです。訓練のことについてですが、あなたの時間移動距離は伸び悩んで
いませんか?」
 まさにその通り。それもかなり絶望的に。
「一般的に人間の脳が何かを学習するとき、その学習効果は大まかに言うと連続的な伸びを示
すものと非連続的な伸びを示すものの二種類に分けられます」
 それはなんとなくだが俺にも理解出来る。学習によって少しずつしか効果の上がらないよう
なものもあれば、ある日を突然効果が飛躍的に上がるようなものもある。
「その通りです。脳内における、時間移動に関する知覚分野の位置からの推測ですが、時間移
動距離を伸ばすための学習効果は、後者に該当すると考えられます」
 要するに、あきらめずに訓練を継続すればいずれ効果は飛躍的に伸びるということだな。
「そういうことです。おそらく飛び石的時間移動もある日突然出来るようになると思います」
 なるほど。でもどうしてそれが解るんだ?
「先日の出来事以来、僕は自分の脳内の働きを直感的に理解出来るようになりました。例えば
こうしてあなたと話している今も、僕の脳内でどの部分が積極的に働いているかを感じ取れる
んです。現代科学では脳の活動を厳密に測定するのは不可能なのですが、今の僕にはそれが手
に取るように解ります」
 たった一度の時間移動で、少年の脳内は著しい発達を遂げたようだった。俺は何かすごく大
それたことをしてしまったような気がした。

602以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:38:20.64 ID:/uJYnCq60
支援

603涼宮ハルヒの微笑033 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:38:29.76 ID:sjjYSbZb0
 少年は一呼吸おいて、
「続いて、質問させてください」
 そろそろ来るか? と思っていた俺に予想通りの質問が飛んできた。
「あなたがどうやって時間移動を出来るようになったのか、そしてこれから何をやろうとして
いるのか、それを教えてください」
 やはり来たか。
 これは一体どこまで話していいものやら。真相を説明するためには、ハルヒのことだけでは
なく、未来人、宇宙人、果ては超能力者のことまで話さないといけないかもしれない。
 どうしたものかと考えあぐねる。
「話しにくいのであれば、僕の推論を聞いたうえで、答えてください。イエス、ノーで構いま
せん」
「解った」
「あなたがタイムトラベルについての助力が欲しいと言ったとき、僕はあなたが歴史を改変す
るつもりなのではないかと推測しました。違いますか?」
 少し迷ったが、
「そうだ」
 正直に答えた。
「僕はまず悪用の可能性を考えました。あなたの一挙手一投足によって歴史は変わります。あ
なたが望み、あなたがそれを実現するために行動すれば、あなたは歴史を自由に変えることが
出来るでしょう。そしてそれが世界にとって悪い方向に進む可能性があったとすれば……。そ
の内容次第では、僕はこれ以上あなたに協力することは出来ません」
 真っ当な意見だ。少年には当然そうする権利がある。彼が正義感の強い人物だということは、
短いつきあいだが俺にだって解る。
「あなたに悪意がなくとも、あなたの取った行動が未来の人類に悪影響を及ぼす可能性も当然
考えられます。どのような結末になるかは僕にもあなたにも解りません。ですがあなたに協力
することは、すなわち僕はそれに加担するということです」
 俺が言葉を発する余裕もなく彼は話を続けた。

604以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:38:56.63 ID:Xdc+QmMB0
ttp://moes.sakura.ne.jp/flash/haruhi.swf

605以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:38:57.12 ID:tXgGlucc0
こりゃすげえ。
金とれる線まで達しそうだ。

606涼宮ハルヒの微笑034 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:40:11.54 ID:sjjYSbZb0
「失礼ながらあなたと涼宮さんのことを調べさせてもらいました。あなたが涼宮さんのご主人
であることを知り、僕はある結論に至りました。言ってもいいですか?」
「言ってくれ」

「あなたは、涼宮さんによってタイムトラベルの能力を与えられた。そしてあなたの目的は涼
宮さんを死なせない歴史を作ることです。違いますか?」

 推理の矢は見事に核心に突き刺さっていた。
「その通りだ。だがなぜそれが解る?」
「僕も涼宮さんとはそれなりに長いつきあいです。彼女が普通の人間とは違う存在だというこ
とくらいは僕にも解ります」
 俺は想像した。もしかしたらこの少年もハルヒによって何らかの能力を与えられた存在なの
ではないかと。古泉のそれは目的を失い消滅したが、この少年の能力は今も生き続けているの
ではないか、と。
「僕は、涼宮姉さんには本当によくしていただきました。また、あなたと一緒におられた女性
と交わした約束は今もずっと忘れていません。何よりもあなたには感謝の言葉もないくらいで
す。僕が今こうして生きていられるのは、間違いなくあなたのおかげです。これが偶然なのか
必然なのかは解りませんが、僕はあなたたちに賭けてみようと思います」
 彼は、俺の目を見つめて、
「覚悟を決めました。あなたに救っていただいた命です。たとえその結果、最悪の結末を招こ
うとも」
 そして、こう宣言した。
「僕はあなたを信じます」

607涼宮ハルヒの微笑035 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:41:04.96 ID:sjjYSbZb0
 俺はその後も引き続き、食事も睡眠もほとんど取らず訓練に明け暮れた。
 一ヶ月あまりをそのように過ごし、昨日の訓練により今までおよそ一年だった時間移動距離
が一気に六年に達したのだった。
 これでも朝比奈さんにはまだまだ遠く及ばない。朝比奈さんは今より何十年、何百年先かも
解らない時間平面から俺たちが中学生だった頃まで時間を遡っていたんだからな。
 ハルヒは原因不明の難病で命を落とした。であればハルヒを蘇らせるための手段は二つしか
思いつかない。
 難病を治すか、難病にかからないようにするかだ。
 だが、その原因がウィルスによるものなのか、病原菌によるものなのか、あるいはハルヒ自
身の内部的な要因なのか、そんなことすら俺には解らないのだ。
 俺はこういうケースに力を発揮する奴を知っている。むしろそいつにしか解決出来ないこと
は明らかだった。
 長門、頼れるのはお前しかいない。
 今の時代の長門は情報統合思念体の本体に戻っていて、自律進化のきっかけを基に進化の可
能性を探求し続けているんだろう。この時間平面上で長門とコンタクトを取ることは不可能だ。
 ならば俺が最後に長門に会ったあの日に行くしかない。だからこそ俺はそこまで時間を遡る
能力を身につけるために、必死になって努力したのだ。
 実は日々の訓練と同時に俺は長門を探し続けていた。そして昨日までの一年間の時間移動で
は、ついに長門を見つられなかった。
 だがそれも終わりだ。いよいよ今日の時間遡行で間違いなく長門に会える。俺はようやくハ
ルヒを蘇らせる手がかりを得られるのだ。

608涼宮ハルヒの微笑036 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:42:13.36 ID:sjjYSbZb0
 時間移動の準備を開始する。財布の中から身元が割れるようなものは全て取り除く。うっか
り落としでもしたら大変だ。誰かが気を利かせて未来の俺に届けてくれればありがたいが、そ
れは間違いなく過去の俺に届き、過去の俺は混乱することになる。混乱だけならいいのだが、
俺の記憶によれば未来の俺の財布が俺に届いたことは一度もない。なるべく既定事項を破るリ
スクは避けなければならない。
 手帳も同様で、俺の身元やハルヒを連想させるようなことは一切書いていない。念には念を
入れなくてはならない。
 向こうでうっかり知り合いに出くわしたときのことを考えて、俺はサングラスをかけておく
ことにした。
 ハルヒとつきあい出して、初めて二人だけで行った海。絵に書いたようなどこまでも青い空
とどこまでも青い海、白い砂浜。ハルヒがプレゼントにとくれたサングラス。「あんまり似合
わないわね」なんて言ってたハルヒの笑顔を思い出す。

 静かに時空間座標を念じる。北高の卒業式当日、長門と最後に会話を交わした直後。長門の
マンション。708号室前。
 例の感覚の後、時間遡行は完全におこなわれた。朝比奈さんから譲り受けた電波時計がその
確かさを俺に告げている。
 長門は寄り道をせずにまっすぐここに帰ってくるだろうか。コンビニで弁当くらいは買って
くるかもな。お別れパーティーで俺たちはさんざん飲み食いしたが、長門ならまだまだ食べら
れそうだ。
 そんなことを考えていると、エレベーターホールの方から見慣れた人影が現れた。
 それはまさに、あのとき最後に会話を交わした長門の姿だった。俺からすれば、四年七ヶ月
ぶりに会う長門。
 意外にも長門はその表情に驚きの様子が隠せなかった。
「久しぶりだな長門。ああ、お前はこの時間平面上の俺たちと別れたばかりか」
 半径十メートルくらいなら幽霊すら含む全ての存在を感知しそうな奴が、俺の存在に気づか
なかったとも思えないが。考え事でもしてたのか?
「入って」
 俺たちはいつものリビングの、いつものコタツ机に、各々いつもの位置に座った。

609以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:42:46.62 ID:M3PHrIHP0
支援

610涼宮ハルヒの微笑037 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:43:52.10 ID:sjjYSbZb0
 俺はここに何度訪れているんだろう。そのたびに俺は長門に迷惑をかけた。そして、今回も
俺は身勝手な頼み事をするためにやってきたのだ。
 事情を説明した。俺がTPDDを得て自力でここまで時間遡行をしたこと、今から四年と六
ヶ月後の未来にハルヒが死んだこと、その原因が解らず助けを得たいということ。
「あなたがTPDDを得ることは解っていた。でもあなたがここに来ることは想定していなか
った」
「なぜ俺が時間移動を出来るようになることを知っていたんだ?」
「おそらくそれはいずれ解るはず」
 長門がそう言うのならそうなんだろうな。それよりもハルヒを救うことの方が先決だ。
 ハルヒが難病にかかった頃、長門は一体どこにいたのかは解らない。それでも長門なら何ら
かの手段を講じて調べてくれるんじゃないか、と期待していた。
 長門が世界改変事件以来、未来の自分と同期することを自ら制限したことはもちろん覚えて
いる。だから俺はその制限を曲げてでも、なんとか原因をつきとめてくれないかと思っていた。
いや、同期が出来なくても俺が長門を未来に連れて行けばいい。
 だが返ってきた答えは意外なものだった。
「その時間平面上に私は存在しない」
「それって、情報統合思念体に戻ったということか?」
「ちがう」
 だったら何だ?
「わたしのメモリに蓄積されている情報には、地球上での生活が原因で多くのノイズが含まれ
ている。情報統合思念体は不確かな情報を何よりも瑕疵とする。わたしは情報統合思念体への
回帰を拒否された。つまりわたしは全ての役割を終え、存在価値を失った」
「…………」
 言葉が出なかった。
 長門は情報統合思念体のために六年もの間任務を続け多大な貢献を果たした。少なくとも俺
が知る限りTFEI端末の中で最も活躍したのは間違いなく長門だ。そして長門は地球人の持
つ感情を得ることになり、それが原因で情報統合思念体から拒絶されたということか。それっ
てあまりにもひどい話じゃないか。
「私にはもう行くべきところも帰るべきところもない」
 ただでさえ重苦しい雰囲気の部屋がさらに重苦しい空気で占められていた。

611以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:44:34.87 ID:M3PHrIHP0
支援

612涼宮ハルヒの微笑038 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:45:01.59 ID:sjjYSbZb0
 長門は立ち上がると俺に背を向け、
「さっき、この時間のあなたに別れを言った。今からわたしは、わたし自身の情報連結を解除
する予定だった。これは決まっていたことのはずだった」
 俺は反射的に立ち上がり、長門に怒鳴った。
「自分を消すなんて言うんじゃねぇ!」
 こちらを振り返った長門を見て、俺は驚きを通り越して世界が暗転するような衝撃を受けた。

 長門の目に涙が溢れていた。

「もう一度あなたに会えるとは思っていなかった。わたしは今、自分自身の思考が理解できな
い」
 長門は振り絞るような声で言った。
「わたしは消えたくない」
 静かな涙だった。俺を見据える瞳には涙とともに固い決意のようなものがうかがえた。
「長門、俺がお前を地球でずっと生きていけるように努力する。いいか、どこにも行くところ
がないなんて二度と言うんじゃないぞ」
 長門は目を閉じゆっくりと肯いた。涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。

 ようやく落ち着きを取り戻した長門が口を開いた。
「涼宮ハルヒのことを詳しく聞きたい」
 俺はハルヒが突然倒れたこと、断続的に意識を失っていたこと、人類の医学レベルでは原因
が解らなかったこと、倒れてから一週間足らずで命を落としたこと、などを話した。
「ハルヒを救ってやることが出来そうか?」
「それが可能かどうかは、実際に涼宮ハルヒが病気にかかった状態を見てみないと解らない」
「じゃあ今から行こう」
 俺は長門を連れてハルヒの元へと向かった。ハルヒが命を落とす前日。
 俺と長門は知覚遮蔽モードでハルヒの病室へと赴いた。ベッドに横たわるハルヒと傍に付き
添う過去の俺がいる。

613以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:45:26.04 ID:gWRBr+LZO
支援

614以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:45:31.90 ID:lOj24U2/0
支援

615以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:45:51.07 ID:M3PHrIHP0
支援

616以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:46:38.10 ID:A/cWxf5p0
そろそろ支援

617以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:46:58.30 ID:M3PHrIHP0
もういっちょ支援

618以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:47:29.36 ID:lOj24U2/0
支援

619以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:47:56.84 ID:M3PHrIHP0
更に支援

620以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:48:02.53 ID:A/cWxf5p0
そろそろサルりそうだな支援

621以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:50:08.85 ID:q6JvjderO
尋常じゃないほど手に汗かいてる支援

622以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:50:27.04 ID:M3PHrIHP0
さるか・・・
支援

623以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:51:02.82 ID:yA/T2JVFO
読みがいがあるね

624以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:51:23.93 ID:lOj24U2/0
しえんしええん

625以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:51:46.58 ID:M3PHrIHP0
しえn

626以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:53:51.70 ID:M3PHrIHP0
まだか・・・
しえn

627涼宮ハルヒの微笑039 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:54:29.50 ID:sjjYSbZb0
「どうだ、原因は解るか?」
 長門は無言でハルヒの顔を覗き込んだ。表情が少しこわばったように思えた。
 一分ほどそうした後、長門はようやく顔を上げた。
「…………」
 しばらくの沈黙の後、
「……怒らないで聞いて欲しい」
「どういうことだ?」
「…………」
 俺が承諾するまでは話しそうになかった。
「解った。言ってくれ」
「……原因は」
 長門は言葉を区切りながら話し始めた。ひどく話しづらそうだ。
「……情報統合思念体。急進派によるもの」
「なんだって?」
 急進派とは、朝倉のいた物騒な派閥のことか?
「情報統合思念体は混乱している。各派閥の間で激しい駆け引きがおこなわれている。今では、
元の急進派が主流派となりつつある。おそらくは……」
 と前置きしたうえで、
「自律進化の可能性を得たがゆえに、未来との同期の制限を受けることになった情報統合思念
体急進派は、さらなる制限を受けることに対する予防措置を講じたと考えられる」
「結局のところ、自律進化の可能性っていうのは何だったんだ?」
「情報統合思念体が得た自律進化の可能性とは、時間次元上の制限を課せられることと同義だ
った。つまり時間の概念を得ることが自律進化のきっかけだと情報統合思念体は判断した」
「つまり、未来が解らなくなることが、進化にとって重要だったってことか?」
「そう」
「それは解った。結局ハルヒが死んだ原因は何なんだ?」
「これは涼宮ハルヒに起こる身体的変化をトリガーとした時限装置。変化が起こった瞬間に涼
宮ハルヒの生命活動が停止するように仕組まれていた。今こうして生命活動を維持し続けてい
るのは本来ならあり得ないこと」

628以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:54:49.14 ID:qLTfzZLF0
尋常じゃないほど下半身に血液が集まってきた支援

629以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:55:25.94 ID:M3PHrIHP0
支援

630涼宮ハルヒの微笑040 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:55:31.02 ID:sjjYSbZb0
 身体的変化? ハルヒに何があったんだ?
「涼宮ハルヒの能力は既にそのほとんどが失われている。急進派は第二の涼宮ハルヒの出現を
危惧し、涼宮ハルヒの系譜を一切断ち切るための措置を施した。つまり……」
 長門はためらいがちに言葉を継いだ。
「トリガーは涼宮ハルヒの懐妊」

 一瞬思考が停止した。
「…………」
 長門は目を閉じ俺の反応を待っている。
「懐妊って……まさか……、俺とハルヒの子か?」
「……そう」
 血の気が引いた。頭の中が真っ白になる。
 次の瞬間には、俺は全身の震えを感じていた。体温が急速に上昇する。拳を握る。掌が熱い。
 さっきの長門との約束など、俺は既に忘れていた。
 俺は怒りにまかせて叫んでいた。知覚遮蔽がされていなければ、おそらく病院中に響き渡る
声で。
 今までの人生でこれほどの強烈な怒りを覚えたことはなかった。
 頭がどうにかなりそうだった。
 ひとしきり叫び続けた俺は、糸の切れた操り人形のように、病院の冷たい床に崩れ落ちた。
まだ息が荒い。
「ごめんなさい……」
 長門、お前が謝ることじゃないんだ。頼むから謝らないでくれ。でないと、俺はお前まで憎
んでしまいそうになる。
 長門は目を閉じたままうつむいていた。微かにだが長門が震えているのが解った。俺には長
門が長門なりに、俺への謝罪と思念体への怒りを表現してるように思えた。

631以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:55:34.82 ID:gWRBr+LZO
支援

632以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:56:07.93 ID:Km91aw9c0
携帯ならやってみ
街を育成するゲームでかなりおもしろい

http://ime.nu/gcity.tv/?RF=1&frdref=216351

633涼宮ハルヒの微笑041 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:56:26.29 ID:sjjYSbZb0
 俺は長門を自分の住まいに連れて行き、作戦を練った。
「ハルヒの死を回避するためにはどうすればいい?」
「涼宮ハルヒへの時限装置が仕掛けられたのは第二の情報爆発のおよそ一ヵ月後。涼宮ハルヒ
から時限装置を取り除くのは私の能力では不可能。巧妙な仕掛け。取り除こうとした時点で涼
宮ハルヒの生命活動は停止する」
「情報改変能力で、未来のハルヒの病気をなかったことには出来ないのか?」
「私の能力では涼宮ハルヒの能力を借りたとしても、一年以内の改変しか出来ない。その範囲
内で原因を取り除いたとしても、急進派はもう一度時限装置を仕掛けることを試みるはず」
「他に方法はないのか?」
「原因を作り出さないようにするのが最も確実であり、それしか方法はないと思われる。時限
装置を取り付けさせないようにする。つまり」
 長門は俺が想像もしていなかったことを淡々と言った。
「涼宮ハルヒの情報改変能力を使って、情報統合思念体を消滅させる」
 そう言えば長門は以前世界を再構築したときにも同じことをやった。
「お前、それでいいのか? 情報統合思念体はお前のお仲間じゃないのか?」
 長門は言い切った。
「既に私は情報統合思念体と決別する覚悟は出来ている」

634以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:56:39.36 ID:M3PHrIHP0
支援

635涼宮ハルヒの微笑042 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:57:37.49 ID:sjjYSbZb0
 卒業式の三日前に起こった第二の情報爆発。春先を思わせる季節外れの暖かさが不穏な空気
をことさらに際立たせていたあの日に俺たちは飛んだ。
「侵入する」
 モノクロームの世界のあの場所で、今まさにハルヒによる第二の情報爆発が始まろうとして
いた。それは俺とハルヒの二度目のキスにより起こったのだ。
 長門のプランは、この情報爆発の瞬間のハルヒの力を借りて、時空改変により情報統合思念
体を消滅させることだった。
「もうすぐ始まる」
 長門の言葉の直後に俺は激しい振動を感じた。情報爆発が始まったのだ。
 TPDDを得た今なら解る。この時空振動がいかに大規模かということを。
 長門が情報統合思念体の抹消作業に入る。片手を上げ、空間を掴み取るような動作をした。

「お待ちなさい」

 俺たちの背後から、声が聞こえた。振り返る。
 そこには明らかにこの場所には似つかわしくない姿の老人が笑みを浮かべていた。
「危ないところでした。あと数秒発見が遅れていたら、取り返しのつかないことになっていま
したな」
「誰だお前は」
「長門君、説明してさしあげなさい」
 長門を見た。長門の無表情の中に驚きの色が見える。
「……情報統合思念体主流派の指導者であり、情報統合思念体の全てを司る統括者。わたしの
創造主」
 なんだって?
「そう言うあなたこそどなたですかな? 朝倉君の報告とも少々違うようですが……まあよい
でしょう」
 何のことだ?
「どちらにせよ、涼宮さんを殺したことであなたが動くのは想定外でした。あれは誠に申し訳
なかった。私どもの急進派の勇み足でしてね」

636以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 17:58:27.18 ID:M3PHrIHP0
支援

637涼宮ハルヒの微笑043 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:58:27.90 ID:sjjYSbZb0
 落ち着いた口調で老人は続けた。
「急進派は、どうやらあなた自身には何の力もないということで見逃したようですが、かえっ
て仇になりましたな。まあ彼らも必死でしてね。どうかご理解いただきたい」
「てめぇ、人一人、いや二人殺しておいて、なんていい草だ!」
「おやおや、あなたがたも私どもの朝倉を自分達の都合で亡き者にしたはずですが」
「それとこれとは話が違うだろうが!」
「まあ、あなたと罪の定義について話しても詮無きことです」
「何しにきやがった」
「私がやって来た理由は当然お解りのはずですが。もったいぶってもしょうがありませんな。
もちろん、あなたがたがやろうとしていることの阻止です」
「元はと言えば、お前らが蒔いた種じゃねぇか!」
「議論の余地はありませんな。ではそろそろ始めさせていただきましょう」
 老人が、先ほどの長門と同じように右手を上げた。
「まずい」
 長門が呟くように言った。
「どうした長門」
「涼宮ハルヒの力を逆用される。止められない」
 次の瞬間、俺は全身でその意味を知った。
「これは……」
 俺は戦慄していた。これから起こることは、今ハルヒがおこなっている時空改変ともまるで
桁が違う。
 過去一年間の時空改変なんていう生半可なものじゃない。全宇宙の、遠い未来の歴史までも
が一気に塗り替えられるような、超弩級の時空振動を俺は感じていた。
「これは我々にとっても大きな代償を伴うこと。これから涼宮さんの第一の情報爆発がなかっ
た世界に改変し、我々が持つ涼宮さんに関係する記憶を一切抹消します。我々はこれが最善の
策だと考えました。我々は自律進化の可能性よりも現状維持を選んだということです」
「お前らは……あれだけ自律進化の可能性を待望してたじゃねぇか」
「自律進化の可能性を得ることで、我々の存続自体が危ぶまれました。皮肉なものです。我々
があれだけ望んだことが、逆に我々をここまで混乱に陥れることになるとはね」

638涼宮ハルヒの微笑044 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 17:59:26.75 ID:sjjYSbZb0
 老人は片手を上げたまま、話を続けた。
「あなたがたのように涼宮さんの力を利用し我々に危害を及ぼす存在がいる以上、本来であれ
ば過去の涼宮さんを亡き者にすべきなのですが、あいにくそれはあまりにも危険でしてね。第
一の情報爆発から能力を失うまでの涼宮さんには迂闊に手は出せません。それによって何が起
こるか全く予想出来ませんからね。最悪の場合この宇宙が終わることも充分あり得ます。なら
ば、情報爆発以前の涼宮さんを消滅させればよいのですが、残念ながら恒久的時間断層のおか
げで我々は一切手を出せません。涼宮さんも、無意識とはいえ見事な防御策を考えたものです。
そういったわけで私どもは第一の情報爆発発生と同時にそれ以降の歴史を全て書き換えること
にしました。涼宮さんの第二の情報爆発、つまり今ですな、この瞬間の涼宮さんの力を利用し
世界を改変するのが最良だと判断したわけです」
 どこまでも勝手なことを言いやがって。
「第一の情報爆発の発生過程は私どもにも全く解りません。とはいえ、それは元々超自然的か
つ奇跡的な確率でおこなわれたことと推測しています。おそらくはもう二度と情報爆発は起こ
らんでしょうな。ですが唯一懸念すべき存在、無視出来ない不確定因子について我々は検討し
ました。あらゆる可能性を考慮し、何事も一部の怠りなく遂行するのが我々の常でしてな。私
どもの長門もあなたには大変お世話になりました。ですのでこれは非常に残念なことなのです
が」
 老人はおだやかな笑みを崩さずにこう言った。
「あなたには今ここで消えてもらいましょう」
 老人が口元をわずかに動かしたその瞬間、突然俺の両腕が指先の方から輝きとともに粒子と
なって崩れ落ち始めた。朝倉のときに見た情報連結解除ってやつだ。それがまさか俺の身に降
りかかろうとは。不思議と痛みは全くない。足元に目をやると、両足も同様の状態になってい
た。

639涼宮ハルヒの微笑045 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:00:47.79 ID:sjjYSbZb0
 しばし呆然として両手を眺めている俺と老人の間に長門が割って入り、俺の腕の残っている
部分を手に取るといきなり歯を立てた。以前に噛まれたときとは違う。なぜなら普通に痛い。
 そのおかげか崩壊のスピードが幾分遅くなった。が、いまだに崩壊は収まらない。
「間に合わない」
 長門は俺の腕の、まさに崩壊最前線の部分に自分の手を差し出し、呪文の高速詠唱を始めた。
 今度は成功したのだろう。崩壊のときとは逆再生のように手足が情報連結されていく。だが
それで俺は全く安心出来なかった。俺の手足が再生されるのと同時に、今度は長門の手足が崩
壊しはじめたからだ。
「おやおや長門君。君は我々を裏切り、自らの身を呈してまで彼を救おうというのですか。私
には君の行動が理解出来ませんな。やはり君を思念体に回帰させなかったのは正解だったよう
ですね」
 老人の微笑みがいまいましい。くそっ。
「逃げて。出来るだけ遠くの時空間へ。あなたが今ここで消えれば涼宮ハルヒが蘇る歴史は永
遠にやってこない」
 身代わりになったお前を残して、俺だけ逃げるなんてことが出来るか。
 長門は既に両手両足はおろか、胸のあたりまで崩壊が進んでいる。朝倉のときとは崩壊のス
ピードがまるで違う。
「早く!」
 長門が今まで聞いたこともない大声で叫んだ。
 俺は覚悟を決めた。
「長門、俺は必ずお前を復活させる。もちろんハルヒもな。そして俺は必ず戻ってくる!」
 どこでもいい。こことは違う、なるべく遠くの時空へ。座標設定なんぞしてる暇はない。
 例のグラっとする感覚がきた。時間移動の開始。そして、長門はついに俺の目の前で完全に
消滅した。
「長門!」
 そう叫んだ瞬間、突然の閃光に目を閉じる。
「あなたを消し去るのは残念ながら失敗のようですね。ですがせめてこれくらいの対処はさせ
ていただきましょう」
 老人の言葉とともに頭が割れるような痛みを感じ、そして俺は意識を失った。

640以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:00:56.93 ID:aDnwFc510
20分で1000いったら>>1がゴキブリ食う
後10分支援頼む



http://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1160210943/

641以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:02:28.67 ID:M3PHrIHP0
支援

642以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:03:03.10 ID:A/cWxf5p0
雲行きが怪しくなってきた。いろんな意味で

支援

643以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:04:19.25 ID:3RLyjTgt0
先が読めない支援

644以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:04:20.48 ID:M3PHrIHP0
書籍化したら絶対買う。

そんな支援

645300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:05:07.31 ID:sjjYSbZb0
第二章終わりです。
連投規制気にすると結構時間かかりますねこれ・・・

646以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:05:34.09 ID:q6JvjderO
やばい支援

647以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:06:09.94 ID:M3PHrIHP0
乙!!

かなりの量だな・・・

648以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:10:46.00 ID:kwGK/1RaO
ほし

649以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:11:20.71 ID:A/cWxf5p0
>>645
次はいつですかね?

650300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:12:19.26 ID:sjjYSbZb0
42×16のフォーマットでのページを書くと、
プロローグ 1−  6
第一章   7− 33
第二章  35− 77
第三章  78−112
第四章 113−157
第五章 158−220
第六章 221−260
第七章 261−301
エピローグ 302−317
って感じになります。先長いですね(´ー`;)

651以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:13:09.77 ID:MPkHIBpu0
写真屋ってすげいな
http://ime.nu/groovemachine.ddo.jp/p_blog/article.php?id=7

652以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:13:13.57 ID:trgzLqLn0
>>650
大作だw
スゲーな


653300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:14:21.00 ID:sjjYSbZb0
では、第三章いってみたいと思います。
よろしくお願いしますm(_ _)m

654以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:14:44.53 ID:IIXbfjiA0
>>650
てことはもう4分の1は終わったって事だろ?
結構すぐ終わりそうじゃないか

しかしまあよくそんなに書けたもんだw

655以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:15:15.89 ID:Tokm6ZjZO
明日はついに・・・

656涼宮ハルヒの微笑046 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:15:44.94 ID:sjjYSbZb0

第 三 章


 太陽の光で目が覚めた。
 微かににせせらぎが聞こえる。どうやら俺は眠っていたようだ。
 太陽の位置からすると、昼前か昼過ぎあたりだろうか。ちょうど木影になっていた俺の顔に
日光が差してきていた。
 季節はどうやら真冬のようだった。一月か二月か。空気が肌を刺すように冷たい。

 ――ここはどこだ?
 起き上がり、辺りを見回してみる。少し頭が痛む。
 小川と遊歩道に挟まれた、並木が植えられている芝生の上に俺はいた。公園のようだった。
 見慣れない風景。いや、見慣れないというのとは何か違う。
 奇妙な感覚。

 ――今はいつだ?
 腕時計を見た。それは二月二十四日の午後二時五分を表示していた。
 俺の格好は春先を思わせるような軽装だった。真夏の格好よりは幾分マシとは思ったが、や
はり少々寒さが身にしみる。
 何だ、この違和感は?
 そうして俺は、場所や時間よりも重大な疑問に思い当たった。

 ――俺は誰だ?
 思い出せなかった。
 冷静に考えてみたところ、どうやら俺は記憶喪失という状況におかれているようだった。
 俺は目の前にあった遊歩道のベンチに腰掛け、所持品を調べてみた。あったのは財布と手帳。
身につけているものはデジタル表示の腕時計とサングラス、それに季節外れの衣服。
 財布に何か手がかりになるものが入っていないかと調べてみたが、俺の身元を確認出来るも
のは何ひとつない。

657以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:16:24.67 ID:0JNRPxvt0
ほんとにこれ初SSなのか!?

自分が書いたSSとの格の違いに呆然とする
こんなにwktkしたのは久しぶりだ!

658以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:16:37.11 ID:3PNCL0XK0
>>653
その発想力は一体どこから来るのですか?

659以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:16:38.32 ID:q6JvjderO
>>650の才能に嫉妬しつつ支援

660涼宮ハルヒの微笑047 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:16:49.09 ID:sjjYSbZb0

 手帳も同様だった。手帳のスケジュール欄の書き込みは九月十三日で始まり十月二十日で終
わっていた。それはそもそも予定ですらなく、以下のような意味不明の単なるメモ書きだった。

 9月13日 29D03H48M
 9月14日 29D03H57M
 9月15日 29D04H08M 335×24×60÷20=24120
 9月16日 29D04H18M
       ・
       ・
10月14日 01Y01M10D
10月15日 01Y01M12D
       ・
       ・
10月20日 06Y00M05D

 こういった書き込みが十月二十日まで一日も欠かさず毎日続いていて、十月二十一日の日付
には赤い丸印が記されていた。それ以降の日付は空白だった。
 一体何だこれは?
 アルファベットはおそらく年月日や時分を表していて、数式にも24×60という数字があ
ることから、何か時間に関係することを書き留めているように思える。
 これは俺が書いたものなのか?
 試しに同じ字を手帳に書き込んでみた。同じ筆跡。俺の字に間違いないようだった。
 せめて、日記のようなものでも書いておいてくれればありがたいのだが、どうも俺にはそう
いう習慣はないらしい。
 手帳のページを繰ると、後半のメモ欄に携帯電話の番号と住所が書かれてあった。その番号
も住所も、俺には全く心当たりはなかった。
 俺は今まで何をやっていたんだ?
 何となくだが、俺には何かしなくてはいけない重要なことがあったように思える。
 だが、それは何だ?

661以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:17:48.79 ID:0JNRPxvt0
支援

662涼宮ハルヒの微笑048 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:18:05.74 ID:sjjYSbZb0
 足元を眺めながら俺はしばらく考えてみた。三十分ほどそうしていたが、思い出せることは
何もなかった。
 とにかく今の俺にとって必要なのは、何でもいいから情報を仕入れることだ。
 公園を出てしばらく歩いた俺はコンビニエンスストアを見つけ、新聞を買ってみた。日付は
やはり二月二十四日。手帳のスケジュールの日から、およそ四ヶ月が経過している。
 手帳を四ヶ月間全く記入しなかったということだろうか。それまでの日付は一日の抜けもな
く毎日埋っているにもかかわらず。
 だが、俺が四ヶ月以上記憶とともに意識を失っていたという推測はさらにありえないことだ
った。
 一体どうなってんだ?
 新聞の記事を読んでも特に手がかりになるようなものは見出せなかった。記事のほとんどは
あまり理解出来なかったしな。俺の頭はどうもあまり出来がよくないらしい。
 そしてまた途方に暮れた。
 公衆電話を見つけ、手帳に記されていた番号に架けてみたが、現在その番号は使われていな
いというメッセージが返ってくるだけだった。
 寒さに耐えかねた俺は、商店街の洋服店で適当な上着を買い、見覚えのある風景でもないか
と、周辺を歩き回った。
 商店街を出て二時間ほど歩いただろうか。辺りが暗くなり始めている。腕時計の数字は夕方
の五時過ぎを表していた。
 行くべきところも解らず、ただ呆然と歩いていた俺は、いつしか人気のないところに迷い込
んでいた。
 いや、迷い込むという表現は適切じゃないな。今の俺には知っている場所がどこにもなく、
つまり俺は常に迷っているのだ。

663涼宮ハルヒの微笑049 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:18:57.03 ID:sjjYSbZb0
 不意に、右奥の路地の方から、口論をしているような声が聞こえた。
 路地を覗いてみる。数人の男と、中学生と思われる長髪の少女がそこにいた。
 少女の進路前方を塞ぐ男たち。三人だ。しばらく何かを言い合った後、男の一人が少女の肩
を強引に掴み、少女を拘束しようとする。
 少女は素早い動作でその男の手首を取ると、脚の付け根まで届こうかという長髪がふわりと
揺れた次の瞬間には、男が少女の後方に吹っ飛んでいた。合気術かあるいは柔術か、どちらに
せよ凄まじい身のこなしだ。
 だが、投げられた男も他の二人も、それでひるむような気配はなかった。じりじりと少女と
の間合いを詰める。
 俺は急いで元の道に戻り、置かれてあったゴミバケツを見つけるとそれを左脇に抱えた。
 路地まで助走をつけ、角を曲がる遠心力も使って、それを男たちに思いっきり投げつけた。
 空中で蓋が取れ、逆さになったゴミバケツは内容物を散乱させながら放物線を描く。蓋が手
前の一人に、本体が奥にいた一人に命中。ゴミは三人に――厳密に言えば少女を含む四人に――
漏れなく降り注いだ。
 我ながら見事なスローイングだ。
 動きの止まった男三人がこちらを睨んだ。俺はなんとなくだがリーダー格と思しき男に見当
をつけ、そいつを睨みかえした。どうやら俺は案外胆の据わったやつらしい。
 男たちが襲い掛かってくることを予想して身構えた俺だったが、男たちは顔を見合わせると、
俺とは逆方向に走り去っていった。

664涼宮ハルヒの微笑050 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:20:00.80 ID:sjjYSbZb0
「助かったよ、ほんとありがとっ! あははっ、臭うなこのゴミっ!」
 少女はゴミを払い落としながら笑っていた。今さっきあんなことがあったというのに、全く
動じていないようだ。俺以上に胆が据わっている。
「今のは知り合いか何かか?」
「いやっ、全然っ」
「じゃあ、なんだってあんな目に遭ってたんだ?」
「実はねっ、前にもあったんだよこういうこと。でもさすがに今のは危なかったよ。男三人が
かりはあたしもツラいからさっ」
 襲われやすい体質か何かなのか? などと思っている俺に少女が言った。
「ほんと助かったよっ! お礼がしたいんだけど、時間はあるっ?」
 時間があるのかどうかは実際のところ俺自身にも解らなかったが、俺には他に行くべき場所
も思い当たらず、少し迷ったがそれに応えることにした。

 少女の家に案内された俺は、ただただ驚いた。門から家が見えない。左右を見回すと塀が遠
近法に従って延々と続いていた。ここはどこかの武家屋敷か何かなのか?
 一体どんな悪いことをすればこんな家に住めるんだろう、などと考えていた俺に既視感のよ
うな不思議な感覚が襲ってきた。そしてそれは一瞬で過ぎ去っていった。
 残念なことに、やはり思い出せることは何もなかった。
 家屋の玄関前で、当主と名乗る初老の男性が向かえてくれた。
「娘から事情は聞きました。危ないところを助けていただいたそうで、私からも礼を言います。
本当にありがとうございました。こんなところでは何ですから、とにかく中へ」
 この屋敷から察するに、さっきのはおそらく誘拐未遂事件か何かだったのだろう。俺は身代
金の額を想像しようとしたが、途方もない数字になりそうですぐさまあきらめた。
 屋敷の応接に通された。家屋は日本風だがこの部屋は洋風の造りだった。当然ながら、一般
家庭のリビングを三つか四つばかり足したくらいに広い。
 ゴテゴテとした飾りや置物などは一切なく、一枚の絵が掛けられているだけのシンプルな部
屋。そうしたものがなくともこの部屋が充分に手のかかったものであることは一目で解る。な
んと言うか、滲み出る品格のようなものがこの部屋からは感じ取れた。

665涼宮ハルヒの微笑051 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:21:00.96 ID:sjjYSbZb0
 純和風の衣服に着替えた少女は腕や髪を鼻に当て、匂いを調べていた。あれだけ髪が長いと
さぞかし洗うのも大変だったろうな。ゴミバケツを投げつけたのはさすがにやりすぎだったか。
「失礼ですが、この近くにお住まいの方ですか?」
 当主からの質問だった。俺の服装からそう思ったのだろうか。上着を買ったとはいえいささ
か季節外れの感は否めない。家の周りの散歩か、あるいは近所に買い物にでも行くような格好
に違いなかった。
 だが、俺は少し考えて旅行者ということにしておいた。記憶を失っているという説明をすん
なりと信じてもらえるようには思えなかったし、近所の話題を振られても困る。今思えば俺は
記憶を失ったことについてかなり楽観的に考えていたのだろう。すぐにでも記憶は戻るだろう
と。
 少女はニコニコしながら俺の返答を聞いていた。
「でしたら、もしご都合がよろしければしばらく当家に滞在されてはいかがですか。海側や少
し西側の方に行けば、見るものもたくさんありますよ」
 これは願ってもないことだった。俺には行くべきところも解らなければ、帰るべきところも
解らないのだ。
「そうしなよっ、お兄ちゃん!」
 少女の言葉が、なぜか心地よく響いた。不思議な懐かさとでも言おうか、そんな暖みがあっ
た。
 俺はありがたくその提案に甘えることにした。
 そうして俺は、詳しくは書かないが今までに食べたこともないであろう豪華な夕食をご馳走
になり、詳しくは書かないが小振りの銭湯としてすぐにでも営業出来そうな客用の浴室で疲れ
を取り、詳しくは書かないが老舗の高級旅館に泊まるときっとこんな部屋なんだろうという客
間に案内された。

666以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:21:14.45 ID:0JNRPxvt0
支援

667涼宮ハルヒの微笑052 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:22:01.11 ID:sjjYSbZb0
 しばらく今日一日のことを振り返っていると、少女がやってきた。
「お茶持ってきたよっ!」
 この娘は、一日中こんなにテンションが高いのか?
「いやー、おやっさんにこってり絞られちゃったさっ。いつもはあんな時間にあんな道通らな
いんだけどねっ。今日は学校でやることがあって特別なのだっ!」
「やっぱりあれは誘拐とかそういう類のものだったのか?」
 少女は俺の持っていたサングラスに興味を示し、手渡したそれを眺めながら話しを続けた。
「多分ねっ。ここいらも物騒になったもんだよ。前にもあったってのは三ヶ月くらい前。ほん
と危なっかしくておちおち学校にも行けやしないよっ」
 会話の内容とはうらはらに、少女が楽しそうにしているのは気のせいか?
「まあそんなこと気にしすぎてもしょうがないっさ!」
 当主も少女も、本当に気持ちのいい人たちだった。俺は自分が嘘をついていることに関して、
申し訳ない気分になっていた。
 少女はしばらく話したあと、また明日と言って席を立った。去り際に、
「お兄ちゃんって何だかちょっと変わった人だねっ」
 と言い残して。
 彼女は俺にも解らない何かを見抜いたのだろうか?
 それについてしばらく考えてみたが、早々にあきらめて俺は床についた。さすがに今日は色
々と疲れた。

668涼宮ハルヒの微笑053 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:23:00.98 ID:sjjYSbZb0


 雪が舞っている。俺はベンチに座っている。見覚えのない風景。
 辺りを見回す。遊歩道。ベンチ。外灯。柵に囲まれた茂み。
 どこからか少女の泣き声を耳にした。
 声を頼りに歩く。少し開けた場所に出た。ブランコや滑り台がある。
 物憂げにうつむいた少女が一人、ブランコに腰掛けている。
 少女は泣いてはいない。にもかかわらず泣き声はまだ聞こえている。
 わずかにブランコを揺らしながら、足元を見つめる少女。
 何かをじっと考えているようだ。
 やがて静止するブランコ。
 少女は静かに立ち上がると、うつむいたまま立ち去っていく。



669以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:23:15.25 ID:q6JvjderO
紫煙

670以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:23:52.91 ID:trgzLqLn0
しえん


671涼宮ハルヒの微笑054 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:24:00.78 ID:sjjYSbZb0
 目が覚めた。奇妙な夢だった。見覚えのない風景。公園だろうか。あれはこの家の少女では
なかった。俺の失われた記憶に関係しているのだろうか。
 朝食の後、俺は初老の当主に、少し時間をいただけないかと願い出た。話したいことがある
と。
 あまり長くは時間を取れませんが、という前提で当主の書斎に通された俺は、これから少し
奇異な話をしますが驚かないで聞いて欲しい、と前置きをしたうえで自分の身の上を正直に話
した。
 昨日の昼過ぎに、川沿いの公園で目を覚ましたこと。
 そこがどこなのか、今がいつなのか、自分が誰なのかすら解らなかったこと。
 自分の所持品から、自分の身元を調べようとしたが、全く手がかりがなかったこと。
 手帳に電話番号と住所が書いてあったが、電話は繋がらず、その住所にも全く心当たりがな
かったこと。
 しばらく当てもなく歩いていると、偶然少女と男たちが争っている場面に出くわしたこと。
 昨日はなんとなく記憶喪失であることを言わないほうがいいように思え、嘘をついたこと。
 そして、自分には何かやらなくてはならないことがあったと思えること。
「それが事実だとしたら興味深い話ですな」
 当主はにこやかに話した。
「こうして今話しているのも何かの縁。もしよろしければあなたの身元調査に協力させていた
だきますが。私もそれなりの情報網を持っておりますので、きっとお役に立てると思います」
「今の私には頼るものが何もありません。恐縮ですが、お言葉に甘えさせてください」
「ええ、ええ。どうかお気になさらずに」
 当主は一呼吸おいて、
「では、まず私にも所持品を確認させていただきたいのですが。包み隠さずに申し上げますと、
身元の解らない人物を当家に滞在させるとなると、こちらとしてもそれなりに調べさせていた
だくことがあります。ですがあくまで形式的なものだと思ってください。私もこういう立場の
人間ですのでそれなりに人を見抜く目を持っています。私にはあなたが何かを企むような人間
には思えませんので」
 当主の要求は当然のことだ。早速俺は、財布、手帳、それに腕時計を差し出した。

672以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:24:44.60 ID:A/cWxf5p0
朝食が朝倉に見える俺は朝倉症候群

支援

673以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:26:26.95 ID:0JNRPxvt0
dkwk支援

674以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:27:17.43 ID:tT2vX9GDO
携帯からも私怨

675以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:28:20.16 ID:0JNRPxvt0
バイサル食らった?支援

676以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:28:33.26 ID:IIXbfjiA0
支援

677以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:28:46.07 ID:tT2vX9GDO
がんばれ私怨

678以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:30:06.39 ID:EqeW0vSKO
携帯から援護

679涼宮ハルヒの微笑055 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:30:27.71 ID:sjjYSbZb0
 しばらくの間、それらを検分した当主の見立てによれば、財布、手帳に関してはありふれた
市販品で、特に手がかりになるようなものは見当たらない。
 手帳に書かれていることも、電話番号と住所を除けば特に身元の解るようなことは書かれて
はいない。
 腕時計は一般的なクォーツ時計ではなく電波時計であるが、数万円あれば買える市販品との
ことだった。製造番号の刻印などはなく、やはり手がかりにはなりそうにない。
 そして当主は、疑問を正直に語った。
「あなたの所持品には不自然さが残ります。あなたは何らかの理由で敢えて自らの身元が所持
品から判断されないようにしていると見受けられます」
 それに関しては俺も同じ意見だった。大抵の場合、財布の中には身元が判断出来るようなも
のが必ず入っているはずだ。でないと、ビデオテープ一本借りれやしない。
「もしかしたら、あなたは諜報活動のようなことを生業とする方なのかもしれませんね」
 当主は冗談っぽく言った。
 仮にそうだとしても悪いようにはしませんので、記憶が戻られたら必ずお知らせください、
とも。
「ひとまず電話番号と住所の線で調査してみます。あなたは調査が終わるまでは遠慮なく当家
にご滞在ください」
「重ね重ねお礼申し上げます」
 俺は深々と頭を下げた。
「いえいえ、もとはと言えば、娘を救っていただいた恩がありますし。それとあなたが記憶喪
失であることを家人には話しておきたいのですが、よろしいですかな?」
「ええ、構いません」
 ひとまず、俺は当面の宿を確保することが出来て、胸をなでおろした。
 その日は当主の了解を得てまた周辺を歩き回った。だが今日も手がかりは何も得られなかっ
た。見知らぬ街並み、見知らぬ人々。

680以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:31:24.83 ID:0JNRPxvt0
支援

681涼宮ハルヒの微笑056 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:31:32.48 ID:sjjYSbZb0
 屋敷に戻った俺は、これからお世話になる身で客間を使わせていただくのは恐縮なので、出
来れば別の部屋に移してもらえないかと当主に頼んだ。広すぎる部屋は今の俺の身分ではなん
とも落ち着かなかった。
「そうおっしゃるのであれば、こちらは全く構いませんよ」
 当主は快諾し、俺に離れの部屋を用意してくれた。
「この部屋は先代が時々使っていた部屋でして」
 俺がいかにも恐縮しきりなのを気の毒に思ったのか、当主は、
「もしよろしければ、ご滞在のあいだ娘の学校への送り迎えをしていただけると誠にありがた
いのですが。いかがでしょうか?」
 と提案してくれた。
 俺は、是非そうさせてくださいと即答した。断る理由など欠片もない。

「やっほーっ! お兄ちゃん記憶喪失なんだってねっ。どおりでおかしいと思ったさっ!」
 当主が去ってしばらく後、今度は少女がやってきた。
「俺におかしなところなんてあったか?」
「だってお兄ちゃんの言葉って、アクセントとかがうちらと一緒じゃない。明らかにこの地方
の言葉だよ。それで旅行者ってのは不自然さっ!」
 なるほど、そう言われてみれば確かにその通りだった。実に頭のいい少女だ。
 だとすれば、やはり俺はこの近辺に住んでいたのだろうか。ところで、君の言葉は周りの人
とはかなり違うと思うぞ。
「あははっ、そうかいっ?」
 あいかわらず、屈託のない笑顔。
「でも、おかしなのはそれだけじゃないんだけどねっ。それは記憶が戻ったらまた聞かせても
らうよっ」
 少女にはまだ何か含むところがあるらしい。
「じゃあ、明日からよろしくねっ!」

682以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:31:33.12 ID:trgzLqLn0
しえn


683涼宮ハルヒの微笑057 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:33:01.44 ID:sjjYSbZb0
 次の日から、俺は少女とともに登校し、記憶を取り戻すために街中を散策し、少女とともに
下校するという日々を過ごした。
「あー、お兄ちゃん、読みたい本があるから、悪いけどお迎えのときまでに買っておいてくれ
ないっかな?」
「今日は、ちょっと別の道で帰りたいんだけど、大丈夫っかな?」
「スモークチーズ買っておいてくれないっかな? あたしの大好物なんだっ!」
「昨日のスモークチーズより別の店の方が美味しいから、今日はちょっと遠出してもらってい
いかなっ?」
 と、俺に色々と注文をつけてくれた。おそらく彼女なりに俺を色々なところに出向かせて、
少しでも記憶を思い出せるきっかけになるようにと考えてくれているのだろう。
 単なるお使い要員なのか、スモークチーズにうるさいだけかもしれないが。
 そして、結局のところ俺は記憶を取り戻す糸口すら全くつかめなかった。

 また夢を見た。数日前と同じ、雪の舞う公園。どこからか聞こえてくる少女の泣き声。ブラ
ンコに佇む少女。

 ある日の朝食後、当主に呼ばれた。調査の結果が出たということだった。
「結論から申し上げますと、芳しくありませんでした。まず電話番号ですが、どうも今までに
一度も使われていない番号のようです。あれは電話番号ではなくて何か別の意味を持つものか
もしれませんね」
 電話番号に似せた暗号か何かということだろうか。俺はやはりスパイとかそういった職業の
人間なんだろうか。
「住所は実在しましたが、あなたとの関連性は全く見出せませんでした。住人の家族、親戚だ
けでなく、友人や知り合い関係なども洗ってみましたが、行方不明者や旅行者あるいはこの近
辺に住んでいる者、つまりあなたに該当しそうな人ですな、そういった方は見つけられません
でした」
 当主は残念そうに首を振り、
「これであなたの所持品からの調査の線は断たれたということになります」

684以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:33:06.13 ID:lOj24U2/0
しえん


685以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:33:27.84 ID:0JNRPxvt0
パソの前から離れられない支援

686以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:33:43.30 ID:kwGK/1RaO
何の因果か……神作品がこの時期にでるとは

687以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:33:49.18 ID:gWRBr+LZO
支援

688涼宮ハルヒの微笑058 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:34:01.39 ID:sjjYSbZb0
 俺は率直な疑問を率直に訊いた。
「俺はいつまでここにいてよいのでしょうか?」
「実は、娘を誘拐しようとした連中がほぼ特定出来まして。ですがまだ確証は得られていない
状態で、それが解るまでは娘も狙われ続けるということになります。よろしければ、しばらく
の間は娘のボディーガードを続けていただけるとありがたいのですが。その後のことはまたそ
のときに考えましょう」
「申し訳ありません。記憶が戻りましたらいつか必ずお礼をさせていただきます」
「いえいえ、こちらとしても大変助かっておりますので。娘もあなたにはよくなついているよ
うですし。実を言うとこれまでも何度かボディーガードを雇おうとしたことはあったのですが、
いつも娘に断られて困っていたものですから」
 お気遣い痛み入ります。俺は頭を深々と下げて、書斎を後にした。
 もしこのまま記憶が戻らなければ、いずれこの家を出なければならないだろう。
 いつまでも当主の好意に甘えるわけにもいかない。そうなれば俺は自力で生活の手段を考え
ながら記憶を取り戻す努力をしなければならない。
 俺が自由に使える時間はあまり残されていないだろう。
 俺は、あの奇妙な夢にかけてみることにした。
 書店で近辺の地図を買い、公園を調べ、印を書きみ、しばらくの間それらを重点的に廻って
みることにした。
 遊歩道。ベンチ。外灯。柵に囲まれた茂み。そしてブランコ。
 どこの公園にもあるようで、しかし夢の情景を満たしているものはなかなか見つからない。
 何よりも、夢で見た風景である。それを鮮明に思い出せるはずもない。
 この近辺の公園だという保障はどこにもなかった。だが、俺にはこれ以外に記憶を取り戻す
ための手がかりは何一つないのだ。
 三日間かけて、俺は地図上の公園全てに足を運び、さらに元の地図を中心として周囲八箇所
の地図をあらたに買い求め、二週間かけてそれらを踏破した。
 だが、結局俺の夢に該当する公園は一つも見つからなかった。
 もしかしたら見落としがあったのかもしれない。あるいは、ここよりもっと離れた場所にあ
る公園なのかもしれない。
 俺は途方に暮れていた。何しろ公園が本当に俺の記憶を呼び覚ますためのきっかけになるの
かどうかすら解らないのだ。

689以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:34:21.20 ID:EqeW0vSKO
支援

690涼宮ハルヒの微笑059 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:35:01.72 ID:sjjYSbZb0
 俺がほとんど諦めかけていた頃、それは起こった。
 ある日の昼過ぎ。俺は私鉄の駅前にいた。既にこの周辺には一度足を運んでいる。
 駅前の道沿いには商店が立ち並び、北側には豪華そうなマンションが見て取れる。
 俺はここ数日の間、念のためにと幼稚園や小学校に付随しているような公園を探し歩き、こ
の日の午前中にそれら全てを調べ終わったところだった。
 もはや打つべき手は何も思いつかなかった。
 何の意図もなく予感もないまま、線路沿いの通りから人気のない路地に入った。そして角を
曲がってすぐのところにそれはあった。
「あれ……、こんなとこに公園なんてあったっけか?」
 疲れのあまり思わず独り言が出る。既に肉体的にも精神的にも疲労はピークに達していた。
 地図と照合する。載っていない。公園の造りから、比較的新しく出来た公園のように思えた。
やれやれ、新しい地図を買ってもう一度洗いなおす必要があるかもな。
 俺は大した期待もなくその公園に入った。
 遊歩道、ベンチ、街灯の雰囲気などが夢の場所に似ているように思えた。だがなにしろ狭い
公園だった。ブランコや滑り台がないのは一目で解る。
 俺はベンチに腰掛け、頭を抱えながらこれからのことを考えていた。何も思い浮かばなかっ
た。そして俺はいつの間にか眠っていた。

 夢を見た。いつもの公園。雪が舞っている。少女の泣き声とともに、ブランコの音がどこか
らか聞こえてくる……

691以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:35:29.82 ID:q6JvjderO
おちおち飯も食えない支援

692涼宮ハルヒの微笑060 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:36:03.19 ID:sjjYSbZb0
 目を覚ました。薄暗がりの公園には外灯の明かりが点っている。
 寒い。雪が降り始めていた。
 山側から吹き降ろす風が頬を冷やす。
 どこからか少女の泣き声が聞こえる。
 ブランコの音が鳴り続けている。

 待て?
 なんだって?
 泣き声? ブランコ?

 あらためて耳を澄ませる。夢の続きでも幻聴でもない。それは微かではあるが、確かに聞こ
える。
 俺はブランコの音を頼りに走った。
 その公園は、樹木が植えられている茂みを挟んで、二箇所にエリアが分かれていたのだ。
 俺が寝ていたベンチがある一画とは反対側に、確かにブランコと滑り台が置かれていた。
 そして、ついに俺はブランコに座る憂鬱げな少女を発見した。
 夢のとおり、彼女は泣いていない。だが泣き声は依然として聞こえてくる。
 俺の姿に気づいたのか、少女は、
「あんた、さっきベンチで寝てた人でしょ。こんなとこで昼間から居眠りなんて、大人っての
も随分暇なものなのね」
 随分と口の悪いガキだな、そう思いながらも俺は話しかけた。
「お前こそ、こんなとこで一人で何やってんだ?」
「あんたどう思う? 世界ってつまらないものだと思わない? あたしはもうこんな世界うん
ざりよ。誰も私の話なんか聞いちゃいない」
 俺の話を無視して少女は言った。お前こそ俺の話を聞いちゃいないだろうが。
「どうしたんだ? 家か学校で何かあったのか?」
「あんたは……自分がこの地球でどれだけちっぽけな存在なのか自覚したことある?」
 何を言い出すんだ、こいつは?

693以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:36:25.59 ID:EqeW0vSKO
飯喰いながら支援

694涼宮ハルヒの微笑061 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:37:01.69 ID:sjjYSbZb0
「あたしね、この前野球場に行ったの。家族に連れられて……。あたしは野球なんかには興味
ないんだけど。でも着いてみて驚いた……」
 突然俺は、頭の中を揺さぶられるような違和感を覚えた。
「……日本の人間が残らずこの空間に集まってるんじゃないかと思った……」
 誰かが俺の頭の中で、何かを叫んでいる。
「……実はこんなの、日本全体で言えばほんの一部に過ぎないんだって……」
 少女は話を続ける。頭の中の叫びは次第に大きくなり、はっきり感じ取れるようになってい
た。
 言葉の主は繰り返していた。『思い出せ』と。
「……世の中にこれだけ人がいたら、その中にはちっとも普通じゃなく面白い人生を送ってる
人だってきっといるわ。でもそれがあたしじゃないのはなぜ?」
 少女は一呼吸置いて、俺に質問を投げかけた。
「あんた、宇宙人っていると思う?」
 唐突に頭の中に一人の少女の顔が浮かんだ。短髪の、無表情で儚げな印象を与える少女。
「未来人は? 超能力者は?」
 短髪の少女の隣に、無邪気に微笑む栗色の髪の美少女と、爽やかに如才なく微笑む美少年の
二人が加わった。
 思い出せ、思い出せ。
 あらためて俺は目の前の少女に目をやった。
 腰まで届く、長くて真っ直ぐな黒髪、それにカチューシャ。
 意思の強そうな、大きくて黒い瞳。
 俺は何かを思い出そうとしている。
「お前の……、名前を教えてもらっていいか?」
「そんなこと聞いてどうすんのよ」
 俺の真剣な表情を見てあきらめたのか、少女は言った。
「まあいいけど。あたしの名前は、涼宮……」
 俺は無意識に立ち上がって、叫んでいた。

「ハルヒ!」

695以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:37:56.32 ID:lOj24U2/0
支援

696以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:37:59.43 ID:0JNRPxvt0
なんか泣きそうになった支援

697涼宮ハルヒの微笑062 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:38:19.01 ID:sjjYSbZb0
 ハルヒはブランコから立ち上がり、鋭い眼光でもって俺を睨みつけた。
「ちょっと……なんであんたがあたしの名前知ってるのよ?」
 俺はその問いには答えず、興奮しながら続けた。
「宇宙人? そんなのは山ほど知ってるぞ。幽霊みたいにネットワークやらシリコンやらそう
いうのにとり憑く奴だっている」
 いきなり何を言い出すのか、という表情で俺を見つめるハルヒ。おそらくさっきの俺の表情
がこんなだったに違いない。
「未来人? ありふれてる。現代人よりはるかに多いぞ。今より未来に生きてる奴らはみんな
未来人だ」
 ハルヒは呆気に取られていたが、そんなことはお構いなしに俺は続けた。
「超能力者? いくらでもいるぞ。奇妙な集団を作って奇妙な空間で奇妙な玉になってるよう
な奴らがな」
 ハルヒは呆れを通り越して訝しげな表情でこちらを見ていた。
 俺は言った。ハルヒの目をじっと見据えて。
「いいか、よく聞けハルヒ。いずれお前はそういった連中の中心になって、好き放題、勝手気
ままな人生を送るんだ。この地球、いや全宇宙の中でもそんなことが出来るのはお前だけだ」
 ハルヒは目を見開らき、あらためて俺の表情をうかがっていた。いつの間にか泣き声は聞こ
えなくなっている。
「だから周りのことなんか気にすんな。お前はお前が信じる道をただひたすら突き進めばいい。
しばらく辛い時期があるかもしれんが、俺が保障する。お前は絶対に幸せになる。だから頑張
って生きてくれ」

698以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:38:35.84 ID:lOj24U2/0
支援

699以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:38:36.72 ID:gWRBr+LZO
支援

700涼宮ハルヒの微笑063 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:39:12.32 ID:sjjYSbZb0
 ハルヒは再び顔をうつむかせ、何かを考え始めた。しばらくそうした後ハルヒは勢いよく俺
を仰ぎ見た。
「よくわかんないけど覚えとくわ!」
 そこには、俺が英語の授業中に初めて見たときと同じ、ハルヒの灼熱の笑顔があった。やっ
ぱりお前にはその表情が一番よく似合う。
「話聞いてくれてありがと!」
 そう言い残すと、ハルヒは俺がよく知る短距離走スタートダッシュの勢いで走り去った。
 俺はハルヒの後姿が見えなくなるまで立ちつくしていた。
 ハルヒよ、頑張って生きてくれ。
 俺のためにも。

 こうして、俺は全てを思い出した。


701以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:39:40.11 ID:lOj24U2/0
しえん

702以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:39:42.90 ID:EqeW0vSKO
ちょい感激支援

703涼宮ハルヒの微笑064 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:40:17.47 ID:sjjYSbZb0
 光陽園駅前公園から鶴屋家に戻った俺は、重要な話があると言って当主に時間を取ってもら
った。
 これからかなり奇異な話をしますが驚かないで聞いて欲しい、と前置きをしたうえで、俺は
話し始めた。
 記憶が戻ったこと。
 自分は十年先からやってきた未来人であり、詳細は明かせないがこの時空にいる俺はまだ小
学生であること。
 涼宮ハルヒという存在とその能力のこと。
 宇宙規模的存在とそのインタフェース端末のこと。
 俺よりはるか未来にいる未来人たちのこと。
 ハルヒにより生み出される閉鎖空間、超能力者とその役割についてのこと。
 そしてこれから自分はそれら超能力者を集めた機関を作らなければならないこと。
 話し終えるのにざっと二時間はかかった。
 俺はハルヒを救うために行動していることについては話さなかった。
 それを説明するためには、情報統合思念体の企みについて話さなければならず、そうすると、
俺がやつらと敵対する立場であることも明らかにしなくてはならない。
 その事実を語ることについて俺は、慎重にならざるをえなかった。
 結局のところ俺が当主に話したのは、俺が未来人であることに加え、俺が高校一年の時点で
既に知っていた知識と、機関を作る必要があるということである。
 当主は怒り出すこともなく、我慢強く話を聞いてくれていたが、その表情には当然の反応と
して明らかな困惑の色が見えていた。
「あなたの目に嘘は感じられません。それならば、あの電話番号についても納得がいきますか
らな。ですが、何か確証になるものがあるとよいのですが」
 今の俺にとって、この電波話を信じてもらうのにさしたる苦労は必要なかった。
 俺は当主の目の前で時間移動をおこない、三日後の新聞を入手して、それを当主に手渡した。
当主は三日後を待つまでもなく、その場で新聞の内容にざっと目を通しただけで、俺が未来人
であること、そして俺の話が全て真実であることを確信したようだった。

704以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:40:24.73 ID:0JNRPxvt0
支援

705以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:40:25.48 ID:q6JvjderO
鳥肌たてつつ支援

706以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:40:39.30 ID:qLTfzZLF0
俺なら古泉が汗噴出しながらストリップショーしてるのを思い出すんだろうな。支援

707以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:40:56.66 ID:lOj24U2/0
長丁場ですなぁ、支援

708涼宮ハルヒの微笑065 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:41:18.23 ID:sjjYSbZb0
 当主とは今の話を機密事項としてお互い他人に一切口外しない約束を取り交わた。
 そして、当主は俺の機関立ち上げに全面的に協力する意向であること、詳細な計画を立てる
ためになるべく明日以降時間を取れるように努力することを表明してくれた。
 結局俺は引き続き鶴屋家にお世話になることとなってしまった。もはや俺には下げる頭も残
っていない。
「いえいえ、私どもとしても地球滅亡の危機は避けたいですからな」
 当主はどこまでも気立てのいい人物だった。そういうところは確実に鶴屋さんに受け継がれ
ている。


「お兄ちゃん、記憶が戻ったんだってねっ。おめでとっ!」
 離れに戻った俺に、将来の鶴屋さん――まあ今も鶴屋さんなのだが――がいつものテンショ
ンでお茶を持ってきてくれた。
 妹からお兄ちゃんと呼ばれることは長きにわたる俺の念願だったのだが、それがまさか鶴屋
さんによって実現されるとは。
「ありがとよ」
 俺は笑顔で応えた。
「お兄ちゃん、名前なんていうのっ?」
 俺は既定事項に則るならばこの名前を告げるしかないと思い、素直にそれに従った。
「ジョン・スミスだ」
「あははっ! それってどういう冗談っ?」
 実に愉快そうに鶴屋さんは笑った。
「そういうことにしておいてくれ」

709涼宮ハルヒの微笑066 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:42:19.64 ID:sjjYSbZb0
「まあいいさっ! でさっ、前に言ってたおかしなことだけど、聞いていいっかな?」
「ああ、なんでも聞いてくれ」
 俺はお兄ちゃんと呼ばれたこともあって、とても気を良くしていて、かつ気を大きくしてい
た。そして、俺は明らかに油断していた。
「ジョン兄ちゃんって、もしかして未来の人っ?」
 お茶を含んでいたら、それは間違いなく俺の口から霧散していたはずだ。またしても、そし
て前回以上に俺は腰を抜かした。動揺が隠せない。
「ま、待て、なんだってそういう風に思うんだ」
 満面の笑みを浮かべながら鶴屋さんは言った。
「だってお兄ちゃんのサングラス、割と有名なブランドだけど、それって今年の夏に初めて出
る予定のモデルだよっ?」
 参った。俺が数週間かけて、まさしく偶然とも僥倖とも言える奇跡で得た真実を、鶴屋さん
は俺と初めて会った日からお見通しだったとは……。
「あー、ええとだな……」
 考えながら話すのは未だに得意ではない。
「俺にはその、サングラスのメーカーに知り合いがいて、」
 鶴屋さんが興味深かそうに俺を眺めている。
「……それでだな、そう、たまたま運良く発売前の試作品を譲ってもらったんだよ、これが」
「へぇーっ」
 鶴屋さんの表情はとても楽しげだった。
「でもあのサングラス、随分とくたびれてたように見えたけど」
 確かに……ハルヒにプレゼントされて以来、ロクに手入れもしてなかったからな。
 そして、俺はやはりこの方を騙し通せるほどの才覚が自分にはないであろうという事実を受
け入れ、うなだれながら白状した。
「これは君のお父さんにしか話してないことだ。君のお父さんも含めて絶対に誰にも内緒にし
ておいてほしい」
「わかってるよっ! 今までもこれからも誰にも言わないさっ。こんなこと他の誰も信じちゃ
くれないしねっ!」
 こうして俺と当主との約束は、この俺によって一時間を待たずして反故にされたのだった。

710涼宮ハルヒの微笑067 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:43:29.90 ID:sjjYSbZb0
 俺は情報統合思念体の統括者である老人から逃れるために時間移動し、その直前に老人によ
って記憶を奪われたのだろう。
 ここはあのときから六年、つまり元の時代から十年半ほど遡った過去だ。
 俺は最大でも六年間の時間遡行しか出来なかった。つまり少年が言っていた飛び石的時間移
動がいつの間にか可能になっていたのだ。
 これからのことは当主が言ってくれたとおり、明日からじっくり考えよう。
 俺は床につき、すぐに眠りに落ちた。
 それも束の間、俺は体全体が大きく揺さぶられる感覚に飛び起きた。俺が幼い頃に経験した
大地震、それを思い出させる強烈な衝撃だった。
 だが冷静に辺りを見回してみると、おかしなことに何一つ揺れているものはない。そして見
たところ俺の体にも揺れは生じていない。しかし俺は確かに激しい揺れを感じている。
 何が起こっているのか、ようやく俺は理解した。時空振動だ。それもかなり特大の。
 そして理由はすぐに思い当たった。

 ハルヒによる最初の情報爆発が今まさにおこなわれている。

 未来からでも観測出来た、という朝比奈さんの言葉を思い出す。今まさに時空振の強大さを
俺自身が感じていた。
 おそらく今日の俺とハルヒとの会話が、この情報爆発を引き起こしたのだ。
 そして驚くべきことに、つまり俺は、六年間の時間移動によりハルヒが作り出したという時
間断層を突破していたのだ。
 あの老人ですらそれは不可能なことだと言っていた。
 ハルヒは俺のために特別な抜け道を作ってくれていたのだろうか?
 老人はあのとき、二度と情報爆発は起こらないだろうと言った。超自然的かつ奇跡的な確率
でおこなわれたことだと。
 そしてそれは俺とハルヒの出会いにより再び引き起こされた。
 もし運命というものが存在するのなら、俺はそれを信じてみてもいいと思った。
 いや、今の俺にはそれを信じる以外に道はない。

711以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:44:06.58 ID:0JNRPxvt0
支援

712300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:44:26.55 ID:sjjYSbZb0
第三章終わりです。
これ今日中に終わるのかな・・・?w

713以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:44:34.06 ID:QwJBzq/F0
すごすぎる!!
wktkがとまらない

という後方支援

714以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:44:38.06 ID:WYh2cQh/0
wktk

715以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:44:39.03 ID:lOj24U2/0
ミノル・トリハダ支援

716以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:44:50.40 ID:AwRhwBLk0


717以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:45:39.22 ID:Q3XDimnn0
がんばれ!支援

718以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:45:59.63 ID:0JNRPxvt0
もうね、この一言しかでない

仕事しろ谷川www

719以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:46:48.08 ID:EqeW0vSKO
うーん、すげえ..
支援

720以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:46:50.12 ID:Lr2arPjn0
>>718
ヒント
300 ◆1667Z5noT6 = ???

721以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:47:56.85 ID:qLTfzZLF0
300 ◆1667Z5noT6 = 古泉一子

722以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:51:21.25 ID:AwRhwBLk0


723以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:52:02.40 ID:No5OzPGx0
wktk保守

724以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:52:55.88 ID:0JNRPxvt0
>>720
ちょwwwなにが言いたいのか全然わからんwww

725以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:56:07.18 ID:QwJBzq/F0
>>720
ヒントになってねぇwwwww

726300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:56:31.17 ID:sjjYSbZb0
それでは第四章行ってみたいと思います。
よろしくお願いしますm(_ _)m

727以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:57:14.29 ID:qLTfzZLF0
支援


728涼宮ハルヒの微笑068 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:57:31.74 ID:sjjYSbZb0

第 四 章


 情報爆発から一夜が明けた。
 俺はこれからの行動計画を考えた。俺がすべきことは大きく分けて三つある。
 機関を立ち上げること。
 未来人がTPDDを得るきっかけを与えること。
 そして、ハルヒを救うこと。
 さらに俺には絶対に避けなければならないことがあった。
 ひとつは当然ながら、自らが既定事項を崩す行動を取らないことだ。
 俺の誤った行動によって、未来が俺の知る元の未来と変わってしまえば、全てが水の泡だ。
 そして、もうひとつはさらに重要だった。
 情報統合思念体に、俺の存在を知られることは絶対にあってはならない。
 老人の話を信じるとすれば、書き換えられたこの歴史では、情報統合思念体は俺の存在を知
らない。ハルヒの周辺に関する記憶を全て抹消すると言っていたからな。
 気をつけなくてはならないのは、俺がTFEI端末に不用意に接触することだ。たとえそれ
が長門であってもだ。
 もし俺がTFEI端末の周囲に近けば、奴らは俺の記憶を読み取るのに些かの労力も必要と
しないだろう。
 そして俺が情報統合思念体を消滅させる意図を持っていることを奴らに知られれば、俺はか
なりまずい状況に立たされる。情報統合思念体から攻撃を受けることは容易に想像出来る。
 過去の長門の行動から推測すれば、おそらく記憶を読むのに必要な距離は半径十メートル程
度だろう。
 長門は最終的には俺と行動を共にし、ハルヒを救うために情報統合思念体の抹消を提案して
くれた。だがそれはあくまでも卒業式以降の歴史である。それ以前の長門に俺の意志を知られ
ることによって、長門が俺の敵にならないという保障はどこにもない。
 長門を敵に回すなんてことは俺には絶対に考えられなかった。

729以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 18:57:39.35 ID:MPkHIBpu0
おはようございます

730支援 :2006/10/07(土) 18:58:33.34 ID:uJ8J66f2O
支援なんかしてやらねぇよこのイエローモンキー!

731涼宮ハルヒの微笑069 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:58:34.29 ID:sjjYSbZb0
 TFEIだけではない。未来人や超能力者、その他一般人を含めた誰にだろうと、今の俺に
過去の俺の面影を見出されることは好ましくない。
 そういうわけで、俺は髭を伸ばし、目が弱いという理由でサングラスをかけ続けることにし
た。
 怪しげな組織の創設者には怪しげなスタイルが似合うのさ、おそらく。

 次に俺は、世界と歴史、とりわけハルヒの周辺が情報統合思念体によってどのように改変さ
れているのかを確認することにした。
 ハルヒがどこの高校に入学しようとも、俺は最終的に北高に行くように歴史を修正するわけ
だが、それでも今ハルヒがどこにいるのかを知る必要はある。
 ハルヒの周囲には観察のためのTFEI端末がいるはずだ。俺がハルヒの居場所を知らない
がために、迂闊にハルヒの周囲に近づくということは、すなわちTFEI端末に発見される危
険性が高まるということだ。
 俺は、この時代から三年後の北高の入学式、つまり俺たちが北高に入学した日の登校時間に
移動した。
 おそらくハルヒは北高には入学しないだろう。情報統合思念体が全ての歴史を書き換えたの
だとすれば、ハルヒがジョン・スミスに会う歴史は生まれていないはずだ。
 だが俺は一応の対策として、北高の近くを見張るのは避け、登下校ルートが見渡せる建物の
屋上を探し出し、そこから双眼鏡で観察することにした。
 学生たちをつぶさに観察出来るほど双眼鏡の倍率は高くなかったが、それでもその中にSO
S団メンバーが混じっていればすぐに解るだろう。
 三年間ずっとつきあってきた。例えそれが双眼鏡越しの後姿だとしても、俺は一目で判別す
る自信がある。
 予想どおり北高にハルヒの姿はなく、長門の姿も見当たらず、大汗をかきながら暗澹たる気
分で坂道を登る高校一年の俺の姿しか発見出来なかった。
 入学式の日は新一年生のみの登校であり、朝比奈さんの姿は当然確認出来なかった。だが翌
日もおそらく朝比奈さんは来ず、しばらく経って古泉が転校してくることもないだろう。まだ
未来人組織も古泉たちの機関も出来ていないんだからな。
 では朝比奈さんと古泉は解るとして、ハルヒと長門はどこだ?

732涼宮ハルヒの微笑070 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 18:59:50.59 ID:sjjYSbZb0
 俺は時間移動で再び登校時間に戻り、ハルヒの家から比較的近い、市内の高校をひとつずつ
同じ方法で調査することにした。
 さっき北高の通学路を張っていた俺と同じ時間平面に来ている。つまりこの時間平面には今
の俺と北高を張っている俺の二人がいるわけだ。無駄にややこしい。
 俺はまず、文化祭の映画撮影で使ったロケ地である朝比奈さんが突き落とされた池に程近い、
学区内では一番の進学校に向かった。
 長門が世界を改変したときとは違い、光陽園女子が俺の知る中高一貫のお嬢様女子高のまま
ならば、ハルヒにとってその進学校が最も適切な選択のはずだ。
 双眼鏡の視界を校門付近に固定し、しばらく観察を続けた。
 見つけた。
 これから始まる学校生活への不安や期待を一様にその表情に浮かべる新高校生の中で、ただ
一人だけ、俺が初めて会ったときと同じ100%混じり気なしの不機嫌イライラオーラを放出
し続けている、見慣れた黒髪の女の姿を。
 そして、同じ高校に朝倉と喜緑さんの姿も発見した。
 だが長門の姿は見えなかった。長門はハルヒの監視役。ハルヒがそこに通うのであれば、長
門も当然ながら同じ学校に通うのが筋というのものだ。なぜ長門はいないんだろう。

 俺には他にも気になっていることがあった。
 今の歴史では、俺とハルヒの将来はどうなっているんだ?
 俺は、俺が元いた時代、つまり俺とハルヒが結婚していた頃に移動した。
 予想どおりだった。俺とハルヒは結婚していない。当たり前だ。北高での出会いがなければ、
俺とハルヒの人生には永遠に交差する点は訪れないだろうからな。
 そしてこの歴史では俺は大学には行かず、専門学校を卒業したものの、就職難でフリーター
真っ只中にいた。なんてことだ。俺はあらためてハルヒの補習授業のありがたみを実感した。
 では一体ハルヒはどこにいる?
 俺はハルヒの実家を遠くから見張ってみた。だがいつまでたってもそこにハルヒの姿は見出
せなかった。

733以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:00:06.40 ID:0JNRPxvt0
>>730
ツンデレ乙支援

734涼宮ハルヒの微笑071 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:00:56.67 ID:sjjYSbZb0
 次に一年間時間を遡ってみた。そこには大学に通う、さっき進学高で見たのと同じ、混じり
気のない不機嫌な表情そのままのハルヒがいた。
 そこからさらに半年間時間を進める。大学卒業前のハルヒを発見した。なるほど、ならば大
学を卒業してすぐに引越しでもしたのか?
 そうしてハルヒがいなくなった時期を少しずつ絞り込んでいき、ようやく真実にたどり着い
た俺は、あまりのことに茫然自失した。
 ハルヒの実家にかかる鯨幕。訪れる弔いの人影。外側からわずかに見える祭壇。ハルヒの写
真。
 ハルヒは大学を卒業してしばらく後に、やはり原因不明の難病で命を落としていたのだった。
 俺は直感した。何らかの理由で情報統合思念体が自律進化の可能性を捨て、不確定要素であ
るハルヒを亡き者にしたのだろうと。
 過去のハルヒは高校一年の五月と高校三年の二月、二度世界を作り変えようとし、そしてそ
れは俺の存在により未遂に終わった。
 だがこの歴史では、ハルヒを止められる者はおそらく誰もいない。
 情報統合思念体は、自律進化の可能性と世界改変による自らの消滅の可能性を天秤にかけた
末に現状維持を望み、世界改変を未然に防ぐためにハルヒを死に至らしめたのだ。
 奴らは情報爆発以降のハルヒへの手出しは危険と言っていたが、この歴史ではこういう判断
を下したのだろう。
 これはあくまでも想像でしかない。だがやつらの動機としては十分に考えられることであり、
他にハルヒが原因不明の病気になる理由は考えられない。
 暴走した長門が世界を変えてしまった時の喪失感、そのときとは比較にならないほどの感覚
を俺が襲っていた。
 情報統合思念体によって、俺は一番大切な思い出を奪われ、一番大切な人を二度も殺された
のだ。
 こんな未来など俺は絶対に認めない。認められるはずがない。

735涼宮ハルヒの微笑072 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:02:02.53 ID:sjjYSbZb0
 俺とハルヒが北高で出会う歴史を作るためには、あの七夕でのジョン・スミスとの出会いが
必要だ。
 それだけではない。俺がハルヒと結婚する未来を確実にするためには、おそらく俺の知る過
去の事象を全て「既定事項」として作り出さねばならないはずだ。
 俺は今日の時間移動であることに気づいていた。俺が機関を作らずとも、世界は終わってい
ない。
 俺が作らなければ、他の誰かが元の歴史とは別の超能力者組織を作るのだろう。だがそれで
古泉が北高に入学する保障はどこにもない。
 やはり機関は鶴屋さんの言葉どおり俺が作るべきなのだ。
 俺はこれから、歴史を改変する度に、その結果を検証しなければならない。
 歴史というブラックボックスに対して改変というインプットを与えた際に、アウトプットと
なる未来がどう変化するのかを理解する必要がある。
 結果を正しくフィードバックしてこそ、正しい歴史を作ることが出来るのだ。
 そして検証作業を今日のように俺一人の手でおこなうのは、今後は不可能となるだろう。
 ハルヒが北高に入学すれば、その後は北高内部の情報収集が不可欠だ。だが俺自身はTFE
I端末に近づけないという理由でそれを出来ない。
 つまり、俺には情報収集を肩代わりしてくれる存在が必要だ。
 ならば最初にやるべきことは決まった。
 俺は機関を立ち上げることを最優先課題にすることにした。

736以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:02:53.88 ID:gWRBr+LZO
支援

737涼宮ハルヒの微笑073 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:03:01.54 ID:sjjYSbZb0
 その日の夜、機関創設に関する当主との打ち合わせが開かれた。
 まず俺は、鶴屋さんに正体がバレたこと、一応の口止めをしておいたことを正直に明かした。
当主は笑いながら、
「あれは異常に勘のよい娘でして、私も昔からよく困らされております。ただ物事の本質や何
が大切かということもよく解っているようです。口の堅さは保障しますので、どうかお気にな
さらずに」
 と言って許してくれた。日々、物理的に頭が下がりっぱなしである。
 俺は機関創設計画の草案と、それに伴い必要になるであろうことについて話した。
 何よりもまず超能力者を探し出してそれを集める必要があること。
 閉鎖空間の発生とともに、超能力者がすぐに対応出来る体制をつくること。
 超能力者とは別にハルヒの監視役が必要なこと。
 未来人や情報統合思念体などの別勢力に関する情報収集をおこなう人員が必要なこと。
 その他、雑務をこなすための人員が必要なこと。
 それらを実現するために、信頼のおけるスポンサーを集める必要があること。
 当主はひと通り聞き終えると、俺の意見に全面的に同意してくれた。
「閉鎖空間が発生した際には、よろしければご招待します。是非一度ご覧いただき、その目で
お確かめください」
「それは実に興味深いですな。楽しみにしております。ああ、それと、」
 当主はまたしてもありがたい提案をしてくれた。
「私も出来る限りの協力は惜しみませんが、とはいえ立場上常に時間を取れるわけでもありま
せん。私の代わりにあなたをサポートする、言わば秘書のような者を紹介したいのですが。い
かがでしょう?」
「ありがとうございます。何から何まで、本当に痛み入ります」
 果たして一体俺は既に何度当主に頭を下げているだろう。

738以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:03:40.80 ID:0JNRPxvt0
悔しいが落ち
最後の支援

739涼宮ハルヒの微笑074 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:04:01.26 ID:sjjYSbZb0
 打ち合わせを終了し、俺は離れに戻って具体的な計画を考えた。
 さて、その超能力者たちを一体どうやって探し出そうか。
 俺は、俺が初めて閉鎖空間に連れて行かれたときのタクシーの中で、古泉が言ったことを思
い出していた。
 超能力者たちはハルヒによって能力に目覚め、それがハルヒから与えられたことを知ってい
る。
 超能力者たちは自分と同じ能力を持つものが自分と同時に現れたことを知っている。
 超能力者たちは閉鎖空間の出現を探知でき、その中で自らが何をすべきなのかを知っている。
 超能力者たちは神人を放置しておくと世界が終わってしまうことを知っている。
 そしてそれらのことはおそらく昨日、ハルヒの情報爆発によって全ての超能力者にもたらさ
れたはずだ。
 超能力者たちはハルヒの存在を知っている。ハルヒの周辺を見張っていれば、彼らうち誰か
が何らかの目的でハルヒに接触を試みるかもしれない。
 だが具体的にどこまでハルヒのことが解るのだろうか。彼らはハルヒの所在まで特定出来る
のだろうか。
 俺の知る機関の連中はハルヒを神扱いしていた。仮にハルヒの居場所が解るとして、神に近
づくなどという大胆な超能力者はいるだろうか。
 いや、彼らは昨日今日能力を与えられたばかりで混乱しているかもしれない。神に対して大
それた行動に出ないとも限らない。
 ならばハルヒのガードが必要になるかもしれない。いや、どちらかと言えば超能力者のガー
ドになるだろう。
 超能力者の誰かがハルヒに危害を及ぼすのを放置すれば、TFEI端末に消される可能性も
充分に考えられる。

740涼宮ハルヒの微笑075 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:05:02.17 ID:sjjYSbZb0
 他に超能力者と接触する方法として考えられるのは、閉鎖空間が発生したときに彼らを探し
出すことだ。
 彼らは閉鎖空間の出現だけでなく、場所までを正確に把握出来る。そして彼らは強制的に与
えられた自らの使命を果たすべく、おそらくそこに集まるだろう。
 そして俺もおそらくその発生を探知出来ると考えられる。いつかの野球場で古泉や長門とと
もに朝比奈さんが見せた態度、あれは閉鎖空間の発生を感じ取ってのことのはずだ。
 だが閉鎖空間はいつ発生するんだ?
 未来に飛んで閉鎖空間の発生時間を調べてみるにしても、飛んだその時に閉鎖空間が発生し
ていない限り、俺にはそれを探知する術はない。
 どうやらこちらの線は閉鎖空間の発生を待ったほうがよさそうだ。
 とにかくどちらの方法でもいい。誰でもいい。一人でも超能力者と接触出来れば、そこから
芋づる式に超能力者は見つかるはずだ。

 翌日、俺は閉鎖空間の発生までハルヒを監視することにした。ただ待つだけというのはどう
も性に合わない。
 ハルヒは既に小学校を卒業していたため、俺はハルヒの実家を張ることにした。仮に超能力
者の誰かがハルヒに近づくとすれば、ハルヒの外出時を狙うだろう。
 ハルヒの家の周辺を見渡せて、かつハルヒを監視する俺以外の存在から見つからないであろ
う監視場所を探すのには苦労した。
 ただでさえ高所から双眼鏡を使って監視するのだ。TFEI端末でなくとも、一般人に見つ
かれば警察に通報されるかもしれない。時間移動で難を逃れられるとはいえ、無用なトラブル
は避けるべきだ。
 俺は一時間ほどかけてようやく監視に適した場所を見つけ、ハルヒの外出を待った。一分置
きの時間移動を繰り返し、十秒間監視をおこなう。外出するなら朝の七時から夕方五時くらい
までだろう。その十時間を約二時間弱で監視する計算になる。
 初日にはハルヒは結局一度も外出をせず、俺はその翌日から三日後まで順々に飛び、同様に
監視を続けた。ハルヒは一度だけ外出し、俺はしばらくそれを尾行したが、結果は芳しくなく
超能力者らしい人影は現れなかった。
 俺は元の時間平面、つまり情報爆発の翌々日の夕方頃に戻った。朝頃に戻っても構わないの
だが、あまり実際の活動時間とズレるのは体内時計によくなさそうだ。

741涼宮ハルヒの微笑076 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:06:03.64 ID:sjjYSbZb0
「紹介します」
 翌日、当主にサポート役として引き合わされた女性を見て、俺はまた腰を抜かしそうになっ
た。
 年齢不詳の美女。あるときは別荘のメイドとして、あるときはカーチェイスの末に敵対勢力
を追い詰め、その能力を遺憾なく発揮したあの人が目の前に立っていた。
「はじめまして。森園生と申します」
 俺は実感した。少しずつだが、確実に歴史は俺の知るものと繋がりつつある。
 森さんはこの時点で既に様々な技能を身につけていた。秘書能力、あらゆる事務能力などに
加え、諜報能力、六カ国語を使いこなし、武術にも長け、射撃に関してもひととおりの心得が
あるとのことだった。ところで射撃って一体何だ?
 森さんは、スーツの左側を開いてみせた。内側にホルダーが備え付けらており、その中には
すぐさま使用するのに何の不都合もないであろう状態で拳銃が収まっていた。
 朝比奈さん(みちる)を誘拐した連中とのカーチェイスの際、俺が森さんに底知れない何か
を感じたのは間違いではなかった。やれやれ、一体森さんはどういう経歴の持ち主なんだ?
どこかの諜報機関の女スパイか何かなのだろうか。
 そして、森さんのような人材をたちどころに調達することの出来る当主が一番底知れない人
物であるのは言うまでもない。

742涼宮ハルヒの微笑077 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:07:01.75 ID:sjjYSbZb0
 既に森さんは当主から大方の説明を受けていた。俺が未来人であることを除いて。
「機関のエージェント確保やスポンサー探しについては、当主が当たってくれています。我々
は、当面は超能力者を探し出すことに重点を置きます」
 森さんにハルヒの監視を引き継ぐことにした。ハルヒの身の回りに超能力者らしき不審な人
物が接触を図る素振りがあれば、ただちに制止して尋問して欲しいと。
 俺は遠くからハルヒを監視することは出来ても、ハルヒに近づくことは出来ない。
 おそらく、ハルヒの周辺を監視しているTFEI端末がいるだろうからな。
 俺が以前、朝比奈さんに連れられて長門のマンションに行ったとき、つまり俺が中学一年の
頃の七夕のときには、長門は既に北高の制服を着ていて、俺が高校一年のときに見たそのまま
の姿だった。
 そして長門は三年間あのマンションで孤独に待機していたのだ。おそらく長門・朝倉・喜緑
の三人は高校専用のTFEI端末で、今この時代の彼女たちは待機モードであり、今のハルヒ
や中学生のハルヒを監視するための別のTFEI端末が存在するのだと思われる。
 既にこの三日分の観察は終わっているため、理由は言わずに、四日後から監視に入って欲し
いと告げた。
 俺は、田丸氏の存在を思い出し、別荘の線で田丸氏とコンタクトが取れないか調べることに
した。
 一週間かけて、高一の夏休み序盤に招待された、あの島の所有者の変遷と身辺を調査した。
 だが、結局そこに田丸氏らしき人物は見出せなかった。

743涼宮ハルヒの微笑078 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:08:01.01 ID:sjjYSbZb0


 どこかの山中に俺は立っていた。暗い。
 得体の知れない寒気のようなものを感じる。
 森に囲まれた平地に、おぼろげに噴水が見える。
 わずかな光に照らされた全てのものは、その色を失っていた。
 背後から聞いたことのある少女の泣き声。振り返る。
 広場の一角に、ひときわ明るい光に包まれた人形が立っていた。
 人形はどこか寂しげな様子で、あたりを見回している。
 やがて人形だったそれは、光を失いながら霧のように拡散していった。



744以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:08:34.47 ID:tfX2jztuO
まずいwwwまだ546までしか読んでないのに埋まりそうだwww
支援

745涼宮ハルヒの微笑079 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:09:15.00 ID:sjjYSbZb0
 また夢を見た。夢の中の泣き声は、前に見た夢と同じ持ち主によるものだった。
 この夢は誰が見せているものなのか?
 ハルヒ、お前なのか?

 それからしばらくして、夢の意味が解った。
 遂に閉鎖空間が発生した。ハルヒの中学校入学式の夜。ハルヒよ、お前は中学に入っていき
なりイライラを爆発させちまったのか?
 予想通り俺は閉鎖空間の発生を探知することが出来た。時空振動に似た感覚が俺を襲った。
 だが俺にはその場所が特定出来なかった。振動を感じ続けてはいるものの、震源地の方角す
ら解らなかった。
 俺はやはり夢にかけてみることにした。なぜなら、あの夢の中で感じていた寒気と同じもの
を、俺が今実際に感じているからだ。
 当主を閉鎖空間に案内するのは次回以降でよいだろう。現時点では俺にだって閉鎖空間を探
し当てられるという保証はない。
 森さんに連絡を飛ばす。
「閉鎖空間が発生しているようです。車を手配してすぐに来れますか?」
「了解しました。五分で到着します」
 そう言った森さんは、本当に五分きっかりに鶴屋邸前に到着した。
「どちらへ向かいますか」
 夢の中のおぼろげな風景。だが、俺はその風景に確かに見覚えがあった。
 森さんの運転する車で向かった先は、SOS団の映画のロケ地、あの森林公園だ。
 十分ほどで到着した俺たちは、駐車場に車を停め、さらに徒歩で三十分かけて噴水のある広
場まで登った。
 朝比奈さんと長門の対決シーンを撮った広場。そして朝比奈さんがレーザーを発射し長門に
押し倒されたあの場所。
 おそらくここで間違っていない。広場内の他の場所よりも、この場所で特に例の寒気を顕著
に感じるからだ。
「ここに閉鎖空間が発生しているのですか?」
 森さんが不安げに俺を見る。彼女の不安はおそらく閉鎖空間という得体の知れないものに対
してではなく、本当にこの場所で大丈夫なのかという、俺に対する不安であろう。

746以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:09:17.51 ID:No5OzPGx0
早めの次スレが必要かもしれん。支援

747涼宮ハルヒの微笑080 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:10:23.58 ID:sjjYSbZb0
「確証はないですが、こことは別の次元のこの場所で神人が暴れています。そして超能力者た
ちは今まさに神人との初めての戦闘をおこなっているはずです。神人を倒せば閉鎖空間は消え、
超能力者たちが現れます」
 これで俺の見当違いだったらかなり申し訳ないな、と思いつつも俺たちには待つ以外に方法
はなかった。
 あまり口数の多くない森さんとの気詰まりを感じながら、二時間ばかり待っただろうか。
 不意に寒気が消えた。と同時に俺たちがいる場所を取り囲むように三人の男性が突如として
現れた。
 そこに古泉の姿はなかった。それぞれ二十代後半、ハイティーン、ミドルティーンと言った
ところだろうか。
 彼ら三人には神人との戦いを通じて既に共通認識が芽生えているようだった。
 そして、そこに異端の者として俺たちが突っ立っている格好だ。
 OL風スーツに身を包んだ女性と、やはりスーツ姿にサングラスと髭面の男が、こんな夜中
にこんな山中に立っているのだ。これはもう、誰がどう見たって怪しい。
 俺は、ひとまず敵意のないことを示すため、彼らに微笑んで見せた。森さんはと言えば、実
に見事なエージェント的笑顔を向けていた。それは鏡を見て練習でもしたんでしょうか?
 しかしながら、超能力者三人はあからさまに俺たちを警戒している。まあ当然の反応だろう。
「俺の話を聞いてくれませんか」
「お前は何者だ」
 年長と思われる超能力者が俺に歩み寄った。
 俺は彼らの気持ちを考えてみた。きっと今の状況を不安に思っているに違いない。
 ハルヒによって何の前触れもなく突然能力を与えられ、その使い方を理解し、否応なく薄気
味悪い夜の山中に出向かされ、さらに薄気味悪い空間で神人と戦わなければならない彼らの心
境を考えれば、にこやかに話に応じることなど出来るはずもない。心の底から気の毒に思う。
「俺はあなたたちの味方です」
「お前は俺たちのことを知っているのか」
「あなたたちがどこの誰なのかを知っているわけではありません。ですがあなたたちが何故こ
こにいるのかは解ります」

748以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:11:48.24 ID:q6JvjderO
しししえええんんん

749以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:13:01.35 ID:qLTfzZLF0
しええー0−0−−−ん!

750以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:13:32.64 ID:kwGK/1RaO
多分さるったとオモ

751以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:14:16.25 ID:qLTfzZLF0
支援してるのにおさるさんになるなんて・・・

752以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:15:29.04 ID:VpOngJlZO
ようやく追い付いた

753以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:17:49.48 ID:M3PHrIHP0
支援

754以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:19:17.30 ID:M3PHrIHP0
もういっちょ支援

755涼宮ハルヒの微笑081 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:19:56.53 ID:sjjYSbZb0
 三人は顔を見合わせた。
「どうやってお前を信じればいい」
「あなたたちに能力を与えた涼宮ハルヒを知る者、と言えば信じていただけますか?」
 その名前を聞いて、彼らは納得したようだった。
「解った。話を聞かせてもらえるか」
 俺は超能力者を集めた組織を作る予定であること、そのメンバーに加わってもらいたいとい
うこと、閉鎖空間の発生とともに超能力者が出動出来る体勢を整える予定であること、超能力
が消滅するまでは責任を持って生活を保障すること、などを伝えた。
 森さんは名刺を渡すとともに彼らの連絡先を確認し、詳しいことは明日にでもこちらから連
絡する、とを伝えた。

 俺たちは、北口駅前近くのビルの二フロアを借り、そこに機関の本部を構えた。
 超能力者やエージェントが増えるにつれ、ここもいずれ手狭となるかもしれない。
 超能力者は他の超能力者の存在を知ることが出来る。最初の三人を無事仲間に加えることが
出来た俺たちは、それを頼りに他の超能力者を次々と探し出した。
 だが古泉はなかなか見つからなかった。
「まだ残りの能力者の所在は掴めませんか?」
「残念ながら、進展なしですね」
 俺と話しているのは、森林公園で会った三人のうちの年長者で、今は超能力者たちのリーダー
的存在の人物だ。
「見つけ出せない理由はおそらくですが、本人が能力に気づいていないか、あるいは自らの能
力を受け入れていないか、のどちらかでしょう。ですが能力に気づいていないというケースは
今まで発見された能力者では該当者はいません。私たちと同様に能力を身につけた者は、自分
に何が起こったか、何をすべきかをその瞬間に理解しいるはずです」
「残された超能力者は後何人くらいいそうですか?」
「私たちには残りの能力者の場所は解らなくとも、存在はなんとなく解るんです。感じると言
いますか。これは既に集まっている能力者共通の意見ですが、この世界で同じ能力を持つもの
はおそらく十人程度と考えられます。現在のところ機関に所属している能力者は八名。つまり、
おそらくあと一、二名の能力者が残っているということになります」

756涼宮ハルヒの微笑082 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:21:01.11 ID:sjjYSbZb0
 あの卒業式の三日前に発生した大規模閉鎖空間では、機関と敵対勢力の超能力者を併せて二
十人以上はいたはずだ。つまり、こちらの超能力者からは敵の超能力者の存在は感じ取れない
ということになる。ハルヒによってあらかじめ敵、味方となる勢力を決められていたというこ
とだろうか。
「最初の閉鎖空間に向かったのはご存知のとおり私たち三名だけでした。私たちは早くから与
えられた能力と役割を受け入れていたので、お互いがどこにいるかがすぐに解ったんです。そ
れ以外の者はまだ覚悟が出来ていなかったんでしょうね。能力を受け入れていない者、つまり
心を開いていない者の場所はこちらからでは解りません」
 発見されていない能力者、つまり古泉はまだその能力を自ら認めていないということか。
「彼らの気持ちは解りますよ。私だって突然自分に未知の能力が身について、混乱しなかった
と言えば嘘になります。ですが私は何事も楽観的に考えるタイプでして。逆に深刻に物事をと
らえるタイプの人間にとっては、これはかなり辛いことだと思います。最初の閉鎖空間が発生
しているときは、彼らは大変な葛藤をしたと思いますよ。想像してみてください。自分が異能
の存在になってしまったことを認めたくない、閉鎖空間や神人はもちろん怖い、でもそれを放
置すれば世界が終わってしまうかもしれない。これは相当な恐怖ですよ」
 古泉は今もそういう日々を送っているはずだ。
「おそらく残された能力者の取る道は三つです。他の能力者と同じく覚悟を決めて能力を受け
入れるか、このまま恐怖に押し潰されて自ら命を絶つか、あるいは閉鎖空間や神人発生の原因
である涼宮ハルヒの殺害を謀るか、です」
 古泉は言っていた。「機関からのお迎えが来なければ、僕は自殺してたかもしれませんよ」
と。
 迎えに行けるものならすぐにでも行ってやりたい。だがお前からシグナルを発してくれなけ
れば、こちらからは打つ手がない。
 森さんによるハルヒの監視は継続していたが、やはり古泉が姿を現すことはなかった。もし
古泉がハルヒの殺害を意図すれば、こちらが保護する前にTFEI端末に消される恐れだって
ある。既定事項では古泉は無事に機関に入るはずだが、今の歴史の流れでそうなる保障はどこ
にもない。

757以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:21:05.78 ID:gWRBr+LZO
支援

758以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:21:14.60 ID:QwJBzq/F0
支援

759以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:21:18.78 ID:M3PHrIHP0
支援

760以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:22:13.02 ID:gWRBr+LZO
支援

761涼宮ハルヒの微笑084 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:22:21.35 ID:sjjYSbZb0
 その数日後、もどかしい気持ちで過ごした日々はようやく終わった。四度目の閉鎖空間が発
生したその直後、リーダー格の彼から連絡があったのだ。
「今さっき、未発見の能力者一名の微弱な波動を感じました」
「了解です。森さんを能力者の確保に向かわせます。位置把握のために能力者を誰か一名使い
ますが、そちらは大丈夫ですか?」
「閉鎖空間の方はなんとかやってみます。規模はそれほど大きくないようですので、いけると
思います」
「解りました。よろしくお願いします」
 俺は直ちに森さんと能力者を手配し、波動の発信源へと向かわせた。

「氏名、古泉一樹。性別、男性。年齢、十二歳。××市立××中学の一年。発見時に極度の衰
弱と精神錯乱を確認」
 なんとか神人の迎撃を完了した後、俺は本部の一室で森さんからの報告を受けていた。
「随分暴れまして、保護するのに手間取りました。『俺は行きたくない』とずっと繰り返して
おりまして。現在下のフロアの宿泊施設に収容しています」
「今は様子はどうですか」
「依然、精神錯乱が見られます。落ち着くまではしばらく機関で保護したほうがよいかと思わ
れます」
「今会って話せますか」
「今日は見合わせて明日以降がよいですね」
 森さんの報告によると、古泉は能力発現からずっと学校を休んでおり、つまり中学には一度
も登校せず、家から出ることすら出来ない状態だったらしい。
 古泉は今まで発見された超能力者の中でも最年少だった。混乱が激しいのも無理はない。

762以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:23:13.36 ID:M3PHrIHP0
支援

763以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:23:20.04 ID:x2XV5iMuO
支援

764涼宮ハルヒの微笑085 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:23:20.75 ID:sjjYSbZb0
 翌日俺は本部に赴き、森さんとともに古泉と面会した。
 ドアを開けたそこにはベッドの上で膝を抱え、うずくまる少年の姿があった。
「あんたたちは一体何なんだ」
 俺たちに気づくと少年は顔を上げ、懐疑的な色の目を向けた。顔つきこそまだ幼いが、それ
は確かに古泉だった。俺の知る古泉とは異なり、随分と口調が荒いが。
「俺たちは君の味方だ。森さんから説明があったと思うが、君に俺たちの組織に入ってもらう
ために来てもらった」
「何だよ、涼宮ハルヒってのは。何で僕がそいつのせいでこんなに苦しまなくちゃならないんだ」
 すまん、古泉よ。それは将来の俺の嫁だ。俺からも詫びを入れたい気分だ。
「こんな言葉で片付けるのはあまり好きじゃないが、これが運命だと思って受け入れてくれ。
涼宮ハルヒのことだけじゃなく、俺とお前がこうして出会うことも含めてな」
「わけ解んないよ! 僕は嫌だ。あんなところには行きたくない」
 まるで説得の糸口が見つからない。
「悪いようにはしない。しばらくここで俺たちの活動内容を見てから考えてくれればいい。他
の能力者と話し合うのもいい」
「うるさい!」
 しばらく説得を続けたが、俺の言葉は全く受け入れられなかった。
 部屋を出ると、能力者のリーダーが待っていた。
「彼の様子はどうです?」
「かなり精神的に追い詰められているみたいです」
「無理もないですね。どうかご理解ください。私たちは涼宮ハルヒという鎖に縛られています。
涼宮ハルヒは私たちに無理やりに能力を与え、神人という恐怖により絶対的服従を誓わせた、
そういう存在です。そして私たちは涼宮ハルヒの精神状態によって右往左往させられる、実に
惨めな存在なのですから」
 ハルヒも無意識的にとは言え、随分罪作りなことをしたもんだ。宇宙人や未来人を集めるの
は構わない。奴らは最初から宇宙人や未来人だ。だが超能力者は違う。元はと言えば普通の人
間だ。それを勝手に超能力者に作り変え、おまけに自分のイライラを解消させるために使うん
だからな。
「様子を見るしかないでしょうね。私たちも彼を落ち着かせられるようにしてみますので。彼
は同じ能力者仲間ですからね」

765以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:24:25.26 ID:M3PHrIHP0
支援

766涼宮ハルヒの微笑086 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:24:42.32 ID:sjjYSbZb0
 数日後、森さんからの経過報告を受けた。
「あまり芳しくないですね」
「今はどういう状態ですか」
「精神状態は比較的安定傾向にあります。ですがまだ神人と戦える状態ではありません」
「つまり、どういうことです?」
「他の能力者の意見では、単純な問題でもないようです。神人への過度の恐怖心が原因でまだ
完全に能力が発現していない状態とのことです。逆に、能力が発現していないからこそ恐怖心
が余計に募るのかもしれない、とも。最悪の場合、ずっと能力が発現しないままの可能性もあ
ると言ってました」
 そうなると、俺の知る歴史には至らないんだが。これはどうしたものか。
 古泉の部屋に赴く。
「よお、調子はどうだ。オセロでもやらないか」
 古泉は軽く俺を睨んだが、ずっと部屋にいて退屈だったのか、誘いに応じた。
「ルールは解るか?」
 無言でうなずく。
「どうだ、だいぶ落ち着いたか?」
 無言でうなずく。
「他の能力者とは話してみたか?」
 無言で首を振る。
 まるで長門を相手にしてるみたいだ。
 精神状態が安定したと言っても、こんな状態だといかんともしがたい。
 ちなみに二ゲームやったが、この古泉も俺のよく知る古泉同様、ゲームは激しく弱かった。

767涼宮ハルヒの微笑087 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:26:01.78 ID:sjjYSbZb0
 あることに気がついた。森さんも古泉もそうだが、俺はそれをてっきり偽名だと思っていた。
怪しげな機関に所属するものが本名など使うはずがないと。
 そんな疑問をそれとなく森さんに聞いて見た。
「これから起こることを考えれば、涼宮ハルヒの周辺にはプロ中のプロが集まります。相手が
その気になれば身元など簡単に割れます。私たちが同じくそう出来るように。ならば本名を使
った方が、余計な手間が省けます」
 なるほど。エージェントの世界というのも色々と奥が深いものなんだな。
 つまり俺は表立って機関に関わるのを極力避けた方がよいということだろう。

 それからしばらくして、五度目の閉鎖空間が発生した。
 俺は一計を案じ、古泉のいる部屋へと向かった。
「何ですか? 僕をどうしようっていうんですか?」
 古泉はやっと普通に話せる状態には回復していた。
「今からちょっと付き合え」
 古泉は明らかに怯えた顔で、
「僕をあのわけの解らない場所に連れて行くつもりですか?」
 俺だってそのわけの解らない場所に何も知らないまま連れて行かれたんだぞ。しかも連れて
行ったのは誰あろうお前だ。
「なに、心配しなくていい。俺が閉鎖空間を見物したいだけさ。それに今日はお客様もいる。
お前の力を借りたい」
「嫌です。僕はそんなところに行きたくない」
「神人退治をしろと言ってるわけじゃない。そこまではさせないさ。それともまだ逃げ続ける
気か?」
「僕が何から逃げていると言うんですか」
 俺の言葉にうまく乗ってきた。年下の扱いは昔から得意なんだ俺は。性格をよく知る古泉相
手ならなおさらだ。
「解ったよ。とにかくついて来い」
 能力者への指令を森さんに任せ、俺は機関の車に古泉を乗せた。
「どこに向かうんですか? あの場所とは方向が違いますよ」
「さっき言っただろう。今日はお客様がお見えになる。粗相のないようにな」

768以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:26:36.16 ID:M3PHrIHP0
支援

769以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:27:15.46 ID:x2XV5iMuO
支援

770涼宮ハルヒの微笑088 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:27:33.58 ID:sjjYSbZb0
 到着したのは鶴屋邸。お客とは以前から閉鎖空間に案内すると約束していた当主のことだ。
「やっと閉鎖空間とやらを拝めますな。楽しみにしてます」
「こいつが今日俺たちを閉鎖空間に案内してくれます」
 俺は古泉を紹介した。
「ほほう、それはそれは。ご苦労ですがよろしく頼みますよ」
 柔和な笑みを浮かべる当主に、古泉も安堵の表情を見せた。これで少しは緊張がほぐれてく
れればいいが。
 しばらく車を走らせた先は、奇しくも俺が最初に古泉に連れて来られた場所と同じだった。
「壁の位置がどこだか解るか?」
「そこの交差点の歩道の丁度真ん中です。でも、能力者以外が入ることが出来るんですか?」
「出来るさ。俺たちだけでは入れないがな。だからお前をつれてきたんだ。侵入の方法は解る
な? ならば俺たちを入れるのも簡単だ」
「解りますが……、僕はすぐに外に戻りますよ」
「ああ、構わない。よろしく頼むぞ。」
「では、しばらく目閉じてください」
 俺と当主は古泉の指示に従い、古泉は両手でそれぞれ俺と当主の手を握った。
「行きます」
 以前と同じように、古泉に手を引かれて俺たちは閉鎖空間に侵入した。
 入るなり、瞼の奥に強い光を感じた。
 目を開く。眼前に青い光の塊が広がっていた。距離にしておよそ十五メートルほどだろうか、
目の前に神人がいやがった。近すぎる。予想外の展開だ。
「やばいぞ、脱出する。古泉、行けるか?」
 返事がない。古泉は神人をじっと見つめたまま硬直していた。
「聞こえてるか!? 出るぞ!」
 俺の問いには答えず、古泉は神人を仰ぎ見たまま動かない。

771以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:28:09.38 ID:trgzLqLn0
紫の煙


772以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:28:34.40 ID:VpOngJlZO
支援

773涼宮ハルヒの微笑089 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:28:39.86 ID:sjjYSbZb0
 まずいことになった。少しずつ閉鎖空間に慣れさせようと連れて来たのが、これでは逆効果
になりかねない。
 だが、しばらくして古泉が発した言葉は見事に俺の予想を裏切ってくれた。
「綺麗だ……」
 俺は長い付き合いを通して、古泉のことを少し変わった奴だとずっと思っていた。その判断
は正しかった。こいつはやはりどこかおかしい。
 そして、荒療治は案外成功するかもしれない。
 俺は左手で古泉の肩を叩き、右手で神人を指差してこう言った。これで夕日でも落ちていれ
ば、どこかの青春の一ページみたいなポージングだ。
「あれが神人だ。お前には釈迦に説法かもしれんが、あれの出現は涼宮ハルヒの精神状態が悪
化していることを表している」
 古泉が聞いているのか聞いていないのかは解らないが、構わず俺は続けた。
「つまりあれとの戦いは、やつのイライラとお前たちのイライラのぶつかり合いということに
なる。いずれやってみるといい。いいストレス解消になるぞ」
 我ながら、かなりいい加減なことを言っていると思う。
「最初は大変だろうと思うが、慣れれば……そうだな、ニキビ治療みたいなもんだ」
 これはお前が言った言葉だぞ、古泉。
 俺は古泉の手が赤く輝き始めたことに気づいた。能力が発現したらしい。 
「これは……?」
 やがて古泉がかざした右手の上にハンドボール大の赤い光球が生み出されていた。
「それがお前に与えられた能力だ。試しに投げてみろ」
 古泉は光球と神人をしばらく交互に見つめ、思い立ったように、滑らかかつ力強いフォーム
で光球を神人に向かって投げつけた。そういやこいつは野球をやってたんだっけか。
 それは見事に神人の腕に命中し、驚くべきことに神人の腕は粉々に砕け散った。
 どうやら驚いているのは俺だけではなく、神人の周りを飛ぶ人間大の光球たちも、その動き
でもって驚きを表現していた。ルーキーが初打席で敵エースの決め球をバックスクリーンに叩
き込んだようなもんだ。
 そう言えばすっかり当主の存在を忘れていた。振り返ると当主は相変わらずの笑顔でこの超
常的な展開を楽しんでいるようだった。この剛胆ぶりは鶴屋家の遺伝子のなせる技なのか?

774涼宮ハルヒの微笑090 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:29:39.28 ID:sjjYSbZb0
「……あの飛んでいる光は?」
 古泉は神人の周囲に群がる光点に気づいたようだ。
「あれはみんなお前の仲間だ。そしてこれから先お前にはもっと多くのかけがえのない仲間が
出来る」
 光球たちをじっと目で追う古泉に、
「そのうちお前もああいう風に戦えるようになるさ」
「どうやったら飛べるんですか?」
「それは俺には解らん。俺は能力者じゃないからな。だが他の能力者だって誰に教わったわけ
でもない。その気になればお前にだってすぐに出来るようになると思うぜ」
 古泉は静かに目を閉じた。意識を集中させているようだ。
 突然、古泉の体中から爆発するかのようにオーラが発生し、それはすぐさま球体となった。
古泉の体がふわりと浮いた。
「やってみろ」
 光球が躊躇うかのように上下に揺れた。しばらく後にそれは静止し、次の瞬間にはレーザー
光のような鋭い軌跡で神人めがけて飛び立った。
 既に何度も見ている光景だが、その度に思う。まったくデタラメすぎる。
 古泉の光球はそのまま神人の頭部を貫通し、神人は着弾点を中心に、外側へ向けて順々に光
の霧となって崩壊した。
 新たに加わった光球を温かく迎え入れるかのように、他の光球たちがその周囲を飛び回って
いた。

775以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:30:16.85 ID:M3PHrIHP0
支援

776以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:30:32.06 ID:mrgkXDo00
支援

777以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:30:52.64 ID:qLTfzZLF0
なんか涙が・・・

778涼宮ハルヒの微笑091 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:31:02.30 ID:sjjYSbZb0
 閉鎖空間の消滅後、古泉は横断歩道の上でぐったりと座り込んだ。
 俺は古泉の横に座った。
「お前がこの能力を与えられたのは偶然ではない。それがたとえ涼宮ハルヒによる理不尽な選
択だとしても、それは全て意味のあることだ」
 古泉は首から上だけをこちらに向けた。だがその目には輝きが生じていた。
「俺が保障する。この先何年間かは君にとって辛い日々が続くかもしれない。だがいずれそれ
を笑って話せるときが必ずやってくる。俺を信じてくれ」
 古泉は二度まばたきし、そしてこう言った。
「解りました。今後ともよろしくお願いします」

 こうして超能力者は集結した。
 古泉は超能力者の数は世界中で十人くらいだと言っていたが、実は全員がこの周辺で生活し
ている人たちだった。
 ハルヒも随分と手近なところで超能力者を調達したもんだな。
 逆説的に言えば、閉鎖空間はハルヒの近辺にしか発生せず、神人を撃退する者もこの周辺に
いる必要があったということだ。
 俺は、日本にしかやって来ないどこかの宇宙怪獣と、日本にしか存在しないどこかの地球防
衛軍を思い出して、妙に納得した。


 ある日、俺は鶴屋さんに図書館に誘われた。
「貸し出しカード失くしちゃってさっ。これから再発行に行くんだけど、ジョン兄ちゃんつき
あってくんないっ?」
 俺は機関創設に関する実務的な作業や、閉鎖空間の対応に追われていたが、たまには息抜き
も必要だろう。

779以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:31:45.69 ID:mrgkXDo00
>>777
よお、俺
支援

780以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:31:48.71 ID:trgzLqLn0
シエn


781以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:31:55.71 ID:Lr2arPjn0
支援なりよ、キテレツ

782涼宮ハルヒの微笑092 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:32:04.35 ID:sjjYSbZb0
 道路に面した側を俺が歩き、鶴屋さんに歩道側を歩くように促した。
「車に轢かれるからっかい?」
「それもあるが、車を横付けして誘拐されないようにするためだ」
「へええ? 色々考えてるんだねお兄ちゃん」
「前にもあったのさ、そういうことが」
 朝比奈さんが誘拐された時のことを思い出していた。あのときは森さんたちのおかげで難を
逃れたが、ひとつ間違えば取り返しのつかないことになっていたかもしれない。あんな思いは
二度とごめんだ。
 連れてこられたのは、高校生の頃に長門と共に来た図書館だった。
「図書館の雰囲気っていいよねっ。家にも本はいっぱいあるけど、あたしはやっぱりこっちの
方が好きさっ」
 鶴屋さんがカードの再発行手続きをしている間、俺は長門と初めて来たときのことを思い出
していた。
 もうあれから七年以上経つ。市内不思議探索パトロールの第一回目、午後の部。
 ハルヒ作成によるつまようじを用いた厳正なるくじ引き――それは場合によっては全く厳正
に作用していなかったのだが――によって俺と長門とはペアを組み、明らかに時間を持て余し
た俺が長門をこの図書館に連れて来たのだ。集合時間を寝過ごしてしまった俺は、動かざるこ
と山よりも強固な読書集中モードの長門とともに集合場所へと向かうために、長門用の貸し出
しカードを作り、本を借りてやったのだ。
 思い出にふける俺に鶴屋さんは意味ありげな笑みで、
「お兄ちゃん、考えごと?」
「ああ、まあな」
「女の人のこと考えてたんじゃないっ?」
 相変わらず勘がいいな。
「以前、俺の友達とここに来たことがあってな。そいつの貸し出しカードを作ってやったこと
を思い出してた」
「ふーん」
 鶴屋さんには隠し事は通用しない。だが鶴屋さんはいずれ北高に行き、TFEI端末と接触
する機会がある。鶴屋さんの記憶が読まれることだって想定しなければならない。
 過去の俺を連想させるような言動はなるべく避けるべきだ。あまり詳しいことは言えない。

783以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:32:12.47 ID:VpOngJlZO
支援

784以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:32:33.28 ID:qLTfzZLF0
>>>779
今なら俺も空を飛べる!!!
支援

785以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:32:44.07 ID:q6JvjderO
ニヤニヤが止まらNeeeeeee!!!!!支援

786涼宮ハルヒの微笑093 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:33:32.88 ID:sjjYSbZb0
 図書館を出た直後に携帯が鳴った。森さんからだった。
「閉鎖空間発生の恐れがあります。至急指令所にお越しください」
 俺は鶴屋さんをタクシーに乗せ、ただちに空間移動で機関本部にある指令所に向かった。

「一号から入電。観察対象の精神状態極めて不安定。危険レベル赤に移行。閉鎖空間発生の恐
れあり」
 その直後に時空振がきた。九度目になる閉鎖空間の発生。
「閉鎖空間の発生位置の特定急げ」
 森さんがオペレーターに対して的確に指示を飛ばす。
「二号に照会します」
 一号、二号というのは最近使い始めた超能力者のコードネームだ。ますます怪しげな雰囲気
になっているな。
「閉鎖空間は××線△△駅前を中心に、現在半径二十一.四キロメートル。今のところ閉鎖空
間の拡大は認められず」
 今まで発生した閉鎖空間の中では最大規模だった。
「一号から入電。神人の発生までおよそ二十四分の見込み」
 指令所にはオペレーターが五名、閉鎖空間の発生に備えて常駐しており、有事の際には俺と
森さんが駆けつけるという体制になっていた。
「移送要員の手配状況を報告せよ。待機、準待機中の能力者に対して直ちに出撃要請。何人出
せるか?」
「二号、閉鎖空間に侵入。一号、閉鎖空間隔壁に到着。三号、六号、八号の三名、閉鎖空間に
向けて移動中。九号、移送要員手配中、四号、五号、七号と連絡不通」
 まだ指揮体制が作られてから間もない。指揮系統に乱れがあるのは当然のことだろう。
「一、二、三、六号、閉鎖空間に侵入完了。神人迎撃準備中」
「神人発生までおよそ二分」
「八号、九号閉鎖空間に侵入」
「侵入した者より順次、迎撃準備体制に移行せよ」
「一号から入電。神人出現を確認」
「閉鎖空間拡大速度、秒速一キロメートル突破。なおも加速中」

787以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:33:42.11 ID:M3PHrIHP0
支援

788以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:33:53.61 ID:qLTfzZLF0
1階からじゃ無理だった支援

789涼宮ハルヒの微笑094 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:34:47.23 ID:sjjYSbZb0
 俺が古泉に連れられて行った閉鎖空間とは段違いの規模だ。ハルヒの中学時代のイライラは
当時よりはるかに深刻だったらしい。
「閉鎖空間拡大速度、毎秒三.一六キロメートルで安定。閉鎖空間半径百四十七.八〇キロ
メートル。拡大終了まであと三時間三十一分十二秒」
 超能力者たちにしても、この頃はまだ試行錯誤の連続であり、それだけに神人の迎撃にも当
然ながら時間がかかっていた。
 つまり、閉鎖空間の拡大が速いか、神人の撃退が速いか、まさに時間との戦いだった。
「九号から入電。一般人が数名閉鎖空間に侵入している模様」
「なんだって?」
 九号というのは、すなわち古泉のことだ。
「九号に回線繋いでくれ」
 すぐさま、指令所に古泉の声が響き渡る。
「九号です。閉鎖空間に侵入した際に、一般人の存在を確認しました。視認では二名。侵入の
方法、目的などは不明」
「解った。君は直ちに一般人の捜索と保護にあたってくれ。残りの能力者は神人の迎撃を継続」
「了解しました。以降、報告は外部のエージェントからお願います」
「能力者四、五、七号ともに閉鎖空間内に侵入。ただちに神人迎撃体制に移行。九号、再侵入」

 予想外の闖入者に混乱を来たしたが、三時間後ようやく神人は崩れ落ちた。
 神人により世界が閉鎖空間に飲み込まれることがないのは、俺が知る限りでは既定事項のは
ずだ。
 だが、それにかまけて手を抜くことは決して許されない状況だった。対処を誤れば世界は間
違いなく崩壊する。閉鎖空間の出現は俺にとっても緊張の連続だった。

790以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:35:08.79 ID:x2XV5iMuO
支援

791以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:35:09.04 ID:VpOngJlZO
あと30分で塾だからそれまで1000行け

792以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:35:32.87 ID:trgzLqLn0
しえぬ


793以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:35:53.84 ID:qLTfzZLF0
しえっ

794涼宮ハルヒの微笑095 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:36:04.20 ID:sjjYSbZb0
「閉鎖空間に侵入した一般人は三名。現在機関所有のビルにて拘束中」
 森さんからの報告だ。
「対処はいかがしましょう?」
 俺はまず三人に会わせて欲しいと言った。
「よろしいのですか? 閉鎖空間や機関の存在が一般に知れるのは避けるべきと思いますが」
 森さんが言わんとしていることは、何らかの方法で彼らの口を塞ぐべきだということだろう。
だがそれは話をしてからでも遅くはない。
 俺は、不可抗力で怪しげな空間に紛れ込んでしまい、怪しげな集団に拘束されている、これ
はもう不幸としか言いようのない三人と面会した。
 そして俺はまた歴史の繋がりを再認識させられることになった。
「なんとまぁ……」思わず独り言が出た。
 紛れ込んだ一般人三名というのは、あろうことか新川さんと田丸兄弟だった。
 三人とも、普通に街を歩いていて、突然辺りが暗くなったと思ったときには既に閉鎖空間の
中にいたらしい。
 面会を終えた俺は森さんに宣言した。
「この三人を機関のメンバーに加えます」
 森さんは驚きの表情を隠せなかった。
「閉鎖空間に一般人が紛れ込むことは、これから先もほとんどないと言っていいでしょう。万
一それが起こったとすれば、それは涼宮ハルヒの意思によるものです。彼らは我々に害を及ぼ
すものでは決してない、いや必ず我々の助けになってくれます」
 仮説ではあったが、おそらく間違ってはいないだろう。ハルヒが自分の都合で他人を必要以
上に不幸に陥れるなんてことあるはずがない。
 何よりこの三人が機関に加わり、重要な戦力になることは既定事項だ。

795以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:36:09.43 ID:x2XV5iMuO
支援

796以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:36:31.48 ID:o/IXhiZe0
支援


797以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:36:44.38 ID:M3PHrIHP0
支援

798以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:36:47.00 ID:mrgkXDo00
支援スルッ!

799涼宮ハルヒの微笑096 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:37:17.73 ID:sjjYSbZb0
 機関の立ち上げ開始から二ヶ月が経ち、機関の骨格が完成した。
 俺は、今後は機関に直接的に介入することはせず、オブザーバー的な位置に立つことにした。
俺にはまだ他にやらなくてはならないことが残っていたからな。
 機関の上層部には超能力者のリーダー格の男性、スポンサーからの代表者、スポンサーが推
薦する研究者などが集まった。
 高校時代の俺の印象どおり、上層部は今ひとつ的外れな言動を繰り返す集団になりそうだっ
たが、それも仕方がない。既定事項だ。彼らには現実世界とのバランサー役として活躍しても
らわねばならない。
 俺の立場を知る森さんには、中堅の役どころに入ってもらい、俺に情報を流す役をお願いし
た。
 次に古泉たち一般の超能力者、最後に各種実働部隊として新川氏、田丸兄弟などのエージェ
ントを配置した。
 あまり表立って機関に関わりを持つことを好まないという鶴屋家側の要望と、創設者である
俺に注意が向かないようにしたいという俺の要望が一致し、鶴屋家は間接的スポンサーの位置
に収まった。
 そして、娘を危険なことに巻き込みたくないという当主の当然の意見と、将来北高に行くこ
とになる鶴屋さんを深く関わらせるべきでないという俺の意見により、俺は機関に対し「鶴屋
さんには手を出すな」と厳命することとなった。

800以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:38:00.20 ID:trgzLqLn0
しえー


801以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:38:46.66 ID:M3PHrIHP0
支援

802以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:38:59.44 ID:mrgkXDo00
支援だ

803300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 19:39:41.75 ID:sjjYSbZb0
第四章終わりです。丁度半分くらいかな?
ご支援ありがとうございますm(_ _)m

804以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:40:25.17 ID:trgzLqLn0
>>803
まったくお疲れ様でございます

805以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:40:26.24 ID:VpOngJlZO
もう半分か……早いな

806以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:43:07.59 ID:uJ8J66f2O
今日中に完結のヨカン

807以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:43:38.42 ID:x2XV5iMuO
>>803
乙でした。

ところで、コーヒーはいかが?

808以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:45:05.07 ID:SZjYKPLQ0
五章投下前にコーヒーブレイクってのも悪くない気がするのは俺だけだろうか

809以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:46:12.01 ID:Q3XDimnn0
このあたりで一息つきたいね

810以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:46:25.52 ID:rzvSDz3hO
続きは次スレに投下が良いな…

下手したらこのスレに入らないだろうし…

811以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:46:35.60 ID:uJ8J66f2O
何このコンビネーションwwwww

812コーヒー二つX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:50:35.91 ID:x2XV5iMuO
前回>>365参照

どうした!何があった!

「申し訳ない・・・侮りました・・アレは閉鎖空間なんてもんじゃない・・・超現実空間です。」

なんだと?

「つまり・・・書き換えられた世界です・・・」

馬鹿な!

「今・・私たちが居る場所こそが・・閉鎖空間という事になります・・・。」

まさか・・・

「そして、向こう側が凉宮ハルヒが望んだ・・・世界です。」

!!


確かに、さっきの・・・ハルヒが居た気がした。


813以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:52:42.15 ID:/uJYnCq60
すえん

814コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:53:00.26 ID:x2XV5iMuO
しかも俺もだ。
赤ん坊も居たな・・・名前は・・・思い出せない・・・何故だ?

「もはやアナタはアナタでは無くなり始めている。いや、僕も長門さんも・・・。」

わからん、それはどういう・・・

「つまり!アチラは現実の世界、こちらは夢の世界と・・・」

そう言いかけた途端、古泉は大量の血を吐いた。

「ハァハァ・・・体に負荷がかかり過ぎた様ですね・・・」

おい!古泉!しっかりしろ!

「大丈夫、僕は長門さん程じゃない・・・」

畜生、どうしたらいい?
俺は、どうしたらいいっ!?



そうだ!



815コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:53:47.11 ID:x2XV5iMuO
あの中には、確かにハルヒが居た!
ハルヒが元の世界を望めば!

だが、どうする?
長門も古泉も、恐らくもう立ち上がる事も出来まい・・・しかし・・・

そうか!


なあ、古泉!
向こうへの入り口を開けてくれ!

「なんですって!?」

俺が行く!行ってハルヒに言わなくちゃいけない事があるんだ!

「無理です!僕みたいに・・・肉体的に負荷を受けるだけじゃ済まない!既にアチラ側に存在する本物のアナタに取り込まれて、今のアナタは完全に消滅しますよ!」


俺は俺だ!

頼むから・・・


816以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:54:17.59 ID:No5OzPGx0
Twenty Fourよりピッコンドッコンwktkだぜw保守。

817以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:55:39.32 ID:M3PHrIHP0
支援

818以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:56:07.98 ID:trgzLqLn0
しえぬ


819コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:56:16.25 ID:x2XV5iMuO
「・・・解かりました。僕の手を握って・・・瞳を閉じて下さい・・・・そして・・・ゆっくりと体を・・・此方に・・


さ あ





ど う ぞ


薄れていく意識の中で
俺は思ったんだ
ハルヒ
お前が今一番望む世界は
そんなんじゃないだろ?





「ねえ、キョン!起きなさいっ!」

ん、ああ・・・今何時?

「もう十時よ?早く出掛けないと。午後になると、もう結構冷えてくるのよ。みくるに風邪ひかせる訳にいかないし。」


820コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:56:58.63 ID:x2XV5iMuO
「陽射しが暖かいううちに・・・ね?」

ん、ああ。わかった・・・っ。

(そういえば、今日は日曜日だったな・・・。)

軽く朝食を済ませて、俺達は足早に出かけた。
十二月上旬とは思えない暖かな陽気に、少し背中が汗ばむのを感じた。

「ねえねえ、キョン?久しぶりに見晴らし台に行くってのはどうかしら!出産後のお腹のたるみを解消するには絶好のウォーキングコースだと思うのよ!」
少し遅れて歩く俺に、ベビーカーを押すハルヒが振り返りながら言う。

あの坂道を登るのか。



821以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:57:45.81 ID:QwJBzq/F0
しえ〜ん!

822以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:57:57.87 ID:qLTfzZLF0
WIKIガアアアWIKIガアアアアア支援

823コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:58:08.63 ID:x2XV5iMuO
高校の頃は、良くハルヒを乗せて自転車でこの坂道を登ったものだが。
今は・・・正直一人で歩くのも遠慮したい。大体、日曜日に疲れてどうする?日曜日くらい体を休めなければ、我々サラリーマンは日々戦えんのだぞ?

それに、ハルヒは出産前とそれほど体型は変わっていないと思うのだが。
自分の体型に過敏になるのは女の性か?


「さあ!もたもたしてると置いてくわよっ!」

やれやれだ。

おーい!初めからペース上げすぎると、息が上がるぞっ!



824以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:58:10.68 ID:LADWzsE20
今追いついた支援

825以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:58:26.93 ID:M3PHrIHP0
支援だ

826コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 19:59:19.53 ID:x2XV5iMuO
(いいのよっ!キョン?風の伝説を感じさせる走りをするのよ!)

んっ? ハルヒ、何か言ったか?

「えー?何?」

いや・・・なんでもない・・・


見晴らし台に付く頃には、俺は汗だくになり息をきらしていた。
ハルヒは・・・そうだ、こいつは昔から無駄にパワフルでスポーツ万能・・・なんだったな。こんな坂道程度じゃ堪えない訳だ。
そういえば、色々な部活から誘われたが、飽きっぽいのが災いして結局三年間帰宅部だったんだよな・・・。

「こらっ!情けないわよっ!」


ああ。まったく、お前には敵わないよ!

「ふふん。まあ、いいわ!キョン?ちょっとベビーカーをお願い!」

そう言うと、ハルヒは販売機のある方へ走って行った。


827以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 19:59:57.82 ID:AoqkNTAO0
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.ヽ、
     /:/:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.lヽ、:.:.:.:.:.ヘ7、
    ./:.:./:.:./:.:.:.l:.:.:.:.:l:l.  ` ‐、彡O、',.
    l:.:./:.:./:.:.:.:.l:.:.:.:.:ll:|     ヘ:.:.L.l:l
    l:.:|:.:.:.|:.:.:.:..|:.:.:.:.:|N -‐‐ 、 ',:.:.:.:.:l.       あらあらまたスレ乱立?
     〉:.─ --‐──        l:.l:.:.:.l.
    ./:.:r‐| r=ミ    r=ミ、  レl:.:.:.:l      
    l:.:.l:l . l      ,      / .l:.:.:.:ハ    
    |:.:.l:.:`-、    r‐─ォ    /-‐l:.:.:.:.:ヘ
    |:.:.l:.:.l:.:.:.ヽ、  ヽ_ ノ , イ:.:.:l:.:ヘ:.:.:.:.:.:〉
    ヘ:ヘ:.:l:.:.l:.:.:.:.:`i.‐-‐ ´|.::.l:.:.:..l.:._,,ィi⌒ヽ    
     ヘ/ ̄_/\___/\r‐-r''´ ノ.l  |⌒ヽ 
      / /::/ヘ /l__l_厶'⌒_l   { :|  l   |
      / l /::/  /:::/,. -=ニ:::ゝ、_ノス,,_,ノ、_,,ノ
     /  ll:::l. /:/::://::\::::::::\::::::,ヽ::::ヽ|、\
⌒⌒ヽl  |. l:::l /:::|, イ:'、::ヽ::::\::::::::Xヽ:|ヘ:::::ヘ\,ゝ
 、  ) ̄} ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヾ'、::\ー`ー-,ィf示ハ:::::ヘ、,ハ
、_人_,ノ⌒)}─┐    .,,;:':;:;}‐` ー    弋炒 ',:::::ハ:::l::|
  _,,ノ´l:::l...└───;イ;゚ィf心         !:::::::l::|::!
r‐'´  . l:::l .//:| |ヘ::::::ヘ代t炒   ` ノ U |:::::|:|_|リ
    .|::l:::l く/l:::L|、::`:ー-ゝ    ‐'´     /イ/|:| ヽ
.    ヒ/ ヘ. |:!:,-、:::\f^ヽ:≧z. __ .. イハ: : リ| |
.     ヽ_r-l:|:{  ヽ:::;ム  マミ、: : \    ム: : :∨
..     /.. リ/\  ヽ,ム  ∨ヘ : : \ /: /ヘ: : :ヘ
    /   ,.- 、   \ ヽ〉  ヽ  \: : :\://ヘ: : :|
.  /    ヽ、 \ | 〉       \ lヽ./^)、 : : |: : !
 /       丶、`¨     /  ァ'´ /: : ヽr:| : ハ
           `)      l     ,.イ、ヾニ二7イ |.ィ
         ⊂二´.. _      __/ /  ` ー-、_|/、__jニフ
              ヾー--='彡- '    /´:j:_}::::/一`

828以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:00:15.04 ID:trgzLqLn0
しえn


829以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:00:27.72 ID:VpOngJlZO
塾だorz

830以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:00:30.28 ID:qLTfzZLF0
しえp

831以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:00:29.60 ID:AoqkNTAO0
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.ヽ、
     /:/:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.lヽ、:.:.:.:.:.ヘ7、
    ./:.:./:.:./:.:.:.l:.:.:.:.:l:l.  ` ‐、彡O、',.
    l:.:./:.:./:.:.:.:.l:.:.:.:.:ll:|     ヘ:.:.L.l:l
    l:.:|:.:.:.|:.:.:.:..|:.:.:.:.:|N -‐‐ 、 ',:.:.:.:.:l.      待っててね
     〉:.─ --‐──        l:.l:.:.:.l.
    ./:.:r‐| r=ミ    r=ミ、  レl:.:.:.:l      今、肉じゃが作るから
    l:.:.l:l . l      ,      / .l:.:.:.:ハ    
    |:.:.l:.:`-、    r‐─ォ    /-‐l:.:.:.:.:ヘ
    |:.:.l:.:.l:.:.:.ヽ、  ヽ_ ノ , イ:.:.:l:.:ヘ:.:.:.:.:.:〉
    ヘ:ヘ:.:l:.:.l:.:.:.:.:`i.‐-‐ ´|.::.l:.:.:..l.:._,,ィi⌒ヽ    
     ヘ/ ̄_/\___/\r‐-r''´ ノ.l  |⌒ヽ 
      / /::/ヘ /l__l_厶'⌒_l   { :|  l   |
      / l /::/  /:::/,. -=ニ:::ゝ、_ノス,,_,ノ、_,,ノ
     /  ll:::l. /:/::://::\::::::::\::::::,ヽ::::ヽ|、\
⌒⌒ヽl  |. l:::l /:::|, イ:'、::ヽ::::\::::::::Xヽ:|ヘ:::::ヘ\,ゝ
 、  ) ̄} ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヾ'、::\ー`ー-,ィf示ハ:::::ヘ、,ハ
、_人_,ノ⌒)}─┐    .,,;:':;:;}‐` ー    弋炒 ',:::::ハ:::l::|
  _,,ノ´l:::l...└───;イ;゚ィf心         !:::::::l::|::!
r‐'´  . l:::l .//:| |ヘ::::::ヘ代t炒   ` ノ U |:::::|:|_|リ
    .|::l:::l く/l:::L|、::`:ー-ゝ    ‐'´     /イ/|:| ヽ
.    ヒ/ ヘ. |:!:,-、:::\f^ヽ:≧z. __ .. イハ: : リ| |
.     ヽ_r-l:|:{  ヽ:::;ム  マミ、: : \    ム: : :∨
..     /.. リ/\  ヽ,ム  ∨ヘ : : \ /: /ヘ: : :ヘ
    /   ,.- 、   \ ヽ〉  ヽ  \: : :\://ヘ: : :|
.  /    ヽ、 \ | 〉       \ lヽ./^)、 : : |: : !
 /       丶、`¨     /  ァ'´ /: : ヽr:| : ハ
           `)      l     ,.イ、ヾニ二7イ |.ィ
         ⊂二´.. _      __/ /  ` ー-、_|/、__jニフ

832以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:01:56.09 ID:QwJBzq/F0
ほんとだっ?!
Wikiがぁぁぁぁあぁぁwwwwwwwww

833コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:03:52.51 ID:x2XV5iMuO
「ちょっと!キョン?ボケーッとしているんじゃ無いわよ?ほら、コレ!」

ハルヒはそう言うと、俺に冷えた缶コーヒーを手渡した。

そして自分もカフェオレを開け、グイッと飲んで見せる。

「プハァーっ!旨いっ!スポーツの後のコーヒーは最高だわっ!」

ふん、本物のコーヒーは苦くて飲めない癖に
(・・・アンタと同じでいい。)

まただ。さっきから、一体なんだ・・・?

俺、疲れてるのか?
とりあえずベンチに座る・・・か。

「どうしたの、キョン?」

ベンチに腰を降ろした俺の顔をハルヒが覗きこむ。


834以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:03:59.06 ID:qLTfzZLF0
ばいばいさるさん?

835コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:04:39.90 ID:x2XV5iMuO
なんとなく、キスが出来る距離だな・・・と思う・・・

キス・・・

(喜びなさい?キョンの今回の申し出に対して、SOS団長として私は・・・)




ああ、そうだ!俺は・・・





ハルヒ!


「な、なによ!キョン?」


836以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:04:51.61 ID:LADWzsE20
保守

837以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:05:47.26 ID:qLTfzZLF0
ナイヤガラリバース

838以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:06:12.49 ID:M3PHrIHP0
支援

839コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:06:39.92 ID:x2XV5iMuO
俺は・・・平穏で、それなりに毎日が楽しければいいと思ってたんだ!

「?」

でも、高校に入って・・・・とんでもない女に出会っちまった!

とにかく我が儘で強引で・・・でも繊細で優しくて・・・割と器用に何でもやってみせるんだ!

でも、彼女は退屈してた!何をやっても楽しく無かった!
だから、自分の思うままに仲間を見付けて、思うままに楽しく過ごそうと考えた!

普通なら・・・そんなに都合良くやれるもんじゃないさ!

でも!彼女には、それが出来てしまうんだな!

「キョン?」

何故なら彼女は、自分の願うままに世界を変える不思議な力を持っているから!

「ちょっと、何を言っているの!?」

そんなある日、大切な仲間・・・いや!ある意味、愛してさえいたいた仲間がこの世から消えた!

「キョン、やめて!」

840コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:08:17.32 ID:x2XV5iMuO
彼女は悲しくて悲しくて、今までの世界を終らせて新しい・・・世界を望んだ!

「いや・・・」



彼女の名は涼宮ハルヒ!









瞬間、俺とハルヒの周囲から全てが消えた。後に訪れたのは・・・







841以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:08:43.13 ID:LADWzsE20
支援

842コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:09:23.91 ID:x2XV5iMuO





ハルヒの声がする

「願いは、叶うのかしら。」

叶うさ

「でも・・・アタシは・・・」

わかってる

「キョンは?」

ハルヒの・・・願うままに。






843以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:11:42.56 ID:o8MglHpxO
支援

844以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:12:41.52 ID:LADWzsE20
支援

845以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:12:58.88 ID:YPO8tLkn0
支援

846以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:13:19.04 ID:o8MglHpxO
>>803
次回投下時刻を教えて欲しい!

847以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:15:00.44 ID:qLTfzZLF0
今年の7月7日に情報爆発が起こったんだってな…。
てことは2年半後くらいにハルヒとキョンが出会うんだな。
っていう支援

848以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:15:56.62 ID:q7JhaVUI0
オチタ━?━キョロ━(゚∀゚≡゚∀゚)━キョロ━マダ━?

849以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:17:17.18 ID:M3PHrIHP0
支援

850以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:19:11.60 ID:q6JvjderO
試演

851コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:20:11.22 ID:x2XV5iMuO
気が付くと俺は部室のドアの前にいた。
とりあえず、例によって朝比奈さんの生着替を警戒・・・

ん?

朝比奈さん?

俺は慌ててドアを開けた!

少し丈の短いチャイナドレスを纏った、朝比奈さんが居る!

今更敢えて言う事も無いだろうが・・・物凄く良い!
大満足のハルヒが腕を組んで頷く。

「うん!完璧ね!いますぐフカヒレスープを注文してあげたくなるわ!」

相変わらず、訳が解らない。

ところで、何でチャイナドレスなんだ?

「アンタ、知らないの?ミクルちゃん、一週間ほど南町の来来軒でバイトするんですって!」

何っ?

ハルヒっ!お前、また何か!?



852以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:22:09.32 ID:q7JhaVUI0
みくるキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!

853以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:22:13.34 ID:YCskvtIW0
支援

854コーヒーふたつX ◆2xLpx6qEVE :2006/10/07(土) 20:22:26.70 ID:x2XV5iMuO
「何よっ!紹介料代わりに餃子無料券10枚貰っただけでしょ?アンタなんかには餃子あげないんだからっ!」
・・・・お前なあ!

「餃子・・・十枚」
長門が呟く。

そして、古泉がニヤけながら上手くまとめた。

「まあまあ、皆さん!帰りにでも来来軒によって行きましょう!ね、朝比奈さん!」




終わり

855以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:24:23.29 ID:WYgGzDNi0
乙彼です

856以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:24:27.67 ID:nhcPLPJ+0
>>854
G・J


857以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:24:38.83 ID:q7JhaVUI0
>>854
オツカレー(_´Д`)ノ~~

858以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:25:38.64 ID:M3PHrIHP0
GJ!!

859以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:27:01.97 ID:LADWzsE20
タイミングが悪すぎる。神の直後では味が薄い。
だから俺は、しばらくしてから読ませてもらう。
作者には悪いが、今じゃ比べてしまうんだ。すまん。

乙!

860以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:28:19.77 ID:lOj24U2/0
乙!どうなったの?

861以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:29:04.62 ID:eObExrT00
>859
つまり、それこそが、コーヒーブレイクの醍醐味なわけで。
乙彼。

862以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:30:25.23 ID:uJ8J66f2O
ウヘ

863以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:31:55.89 ID:QwJBzq/F0
GJ!
良かったです〜


864以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:32:00.61 ID:7YX07Oty0
>>854
乙! 微笑が結構ヘビーだからなんかほっとできたうぇい

865以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:32:22.46 ID:Gnz98/wYO
乙!GJだぜ!

866以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:35:52.14 ID:eObExrT00
すべて(の投下)が終わってから、作者さんには、
どんな本を読んできたのか聞いてみたいな。

867300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:39:32.92 ID:sjjYSbZb0
では、第五章行ってみたいと思います。
よろしくお願いしますm(_ _)m

868以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:41:11.56 ID:uUXxaYEo0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

869以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:41:13.18 ID:tck/EfQ80
早速支援!

870涼宮ハルヒの微笑097 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:41:13.66 ID:sjjYSbZb0

第 五 章


 機関の運営は無事に軌道に乗り始めた。立ち上げは成功したと言える。
 俺はハルヒが高校一年の時代に飛び、あらためて歴史を確認してみた。
 当然ながら、相変わらずハルヒは進学校に通っていた。
 ハルヒの情報爆発から三年が経過している。ハルヒの存在に気づいている連中は、ハルヒの
観察役として進学校にエージェントを潜入させているはずだ。
 ならばこの歴史での進学校の名簿を調べて、俺の記憶にある北高生と照合すれば、ハルヒの
存在に気づいている連中をあぶり出せるかもしれない。
 そして俺は機関が入手したそれを見て、ただ呆然としてした。
 俺の知る北高の同級生の多くが、この歴史では進学校に通っているという事実を知ったわけ
だ。
 中でも、俺の知る一年五組のクラスメイトたちは圧巻で、およそ三割がこの進学校に、しか
もハルヒと同じクラスに入ってやがる。
 ハルヒのクラスの名簿には、朝倉を筆頭に、朝倉の相棒だった委員長の榊など、そうそうた
るメンバーが名を連ねていた。
 やれやれ、こいつら全員どこかの怪しげな組織の構成員だったとはな……
 正直なところ、谷口や国木田、阪中の名前がその名簿になかったことに、俺は安堵した。
 あいつらまでもが得体の知れない組織の構成員だったりしたら、俺の疑心暗鬼はトラウマ化
して修復不可能となっていただろう。
 こうした情報を得られたのは俺としても非常に有益だったが、そろそろ歴史のズレを確認す
る作業の効率化を図るために、いや手段と目的が入れ替わってるな、高校一年の俺とハルヒを
出会わせるためにやらなくてはならないことがある。

 ハルヒを北高に入学させなくてはならない。

871以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:41:33.34 ID:lOj24U2/0
しえん


872涼宮ハルヒの微笑098 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:42:51.01 ID:sjjYSbZb0
 俺はこの件について考えることをなるべく先送りにしていた。
 それはなぜか?
 考えれば考えるほど厄介な矛盾がこの命題に含まれているからだ。
 ハルヒを北高に入学させるためには、高校一年の俺が当時から三年前の七夕に行き、北高生
であるジョン・スミスの存在を中学一年のハルヒに覚えてもらわないといけない。そして、当
時の俺はそれを朝比奈さんに依頼により実行した。
 だが現在の歴史では未来人組織は発足していない。その証拠に進学校にも北高にも朝比奈さ
んの姿はないし、その他の未来人らしき人物が機関の報告書に記されることもなかった。
 仮に先に未来人組織が発足し、朝比奈さんがこの時代に来たとしても、七夕の歴史がない限
りハルヒは北高には行かず、ハルヒの監視員である朝比奈さんも北高に行くことはない。
 であれば北高に通う俺が朝比奈さんに出会うこともなく、朝比奈さんに連れられて過去に行
くという歴史が発生することはありえない。
 つまりはこういうことだ。
 ――ハルヒを北高に行かせるためには朝比奈さんが北高に行く必要があり、朝比奈さんを北
高に行かせるためにはハルヒが北高に行く必要がある――
 卵が先か、鶏が先か。古泉が好みそうなテーマだったが、あいにく俺はそんなことをあれこ
れと考えあぐねた末に結局何もしない、というような性分は持ち合わせていない。
 俺に与えられた特性は、とにかく行動することだ。俺は俺の信じる道を行く。それでいいん
ですよね、朝比奈さん。

 そういうわけで、俺は朝比奈さんの登場を待たずして、高校生の俺の力も借りず、俺自身が
ハルヒに会いに行く決心をした。
 さて、ここで問題がいくつかある。
 ハルヒは俺を北高生だと信じてくれるだろうか。
 当然ながらサングラスは外し、髭も剃らなければならない。また生やすのに苦労しそうだな。
いっそのこと付け髭でも買っちまうか。
 ハルヒに会ったのは午後九時過ぎで、かなり暗がりだった。少し身長は伸びているものの、
制服さえ着ればおそらく何とかなるだろう。いや、何とかしないといけないのだが。

873以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:43:11.07 ID:qLTfzZLF0
しえんしえんしいえんn

874以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:43:46.21 ID:o/IXhiZe0
しえーん

875涼宮ハルヒの微笑099 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:44:03.32 ID:sjjYSbZb0
 そしてもうひとつの問題。
 俺は一人でハルヒに会いに行っていいものだろうか。
 あのときハルヒは朝比奈さんを背負った俺を見て、怪しい奴だと思ったに違いなかった。だ
がその怪しさが逆にハルヒの興味を惹いたという可能性だってある。
 俺一人だけではハルヒは相手にしてくれないかもしれない。単独の俺は実に平凡な風体だか
らな。実は俺は人類初のタイムトラベラーという地球の歴史の中でもオンリーワンの属性を有
しているのだが。
 ならば、俺は誰かを担いでハルヒに会う必要がある。では誰がいいか。
 ジョン・スミスと同様、ハルヒはきっと朝比奈さんの人相を明確に覚えてはいまい。
 だが、こういう仮説もありうる。ハルヒは、あのとき俺が背負っていた朝比奈さんの姿をお
ぼろげに覚えていて、それが高校一年の時にSOS団員として朝比奈さんを選ぶきっかけにな
ったのかもしれないと。
 ならば、なるべく朝比奈さんに似た人物を選ぶのが無難だろう。
 そして俺にはその心当たりがあった。
 それは、誰あろう俺の妹だ。妹は成長するに従い、どういうわけか朝比奈さんにとてもよく
似た風貌になっていた。
 我が家の家系と朝比奈さんに何らかの関係があるのではないかと疑うに充分なほど、妹は朝
比奈さんの面影を確かに引き継いでいた。いや、朝比奈さんが妹の面影を引き継いでいると言
うのが時系列的には正しいのだろうが。
 ハルヒだって不思議がっていたからな。久しぶりに見た妹に思わず「みくるちゃん?」と声
をかけるくらいだった。妹自身は失礼なことに朝比奈さんのことをすっかり忘れていたみたい
だったが。
 よし、シナリオは決まった。


876以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:44:44.69 ID:lOj24U2/0
支援

877涼宮ハルヒの微笑100 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:45:03.50 ID:sjjYSbZb0
 俺は妹が高校生二年の頃に時間移動し、幸いにも北高に通っていた妹の下駄箱にラブレター
チックな手紙を放り込み、人気のないところに誘い出した。朝比奈さん(大)が提唱する、タ
イムトラベラーのスタンダードなコミュニケーションのメソッドだ。
 そして待ち合わせ時間丁度にやって来た妹の背後から気づかれないよう近づき、以前朝比奈
さん(大)が朝比奈さん(小)にやったのと同じ方法で眠らせた。
 その方法とは実に簡単なもので、TPDDの知覚システムを応用し相手の脳内の知覚分野に
わずかに刺激を与えるだけだ。なぜそんなことを誰にも教わらずに出来たかって? 古泉なら
きっとこう答えるだろう。解ってしまうんだから仕方がない、と。実に便利だな、この言葉。
 それにしても、まさか実の妹に誘拐まがいのことをするハメになるとはな。全くやれやれだ。
妹よ、悪く思わんでくれ。
 妹を背負った俺はすぐさま時間移動をおこなった。俺やハルヒが中学一年のときの七夕。午
後九時へ。
 移動先は変わり者のメッカ、光陽園駅前公園。
 ベンチには当然ながら、二人の朝比奈さんの姿も、高校生の俺の姿もなかった。
 あのときと同様、周囲の目をはばかりようもなくはばかりながら、俺は東中に向かった。
 到着した校門の前では、俺が知る中学生のハルヒが、俺が知る姿そのままで、今まさに校門
を乗り越えようとしていた。
 ハルヒに声をかけ、一言二言会話をし、体育用具倉庫の裏に行き、石灰と白線引きをリヤカー
に積み、妹を倉庫の横に寝かせた。すまん妹よ、もうしばらく寝ていてくれ。
 以前と同じくハルヒに命令されるまま、俺は汗だくになりながらハルヒ考案の宇宙人語を三
十分ほどかけて描いた。
「それ北高の制服よね」
 俺は高校一年のときより七つも歳を取っていたが、暗がりのせいかハルヒは北高生だと信じ
てくれたようだ。
 そして俺はジョン・スミスと名乗り、ハルヒと別れた。
 おっと、忘れていた。慌ててハルヒの後を追う。
「世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしく!」
 これを言っておかないと、SOS団が別の名前になりそうだからな。
 これで本当に大丈夫なのだろうか。もしハルヒが北高に行かなかったら、それは俺の魅力が
高校生の頃と比べて衰えているということだろう。重ねて言うが、やれやれだ。

878以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:45:21.04 ID:LADWzsE20
支援

879以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:45:30.93 ID:lOj24U2/0
支援

880涼宮ハルヒの微笑101 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:46:11.95 ID:sjjYSbZb0
 俺は元の時空間に戻り、妹を降ろして再び脳内操作をおこなった。あと一分もすれば目を覚
ますはずだ。妹からすれば、一瞬気を失っただけと思うだろう。何しろ待ち合わせ時間から一
分しか経ってないわけだからな。

 機関の報告書に目を通し、俺はやっと一息つくことが出来た。
 ついにハルヒは北高に入学した。そして、高校生の俺とハルヒは入学式の日に出会った。
 報告書によれば、俺とハルヒは俺の知る歴史どおりに話し出すようにはなったらしいのだが、
SOS団は結成されなかった。原因はわからない。
 当然ながらハルヒと結婚する歴史にも至らなかった。
 朝倉や喜緑さん、他の組織のエージェントたちも北高に現れたが、長門は未だ姿を見せない。
 やはり元の歴史に戻すためには、まだまだ既定事項が足りないということだろう。
 古泉を北高に送り込むのはいつでも出来るが、それでもおそらくSOS団は結成されないは
ずだ。古泉が転入する前にSOS団が作られたわけだからな。
 ハルヒは、宇宙人、未来人、超能力者、異世界人の出現を待ち望んでいた。異世界人は結局
俺も会ったことがないからこの際除外しよう。
 つまり、長門、朝比奈さん、古泉が揃うことが、歴史を正しい流れに引き戻すための条件な
のだろう。

881以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:47:02.33 ID:lOj24U2/0
SS書かないぶん、支援で貢献させてくれ支援

882涼宮ハルヒの微笑102 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:47:25.42 ID:sjjYSbZb0
 いよいよ最大の難関である未来人組織発足のきっかけをつくる必要がある。
 未来に関する既定事項は五つだ。朝比奈さん(大)はそれを未来への分岐点と呼んでいた。
 少年が俺に助けられること。
 少年が俺に亀を与えられること。
 少年がハルヒの書いた論文を入手すること。
 例の住所の住人が記憶媒体を入手し、少年がそれを譲り受けること。
 ある未来人の先祖を病院送りにすること。
 そしてここでも大きな矛盾が生じる。
 高校生の俺が時間移動理論の研究者となる少年を助けたり、亀を与えたりしたのは、やはり
朝比奈さんの指示によるものだ。朝比奈さん(小)に連れられて俺は少年を救い、朝比奈さん
(大)の指令により俺は亀を川に投げ込んだ。
 だが、現時点ではどちらの朝比奈さんもこの時代には現れない。少年が時間移動理論を研究
しないと未来人組織が発足することもなく、未来人がこの時代に干渉することはないはずだ。
 そして既定事項を順守するならば、少年が時間移動理論の研究に着手するためには高校生の
俺が少年に干渉する必要があり、そのためには朝比奈さんが不可欠だ。
 またしても堂々巡りである。なんだって朝比奈さんはこんなややこしいことをしてくれたん
だ?
 それとは別の重大な矛盾もあった。
 少年が時間移動理論を研究するためには、少年がハルヒの論文を入手し、記憶媒体を例の住
所に送る必要がある。
 だが、今の歴史上にハルヒの論文は存在しない。まだSOS団さえ結成されていないんだか
らな。
 それにあの記憶媒体はパンジーの花壇に今も落ちているのか? おそらくそれはないだろう。
あれは明らかにこの時代のものではなく、未来アイテムだ。
 そしてあれが仮にあの敵対未来人組織の憎たらしい野郎がこの年代に持ってきた物だとして
も、未来人組織が発足していないこの歴史の流れから考えれば奴がこの時代に現れることもあ
りえない。
 これはやはり、七夕の時と同じように俺が無理矢理に歴史の端緒を開かなければならないよ
うだった。

883涼宮ハルヒの微笑103 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:48:35.53 ID:sjjYSbZb0
 俺はやれることから一つずつ始めることにした。そうさ。夏休みの宿題を最後の一週間にな
ってようやく手をつける、それが俺のやり方なんだ。
 ハルヒだったらどうするんだろうな、こういうときは。

 そういうわけで、俺はまずは少年を助けることにした。
 これはおそらく朝比奈さんがいなくても問題はなかろう。少年にとって朝比奈さんの存在が
それほど重要だとは思えなかったからな。
 問題は少年を襲う未来人もいないということだが、それも誰でもいい。とにかく少年が襲わ
れればいいと俺は考えた。
 つまり、こういうシナリオだ。俺が機関を使って少年を襲わせ、俺が助ける。要は自作自演
だ。
 一旦未来人組織が発足する歴史さえ作れば、後は朝比奈さんと、朝比奈さんの敵対未来人が
本来の歴史で上書きしてくれるに違いない。そしてその実行部隊として、高校生だった俺に白
羽の矢が突き刺さるわけだ。
 自業自得とか因果応報とか、そういう四字熟語が今の俺にはふさわしいね。
 俺は、俺が高校一年だった頃の冬に飛び、機関本部の森さんのオフィスに足を運んだ。
「詳しい事情は説明出来ませんが、明日の○○時××分頃に、△△の踏み切り前を通りがかる
少年を車ではねてもらえませんか」
 それを聞いた森さんは、顔色ひとつ変えずに、
「殺しですね」
 と即答する。目がマジだ。正直言って、体中の力が抜けそうなくらい怖い。
「いや、心配しなくていいです」
 心配しているのは俺の方なんだが。
「結果的には俺が助けることになりますんで」
 明らかに不可解そうな顔つきで俺を見た森さんだったが、
「なるほど、何か理由があってのことなのですね」
 と、結局のところは納得してくれた。

884涼宮ハルヒの微笑104 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:49:47.05 ID:sjjYSbZb0
 そして、俺は例の時間の例の場所に行き、少年と車を待った。
 たとえ二度目とはいえども、文字どおり一歩間違えれば俺の命だって危ない。
 そして少年は現れ、俺は心拍数を五十くらい上げつつも、機関がおそらく臨時で雇ったであ
ろうドライバーに轢かれそうになる少年をなんとか助け出すことが出来た。多少手心を加える
ようにと言っておくべきだった。
 俺は少年の名を訊ね、朝比奈さんの代わりに少年と約束をし、指きりをした。
 やれやれだ。少年よ、すまん。危ない目に遭わせたのも実は俺なんだ。
 いや、礼なんか言わなくていい。泣きたくなってくる。
 少年が今日のことをハルヒに伝えたとして、誰ひとりとして被害が及ばないことだけが救い
だった。
 あのときの俺と朝比奈さんの受難は二度と思い出したくもない。
 そして、あのときのハルヒの気持ちを考えれば、なおさらだ。

 次に手軽に出来そうなのは、朝比奈さん言うところのある未来人の先祖を病院送りにするこ
とだ。
 これは一人でいいのか?
 あのときの朝比奈さん(大)からの指令書には『必ず、朝比奈みくるとともに』と書かれて
あった。
 あの場所に朝比奈さん(小)が一緒にいたことが、どういう理由で重要だったのだろうか。
 俺は推測してみた。気の毒にイタズラにひっかかり病院送りとなった男性は、その後病院で
知り合った女性と結婚することになる、と朝比奈さんは言っていた。
 あの男性は、俺に向かって朝比奈さんのことを彼女かと尋ね、あのときの俺はそう言ってお
いた方がいいだろうと判断し、肯定した。
 もしかしたら、あのときの俺と朝比奈さんの姿が、その後の男性に何らかの影響を及ぼして
いるのかもしれない。
 こんな小僧にも彼女がいるのなら俺も頑張らないとな、みたいなことを考えたとしても不思
議ではない。

885以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:50:06.80 ID:Lr2arPjn0
森さんコワイwww

支援

886涼宮ハルヒの微笑105 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:51:01.44 ID:sjjYSbZb0
 では、誰を連れて行く?
 七夕に引き続き、朝比奈さんによく似た俺の妹にご登場願うか?
 だが、妹を気絶させたまま男性に会わせるというのは明らかに問題だろう。むしろ逆効果と
しか思えない。
 未来の妹に事情を全部話して協力させるというのも悪い手ではないかもしれない。どうせ未
来が上書きされてしまえば、妹の記憶はすっかり塗り替えられるだろう。
 だが、妹のあの水素原子並みに軽い口のことを考えると、俺とは別の未来の俺が困った状況
に遭うのが容易に想像出来る。俺はそこまで自虐的な性格ではない。
 事情を話さずに、喜んでつきあってくれそうな女性。鶴屋さんの顔が思い浮かんだ。
 イタズラ好きの彼女のことだからきっと二つ返事で協力してくれるだろう。だが、そういう
わけにもいかなそうだった。
 俺は中学生の頃の鶴屋さんに素顔を見られているが、高校二年になった彼女にもう一度素顔
を見られるのはさすがにまずかった。
 既に鶴屋さんは北高に入学した俺に会っていて、今の俺とその俺の関係に勘付いているはず
だ。
 今俺が鶴屋さんに素顔を見せ、あまつさえ北高の制服など着れば、これはもう100%間違
いなくジョン・スミス=高校生の俺という公式が成り立ってしまうだろう。
 というわけで、俺はまたしても機関を頼り、パートタイマーの女子高生を調達することにし
た。
 その女性とともに夕暮れの歩道に向かい、五寸釘で固定した空き缶を仕掛け、首尾よく男性
はそれを蹴って負傷し、めでたく病院送りとなった。
 あなたの子孫がどういう未来を作るのか俺にはよく解りませんが、とにかく頑張ってくださ
い。俺は病院に向かうタクシーに向けて心の中でエールを飛ばした。

 次におこなったのは、亀を川に放り込み、少年に亀を渡すことである。
 これも朝比奈さんはおそらく必要あるまい。
 俺は鶴屋家の庭の池からなるべく長生きしそうな小亀を探して捕まえ、葉桜の並ぶ遊歩道に
行き、少年の前で亀を川に投げ込み、亀を回収し、少年に手渡した。
 そして、念のためにではあるが、今日のことは誰にも口外しないようにと言っておいた。

887以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:51:05.96 ID:q6JvjderO
支援

888以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:52:05.49 ID:QwJBzq/F0
飯食い終わった支援

889涼宮ハルヒの微笑106 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:52:17.14 ID:sjjYSbZb0
 さて、いよいよ残こされた課題は記憶媒体とハルヒの論文だ。
 だが、これらを後回しにしていたからといってその間に何かいいアイデアが浮かんだかとい
うと、そういうことは全くなかった。
 記憶媒体の入手方法に関しては、まるで見当がつかなかった。俺がこれから未来に飛び、い
つどこに存在するかも解らないそれを探し回るというのはどう考えても非現実的だった。
 ハルヒの論文にしてもそうだ。あれはそもそもSOS団を恒久的に存続させるためにと書か
れたものだったはずで、SOS団なくしてあの論文が生み出されるとは考えられない。
 果たして論文と記憶媒体なしで少年は時間移動理論の研究を進めることが出来るのだろうか?
 これは試す価値がある。ひとまず少年と知り合いになる事実は既に作ってある。
 もし失敗したら、あらためて論文と記憶媒体の件を何とかしてからもう一度少年にSTC理
論を付与する歴史に塗り替えればいい。

 俺は、以前少年にSTC理論を付与した日に移動し、少年を訪ねた。
 そして、すぐさまこれはダメだという結論に至った。
 前回と同じく、タイムトラベルに関する助力が欲しいと言った俺に、少年はこう答えた。
「タイムトラベルですか? 確かに僕はサイエンスフィクションに興味はありますが。あなた
は小説か何かをお書きになるんでしょうか?」
 どうやら、俺が少年を助けたこと、亀を投げ込んだこと以上に、ハルヒの論文と記憶媒体は
重要な意味を持っているようだった。

 だが、いくら考えても結論など出るはずもなかった。こういうときは寝てしまうに限る。そ
うすれば明日いいアイデアが浮かぶかもしれない。
 もしかしたら、また都合よく例の夢を見られるかもしれないしな。

890以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:53:57.76 ID:qLTfzZLF0
支援キョンぴんち!

891涼宮ハルヒの微笑107 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:54:54.78 ID:sjjYSbZb0


 薄暗い。寒気を感じる。
 木枠に嵌った窓ガラスの方からぼんやりとした灯りが差す。
 夜の学校。見覚えのある部屋。
 老朽化した天井。ひび割れた壁。木製の扉。
 少ない備品が手狭な部屋を広く感じさせる。
 長テーブル。パイプ椅子。本棚。
 本棚には、厚手のハードカバーから文庫本までがずらりと並んでいる。
 窓の外に目を向ける。
 グラウンドの方にわずかに光る何かが見える。



892以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:55:54.24 ID:7YX07Oty0
しえん

893以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:56:06.97 ID:M3PHrIHP0
支援

894涼宮ハルヒの微笑108 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:56:26.72 ID:sjjYSbZb0
 目覚めた俺は、あまりのご都合主義的な展開に苦笑する他なかった。
 この夢を見せているのは、やはりハルヒ、お前なのか?
 俺は、俺が見る夢を全面的に信じるようになっていた。既に俺は二度も夢に助けられている。
 これがハルヒの見せている夢だとしたら、俺にはあの場所に心当たりがある。ならばそこに
行くしかない。
 時空間座標を真夜中の北高に設定し、移動する。
 北高に足を踏み入れるのは五年ぶりくらいにはなる。この歳になっても、夜の学校を一人で
歩くのは少々怖い。
 俺はあのグラウンドに向かい、しばらく歩き回ってみた。たが期待に反して収穫は何もなか
った。
 あれはハルヒの見せたものではなくて、普通の夢だったのだろうか。

 その日の夜、また同じ夢を見た。
 文芸部部室から見える、グラウンド上のおぼろげな光。
 やはりこれはただの夢ではない。ハルヒが俺を呼んでいるのか?
 もう一度夜の学校へと赴いた。だが昨日と同じく何も手がかりは得られない。
 そうか。つまり場所だけではダメなんだ。「どこ」だけではなく「いつ」が必要なのだ。
 俺は夢の内容をもう一度思い出してみた。
 俺は夢の中で寒気を感じていた。ならば季節は冬か?
 違う。それは季節を表すものではない。俺はその寒気を既に何度か経験していた。夢の中で、
そして現実世界で。
 つまりそれは閉鎖空間を暗示しているはずだ。
 グラウンド。閉鎖空間。
 俺とハルヒの二人だけのモノクロームの世界の中で、俺たちは始めてのキスをした。今でも
あの時のことを鮮明に思い出せる。
 そして同じくモノクロームの世界、様々な存在の様々な思惑が入り混じったあの空間で、俺
たちは二度目のキスをした。
 このどちらかの日に違いない。

895以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:56:28.27 ID:7RiaBRBq0
作り終わってからの投稿だから
安心して読める支援。

896以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:57:00.66 ID:M3PHrIHP0
支援

897涼宮ハルヒの微笑109 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:58:00.33 ID:sjjYSbZb0
 時空間座標を設定し、俺はあの日、あの時間のあの場所へと飛んだ。
 高校一年の五月下旬。ハルヒが最初に世界改変を試みたあの日。午前二時を少し過ぎた頃。
 到着するなり、寒気が俺を襲った。間違いない。この歴史でも同じ時間、同じ場所に閉鎖空
間が発生している。
 グラウンドの中でも最も寒気が顕著な場所を探した。
 どうやら古泉たち超能力者は、閉鎖空間の発生には気づいていないようだ。周囲に連絡用エー
ジェントの姿が見えないのがその証拠だ。
 つまり、これは俺のためだけに作られた閉鎖空間だということなのか。
 しばらく後に、不意に寒気が消えた。
 あたりを見回してみる。だが何も変化らしきものはない。
 やれやれだ。ため息をついた俺は、ようやく足元にあるそれを発見した。今さっきまでは存
在しなかった、薄茶色の封筒。
 B4サイズのその封筒を開いた。
 そこには、この歴史では決して存在するはずのない、あの日俺たちが作り上げた文芸部機関
紙と、パンジーの花壇に落ちていた記憶媒体が入っていた。
 ハルヒ、お前は別次元の世界から俺にこれを送ってくれたのか?

 俺は文芸部機関紙の中から『世界を大いに盛り上げるためのその一・明日に向かう方程式覚
え書き』と題されたハルヒの論文だけを抜粋し、匿名で少年に送った。同じく記憶媒体を手帳
に書かれてあった住所に、やはり匿名で送った。
 これで後は少年に再び会えば、前と同じシチュエーションで少年にSTC理論を付与出来る
はずだ。

898以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:58:46.16 ID:M3PHrIHP0
支援

899以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:59:00.97 ID:uJ8J66f2O
谷川がこんなネタ書こうとしてて、何かあってコレ見たらびっくりするだろうな

900以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:59:04.26 ID:jNbv5WZ80
レポートやろうと思ったのに手につかないじゃないか支援

901以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:59:19.75 ID:wp0QkhMG0
しえん


902以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:59:27.52 ID:MPkHIBpu0
中傷したがる一部の2ちゃんねるのみなさんへ
ttp://groovemachine.ddo.jp/p.html

903涼宮ハルヒの微笑110 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 20:59:32.44 ID:sjjYSbZb0
 俺は少年にSTC理論を付与した日、時間に移動した。
 体が揺れる感覚の後、その時代に到着した俺は、眼前に立っている人物を見て唖然とした。

 目の前にいたのは、もう一人の俺だった。

 なるほど、そうか。こいつは数日前に少年にSTC理論を付与しようとして失敗した俺だ。
 つまり、今の俺がわざわざもう一度ここに赴かなくても、目の前の俺が少年に会ってSTC
理論を付与してくれるわけだ。
 だったら、もしこいつが今これから少年へのSTC理論の付与に成功した場合、こいつはハ
ルヒの夢を見るのだろうか? 文芸部機関紙と記憶媒体を得る未来は生まれるのだろうか?
 嫌な予感が頭をよぎった俺は、慌てて目の前の俺に声をかけ制止した。
 振り返ったそいつは、当然のように唖然としている。当たり前だ。俺だってさっき同じよう
に驚いたんだからな。
 俺は初めて時間移動をおこなったときに、一分後の俺、一分前の俺と会ったことがある。そ
の時は何が起こっているのかをすぐに理解出来た。
 だが今回は違う。お互い、まさか自分が現れるなんて夢にも思っていなかった。目の前の俺
もこの俺も。
 俺は数日前の俺の迂闊な行動を後悔した。
「お前は誰だ」
「見てのとおり、俺はお前だ。未来の俺だ。ここはまずい。場所を変えよう」
「先にわけを話してもらおうか」
 我ながら面倒な性格の奴だ。
「こんなところを人に見られたらまずい。とにかく移動が先だ」
 過去の俺は渋々ながら承諾し、俺たちは人気のない場所を探して、近くの路地に移動した。
「俺はお前がいた時間より少し未来から来た。確か三日後だ」
 時間移動を頻繁に繰り返すと、日時の感覚が著しく麻痺する。三日後で合ってるよな?
「何のために来たんだ?」
「三日前の俺は、彼にSTC理論を与えるためにここにやってきた。それが今のお前だ。これ
は解るか?」
「ああ」

904以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 20:59:40.16 ID:qLTfzZLF0
レポートに世界を大いに盛り上げるためのその一・明日に向かう方程式覚
え書きを書くんだ 支援

905涼宮ハルヒの微笑111 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:00:31.67 ID:sjjYSbZb0
「そしてその試みは失敗に終わる。少年に『SF小説でも書くんですか?』とか言われてな」
「散々な結果だな」
「全くだ。それで俺はその後ある方法でハルヒの論文と記憶媒体を手に入れた」
「何だと? お前、一体どうやってそれを手に入れたんだ」
「教えてやりたいが、それを言うと俺の歴史とお前の歴史に食い違いが起こるかもしれん。だ
から言えん。今こうして俺とお前が話しているだけでも既に食い違いは起こっているんだから
な」
「やれやれ、全く面倒くさい話だな」
「全くだ」
 二人の俺は同時に肩を竦めた。息もぴったりだ。当たり前だがな。
「それで、俺はこれから彼に再度STC理論を与えに行くところだったんだ。だが俺は過去の
俺、つまりお前の存在をすっかり忘れていたというわけだ」
「なるほど話は解った。ならば俺はこのまま元の時間に戻り、ハルヒの論文と記憶媒体を探せ
ばいいということだな」
「そう言うことだ。あまり考えすぎなくていい。果報は寝て待てだ。これ以上詳しいことは言
えん」
「未来の俺がそう言うんなら、そうなんだろうな。覚えておくよ。じゃあな」
 過去の俺は立ち去ろうとして、しばらくして立ち止まり、少し考えた様子を見せて振り返り、
そしてこう言った。
「ということはだな。俺たちは前に七夕に行ってハルヒに会ったり、少年を助けたり亀を与え
たり、色々したよな」
「ああ」
 そこまで聞いて、俺はこいつの言いたいことが解った気がした。
「つまりは俺たちが元の既定事項と違う行動を取っている、例えば高校生の頃の俺たちの行動
を肩代わりしているようなケースは、全て今回と似たようなことが起こるということか」
 予想は当たっていた。確かにそのとおりだ。
「やれやれだな」
「やれやれだ」
 二人の俺は同時に首を振った。息もぴったりだ。当たり前だ。そんなことはどうでもいい。
 これから先のことを考えると正直なところ頭が痛かった。

906以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:01:30.11 ID:M3PHrIHP0
支援

907涼宮ハルヒの微笑112 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:01:42.34 ID:sjjYSbZb0
 こうして俺は、過去の俺にご退場願い、少年の元に向い、無事に少年にSTC理論を付与す
ることが出来た。
 ハルヒと結婚する事実のないこの歴史では、以前のシナリオとは多少異なる点はあったもの
の、幸いなことにハルヒが死ぬことを防ぐという俺の意向に少年は全面的に賛同してくれた。

 おそらくこれで未来人組織発足のきっかけは生まれたはずだ。
 俺は高校一年の頃の時代に飛び、機関作成の名簿を調べてみた。
 二年の朝比奈さんがいたクラス。
 だが、予想に反して朝比奈みくるの名は見当たらなかった。
 おかしい、まだ未来人組織は発足していないのか?
 他のクラスも調べてみた。それは一瞬で完了する。名簿の先頭の方だけ見ればいいわけだか
らな。
 やはり朝比奈みくるの名はどこにも記されていなかった。
 それからしばらく後の機関の報告書に、未来人という単語が載るようになった。
 それには「二年×組の生徒で、言動に不審のある生徒を確認。その内容から未来人の可能性
あり。現時点では確証なし。詳細要調査」と書かれてあった。
 名前は書かれていない。
 俺は森さんに問い合わせ、内容を確認した。
「彼女は一年の時から既に北高に入学していたらしく、時おり言動がおかしい、現代人なら誰
もが常識として知っているはずのことを知らない、などの特徴が見られるとのことです」
 俺は朝比奈さんを思い出していた。そうだよな、あの人はそういうそそっかしいところがあ
ったよな。
「そいつの名前を教えてもらっていいですか」
「本来はまだ名前をお伝えすることは出来ないんです。敵対組織のダミー工作員の可能性があ
りまして。つまりいかにも未来人のような言動をとることで我々の反応を見るために送られた
他組織のエージェントかもしれないということです」
 全く森さんも色々と考えているもんだ。いや、実際に北高ではそのような謀略戦が繰り広げ
られているのかもしれない。
「ですので、これは他言無用ということでお願いします」
 そして、俺はその名を聞いた。やはりそれは全く別人の名前であった。

908涼宮ハルヒの微笑113 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:02:40.68 ID:sjjYSbZb0
「写真を入手出来ますか。確認しておきたいのですが」
 もしかしたら、名前だけ以前と異なってはいるが、実は俺の知る朝比奈さんが来ているのか
もしれない、と思ったからだ。
「私の手元には既に送られています。これも機密扱いでお願いします。確認後速やかに消去し
てください」
「もちろんです」
 電子メールですぐさまそれは送られてきた。
 添付ファイルを開いてみる。
 パソコンのディスプレイには、まさに朝比奈さんとは全く似ても似つかない女性が映し出さ
れていた。
 その後の機関の調査で、その女性は間違いなく未来人だという結論に達した。
 つまり未来人組織は確かに発足したのだ。そして朝比奈さんがいないこの歴史では未だにS
OS団は結成されない。
 なぜ朝比奈さんは来てくれないんだ?

 俺は未来人に関係する既定事項を洗いなおしてみた。
 少年に関係することはおそらく問題ないはずだ。実際に未来人組織は立ち上がっている。
 記憶媒体に関しても正しい住所に送り、めぐり巡って少年に届いていた。あの媒体と朝比奈
さんに関連性があるようには思えない。
 その二つは俺の取った行動とその結果の因果関係が明らかだった。
 だとすれば、残っているのはあのイタズラで怪我をした男性だ。
 彼を病院送りにしたことがどう未来に影響しているのかを見極める必要がある。朝比奈さん
は言っていた。彼は病院で女性と出会い、子供をもうけ、その子供はさらに子孫を残すと。
 男性の子孫と朝比奈さんに何か関係があるのかもしれない。もしかしたら朝比奈さんが彼の
子孫そのものなのだろうか。

909以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:02:47.06 ID:M3PHrIHP0
支援

910涼宮ハルヒの微笑114 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:03:33.63 ID:sjjYSbZb0
 俺は男性の系譜を追い始めた。
 まず俺は怪我をさせた男性の病院に飛んだ。男性は朝比奈さんが言ったとおり、病院で女性
と知り合った。
 男性が退院するタイミングを見計らい、俺は空間移動を使いながら男性を尾行し、住所をつ
きとめた。
 男性はその二年後、知り合った女性と結婚した。予定どおりだ。
 ここで少し油断した。結婚後しばらくして二人は別の場所に住居を構えた。慌てて転居先を
探す。頼むからあまり引越しはしないでくれよ。
 その住所を元に、数年おきに住民票を入手する。それで家族構成はほぼ解った。
 男性は結婚後一年で女の子を、五年後に男の子をもうけた。それ以降はどうやら子供は生ま
れていないようだった。

 俺は今後の調査方法を考えた。
 結局男性の家族構成を調べるのにほぼ一日かかった。彼の子供は二人だ。その二人はおそら
くやがて結婚し子供をもうける。その子供が二人ずつだとすると、三代目の調査対象は四人に
なる。仮に子孫が二倍ずつ増えていくとしよう。この法則でいけば、五代目では十六人、十代
目では五百十二人になる。二十代先まで追えば、実に524288人となる。系譜を追うに従
い調査対象は等比数列的に増え続ける。
 524288人を調べるとなると、一人を調べるのに一日かけたとしても1436年かかる
計算になる。明らかに俺一人では不可能だ。
 文字通りネズミ講だな。いやそれは失礼な例えだった。人間はそれほど多産ではない。これ
がひと昔前であれば、子供を五人くらい産むのも当たり前のことだろう。俺は少子化をこれほ
どありがたいと思ったことはなかった。本来ならありがたがる話ではないし、未来でも少子化
傾向が続いているという確約もないが。
 だが俺はおそらくそれほど先の代まで調べる必要はないだろうと踏んでいた。
 なぜなら朝比奈さんたち未来人は、彼女たちの時代に生きるある人物の先祖があの怪我をさ
せた男性だということに行き着いたからだ。
 その人物の親というのは必ず二人、その親二人の親も間違いなく二人ずつだ。一切の例外は
ない。ならば未来から過去の系譜を追うのも、過去から未来の系譜を追うのも共に等比数列に
違いなく、同じだけの労力がかかるはずだ。

911以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:04:20.01 ID:M3PHrIHP0
支援

912涼宮ハルヒの微笑115 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:04:54.58 ID:sjjYSbZb0
 未来人組織がのべ1436年もかかる調査をするとは思えなかった。朝比奈さんは俺の生涯
を調べることですら大変な作業だったっと述懐していたからな。
 考えていても仕方がない。俺は俺の直感に従いただ行動するのみだ。
 十代目まで系譜を追ったとしても一年半はかかる計算になる。だが俺にはこれ以外に、朝比
奈さんが俺たちの時代に来るための手がかりを得る方法は思いつかなかった。
 俺は機関の運営に関する仕事の合間を使って調査を続けた。
 住民票を調べる手は二代先あたりで使えなくなった。役所での個人情報保護が厳密になり、
第三者がそれを閲覧することが極めて困難になっていたのだ。
 調査の効率化のために郵便物の盗み見もしたが、この手もやはりしばらくすると使えなくな
った。ほとんどの郵便物が電子メールに置き換わったらしかった。
 そういうわけで調査の手段は住居の張り込みのみとなった。
 ここで具体的な張り込みの方法を紹介しよう。
 人は子供を作る場合もあれば作らない場合もある。結婚していようがしていまいが。
 大体の場合、女性は二十歳から四十歳の間に出産するが、念のため十六歳から五十歳までを
調査範囲とする。
 その三十五年間をだいたい四ヶ月置きくらいに飛んで子供の有無を調べるわけだ。つまり一
人あたりおよそ百回だ。
 住居をしばらく張っていれば、母親の出かける時間が解るようになる。主にその時間を中心
に張り込みをおこなう。
 規則正しい生活を送っている人とそうでない人で多少ブレが生じるが、だいたい一回の張り
込みに平均十分かかると思ってもらいたい。
 つまり、一世帯の家系を調べるのに千分。およそ十七時間かかるということだ。
 母親が妊娠したかどうかはお腹を見れば解る。お腹の状態で出産の予定日の予想を立てる。
そんなに厳密に調査しなくても、二年置きくらいで大丈夫だろうって?
 だが、生まれてまもなく養子に出されるケースだってあるかもしれない。だから俺は正確に
出産日を見定めることにした。
 出産の際には病院に行くことも欠かさない。万一双子が生まれて片方が出産後すぐに養子に
出されでもすれば、四ヶ月置きの張り込みだけではまずそれを知ることは出来ない。
 俺はお腹の状態から出産予定日を判断するという、おそらく産婦人科医並の技能を身につけ、
他の誰よりもこの男性の系譜について詳しくなった。

913涼宮ハルヒの微笑116 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:05:52.69 ID:sjjYSbZb0
 この調査方法はあくまでも女性の場合であり、男性の場合は生殖機能が衰えない限り調査範
囲は女性に比べて飛躍的に増大する。
 その気になれば六十、七十歳くらいでも充分子供を作ることが出来そうだからな。
 これは大変な作業だった。ある者は離婚して別の家庭をつくり、ある者は妻以外の女性に子
供を産ませた。
 その度に増え続ける調査対象に俺は頭を抱え、自らの運命を呪いながらひたすら張り込みを
続けた。

 調査日数がのべ九ヶ月間に差し掛かり、調査結果の書き込まれた家系図が畳一枚分ほどの大
きさになった頃にそれは起こった。
 いつものように張り込みをしていた俺は、ある日異変に気づいた。
 それは彼の八代先の子孫のひとりで男性だった。その男性が二十台後半の頃のことで、彼に
は妻も子もいなかった。
 そいつが住居に戻らなくなった。やがてそこには別の人物が住み着くようになった。
 引越しでもしやがったか? くそっ、どこに行きやがった。
 俺は時間を絞り込み、引越しの瞬間を探した。
 だが彼がいなくなってからしばらく張り込みをしたが荷物が運び出された形跡はなかった。
 これはひょっとして失踪ってやつか?
 俺は彼を最後に見かけた時間に戻った。彼を張り込んでいる少し過去の俺には見つからない
ように離れた場所へ。また面倒な説明をする気にはなれなかったからな。
 首尾よく彼の姿を見つけた俺は尾行を開始した。
 しばらく尾行を続けた俺は、まずいことになったな、ということに気づいた。
 どうやら尾行がバレているらしい。
 彼は周囲を見渡しながら何かを探すような歩き方を装い、同じ道を別の方向から二度通った。
 俺がそれに気づいたのは、二度目にその道から大通りに出た時だった。
 俺は直ちに尾行を中止した。
 俺の張り込みは四ヶ月に一度だ。ならば、張り込みの事実まではおそらく気づかれてはいま
い。

914以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:06:00.52 ID:M3PHrIHP0
支援

915以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:06:01.86 ID:qLTfzZLF0
支援支援し

916涼宮ハルヒの微笑117 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:07:02.14 ID:sjjYSbZb0
 俺はおよそ一年前に戻り、再び彼を尾行した。
 だが驚くべきことに、彼は前回と同じ歩き方で、別のルートではあったが二度同じ道を通っ
たのだった。
 これは気づかれているのではないかもしれない。つまり彼には常に尾行を意識して生活をし
なくてはならない理由があるということだ。
 俺は手ごろな建物の屋上を探し、しばらくの間遠くから彼を観察することにした。
 彼は毎日決まった時間に住居を出て、毎日異なる何パターンかのルートを通ったあとオフィ
スビルに入り、夕刻頃そのビルから朝のルートを逆行し、どこにも寄り道することなく住居に
戻っていった。
 このままでは進展はない。俺は四ヶ月先の彼を最後に見た日、つまり俺が途中で尾行を断念
した日に戻り、意を決してビルに入ることにした。ここで調査を諦めるわけにはいかなかった。
何か危険な状況に立たされたとしても、俺には時間移動という武器がある。
 あらかじめビルに入り待機する。彼がやってきた。一人でエレベータに乗る。同乗するわけ
にはいかない。エレベータの行き先表示を確認する。エレベータは四階で止まり、そして一階
まで戻ってきて一人が降りた。四階には三つの会社がオフィスを構えていた。ならば彼はこの
うちのどれかに勤めているのだろう。
 俺は彼がエレベータから降りる少し前の四階に時間移動し、非常階段の踊り場に隠れ、彼を
待ち伏せることにした。
 エレベータが開いた。
 おかしい。誰も降りてこない。
 なぜだ?
 後ろから肩を叩かれた。
 そこには俺がさっきまで追っていた、エレベータに乗っているはずの男性が立っていた。
「なぜ俺を追っている」
 やっと理解した。こいつはTPDDを持っている。俺は待ち伏せするつもりでこいつに待ち
伏せされたんだ。
 男性は微妙に口の端を歪めた。笑みとも不満とも取れる。
「お前、まさか能力者か? だがそれならなぜこんな尾行の仕方をする。まるで素人だ」
 確かに尾行に関して俺は全くの素人だった。

917以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:07:58.12 ID:M3PHrIHP0
支援

918涼宮ハルヒの微笑118 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:08:03.14 ID:sjjYSbZb0
「お前は何者だ。俺が知らない以上、少なくとも仲間ではないようだが」
「俺はあなたの敵ではありません。TPDDを持っているのは確かですが」
「待て」
 男性の顔に明らかな困惑の色が滲み出ていた。
「お前、なぜ禁則がかかっていない? たとえ奴らの組織であろうとTPDDという単語を発
せられる能力者はほとんどいないはずだ」
「なぜと言われても説明出来ません。俺にはもともと禁則事項が具体的にどういうものかもよ
く知りませんし」
「詳しい話を聞かせてもらおうか」
 ここで俺は時間移動で逃亡することも出来たが、それでは調査は進展しない。それにこの男
性が何らかの鍵になっているのはおそらく間違いないだろうと思えた。ここは素直に従ったほ
うがいい。
 俺と男性はビルを出て近くの公園に行った。
 男性は周囲に人の気配がないことを確認し、さらに手を耳に押し当て何かを確認するかのよ
うな仕草をした後、ようやく話し始めた。
「君は一体何者だ」
「詳しくは話せませんが、俺は過去から来ました」
「過去?」
「ええ。ここよりおよそ二百年前です」
「二百年前だと!?」
 男性の困惑がさらに色濃くなった。
「俺の知る限りTPDDを最初に得ることの出来た人物が現れたのはおよそ六十年前だ。今ま
でにTPDDを得た人間というのはほぼ例外なく俺たちの組織にプロフィールが残っている。
今のところ、それが敵対組織の人間であってもだ。そのリストに間違いがなければ、今までに
TPDDを得られた人物はわずか三十七人。そして俺たちのような能力者はそれらの人物を全
て記憶している。その人物の幼少期から老年期の姿まで全てだ。だがそのリストには君は含ま
れていない。これはどういうことだ?」
 どうやら、STC理論を与えたときに少年が危惧していたような、誰もが時間移動の存在を
知るような危なっかしい未来にはなっていないようだった。

919以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:09:09.97 ID:M3PHrIHP0
支援

920以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:09:14.48 ID:XLSlaVkk0
つか、ムズいwwwwwww

921涼宮ハルヒの微笑119 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:09:20.79 ID:sjjYSbZb0
 俺はなるべく正直に話すことにした。
 突発的にTPDDを得たこと、少年にSTC理論を付与したこと、おそらくそれが源流とな
って今この時代にTPDDが伝わっているであろうこと。
 少年の名前を聞き男性は頷いてみせた。俺への猜疑心が少しは薄らいだのだろうか。
「仮に君が二百年前の人間だとして、何のためにこの時代にやってきた」
「ある女性を探しています」
「女性? それは君とどういう関係があるんだ?」
「名前は朝比奈みくると言います。ご存知ないですか? その女性もあなたの言う能力者とい
うことになります。彼女はあなたの組織に所属していて、俺たちの時代に来るはずです」
 朝比奈さんがこの男性の先祖を知っているということは、おそらく同じ組織の人間のはずだ。
「なるほど。その名に覚えはないが、つまりあの計画と関係があるということか。辻褄は合う」
「計画……ですか?」
「俺たちの組織は今から二年前に過去の事象を観測するシステムを作り上げた。それまでは過
去を知るためにはTPDDを持つものが過去に赴き、駐在して調査する必要があった。まあ今
でも詳細の史実を調べるには駐在員を送る必要があるんだがな。俺たちはそのシステムにより、
今からおよそ二百年前に起こった大規模な時空振動を検出した。それの調査のために俺たちは
新たに能力者を開拓し、過去に送り込むことが必要になったんだ」
 なるほど、この時代でようやくハルヒの時空振動を発見したらしい。そしてその調査要員に
朝比奈さんが含まれていたということなのだろう。
「それを実現するためには、俺たちには新たなスポンサーが必要だった。そしてそれは実に厳
正に選ばれた。何しろ俺たちの組織の存在と活動内容は機密中の機密で、それはいかなる権力
にも知られてはいけないことだった。だが、結局のところそのスポンサー筋から極一部の人間
に情報が漏れ、俺たちとは違う別の能力者組織が生み出された」
 それがあの朝比奈さんを誘拐した野郎や、閉鎖空間に現れた敵対未来人の連中なんだろうな。

922以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:09:46.87 ID:wp0QkhMG0
紫煙


923以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:10:21.92 ID:M3PHrIHP0
支援

924涼宮ハルヒの微笑120 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:10:26.43 ID:sjjYSbZb0
「俺たちの組織は原則として歴史、これは我々の用語で既定事項と言うのだが、それを遵守し
たうえで過去の歴史を調査しそれに学ぶことに重きをおいている。だが敵対組織はこの時代の
人類に都合のよい歴史を作るために能力を活用しようとしている。言い換えれば、俺たちは歴
史の歪みを生み出さずにより良い未来を作ることを目標にし、奴らは歴史の歪みを大きくする
ことでそれを実現しようとしている。どちらが人類にとって正しい選択なのかは正直なところ
俺にも解らない。解っているのは俺たちと奴らの、既定事項に関する考え方が明確に異なって
いることだけだ。とは言え、我々と彼らには共通して守らなければならないことがある。それ
が禁則だ」
「禁則とは結局どういうものなんですか」
 俺は今まで漠然と抱いていた疑問を正直に訊ねた。
「突き詰めて言えば、あらゆる人間に対して未来に至る既定事項の秘密を守る、ということに
尽きる。過去から未来を守るために重要なことだ。つまり俺たちと奴らの組織は、同じ未来人
という点で、禁則に関しては共通認識が出来上がっている。禁則を破るということは、お互い
の組織の目的とは別の次元で絶対にあってはならないことだ。禁則を破ることで未来に生じる
影響は誰にも正確な予想は出来ない。だから時間平面移動の研究は能力者のコントロール方法
と一体で進められてきた。言わば核兵器以上に慎重な扱いをしなければならないものだ」
 随分と物騒な話になってきた。
「禁則は我々のような能力者にとっては絶対に破ってはならない不可侵な領域なんだ。そうい
う理由で、禁則が適用されない能力者は一人の例外もなく存在しない。あらためて問う。君は
一体何者なんだ?」
「それは申し訳ないですが言えません。何となく言わない方が良いような気がしますので」
「なるほど。未来人であれ過去人であれ、必要以上の情報を得ることが必ずしも正しいことと
は言えないからな。それに君が言いたくないのならば俺たちにそれを強要する術はない。仮に
俺たちが君を拘束したとしても、君は時間移動によりいつでもその状況から抜け出せるわけだ
からな。俺がそうであるように」
 男性は心なしか楽しげな表情を見せた。
「だが、あといくつか質問させてくれ。答えてくれなくても構わない」
「解りました」

925以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:11:45.73 ID:M3PHrIHP0
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926涼宮ハルヒの微笑121 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:12:06.87 ID:sjjYSbZb0
「君はどうやって俺に辿り着いた? この時代でも俺が能力者だということを知るものは数え
る程しかいない」
「あなたの先祖からの系譜を追ってここまで来ました」
「なるほど。つまり君が過去で出会った未来人が俺の先祖に関して何らかの情報を残したとい
うことだな。それは解った。もうひとつの質問だがいいか?」
「ええ」
「大体でいい。君の出身地はどこだ?」
 俺はその問いに正確に答えた。一体何の意味があるのだろう。
 だが、俺の答えに男性は深く頷いた。
「TPDDは限られた人間にのみそれを得る素養がある。そしてそれはある地域にルーツを持
つ人間に限られるんだ。そう、君が生まれた地域だ。時間平面理論の研究もその場所から始ま
った。現段階ではその理由は我々には一切解らないがな。そして今回発見した時空振動もどう
やらその周辺で発生したものらしい」
 ハルヒは機関に所属する超能力者だけでなく、TPDDを得る能力者も地域限定で生み出し
ていたということか。まあ世界中にそういう連中が拡散しているよりはよほどマシとは言える
が。
「今日君に会ったことは俺の胸の内にしまっておくことにする。いつかの時代の誰かが、禁則
を破ってまで君に俺の先祖を教えたことにはきっと何か理由があるんだろう。俺にだって未知
の未来を信じてみたいという気持ちはまだ残っているからな。もし俺に連絡を取りたい時はこ
の時空間座標に来てくれ。二度目以降に来る場合は同じ時間に日を変えて」
 そう言って彼は人差し指を俺に向けた。俺はなんとなくそうするのがいいように思い、以前
朝比奈さんがしたように自分の手を差し出した。彼が俺の手の甲を人差し指で触れた瞬間に俺
の頭の中に時空間座標が飛び込んできた。
 彼は笑みを浮かべながら言った。
「やはりダメか」
 何のことだ?
「君はやはり何も知らないんだな。そして君が言っていたことがおそらく全て真実だというこ
とをこれで確信した」
「どういうことです?」

927以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:13:21.02 ID:M3PHrIHP0
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928涼宮ハルヒの微笑122 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:13:24.08 ID:sjjYSbZb0
「俺は敵対組織も含めた全能力者の中でも最高位のコードを持っている。禁則の制限というの
は実に簡単に設定出来るものでね。今のやりとりの中で俺は禁則制限を設定する命令コードを
君の脳内に送ったんだ。そしてそれは何の効力も発揮しなかった。君は本当に我々とは全く別
の方法でTPDDを手に入れた存在だということが解ったよ」
 油断も隙もないな、全く。だが俺はさっきの彼の話を聞いて、少しくらいは禁則に縛られて
いた方が良いような気にもなっていた。自分が歩く人間核兵器以上の存在なんていうのは、そ
れはそれで困るからな。
「ははっ。だまし討ちのようなことをして済まなかった。だがこれはどうしても確かめておく
必要があったことでね。では俺はここで失礼するよ。また会える日を楽しみにしている」
 そう言って彼は元いたビルの方に去っていった。

 その後も引き続き、怪我をさせた男性の系譜を引き続き調べたが、朝比奈さんに関係する人
物は現れなかった。
 ひとつ手がかりを得てひとつ手がかりを失った。
 あの未来人組織の男性の口ぶりでは、ハルヒによる時空振動の調査が近く開始されることに
なるようだ。
 ならば朝比奈さんもおそらく彼と同じ年代にいるはずだった。
 俺は賭けに出ることにした。失敗すれば俺は数ヶ月間を無駄にすることになる。だが他に手
がかりになりそうなことはなかった。
 あの未来人の男性は言った。能力者のルーツは俺の住む地域にあると。
 そして、朝比奈さんと俺の妹の間には何らかの関係があるはずだ。

 俺は、妹の系譜が鍵を握っているかもしれないと考え、再び調査を開始した。
 まさか自分の実家を張り込みすることになるとは夢にも思わなかった。実に不思議な気分だ。
 そこには、以前見たのと同じように、ハルヒと結婚する歴史には至らず、ようやく就職先が
決まったのか毎日不満げな表情で家を出る俺の姿があった。繰り返して言うが、俺はこんな未
来には全く興味はない。
 そして妹は朝比奈さんチックな雰囲気をそのまま残して成長していった。
 妹は二十四歳のとき、柔和で見るからに面倒見のよさそうな男性と結婚した。兄の俺から見
てもベストマッチングだと思える。

929以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:14:36.37 ID:M3PHrIHP0
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930涼宮ハルヒの微笑123 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:14:37.25 ID:sjjYSbZb0
 そしてその二年後、妹は俺の姪となる女の子を産んだ。
 そこから男性の時と同じ方法で系譜を追っていった。
 おそらく朝比奈さんが現れるとしたら、それは七代目から九代目あたりになるだろう。だが
そこに辿り着くためにはやはり丹念に二代目からひとつずつ代を追っていくしかない。
 機関の運営の方は既に俺がいなくてもほぼ問題ない状態になっており、俺はこちらの調査に
没頭した。
 そして、やはり数ヶ月の歳月を費やし、二枚目の家系図が畳一枚分になろうかという頃、俺
はようやく朝比奈さんらしき人物を発見したのだった。
 妹の九代目の子孫にあたるその少女が朝比奈さんではないかと気づいたのは、彼女が五歳に
なる頃だった。名前も朝比奈みくるではなかった。そもそもそれが本名だとは思っちゃいなか
ったが。
 その彼女は、幼かった頃の俺の妹にとてもよく似ていたのだ。
 俺は彼女を重点的に張り込むことにした。彼女が朝比奈さんだという確証が欲しい。
 家の外からでしかうかがい知ることは出来なかったが、とても幸福そうな家庭だった。生活
は決して裕福とは言えなかったが、両親も彼女も笑顔が絶えなかった。
 だが、しばらく張り込みを続けた俺は、彼女の過酷な運命を知ることとなった。突然の不幸
が彼女の家庭を襲った。
 彼女が六歳のとき父親が事故で他界し、後を追うようにしてその数ヵ月後に母親が病死した
のだ。
 身寄りがなかった彼女は――彼女の両親は駆け落ち同様の状態で結婚し彼女を生んでいた。
身寄りがないのは系譜を調査していた俺が一番よく知っている――孤児院に入った。
 彼女にとって孤児院での生活は辛いものだった。気の弱い彼女は新しい生活にあまりなじめ
なかった。
 何よりも両親の死のショックがずっと残っていた。塞ぎがちで、独り隠れて泣いている姿を
よく見かけた。
 俺は孤児院を十日おきに三ヶ月ほど張っていた。突然彼女の姿が見えなくなった。どこかに
引き取られたのだろうか。だがそう簡単に引き取り手が見つかるようには思えなかった。
 張り込む日と時間を変え、彼女がいなくなった日を探し続ける。
 放射冷却のために大気が冷え込んでいた冬のある日。見つけた。真夜中に一人孤児院を抜け
出す少女。俺は後を追った。

931以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:15:40.98 ID:M3PHrIHP0
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932涼宮ハルヒの微笑124 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:15:46.88 ID:sjjYSbZb0
 彼女は部屋着のままで、力なく足元を見つめながらゆっくりと歩を進めていた。明らかに様
子がおかしい。
 しばらく歩いた彼女が着いた先は、孤児院近くの川べりだった。視線を川の流れに落とした
まま動かない。
 嫌な予感がした。こういうのはよく当たるんだ。
 そして俺の予感どおり、彼女は一歩ずつ、ゆっくりと川に向かって歩きだした。
「なんてことしやがる!」
 俺は叫びながら、全速力で彼女に駆け寄った。俺に気づいた彼女が急ぎ足になる。どんどん
川に入っていく。足をもつれさせ、転んだ少女が川の流れに飲まれた。
 一心不乱に彼女を追う。意外に水流が速かった。このまま川に入っては間に合わない。俺は
しばらく岸を下流に向かって走り、彼女を待ち構えるようにして川に入った。
 水深も案外深かった。腰のあたりまで水に浸かったところで、彼女に手を伸ばす。かろうじ
て手が届いた。意識を失っていた少女を川から引っ張り上げ、岸まで運んだ。
 どうやら水は飲んでいない。呼吸も脈もあった。ショックで気を失っただけのようだ。しか
しこのままでは肺炎にもなりかねない。急いで少女の上着を脱がせ、体を拭き、俺の上着で包
んだ。
 そして俺はそれを発見した。
 やっと見つけた。この少女が間違いなく朝比奈さんだ。

 少女の左胸にそれが確かにあった。俺が以前見たものよりも小さい、微かな星形のホクロが。

 一体誰がこんな運命を仕組んだというのか。
 もし成長した妹が朝比奈さんに似ていなくて、そしてこの朝比奈さんが幼い頃の妹に似てい
なければ、俺はこの朝比奈さんを救うことは絶対に出来なかった。

 しばらくして意識を取り戻した幼い朝比奈さんは、泣きじゃくりながら俺に訴えた。
「わたし……お父さんとお母さんのところに……行きたかったの……」
 今まで見た朝比奈さんの涙の中でも最も悲痛なものだった。

933以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:16:30.68 ID:mT0/k21bO
早慶はクソwww
http://school5.2ch.net/test/read.cgi/jsaloon/1159255612/
このスレの自称「慶應ボーイ&東大余裕」とかほざいてるチンカスがうざいんです!

934以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:16:42.43 ID:M3PHrIHP0
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935涼宮ハルヒの微笑125 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:17:02.16 ID:sjjYSbZb0
「あなたは誰? わたし……お父さんとお母さんのそばに行くことも……できないの?」
 掛ける言葉が見つからなかった。いつまでも泣き続ける朝比奈さんを俺は力一杯抱きしめた。
そうするのが一番いいと思ったから。
 俺の胸の中で肩を震わせる朝比奈さんに、俺はやっとの思いでこう告げた。
「君は今ここで死ぬべきじゃない。君はいずれきっと幸せになる。だからがんばって生きてく
れ」
 泣き疲れたのか、朝比奈さんはいつの間にか眠っていた。
 俺は彼女を孤児院まで運び、玄関の前に座らせた。濡れていない俺の衣服で彼女を丁寧に包
んだあと、孤児院の呼び出しベルを鳴らし、明かりが点いたのを確認して時間移動した。
 これも俺の知ることのなかった既定事項なんだろうか。もしそうでないのなら、俺はまたひ
とつ歴史を変えてしまったことになる。
 だが、誰かが俺の行動を非難するというのならば、俺はそれを真っ向から受けて立ってやる。
人一人助けられない規定事項など糞食らえだ。
 朝比奈さんの人生がこんな悲しい結末を迎えるような未来が存在してたまるものか。それを
変えることに何をためらう必要があるというのか。

 俺は未来人組織の彼が指定した時空間座標に飛んだ。朝比奈さんを助けた日からおよそ二年
後の未来だ。
「前に言っていた女性がようやく見つかりました」
 俺は朝比奈さんのことを伝えた。身寄りがなく孤児院にいること。すぐにでも能力者として
彼女を引き取り、迎えてやってくれないかと。
「もしその女性が本当に能力者の資質を持っているのであれば、それはこちらとしても誠にあ
りがたいことだ。今の状況では俺たちには一人でも多くの能力者が必要だからな。それにいず
れ君たちの時代に行くことになると言うのならばなおさらだろう」
「それを聞いて安心しました。彼女は少し粗忽なところもありますが、努力家なのは俺が保障
します。そしていずれは俺たちの時代にはなくてはならない人物になります」
「ああ、まかせてくれ。これが歴史の必然ということならば、俺が協力しないわけにはいかな
いからな」
「どうか彼女をよろしくお願いします」
 朝比奈さん、どうかがんばって生きてください。この人があなたを向かえに行く日まで。

936以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:17:55.35 ID:M3PHrIHP0
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937涼宮ハルヒの微笑126 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:18:01.41 ID:sjjYSbZb0
 これで何度目になるだろうか。俺は高校一年の頃の時代に飛び、機関作成の北高名簿を調べ
た。
 二年の朝比奈さんがいたクラス。
 果たして、朝比奈みくるの名が登場していた。それはひと目で解る。何しろ目立つ名前だっ
た。
 長かった。これでようやく未来人関係の既定事項が全て満たされたはずだ。
 機関の中では、朝比奈みくるが存在することは既に当然の事実ととなっていた。歴史は見事
に上書きされている。
 つまり、それまでいた未来人の存在は既に皆の記憶からばっさりと消去され、機関の全ての
資料は未来人朝比奈みくるの名前が取って代わっていた。
『無矛盾な公理的集合論は自己そのものの無矛盾性を証明することができない』
 そうさ。それがキングであろうがクイーンであろうが、駒を隠したり入れ替えたりした事実
を誰にも悟られない限り、そこには何の矛盾もないのだ。
 俺は森さんに、それとなく朝比奈さんのことを聞いてみた。
「我々を撹乱させるために他勢力から送り込まれたエージェントだという推測もありましたが、
どうやら正真正銘の未来人のようです」
 のっけから不穏な物言いである。
「我々が存在を確認した時点で、彼女は既に一般人からも疑念を抱かれるほど未来人としては
迂闊な言動をしていたようです。しかも本人にはどうやらその自覚もないらしいのですが。正
直なところ、彼女を我々の時代に送り込んだ未来人の意図が測りかねます」
 俺はそれを聞いて確信した。散々な言われようだが、あの朝比奈さんをこれほど的確に表現
した言葉もないだろう。つまり、ようやく俺の知る朝比奈さんがこの時代にやってきたという
ことだ。
 そして、彼女がこの時代に来た原因は、俺が未来人組織のあの男性に朝比奈さんの存在を伝
えたからに違いなかった。

938以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:18:29.05 ID:wp0QkhMG0
支援


939以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:18:43.94 ID:M3PHrIHP0
支援

940以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:18:56.32 ID:tHDMIMCs0
みくる泣けるじゃないか支援

941以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:19:08.63 ID:ueA9XR2FO
ksk

942涼宮ハルヒの微笑127 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:19:40.64 ID:sjjYSbZb0
 しかしながら、未だに機関の資料に長門有希の名は現れていなかった。
 朝倉も喜緑さんもいるっていうのに、なぜ長門は北高に来ない?
 まだ足りないことがあるのか?
 高校生の俺が長門に会っていないことが原因なのだろうか?
 だが俺の経験では、あの七夕の日に朝比奈さんとともに長門のマンションに行ったときには、
既に長門は北高の制服を着て三年間の待機モードに入っていた。
 俺が長門に会うまでもなく、長門が北高に入学してもおかしくはない。
 だとしたら、長門が北高に来ないのは、ハルヒの一度目の情報爆発から七夕の間にあるはず
の何かが欠けているということだ。
 しかし俺はその間に長門に起こった何かを全く知らない。長門は自分の過去を語るなんてこ
とを今まで一度もしたことがなかったからな。
 いや、待てよ。
 それは違う。
 長門は一度だけ、その見えざる内面を俺たちの前に提示したことがあったじゃないか。
 決して長門の口からは語られることのなかった、いや語れなかったのかもしれないその心情
を、難解な暗喩に満ちた活字に換えて。
 そして今、俺の手元にはそれがあった。次元を超えて俺の足元に現れたあの文芸部機関紙が。

 俺は書棚からそれを取り出し、あらためて読み返してみた。
 高校一年の頃はそれが何を意味するのかはおぼろげにしか解らなかった。だが今ならそのと
きよりも少しは理解出来る。
 無題1、2、3の三部作として書かれた長門の創作小説。これは一部目が過去の長門につい
て書かれていて、二部目が当時の長門、三部目が未来の長門のことなんだ。未来とはつまり二
度目の閉鎖空間での出来事を表している。
 一部目と三部目に書かれていた幽霊少女とオバケ少女。それは当時の俺の推測どおり、やは
り朝比奈さんのことだったのではないか。
 つまり朝比奈さんはあの文芸部室での出会いよりも以前に、長門に出会っていたのだ。
 そしてそれが長門をハルヒの元へと向かわせるきっかけになったということなのか。

943以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:20:15.03 ID:QwJBzq/F0
ドキドキハラハラ、涙をまじえながら支援

944以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:20:32.92 ID:M3PHrIHP0
支援

945以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:21:26.18 ID:6SZZCOtW0
その伏線をここで使うとは、やられた支援

946涼宮ハルヒの微笑128 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:21:35.00 ID:sjjYSbZb0
 ならば、それは一体いつだ?
 長門の原稿にはこう書かれている。
 ――空から白いものが落ちてきた。たくさんの、小さな、不安定な、水の結晶。これを私の
名前としよう――
 長門は初めて見る雪に心を動かされ、それを自分の名前としたのだ。
 俺の記憶によれば、その年はハルヒの情報爆発の日以来雪は降っていない。
 ハルヒの情報爆発の日以前には、例え情報統合思念体であろうと遡ることは出来ない。
 ならばあの日情報爆発が起こってから雪が降り止むまでの間のどこかで、長門と朝比奈さん
は出会ったに違いない。
 では、それはどこだ?
 宇宙人と未来人の出会いに相応しい場所。何の確証もないが、俺にはそこしか思い当たる場
所はなかった。
 長門が住んでいたマンションの近く。駅前のあの公園。
 俺は自分の勘に従って、すぐさまその日のその場所に飛んだ。
 ハルヒによる一度目の情報爆発の少し前。午後十一時。
 二年前の俺は、この五時間ほど前にハルヒとこの公園で奇跡的に出会い、失われた記憶を取
り戻した。
 この時代に生きる小学生の俺は、三年後に前代未聞にして空前絶後の暴走女と出会い、その
七年後にそいつと結婚することになるなど夢にも思わず、今頃別の夢でも見ているのかもしれ
ない。
 俺は公園のベンチの監視に適した場所を探した。それは奇しくも長門や朝倉が住むことにな
るマンションの屋上だった。
 しばらくして、ハルヒの時空振動がきた。内臓までもが揺さぶられるような不思議な感覚。
だが俺にとってはそれが奇妙に心地よく感じられた。
 時空振動が収まったそのとき、双眼鏡越しのベンチの前に突如一人の少女が現れた。
 俺の予想が当たっていたことが、誠にあっけなく証明された。
 そこには、今まで俺が見たこともない姿の長門が立っていた。当然ながら北高の制服ではな
く、例年の合宿限定で身につけていた普段着のどれでもなかった。

947以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:21:48.62 ID:M3PHrIHP0
支援

948以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:22:13.31 ID:o/IXhiZe0
sienn


949涼宮ハルヒの微笑129 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:22:46.03 ID:sjjYSbZb0
 体の線が透けて見えるような、白い薄地のワンピース。それが外灯に照らされて不思議な輝
きを放っていた。背中に羽根さえあれば、それは間違いなく天使に見えるだろう。まだ名前す
らない無垢な天使。衣装と一体化したかのような、純白の顔が微かに見える。表情は読み取れ
ない。
 俺は呆然として、魂を抜かれたかのようにその姿に魅入られていた。
 長門は身じろぎひとつせず、いつまでもそこに立ち尽くしたままだった。一時間経っても、
二時間経ってもずっと同じ姿で。
 すぐにでも長門の前に現れて声をかけてやりたい、どれだけそう思ったことか。
 だがそうすることは出来なかった。それは俺の役目ではなかった。

 俺は再び未来人組織の彼に会いに行った。朝比奈さんの居場所を彼に告げ、組織で引き取っ
てくれないかと申し出た日の翌日へ。
「すいません、わけあってまた来ました」
「ああ。またいずれ来るとは思っていたよ。用件はなんだい」
「昨日話した女性のことなんですが、もし彼女が俺の時代に来ることになったら、最初にある
場所に行って欲しんです。いずれ彼女にそう伝えていただけませんか」
「それは君の時代にとって大切なことなんだな」
「それは実のところ俺にも解りません。ですがそれはおそらく必要なことのはずです」
「解った。こちらにも都合はあるから確約はしかねるが、なるべく君の期待に応えられるよう
努力してみるよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「それで、いつ、どこの時空に彼女を行かせればいいのかな」
 そう言って彼は右手を差し出した。これは、俺に指伝えで情報を遅れということか? なん
となく出来そうな気はするが。
 時空間座標を念じながら人差し指で触れてみた。
「おいおい、座標データだけでいいんだ。女の子の映像なんていらないぞ。それにしてもずい
ぶんと可憐な少女だな」
 なかなか難しいもんだな。とりあえず座標は伝わったようだったが。
「しかし恐れ入ったな。普通これほど大量のデータを一度に送るなんて、相当訓練を積まない
と出来ないことなんだがな」

950涼宮ハルヒの微笑130 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:23:53.20 ID:sjjYSbZb0
 声を上げて男性は笑った。
「まあ回数を重ねればいずれ慣れるさ。ああそれと、昨日の件だが組織の方には既に話は通し
ておいた。近いうちに彼女に迎えが行くはずだから安心してくれ」
 そこまで言って男性は思いついたように、
「それとも、もう既に君の過去には影響があったのかな?」
「ええ、実はそのとおりです。なんとお礼を言っていいか」
「いや、まだ俺は組織に話をしただけだからな。まあ未来の俺に対する礼として受け取ってお
くことにするよ」
 そう言って愉快そうに顔を綻ばせた。
 これがTPDDを持つ者同士特有の会話なんだろうな。俺にはいつまでたっても馴染めそう
にはないが。

 あの公園で朝比奈さんと長門の間にどういういきさつがあったかは解らない。それは二人だ
けが知っていればいいことだ。
 その結果、長門はようやく北高に現れた。これでSOS団設立時のメンバーが揃ったことに
なる。
 そして高校一年の五月、ゴールデンウィークが明けた翌週。ついに念願のSOS団結成がな
された。

 ハルヒを筆頭に、長門と朝比奈さん、そして過去の俺がSOS団に入ったのを確認した俺は、
北高への転入指令を下すために高校一年になったばかりの古泉に会った。
「久しぶりだな」
「ご無沙汰しております。最近は本部の方でもお目にかかれませんが」
「ああ、色々と忙しくてな」
 これは半分事実で半分嘘だ。俺は確かにここしばらく朝比奈さんの捜索に全力を注いでいた
が、古泉と会うのはせいぜい数ヶ月ぶりのことだ。だが古泉からすれば、俺と会うのは二年ぶ
りくらいにはなる。
 俺は話を切り出した。

951以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:25:09.39 ID:jCmNcR6Z0
支援!

952以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:25:09.76 ID:M3PHrIHP0
次スレがぁぁぁぁぁぁぁ

支援

953涼宮ハルヒの微笑131 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:25:20.07 ID:sjjYSbZb0
「涼宮ハルヒに宇宙人と未来人が接触しているのはお前も既に知っていると思うが、是非お前
にも北高に潜入して欲しい」
「それは興味深い話ですね。随分と急な話のようにも思えますが」
 この頃には既に古泉はすっかり俺の知る古泉になっていた。
「ですが、どうして僕なんです? 北高には既に多くのエージェントが潜入していて、涼宮ハ
ルヒとその周辺の調査も進んでいるはずですが」
「お前が機関の中で最も容易に涼宮ハルヒに近づける能力者だからだ。何しろ同級生だからな」
「なるほど。涼宮さんの内面をより理解することの出来る僕が直接彼女を観察するというのは
確かに有効な手段かもしれませんね」
「だがこれは表向きの理由だ。俺はそれ以外の理由でお前が適任だと判断した」
「それはどういうことですか?」
「残念だが詳しい理由は話せない。だがこの任務はお前以外にやれる人物はいない。そしてそ
の理由はいずれお前にも解る」
 古泉はこの言葉の意味を転入した日の一限終了直後に知ることになる。いきなりハルヒが古
泉のクラスに押しかけるわけだからな。さぞかし驚くことだろう。
「これだけは言っておく。これは機関にとって最も重要な任務だ。言い換えれば機関はこのた
めに存在していると言ってもいい」
「なるほど」
 そう言ってしばらく古泉は考える素振りを見せ、
「一つ聞かせてください」
「なんだ?」
「僕はあなたに他のお偉方とは違う何かをずっと感じていました。今まで僕なりにその理由を
考えていたのですが、今日それが解った気がします」
 古泉のことだ。さすがにここまで言えば俺の秘密には勘付くだろうな。
「あなたはこれから先に起こる未来を知っているのですね」
「ああ、その通りだ」
 予想通りの問いかけに、俺は正直に答えた。いずれはこれから北高で出会う過去の俺とこの
俺が同一人物だということにも気づくだろう。

954涼宮ハルヒの微笑132 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:26:28.22 ID:sjjYSbZb0
「そういうことであれば、あなたが北高に行けと言うのなら、それは多分間違いのないことな
んでしょう」
 古泉は楽しげな笑みを浮かべた。
「ならばもう一つ聞いてもいいですか」
「俺が答えられることだったらな」
「涼宮ハルヒに接触し、彼女の精神面の安定に寄与している男子生徒のことです。彼は機関の
調査では紛れもない一般人だとのことですが、あなたはそれについてどう思いますか」
 よりによって、俺のことか。
「そいつは俺にも解らん。俺が知っているのは涼宮ハルヒが何らかの理由でそいつを選んだら
しい、ということぐらいだ。もしかしたら隠された能力があるのかもしれんが」
 お願いだから、実は俺が異世界人だったなどという、いまさらな展開だけは勘弁願いたい。
「その彼も実に興味深いですね。解りました。この件、是非僕にやらせてください」
 すまんが過去の俺をよろしく頼むぞ古泉。俺には必要以上に興味は持ってくれなくてもいい
んだがな。

955以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:26:32.40 ID:M3PHrIHP0
支援

956以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:27:15.48 ID:Q3XDimnn0
誰か次スレを、
支援

957涼宮ハルヒの微笑133 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:27:41.81 ID:sjjYSbZb0
 俺は機関の報告書で、古泉の転校によってSOS団が全員集まったことを確認した。このま
ま行けばおそらく既定事項は全て満たされるはずだ。
 後はその確認と歴史の微調整、つまり俺が高校生の俺の行動を肩代わりした歴史を本来の歴
史に上書きすれば、ようやく俺はもう一度ハルヒ復活のチャンスを得られるのだ。
 そして、もう一度卒業式の長門に会い、作戦を練り直し、第二の情報爆発のあの日に向えば
いい。
 あの老人を打ち破ることが出来るのかどうかは解らないが、朝比奈さんの言う未来を信じる
ならば、きっと何か策はあるはずだ。
 これでようやく一段落ついたと感じていた。老人によって歴史が改変されてからおよそ二年
を費やした。その努力がようやく結実しようとしている。
 俺はさらに四日後に飛び、古泉が過去の俺に正体を明かしたことを確認した。間違いなく俺
の知る歴史どおりに物事は進んでいる。
 機関の報告書を読みながら、俺はこの頃に起こった出来事を振り返っていた。
 高校生の俺は今頃、長門による叡智に満ちた宇宙規模的電波話に呆れ、朝比奈さんによる悲
哀に満ちた超時空的告白に混乱し、古泉による妄想に満ちた神話的物語に辟易しているはずだ。
たった数日間で、俺がそれまで把握していた世界の枠組みは、その姿を大きく変容させたのだ
った。
 そして俺はさらにこの先の数日間で、朝倉に襲われ、朝比奈さん(大)に出会い、ハルヒに
心情を告げられ、古泉に招待された閉鎖空間で神人を目の当たりにし、ハルヒによる新世界に
閉じ込められることになる。
 これはなかなかのハードスケジュールだぞ。がんばってくれよ、高校生の俺。
 俺はふと思い出した。そう言えば今日この日の放課後、ハルヒは部室に姿を現さず、反省会
と称して一人で市内探索をやってるんだっけか。
 俺はなんとなくそんなハルヒを見てみたい気分になった。俺の知らないところでハルヒはど
んな風に過ごしていたんだろうと。
 今思えば、SOS団がようやく誕生したことで、俺はすっかり安心しきっていた。
 そして、そこに油断があった。

958300 ◆1667Z5noT6 :2006/10/07(土) 21:28:22.99 ID:sjjYSbZb0
第五章終わりです。
ご支援ありがとうございますm(_ _)m

959以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:28:29.65 ID:qLTfzZLF0
すすすっととととっぷうううう

960以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:29:30.93 ID:M3PHrIHP0
乙!!
収まって良かった・・・

961以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:30:09.78 ID:No5OzPGx0
この先は次スレかな。

962以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:31:27.94 ID:crXzOuOsO
一旦休憩するか?

963以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:32:35.23 ID:AzEuam4m0
ここでは次スレは誰が立てるルール?

964以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:32:58.10 ID:qLTfzZLF0
970でいいんじゃないかな?

965以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:33:20.88 ID:bxbAEMquO
良いね、乙彼

966以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:35:41.78 ID:zZjeL/y30
テーマは何しましょうか?

967以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:36:18.59 ID:prVJ4xLWO
午後七時から読み始めてやっと追い付いた!

968以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:36:28.70 ID:XLSlaVkk0
>>966
脱穀

969以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:36:46.25 ID:7YX07Oty0
乙 すばらしすぎる

970以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:09.05 ID:qLTfzZLF0
スライディングチケット

971以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:09.51 ID:zZjeL/y30
970ですので、立てて来ますね

972以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:15.96 ID:kp0gZhd20
踏み

973以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:20.98 ID:IIXbfjiA0
じゃあ、俺が立てよう

974以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:21.64 ID:eObExrT00
>970
ファイトだ

975以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:40.97 ID:OhBhM6bG0
おお!有限実行だ。

976以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:51.12 ID:zWnp9BWD0
もう書きあがってるんだろ。だったらさっさと埋めて投下させてあげようぜ。

977以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:38:57.33 ID:3PNCL0XK0
>>958
素晴らしい発想力です!!

978以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:39:03.19 ID:LBl7VPbW0
俺も21時に仕事から帰ってきてやっと追いついた!
ハルヒだけじゃなく、古泉、みくる、長門と一人づつちゃんとエピソードが立っているのが素晴らしいし、すごいなあ
wktkが止まらないぜっ!!

979以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:39:47.32 ID:IIXbfjiA0
>>970
リロードしてなかった。任せた

980以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:40:16.33 ID:XLSlaVkk0
なんだかんだで書き手は鶴屋さんが一番好きにな気がする梅

981以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:40:24.42 ID:zZjeL/y30
じゃあ俺が立ててきます


982以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:40:38.28 ID:qLTfzZLF0
http://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1160224786/l50
ココニ

983以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:42:02.34 ID:QwJBzq/F0
こっちは埋める?

984以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:42:02.78 ID:IIXbfjiA0
>>981
もう立ったからいいよ

985以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:42:11.40 ID:Q3XDimnn0
さて、そろそろ埋めるか

986以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:42:20.49 ID:zZjeL/y30
了解です


987以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:42:26.31 ID:zWnp9BWD0


988以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:42:46.23 ID:o/IXhiZe0
梅田

989以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:43:07.83 ID:QwJBzq/F0
うめ

990以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:43:15.88 ID:Q3XDimnn0
梅酒

991以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:43:25.58 ID:zZjeL/y30
倦め

992以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:43:40.21 ID:5j5Nl/k80
やっと追いついた


993以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:02.72 ID:qLTfzZLF0
キョン「なぁ、古泉」
古泉「なんでしょう?」
キョン「いつも思うんだが…何故そんなにゲームに弱いんだ?」
古泉「キョン君攻め萌……実力の差ではないでしょうか?」
長門「私も攻めて!」
キョン「!」

994以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:04.43 ID:prVJ4xLWO
産め

995以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:05.64 ID:U6mPw9ts0
うめ

996以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:08.97 ID:eObExrT00
食事を忘れて
埋め

997以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:19.90 ID:jGXYJU7o0
今帰ってきた
ギリ梅


998 ◆3.JjF77I26 :2006/10/07(土) 21:44:25.16 ID:EoN6l/OD0
1000なら長門は俺の嫁

999以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:25.55 ID:9QMEwROs0
うめーー

1000以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/07(土) 21:44:25.62 ID:o/IXhiZe0
1000ならハルヒはオレmの

10011001 :Over 1000 Thread
 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +        このスレッドは1000を超えました。
     〈_} )   |                                次スレも…VIPクオリティ!!
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